2017年10月11日

74歳のペリカンはパンを売る。

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監督:内田俊太郎
撮影:石原弘之、内田俊太郎
出演:渡辺多夫、渡辺陸、名木広行、伊藤まさこ、保住光男

昭和17年に創業の老舗のパン屋さん「ペリカン」。ロールパンと小ぶりの食パンだけにしぼり、毎日食べても飽きないご飯のようなパンを74年間焼いてきた。時代は変わってもおいしいパンを提供したいという店長と職人さんの気持ちは変わらない。
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浅草田原町にある小さな間口のパン屋さんに密着したドキュメンタリー。先代からの精神を受け継ぐ若き店長。マスクで目元しか見えなくてもハンサム、外すともっとハンサム。ベテランの職人さんの無駄のない動きにほれぼれします。「何年やっても毎日違う」と日々精進を怠りません。
試写を観たら食べたくなって田原町のお店(台東区寿4-7-4)に行ってきました。予約済みのパンがずらりと並んでいます。品切れになったら閉店なので予約するのが確実です。小ぶりの食パンが買えました。シンプルだから飽きない、のが納得の美味しさでした。国際通りにそってもう少し南下したところにペリカンカフェ(台東区寿3-9-11)が誕生しました。美味しいトーストやサンドイッチをいただくことができます。映画を観た後にぜひ足を延ばしてみて。(白)


2017年/日本/カラー/80分
配給:オルケスト
(C)ポルトレ
http://pelican-movie.tokyo/
新しい情報は
https://www.facebook.com/pelicanbrandmovie/
★2017年10月7日(土)ユーロスペースにて公開中
posted by shiraishi at 10:59| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月08日

立ち去った女    英題:The Woman Who Left

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監督:ラヴ・ディアス
出演:チャロ・サントス・コンシオ、ジョン・ロイド・クルズ

1997年6月30日、フィリピン。女性刑務所の作業場。香港の中国返還に伴うフィリピン経済弱体化のニュースが流れている。かつて小学校の教師だったホラシアは、身に覚えのない殺人の罪で、30年の歳月を刑務所で静かに過ごしてきた。
ある日、受刑者で親友のペトラから思いがけない告白を受ける。ホラシアが犯人とされた殺人事件の真犯人はペトラで、ホラシアに罪を着せた黒幕は、ホラシアのかつての恋人・ロドリゴだというのだ。
ホラシアは釈放され、家に戻るが夫はすでに亡くなり、息子は行方不明だった。ホラシアは、自分にぬれぎぬを着せたロドリゴを追って復讐の旅に出る。ロドリゴの住むという町で、ホラシアはバロット(アヒルの卵)売りの貧しい男からロドリゴの情報を得る。一方でパロット売りの身の上話を聞いて助けてあげるホラシア。昼は教会で過ごし、夜になるとパロット売りのところに行き、ロドリゴへの復讐の時を待つホラシアの前に、物乞いの女や、心と身体に傷を抱える謎の女が現われる・・・

モノクロで描かれる圧倒的な映像美。
無実の罪で30年もの年月を刑務所で過ごしたホラシアの虚しい思いが、ぐっと迫ってくる。ロドリゴへの復讐に燃えながら、自分の前に現われる弱い人たちには温かく手を差しのべるホラシア。本質的に、鬼になれない女性なのだ。
本作は、『ショーシャンクの空に』の原点ともなったロシアの文豪トルストイの短編小説に着想を得た人間ドラマ。
3時間48分、息を殺して画面を見守った。(咲)


2016年/フィリピン/228分/モノクロ/1.85:1/DCP
配給:マジックアワー
公式サイト:http://www.magichour.co.jp/thewoman/
★2017年10月14日 シアター・イメージ フォーラムほか全国順次ロードショー!



posted by sakiko at 19:35| Comment(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ   原題:The Price of Desire

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監督:メアリー・マクガキアン
出演:オーラ・ブラディ、ヴァンサン・ペレーズ、ドミニク・ピノン、アラニス・モリセット

アールデコからモダニズムへと時代が変わった1920年代。
家具デザイナーとして脚光を浴びていたアイリーン・グレイは、恋人の建築家であり評論家のジャン・バドヴィッチと共に、建築デビュー作として南フランスのカップ・マルタンの海辺にヴィラ E.1027を完成させる。それは、ル・コルビュジエが提唱してきた「近代建築の 5 原則」を具現化した、まさにモダニズムの記念碑といえる傑作だった。ル・コルビュジエはアイリーンの才能を絶賛し、親交を深める。が、賞賛の思いはやがて嫉妬に変わり、アイリーンの留守中にル・コルビュジエは壁に下品なフレスコ画を描く。彼女は激怒し、彼らの関係は断たれ、E1027は放置されてしまう・・・

本作は、長い間ル・コルビュジエの作とされてきたヴィラE1027を軸に、モダニズムの時代を先導した二人の人物を描いたもの。

戦後、すっかり荒れ果てたE1027が競売にかけられた時、自分のものにしようと奔走したル・コルビュジエ。1965年、E1027を見晴らすカップ・マルタンで海水浴中に心臓発作で亡くなっている。なんとも皮肉な運命!

