2017年10月15日

我は神なり(原題:The Fake)

warehakaminari.jpg

監督・脚本:ヨン・サンホ「新感染 ファイナル・エクスプレス」「ソウル・ステーション/パンデミック」
声の出演:ヤン・イクチュン(ミンチョル)、クォン・ヘヒョ(ギョンソク)、オ・ジョンセ(チョルウ)、パク・ヒボン(ヨンソン)

ダム建設により、水に沈む予定の小さな村。トラブルメーカーのミンチョルが刑務所から戻ってくる。ミンチョルにひどい目にあわされてきた妻や娘をはじめ村人はいい顔をしない。ミンチョルがいない間に教会が建てられ、牧師だという若い男が村人から崇められていた。笑顔を張りつかせたもう一人の男もうさん臭い。立退料を手に入れた村人たちは、牧師の言葉や奇跡を信じ、献金を続けていた。ミンチョルは村人たちに詐欺だと言ってまわるが、誰も聞く耳を持たない。

ヨン・サンホ監督が2013年に発表し、各地の映画祭で高評価を得たアニメーション。人の心の拠り所である信仰は、他人に強要したり批判されたりするものではなく、書くとき話すときは「取り扱い注意」です。ヨン・サンホ監督はそこへ切り込みました。
このミンチョルは粗暴な嫌われ者ですが、村中が騙されている中、ただ一人詐欺だと見抜きます。しかし日頃の行いが悪いものだから、反対に悪魔が乗り移っていると決めつけられてしまいます。人は真実よりも自分が信じたいものを信じ、見たいものを見るのでしょう。特別信仰心を持たない私など、冠婚葬祭でしか関わることがありませんが、心を預けられれば平安なのだろうと想像します。ひりひりするような痛みの上にさらに塩でも塗られるような、きつい作品でしたが忘れられません。(白)


2013年/韓国/カラー/101分
配給:ブロードウェイ
(C)2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD INC.,&Studio DADASHOW All Rights Reserved.
★2017年10月21日(土)ユーロスペース他にて全国公開
posted by shiraishi at 15:30| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団

DC.jpg

監督・原案・脚本:FROGMAN
出演:FROGMAN、山田孝之(バットマン)、知英(ハーレイ・クイン)、安田顕(ジョーカー)、鈴村健一(スーパーマン)
「悪の秘密結社 鷹の爪団」は今日も人と地球にやさしい世界征服を企んでいる。そんな夢は見るけど超貧乏な結社をあのジョーカー率いるヴィランが襲ってきた。狙いは鷹の爪の秘密兵器だという。ジャスティス・リーグもハリウッドからやってきて、鷹の爪団に協力することになった。しかし彼らがハリウッドアクションを披露すると、鷹の爪団のアニメ制作費はあっというまに吹っ飛んでしまう。これはリッチなバットマンにすがるしかない。ところが、バットマンはジャスティスリーグを脱退していた。ハリウッドのスーパーヒーローと奇跡のコラボはいったいどうなる!!!!!

鷹の爪団は総統・吉田・レオナルド博士・菩薩峠・フィリップの5人組。台詞のあるときに口だけが動き、身体全体の向きが交互になるくらいのアニメーションです。超低予算アニメですが、世相をうまく取り込み、忖度などしないセリフが面白く大笑いでした。そこにハリウッドのヒーローたちが加わるとどうなるか??画面右にある予算の増減が見えるメーターがグ〜〜っと減り、アニメの動きと絵が雑になっていきました。広告が意味なく画面に現れるとまた上昇。これがスリリングです。様々なタイプのアニメーションが出てくるので、その違いを見るのも楽しいです。公式HPには、制作費の足しに「観客ファースト」な企画が並びますがほぼ募集は終了。今は予算書が残るのみです。どこまでほんとなのか不明ですが、映画制作に関わる費目が興味深いです(キャバクラは冗談でしょ?)。(白)


2017年/日本/カラー//105分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)Warner Bros. Japan and DLE. DC characters and elements (C)&TM DC Comics. Eagle Talon characters and elements (C)&TM DLE. All Rights Reserved.
http://dc-taka.com/
★2017年10月21日(土)公開
posted by shiraishi at 15:12| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リングサイド・ストーリー

ringside.jpg

監督:武正晴
脚本:横幕智裕
撮影:西村博光
音楽:李東峻(い・どんじゅん)
主題歌:フラワーカンパニーズ
出演:佐藤江梨子(江ノ島カナコ)、瑛太(村上ヒデオ)、余貴美子(カナコの母)、高橋和也(ロベルト・ホンダ)、近藤芳正(百木清太郎)、有薗芳記(敦賀淳一)、田中要次(杉田新三)

