2017年09月17日
僕のワンダフル・ライフ(原題:A Dog's Purpose)
監督:ラッセ・ハルストレム
原作、脚本:W・ブルース・キャメロン「野良犬トビーの愛すべき転生」(新潮文庫)
撮影:テリー・ステイシー、ASC
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:ブリット・ロバートソン(若き日のハンナ)、K・J・アパ(若き日のイーサン)、ジョン・オーティス、デニス・クエイド(イーサン)、ペギー・リプトン(ハンナ)、ジョシュ・ギャッドベイリー(ベイリーの声)
僕の名前はベイリー。ゴールデンレトリーバーの子犬だ。暑い日に車に閉じ込められて弱っていたところをイーサンに助けられた。それからずっと僕たちは一緒だ。イーサンが幸せになるように僕は頑張るんだと心に決めている。イーサンがハンナと恋人になれるよう応援、二人は同じ大学に進学が決まった。イーサンを嫉んだ友達のイタズラが大変な事態になってしまい、イーサンはアメフト選手の夢をあきらめ別の道へ進んだ。僕が元気づけてあげたいけど、遠くの大学に行ってしまった。犬は人間より早く年を取るので、とうとうイーサンとお別れの時がきてしまった。今のイーサンは幸せじゃない、それが心残りだった。
ところが僕はまた犬に生まれ変わった。今度はジャーマンシェパードの女の子だけどね。警察犬になって事件を解決し、殉職して…今度はコーギー犬に生まれてティナと名付けられ、飼い主の幸せを見届けてまた生まれ変わった。まだイーサンには会えない。
愛する飼い主に再会するために何度も生まれ変わるベイリーの人生、いや犬生。犬と過ごした経験のある方には号泣必至の作品です。愛犬と別れた日を思い出し、うちの●●もこうやって会いに来てくれないかしら、と思うはず。ハンカチ&ティッシュをお忘れなく。
少年→青年→壮年(老年?)と変わっていくイーサンと一緒に自分の人生も振り返ってしまいました。ここまで何匹の犬や猫たちになぐさめてもらったことか。自分は何をしてやったかしらと反省もしきりです。
ラッセ・ハルストレム監督のほかの作品に、やはり犬が登場する『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985年)『HACHI 約束の犬』(2009年)がありますのでもう一度見直したくなりました。(白)
2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/100分
配給:東宝東和
(C)2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC
http://boku-wonderful.jp/
★2017年9月29日(金)よりTOHOシネマズ 日劇他、全国ロードショー
ドリーム(原題:Hidden Figures)
監督:セオドア・メルフィ
原作:マーゴット・リー・シェッタリー
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
撮影:マンディ・ウォーカー
音楽:ハンス・ジマーほか
出演:タラジ・P・ヘンソン(キャサリン・G・ジョンソン)、オクタビア・スペンサー(ドロシー・ボ―ン)、ジャネール・モネイ(メアリー・ジャクソン)、ケビン・コスナー(アル・ハリソン)、キルステン・ダンスト(ビビアン・ミッチェル)
米ソが熾烈な宇宙開発競争をしていた1961年、ソ連が有人ロケットの打ち上げに成功し、出遅れたアメリカはマーキュリー計画を推進した。NASAの研究所には優秀な人材が集められ、多くの女性が計算係≠ニして働いていた。最先端のこの施設にも外界と同じく根強い人種差別が残っており、白人と黒人の場所は分かれ、黒人は管理職になれず、俸給にも差があった。
黒人女性ばかりの“西計算グループ”の仲の良い3人。ドロシーは職場の実質的なリーダーだったが、昇格も昇給もない。かけあうと白人上司ミッチェルは「仕事があるだけいいでしょ」とにべもない。この2人のやりとりに後も注目を。
キャサリンは、西グループから初めて東の宇宙特別研究本部に移動になる。山のような書類を目の前に積まれ、着々とこなしていくが、白人男性ばかりの職場には黒人用・女性用トイレもなく、仲間のいる西の端まで走らねばならない。少女のころから数学の天分を見せていた彼女は、上司のハリソンに認められ、難題を解き明かしてゆく。計算係の彼女が出した結果は全て白人男性の成果となるのだったが…。メアリーは技術部に配属され、エンジニアを目指すも、必要な学歴を身につけられるのは白人ばかり。黒人で、しかも女性には門戸が開かれていなかった。そしてある日、地球周回軌道を初めて飛ぶ予定の宇宙飛行士ジョン・グレンがNASAを訪れた。
この3人の素敵な女性たちは、実在した人たち。宇宙開発競争の時代、人種差別と男性優位の壁に阻まれながらも、卓抜な才能とスキルでNASAにおおいに貢献していきます。エンジニアを目指すメアリーが白人限定の学校に行くために、どうアプローチしたのか? 大型コンピューター(IBM)がNASAに入ってから、ドロシーが計算グループの存続を図るために何をしたのか?素晴らしい才能のある特別な人たちではありますが、ひたむきに仕事にうちこむだけでなく、それぞれが子育ても家事もする家庭人でもありました。つくづく「カッコイイ!!」。それなのに、ご当地のアメリカでさえ、あまり知られていなかったそうです。宇宙飛行士の後ろには技術と理論を支えた科学者や技術者が、その陰にはこうした女性たちがいました。原題は『Hidden Figures』(隠された人たち)。Figuresには人物、数字、など多くの意味があります。白人社会の背後にいて知られなかった彼女たちのことでもあり、彼女たちが見つけ出す数字のことでもあるのでしょう。
演じる女優3人が個性的でしかも可愛い! ジャネール・モネイはミュージシャンですが、『ムーンライト』ではシャロンを大切にするテレサ役。オクタヴィア・スペンサーは『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011)のメイド役がすぐに浮かびます。タラジ・P・ヘンソンはテレビが多いようでしたが、 ジャッキー・チェン版『ベスト・キッド』(2010)のジェイデン・スミスの母役です。
リサーチした実話をドラマとして仕上げていく構成、セリフの数々も巧みです(脚色賞ノミネート)。セオドア・メルフィ監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』の監督・脚本、『ジーサンズ はじめての強盗』の脚本を担当しています。今後が気になる監督さん。
同じような思いをしてきた働く女性たちは、自分を重ねて涙したはず。観終わったこちらも「やった!」とガッツポーズがしたくなる元気の出る映画です。久々にスカッとさせてもらいました。(白)
2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/127分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2016 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
★2017年9月29日(金)全国ロードショー