ル・コルビュジエといえば、2016年に近代建築への顕著な貢献として、世界各地16の建築作品が世界文化遺産登録された建築家。日本では上野の国立西洋美術館が有名。以前からル・コルビュジエの手がけた建物として知っていたけど、どこがいいのかわからなかった建築物。本作を観て、ル・コルビュジエという人物、建物同様、どうにも好きになれないと思った、一方で、本作を通じて、アイルランド出身のアイリーン・グレイという才能豊かな女性のことを知ることができた。生涯にわたって自分のスタイルを貫いた女性とのこと。頼もしい。(咲)


2015年/ベルギー・アイルランド/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給トランスフォーマー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/lecorbusier.eileen/
★2017年10月14日(土)Bunkamura ル・シネマほか、全国順次公開



posted by sakiko at 18:07| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第18回東京フィルメックス

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作家の思いに溢れた作品を、ずっしり味わえる東京フィルメックス。
今年も、オープニングにシルヴィア・チャン監督の『相愛相親』、クロージングにアッバス・キアロスタミ監督の遺作『24 フレーム』をはじめ、多彩な作品が上映されます。
また、国際批評フォーラム、タレンツ・トーキョー、映画の時間プラスなど盛りだくさんの関連イベントにもご注目ください。

期間 : 2017年11月18日(土) 〜 11月26日(日)
有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇 他 にて

公式サイト: http://www.filmex.net/

◎コンペティション部門(9作品)
http://filmex.net/2017/program/competition

『馬を放つ』Centaur
キルギスタン、フランス、ドイツ、オランダ、日本 / 2017 / 89 分
監督:アクタン・ アリム・クバト (Aktan ARYM KUBAT)
配給:ビターズ・エンド

『見えるもの、見えざるもの』The Seen and Unseen
インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール / 2017 / 86 分 /
監督:カミラ・アンディニ (Kamila ANDINI)

『殺人者マルリナ』Marlina the Murderer in Four Acts
インドネシア、 フランス、マレーシア、タイ / 2017 / 95 分
監督:モーリー・スリヤ (Mouly SURYA)

『暗きは夜』Dark is the Night
フィリピン / 2017 / 107 分
監督:アドルフォ・アリックスJr (Adolfo ALIX Jr.)

『ジョニーは行方不明』Missing Johnny / 強尼・凱克
台湾 / 2017 / 105 分
監督:ホァン・シー (HUANG Xi) ★初監督作品

『とんぼの眼』Dragonfly Eyes / 蜻蛉之眼
中国 / 2017 / 82 分
監督:シュー・ビン (XU Bing) ★初監督作品

『シャーマンの村』Immortals in the Village / 跳大神
中国 / 2017 / 109 分
監督:ユー・グァンイー (YU Guangyi)

『氷の下』The Conformist / 氷之下
中国 / 2017 / 126 分
監督:ツァイ・シャンジュン (CAI Shangjun)

『泳ぎすぎた夜』The Night I Swam
日本、フランス / 2017 / 79 分
監督:五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル (IGARASHI Kohei, Damien MANIVEL)
配給:コピアポア・フィルム、NOBO

☆コンペティション審査員
原 一男 (審査委員長/ 映画監督)
國實 瑞惠 (プロデューサー)
エレン・キム (Ellen Y. D. KIM / 韓国 / 映画祭プログラマー、映画プロデューサー)
ミレーナ・グレゴール (Milena GREGOR /ドイツ / アルセナール芸術監督)
クラレンス・ツィ (Clarence TSUI / 香港 / 映画評論家)


◎特別招待作品(8作品)
※オープニング作品
『相愛相親(そうあいそうしん)』Love Education / 相愛相親
中国、台湾 / 2017 / 120 分
監督:シルヴィア・チャン (Sylvia CHANG)

※クロージング作品
『24 フレーム』24 Frames
イラン、フランス / 2016 / 114 分
監督:アッバス・キアロスタミ (Abbas KIAROSTAMI)

『時はどこへ?』Where Has Time Gone?
ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、中国 / 2017 / 111 分
監督:ウォルター・サレス、アレクセイ・フェドルチェンコ、マドハル・バンダルカル、 ジャーミル・X・T・クベカ、ジャ・ジャンクー (Walter SALLES, Aleksey FEDORCHENKO, Madhur BHANDARKAR, Jahmil X.T. QUBEKA, JIA Zhang-ke)