アラサーのカナコは、付き合って10年の売れない俳優ヒデオといまも同棲中。昔舞台の袖で見たヒデオは輝いていて、大河ドラマに出たこともある。しかしその後は鳴かず飛ばずで35歳になってしまった。オーディションは落ちまくるのに、実直なマネージャーの百木がとってきた仕事をドタキャンするダメ男だ。カナコが家計を支えていたが、パート先の弁当工場のリストラに遭い大ピンチ。プロレスファンのヒデオが勝手に申し込んだ武藤敬司率いるプロレス団体の面接にしぶしぶ出かけて行く。運よく就職できたカナコはこれまでと違う仕事の面白さに目覚め、生き生きと働く。構ってもらえないヒデオは、カナコが浮気していると邪推して、一騒動起こしてしまった。

『百円の恋』(2014)で安藤サクラさんをリングに上げた武正晴監督が、今度は瑛太さん!?しっかり者のカナコのさとえりさんにぶらさがる「困ったちゃん」のヒデオが、プロのK-1選手と!? 同じ年ごろだとどうしても男子の方が女子より幼いですね。そのズレが笑いを誘い、物悲しくなるのですが「そうそう、あるある」と頷く同世代が多いはず。
瑛太さんは21日公開の卓球映画『ミックス』で卓球の試合に出場する羽目になる元プロボクサー、11月公開の『光』では複雑でテンションの高い役を好演しています。
明るいお母さんの余貴美子さんもいい味出しています。武藤敬司、黒潮“イケメン”二郎、K-1世界王者の武尊ら、本物のプロレスラー、格闘家も出演。『百円の恋』ファン、格闘技ファンは行くべし。(白)


2017年/日本/カラー/ビスタ/104分
配給:彩プロ
(C)2017 Ringside Partners
http://ringside.jp/
★2017年10月14日(土)新宿武蔵野館、渋谷シネパレスほか全国公開
posted by shiraishi at 14:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

婚約者の友人    原題:FRANTZ

konnyaiusya.jpg
監督・脚本:フランソワ・オゾン(『彼は秘密の女ともだち』『8人の女たち』)
原案:エルンスト・ルビッチ
出演:ピエール・ニネ(『イヴ・サンローラン』)、パウラ・ベーア(『ルートヴィヒ』)

1919年、ドイツ、クヴェールドリンブルク。
毎朝、フランスとの戦いで亡くなった婚約者フランツの墓に通うアンナ。身寄りのないアンナは、亡きフランツの両親と暮らしていた。
ある朝、フランツの墓に花を手向け泣いている青年を見かける。フランスから来たアドリアンと名乗る青年。フランツの父ハンスは、フランスの男は皆、私の息子を殺した犯人だと追い返すが、母マグダは、戦前パリに留学していた時の友人ではないかという。
宿泊先を探し出し家に招き、フランツとの関係を矢継ぎ早に質問するマグダ。アドリアンは泣き出してしまうが、ようやくルーブル美術館でフランツお気に入りのマネの絵を一緒に観た思い出を語り始める。アドリアンに息子の面影を感じた両親は、夕食に招くようになる。アンナもアドリアンと町の舞踏会にいき、婚約者の友人以上の感情を持ち始める。だが、そんなある日、アドリアンが夕食への招待をすっぽかしてしまう。フランツの墓に佇むアドリアンを見つけたアンナは、衝撃の告白を受ける。正体を明かし、これ以上はいられないとフランスに帰ってしまうアドリアン。一方、アドリアンにほのかな気持ちを寄せるようになっていたアンナは手紙を出すが、宛先不明で戻ってきてしまう。真実を知らないフランツの両親は、アンナを後押しして、アドリアンを探しにフランスに行くことを勧める。はたして、アンナはアドリアンを見つけることはできるのか・・・

アドリアンとフランツの関係の衝撃の真実・・・ 戦前、パリでフランツと親しくしていたというので、もしや男どうしの愛?と、あ〜勘違い。どんな真実だったかは映画で確認を。

かつての戦争は、人と人とがまさに殺しあう戦いだったことを思い知りました。
今や、遠隔操作でボタンを押して、敵を殺す時代。例え相手がほんとに戦争の片棒をかついでいる兵士であろうと、誤認で殺してしまった一般人であろうと、罪悪感はほとんど感じないでしょう。
日本兵の遺品の日の丸を、長い間、手元に持っていた元アメリカ兵の話を時折聞きます。彼らは戦後、どんな思いでその日の丸を持ち続けたことでしょう。
加害者をも、いつまでも苦しめる戦争。権力者の匙加減一つで起こる戦争。皆が共存して平穏に暮らせる世界を実現してほしいものです。
そんなことをずっしり感じた本作ですが、それ以上に、人を許すことの大切さもずっしり。アンナの女心にも涙です。(咲)


