2017年10月15日

ソニータ   原題:Sonita

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監督:ロクサレ・ガエム・マガミ
出演:ソニータ・アリザデ、ロクサレ・ガエム・マガミ
製作総指揮:ゲルト・ハーク
音楽:ソニータ・アリザデ、セパンダマズ・エラヒ・シラジ

テヘランの下町。少女たちを前に歌う18歳のソニータ。アフガニスタンの両親のもとを離れ、イランで難民として暮らしている。夢は有名なラッパーになること。
難民支援団体の教室で、理想の国籍や名前をと先生に言われ、「名はソニータ・ジャクソン。欲しい国籍はアメリカ」と書きながら、アメリか国籍じゃイランに入れないと笑う。
ソニータがイランに逃げてきたのは、父親がアフガニスタンの慣習に従って、強制的に結婚させようとしたからだった。娘を嫁がせればしばらく食うに困らないという父。花嫁の値段は9000ドル! 額にバーコードを書いて「売り物」とアピールしながら歌うソニータ。
監督は、ソニータの夢を叶えさせてあげたいと、スタジオで録音する。ラップのコンテストで最優秀賞も貰うが、イランの法律で女性のソロは認められていない。アメリカの支援者を見つけ、アメリカにわたることにするが、パスポートも持っていないソニータ。パソポートを取得するため数年ぶりにヘラートの両親の家に帰る・・・

本作のロクサレ・ガエム・マガミ監督は、テヘラン芸術大学で映画製作とアニメーションを学んだイラン女性。従兄弟がソーシャルワーカーとして働く子ども支援団体で、ソニータと知り合い、歌手になりたいという彼女の映画を撮ることを決意。女性のソロが許されていないイランで、ソニータが歌う姿を撮る監督にも大きなリスクがある。

イランでの撮影中、「もうスカーフをはずして寝たいからカメラを止めて」とソニータがいう。髪の毛を出した姿が流出した時に家族に迷惑がかかるからというソニータの心遣い。そも、イランでは女性が髪の毛を出した映像は流せない。
ソニータも監督も、アメリかに行き、髪の毛を堂々と出して闊歩している。
監督にとっても、本作は勇気ある一歩を踏み出したもの。
ソニータの将来と共に、監督の将来も楽しみだ。(咲)


サンダンス映画祭2016 ワールドシネマ部門グランプリ & 観客賞
アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(IDFA)2015 観客賞
シェフィールドドキュメンタリー映画祭ヤング審査員賞 ほか受賞多数

2015年 / 91分 / スイス・ドイツ・イラン
制作:TAG/TRAUM
共同製作:INTERMEZZO FILM、 ロクサレ・ガエム・マガミ、NDR、RTS、
SRG SSR、DR
配給:ユナイテッドピープル
後援:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所、Girl Power、ハリウッド化粧品 
公式サイト:http://www.unitedpeople.jp/sonita/
★2017年10月21日(土)よりアップリンク渋谷他にてロードショー



posted by sakiko at 13:28| Comment(0) | スイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鉱 ARAGANE

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監督・撮影・編集:小田香
監修:タル・ベーラ監督(『ニーチェの馬』)
プロデューサー:北川晋司/エミーナ・ガーニッチ

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ近郊のブレザ炭鉱の今を追ったドキュメンタリー。ヨーロッパ有数の埋蔵量を誇り、第二次世界大戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦を乗り越え、100年にわたり操業を続けている。

閑散とした建物。地中深く降りて行くエレベーター。
そこは闇の世界。
坑夫たちはヘッドライトのわずかな光を頼りに黙々と仕事をこなしている・・・

映画の中では、淡々と炭坑で働く人たちを映して、余計な説明は一切ない。
仕事を終えて、暗い闇の中の世界を抜け出し、シャワーを浴び談笑する姿からは、一日を無事終えた歓びが伝わってくるよう。
最後に映し出される一面の銀世界。地中の闇との対比が際立つ。