『サムイの歌』Samui Song / Mai Mee Samui Samrab Ter
タイ、ドイツ、ノルウェー / 2017 / 108 分
監督: ペンエーグ・ラッタナルアーン (Pen-Ek RATANARUANG)

『天使は白をまとう』Angels Wear White / 嘉年華
中国 / 2017 / 107 分
監督:ヴィヴィアン・チュウ (Vivian QU)

『ファンさん』Mrs. Fang
香港、フランス、ドイツ / 2017 / 87 分
監督:ワン・ビン (WANG Bing)

『ニッポン国 VS 泉南石綿村』Sennan Asbestos Disaster
日本 / 2017 / 215 分
監督:原一男 (HARA Kazuo)
製作・配給:疾走プロダクション 配給協力:太秦

『東京ヴァンパイアホテル 映画版』TOKYO VAMPIRE HOTEL
日本 / 2017 / 142 分
監督:園子温 (SONO Sion)
製作:日活

◎特別招待作品 フィルメックス・クラシック(2作品)
『モアナ(サウンド版)』Moana with Sound
アメリカ / 1926, 1980 / 98 分
監督:ロバート・J・フラハティ、フランシ ス・H・フラハティ、モニカ・フラハティ (Robert J. FLAHERTY, Frances Hubbard FLAHERTY, Monica FLAHERTY)
配給: グループ現代

『山中傳奇(さんちゅうでんき)』Legend of the Mountain / 山中傳奇
台湾 / 1979 / 191 分
監督:キン・フー (King HU)


◎特集上映 ジャック・ターナー(2作品)
『私はゾンビと歩いた!』I walked with a Zombie / Vandou
アメリカ / 1943 年 / 68 分

『夕暮れのとき』Nightfall
アメリカ / 1956年 / 80分

◎チケット情報
http://filmex.net/2017/ticket

◎スケジュール
http://filmex.net/2017/schedule



posted by sakiko at 14:52| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月07日

『あゝ、荒野 前篇』 『あゝ、荒野 後篇』

監督:岸 善幸
脚本:港 岳彦
撮影監督:夏海光造
音楽:岩代太郎
主題歌:BRAHMAN
原作:寺山修司「あゝ、荒野」
出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、でんでん、木村多江、ユースケ・サンタマリア、木下あかり、モロ師岡、高橋和也、今野杏南、山田裕貴、河井青葉、前原滉、萩原利久、小林且弥、川口覚、山本浩司、鈴木卓爾、山中崇

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【前篇】
2021年、新宿。
少年院から出てきた21歳の新次は、幼い頃に母親に捨てられ行くあてもなく、かつての振り込め詐欺仲間の裕二を訪ねる。時代は変わり、プロボクサーデビューした裕二からはけんもほろろに扱われる。復讐を誓う新次。
床屋で働く健二は吃音で赤面対人恐怖症。韓国人の母親を亡くし、日本人の父と共に日本に来たが、暴力的な父に耐えられず家を出ていた。
そんな新次と健二が、片目こと堀口からボクシングをやらないかと声をかけられ、ボクシングジムで寝泊りしながらプロボクサーを目指す・・・

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【後篇】
新宿新次、バリカン健二のリングネームで、プロデビューを果たした二人。片目が2人のためにつけたトレーナー馬場の厳しい指導でめきめき力をつけていく。やがて、新次は宿敵である裕二との戦いに挑み、復讐心に燃えていく。一方、健二は力で対戦相手を打ち負かすことへのためらいを捨てられずにいた。兄弟のような絆で結ばれていた新次と健二だが、やがて袂をわかち、リングで決戦の時を迎える・・・

それぞれの役者が、まさに新宿の裏町でもがくように生きようとしている人物を体現していて、見ごたえたっぷり。
 『息もできない』のヤン・イクチュン監督は役者としても絶品。可愛い。
新次の宿敵、裕二を演じた山田裕貴の鋭い眼光も忘れられない。
そして息子新次を捨てて一人の女として生きる京子を素敵に演じた木村多江。
その京子に会うたび、「相変わらずお綺麗で」と挨拶するひょうひょうとした片目のユースケ・サンタマリア。
バリカン健二にほれ込みサポートするジムの敷地の地主二代目、川口覚も爽やか。
どの人物もいとおしい。 
前篇をみたら、後篇が待ち遠しくなること間違いなし。両方あわせて305分! どっぷり『あゝ、荒野』の世界に浸ってください。(咲)


2017年/日本 前篇 157分  後篇147分 
配給:スターサンズ
公式サイト:http://kouya-film.jp/
★『あゝ、荒野』前篇:10月7日・後篇:10月21日新宿ピカデリー他 二部作連続公開




posted by sakiko at 11:28| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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