2016年/フランス・ドイツ/113分/シネマスコープ/モノクロ・カラー/5.1ch
配給:ロングライド
提供:KADOKAWA、ロングライド
後援:在日フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:http://frantz-movie.com/
★2017年10月21日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開



posted by sakiko at 13:30| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ソニータ   原題:Sonita

sonita.jpg

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ
出演:ソニータ・アリザデ、ロクサレ・ガエム・マガミ
製作総指揮:ゲルト・ハーク
音楽:ソニータ・アリザデ、セパンダマズ・エラヒ・シラジ

テヘランの下町。少女たちを前に歌う18歳のソニータ。アフガニスタンの両親のもとを離れ、イランで難民として暮らしている。夢は有名なラッパーになること。
難民支援団体の教室で、理想の国籍や名前をと先生に言われ、「名はソニータ・ジャクソン。欲しい国籍はアメリカ」と書きながら、アメリか国籍じゃイランに入れないと笑う。
ソニータがイランに逃げてきたのは、父親がアフガニスタンの慣習に従って、強制的に結婚させようとしたからだった。娘を嫁がせればしばらく食うに困らないという父。花嫁の値段は9000ドル! 額にバーコードを書いて「売り物」とアピールしながら歌うソニータ。
監督は、ソニータの夢を叶えさせてあげたいと、スタジオで録音する。ラップのコンテストで最優秀賞も貰うが、イランの法律で女性のソロは認められていない。アメリカの支援者を見つけ、アメリカにわたることにするが、パスポートも持っていないソニータ。パソポートを取得するため数年ぶりにヘラートの両親の家に帰る・・・

本作のロクサレ・ガエム・マガミ監督は、テヘラン芸術大学で映画製作とアニメーションを学んだイラン女性。従兄弟がソーシャルワーカーとして働く子ども支援団体で、ソニータと知り合い、歌手になりたいという彼女の映画を撮ることを決意。女性のソロが許されていないイランで、ソニータが歌う姿を撮る監督にも大きなリスクがある。

イランでの撮影中、「もうスカーフをはずして寝たいからカメラを止めて」とソニータがいう。髪の毛を出した姿が流出した時に家族に迷惑がかかるからというソニータの心遣い。そも、イランでは女性が髪の毛を出した映像は流せない。
ソニータも監督も、アメリかに行き、髪の毛を堂々と出して闊歩している。
監督にとっても、本作は勇気ある一歩を踏み出したもの。
ソニータの将来と共に、監督の将来も楽しみだ。(咲)


サンダンス映画祭2016 ワールドシネマ部門グランプリ & 観客賞
アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(IDFA)2015 観客賞
シェフィールドドキュメンタリー映画祭ヤング審査員賞 ほか受賞多数

2015年 / 91分 / スイス・ドイツ・イラン
制作:TAG/TRAUM
共同製作:INTERMEZZO FILM、 ロクサレ・ガエム・マガミ、NDR、RTS、
SRG SSR、DR
配給:ユナイテッドピープル
後援:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所、Girl Power、ハリウッド化粧品 
公式サイト:http://www.unitedpeople.jp/sonita/
★2017年10月21日(土)よりアップリンク渋谷他にてロードショー



posted by sakiko at 13:28| Comment(0) | スイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鉱 ARAGANE

aragane.jpg

監督・撮影・編集:小田香
監修:タル・ベーラ監督(『ニーチェの馬』)
プロデューサー:北川晋司/エミーナ・ガーニッチ

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ近郊のブレザ炭鉱の今を追ったドキュメンタリー。ヨーロッパ有数の埋蔵量を誇り、第二次世界大戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦を乗り越え、100年にわたり操業を続けている。

閑散とした建物。地中深く降りて行くエレベーター。
そこは闇の世界。
坑夫たちはヘッドライトのわずかな光を頼りに黙々と仕事をこなしている・・・

映画の中では、淡々と炭坑で働く人たちを映して、余計な説明は一切ない。
仕事を終えて、暗い闇の中の世界を抜け出し、シャワーを浴び談笑する姿からは、一日を無事終えた歓びが伝わってくるよう。
最後に映し出される一面の銀世界。地中の闇との対比が際立つ。

監督の小田香さんは、『ニーチェの馬』を最後に引退したタル・ベーラ監督が後進の育成のために設立した映画学校「film.factory」で3年間学んだ日本人。
『ニーチェの馬』が多くを語らず、圧倒的な映像美で人が生きて行くことの凄まじさを語っていたように、『鉱 ARAGANE』も闇の世界で働く人たちの思いが、モノクロの美しい映像から静かに伝わってくる作品。(咲)


*山形国際ドキュメンタリー映画祭2015 アジア千波万波部門特別賞

2015年/ボスニア・ヘルツェゴビナ、日本/68分/DCP
配給:スリーピン
提供:film.factory/FieldRAIN
★2017年10月21日(土)より 新宿 K’s cinemaにてロードショー



posted by sakiko at 13:25| Comment(0) | ボスニア・ヘルツェゴヴィナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。