監督の小田香さんは、『ニーチェの馬』を最後に引退したタル・ベーラ監督が後進の育成のために設立した映画学校「film.factory」で3年間学んだ日本人。
『ニーチェの馬』が多くを語らず、圧倒的な映像美で人が生きて行くことの凄まじさを語っていたように、『鉱 ARAGANE』も闇の世界で働く人たちの思いが、モノクロの美しい映像から静かに伝わってくる作品。(咲)


*山形国際ドキュメンタリー映画祭2015 アジア千波万波部門特別賞

2015年/ボスニア・ヘルツェゴビナ、日本/68分/DCP
配給:スリーピン
提供:film.factory/FieldRAIN
★2017年10月21日(土)より 新宿 K’s cinemaにてロードショー



posted by sakiko at 13:25| Comment(0) | ボスニア・ヘルツェゴヴィナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月13日

地の塩 山室軍平

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監督:東條政利
脚本:我妻正義、東條政利
撮影:高間賢治
美術:小出憲
出演:森岡龍(山室軍平)、我妻三輪子(山室機恵子)、辰巳琢郎(新島襄)、伊嵜充則(石井十次)、水澤紳吾(吉田清太郎)

岡山の貧しい農家に生まれた山室軍平は、家族の愛情を受けて育ったが9歳で子のない叔父の養子となる。その後、勉学の道を開くという約束を違えた叔父の元を飛び出し、一人上京して自立の道を探った。多感な時期にキリスト教に出会い、新島襄の教えに感銘を受けて社会福祉の道を進んでいく。

隣人愛を生涯にわたって実践した山室軍平さんという方をこの映画で初めて知りました。「人に迷惑をかけない」とは親が子どもによく言うことばです。軍平のお母さんはもう一つ進めて「人の役に立つ人になって」と祈りました。振り返ってみると自分も、子どもにも「迷惑をかけない」の方で、「役に立つ人に」とは言わなかったかも。ここでその後の人生に大きな違いが??
SNSで機器ごしの繋がりはあっても、直に人と繋がることが少ない現在、こんなに熱い思いでより貧しい人、苦しんでいる人に手を差し伸べ続けた人がいたことを知ってほしいと思います。口約束ばかりしてちっとも実践しない人たち(誰とはいいませんが)は特に、そうでない心優しい皆様もぜひご覧ください。(白)


2016年/日本/カラー/107分
配給:アルゴ・ピクチャーズ
(C)山室軍平の映画を作る会
http://yamamurogunpei.com/
★2017年10月21日(土)より新宿武蔵野館、岡山・シネマクレール丸の内ほか全国順次ロードショー
☆東條正政利監督&主演の森岡龍さんインタビュー記事はこちら
posted by shiraishi at 16:57| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月12日

あなた、そこにいてくれますか  英題:WILL YOU BE THERE?

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監督:ホン・ジヨン(『キッチン 3人のレシピ』『結婚前夜〜マリッジブルー〜』)
出演:キム・ユンソク(『チェイサー』)、ピョン・ヨハン(「ミセン 未生」)、チェ・ソジン、キム・サンホ、アン・セハ

2015年、カンボジア奥地。医療ボランティアの医師ハン・スヒョン(キム・ユンソク)は、赤ちゃんを助けたお礼に、村の長老から過去に戻れる薬を10粒貰う。帰国し半信半疑で1粒飲んだスヒョンは深い眠りに落ちる。目覚めると、そこには30年前の研修医時代の自分(ピョン・ヨハン)がいた。
実はスヒョンには、30年前に戻ってどうしても会いたい人がいた。イルカの調教師をしていた恋人のヨナ(チェ・ソジン)。遠距離恋愛で、ヨナのイルカショーもなかなか見に行けないでいた。あの時、あぁしていればという思いが、スヒョンを30年前に誘ったのだった。30年前の自分に事実を告げて進言するスヒョン。果たして、若いスヒョンは30年後の自分だと信じて、実行してくれるのだろうか・・・

本作は、フランスの作家ギヨーム・ミュッソのベストセラー小説「時空を超えて」を韓国風にアレンジして実写映画化したもの。
人生を振り返って、別の選択をしていれば・・・と思う局面はいくつもあるけれど、人生にもし・・・はない。でも、悲しい運命をもし変えることができるなら、それほど嬉しいことはないでしょう。一つ、運命を変えたら、その後の人生に矛盾が生じてくるけれど、実にうまく辻褄をあわせています。
でも、なんといっても本作のみどころは、二人一役を見事に演じたキム・ユンソクとピョン・ヨハン。ちょっとした仕草など、二人の努力もあるけれど、キム・ユンソクの若い頃はこんなだっただろうなというピョン・ヨハンをよくキャスティングしたと感心します。
あ〜逆に、ピョン・ヨハンもあんなおっさんになるのか・・・と!
スヒョンの親友テホ役キム・サンホは、出てくるだけで笑わせてくれる名脇役ですが、その若き日を演じたアン・セハも顔だけで笑わせてくれる俳優。
そして、恋人のイルカの調教師ヨナ役のチェ・ソジンの、なんと爽やかなこと!
ホン・ジヨン監督は、女性らしい心遣いで本作を素敵な映画に仕上げています。
『キッチン 3人のレシピ』公開を前に来日された折にインタビューさせていただいたのを懐かしく思い出しました。カーリーヘアの、可愛らしい感じの監督でした。
http://www.cinemajournal.net/special/2009/kitchen2/index.html
亡き梅木直子さんと一緒に取材したのでした。あの時に戻って直子さんにお会いしたい!(咲)


2016年/韓国/111分/カラー/ビスタ
配給:ギャガ・プラス
公式サイト:http://GAGA.NE.JP/anasoko
★2017年10月14日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷 他 全国順次ロードショー



posted by sakiko at 21:01| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月11日

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)(原題:War for the Planet of the Apes)

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監督:マット・リーブス
脚本:マーク・ボンバック、マット・リーブス
出演:アンディ・サーキス(シーザー)、ウッディ・ハレルソン(大佐)、スティーブ・ザーン(バッド・エイプ)、カリン・コノバル(モーリス)、アミア・ミラー(ノバ)、テリー・ノタリー(ロケット)、タイ・オルソン(レッド・ドンキー)、マイケル・アダム(スウェイトルカ)、トビー・ケベル(コバ)、ガブリエル・チャバリア(プリーチャー)、ジュディ・グリア(コーネリア)

生き残っている人間と猿との全面戦争の2年後。シーザーは猿たちと滝の裏側に砦を築き身を潜めて暮らしていた。人間側には冷酷非情な大佐が軍を率い、容赦のない攻撃をかけている。大佐の奇襲に遭い、シーザーの妻と息子が命を落としてしまった。大佐への憎悪に燃えたシーザーは、群れを新たな隠れ家へと移動させ、一人復讐のために旅立つつもりだった。シーザーを気遣うモーリスやロケットは、彼の気持ちを理解して同行を申し出る。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011)『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014)に続くシリーズ最終章。いつも冷静沈着なリーダーだったシーザーが家族を失って初めて悲しみと怒りで我を忘れてしまいます。アンディ・サーキスは猿の造形の下、迸る感情を見せて激しく観客の心を揺さぶります。最初に観た『猿の惑星』の着ぐるみからなんと進化したことでしょう。俳優の演技と共に、それぞれの造形に苦心してこられたモーション・キャプチャ―や美術のスタッフたちに拍手を送りたいです。
大佐役のウディ・ハレルソン、戦争のただなかにあって敵の猿にとっては冷酷非情な男ですが、彼は人間世界を救うリーダーでもあります。シーザーとは表と裏で背中合わせに立っているような役柄で、熱演でした。
最終章となる今回は、猿と人間を繋ぐ小さな出会いが用意されています。シーザーが産まれてから人間に受けた愛情を、今度は口のきけない少女が猿たちから受けることになります。シーザーと大佐との壮絶な闘いの対極にあり、観客にわずかな希望をもたらしてくれました。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/140分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
http://www.foxmovies.jp/saruwaku-g/
★2017年10月13日(土)全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする