2017年07月21日

十年   英題:TEN YEARS

juunen.jpg

映画が製作された2015年から10年後の香港を、5人の若手監督が描いた5つの物語。 

第1話『エキストラ』監督:クォック・ジョン(郭臻)
第2話『冬のセミ』監督:ウォン・フェイパン(黄飛鵬)
第3話『方言』監督:ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)
第4話『焼身自殺者』監督:キウィ・チョウ(周冠威)
第5話『地元産の卵』監督:ン・ガーリョン(伍嘉良)

毎秋、香港で開催される中規模映画祭「香港亞洲電影節/ホンコン・アジアン・フィルム・フェスティバル」でワールド・プレミア上映され、同映画祭で2回上映された後、香港アートムービーの発信基地「百老匯電影中心/ブロードウェイ・シネマテーク」で単館公開。
口コミで動員を伸ばし、連日満席。その後、上映館数を6館に増やし、旧正月を挟んだ2016年2月12日までの8週間、香港映画としては異例の長期興行となった。製作費50万香港ドル(約750万円)のインディーズ映画の最終興行収入は、なんと600万香港ドル(約9,200万円)に。ついには、2016年の香港電影金像奨で最優秀作品賞を受賞した。

今年の7月1日で、中国回帰から20年を迎えた香港。50年間は「高度の自治」を保障する一国二制度を摘要したはずだったのに、すでにあやしい雲行き。『十年』で描いた2025年には、さらに中国本土との同化が進んでいるのではないかと危惧します。

一番印象に残ったのが、3つ目の物語『方言』。香港の人たちが本来使っていた広東語がどんどん隅に追いやられる中、普通語(中国で使われる標準中国語)が出来ないタクシー運転手の悲哀を描いた痛烈な作品。大陸から来た客から言われた行先がわからなくて、若い子から広東語読みの地名を教えられる。やがて、空港や主要ターミナルのタクシー乗り場には普通語が出来ないと入れなくなってしまう。そんなことが現実になる日もありえるかもと思わせられた一作。ほかの4作も、それぞれに考えさせられる物語でした。(咲)


配給:スノーフレイク
2015年/香港/広東語/DCP/ステレオ/104分
公式サイト:http://www.tenyears-movie.com/
★2017年7月22日(土) よりK's cinemaほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

夜明けの祈り (原題 Les innocentes )

320.jpg


監督:アンヌ・フォンテーヌ 製作:エリック・アルトメイヤー,ニコラ・アルトメイヤー
原作:フィリップ・メニヤル 脚本:サブリナ・B・カリーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ,アガタ・ブゼクシスター,アガタ・クレシャマザー 他

640.jpg


1945年12月のポーランド。赤十字に属する若きフランス人女医マチルドのもとに、シスターが助けを求めてやってくる。修道院を訪れたマチルドが目の当たりにしたのは、ソ連兵の蛮行によって身ごもり、信仰と現実の狭間で苦しむ7人の修道女だった。そこにある命を救う使命感に駆られたマチルドは、幾多の困難に直面しながらも激務の合間を縫って修道院に通い、孤立した彼女たちの唯一の希望となっていく。

641.jpg


2017年セザール賞主要4部門ノミネート、2016年サンダンス映画祭公式上映作品、2017年フランス映画祭出品、アンヌ・フォンテーヌ監督の最新作。実在したフランス人女医マドレーヌ・ポーリアックの物語。1945年終戦後のソ連軍による蛮行はポーランドに限ったことではないが本当に非道… 妊娠してしまった修道女たちの命を救うことに命をかける女医マチルド。シスター・マリアが「祈りとは24時間の疑問と1分の希望」と言ったセリフが忘れられない… 絶望的な修道院の環境とは裏腹に、静謐なるポーランドの風景にも心打たれます。 (千)

642.jpg


(C)2015 MANDARINCINEMA AEROPLANFILM MARSFILMS FRANCE2CINEMA SCOPEPICTURES
2016/フランス・ポーランド合作/配給ロングライド
公式サイト http://yoake-inori.com/
★8月5日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開




posted by chie at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月16日

ローサは密告された (原題 Ma'Rosa)

320.jpg

監督:ブリランテ・メンドーサ 製作:ロレート・ラリー・カスティーリョ
製作総指揮:ブリランテ・メンドーサ 脚本:トロイ・エスピリトゥ
出演:ジャクリン・ホセ,フリオ・ディアス 他

640.jpg


ローサはマニラのスラム街の片隅で小さな雑貨店を家族で経営している。家計のため、少量の麻薬を扱っていたが、ある夜、密告からローサ夫婦は逮捕される。警察による麻薬売人の密告要求、高額な保釈金… ローサの子どもたちは、両親の自由を取り戻すため奔走する。

640.jpg


主役ローサを演じるジャクリン・ホセは本作で第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得。監督は第3黄金期と呼ばれるフィリピン映画界の鬼才ブリランテ・メンドーサ。私的にはラヴ・ディアス監督よりは好きかもです、ハイ。現在、同国第16代大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏は「麻薬を完全に撲滅する。逆らう者が望むなら、与えるのは死だ」の発言どおり「麻薬撲滅」のもと警察、自警団による超法規的な処分をおこなっている… しかし一般市民は貧困のせいで麻薬密売に手を出さざるをえない… そんなフィリピンの現在が垣間見れる作品に仕上がってました。なんとなく終始、画面がスモークしているのもマニラって、きっと日々湿度が高そうです… フィリピンは訪れたい国のひとつだったけど色んな意味で当分ムリそう…。 (千)

640.jpg


(c)sari-sari store2016
2016/フィリピン/配給ビターズ・エンド
公式サイト  http://www.bitters.co.jp/rosa/
★7月29日(土)より渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開



posted by chie at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | フィリピン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月15日

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣(原題:Dancer)

dancer.jpg

監督:スティーブン・カンター
製作:ガブリエル・ターナ
「Take Me To Church」演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル
出演:セルゲイ・ポルーニン、イーゴリ・ゼレンスキー、モニカ・メイソン

セルゲイ・ポルーニンは1989年ロシア ウクライナ生まれ。早くからバレエの才能を見出され、家族ぐるみの応援を受ける。一人息子にバレエを続けさせるために父も祖母も海外へ働きに出た。母は息子のために良き師と学校を探し、セルゲイもよく応えてバレエ一筋に精進してきた。キエフ・バレエ学校を経て、ついに英国の名門ロイヤル・バレエ団への留学を果たす。19歳でロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに昇りつめながら、2年後、人気絶頂で電撃退団してしまう。体中に青いタトゥーを入れ、バレエ界きっての異端児と呼ばれた彼のバレエへの思い、迷い、失意のはてに再生するまでを紹介するドキュメンタリー。

映像はほぼ年代順。貴重なホームビデオの「ポーズを決めて得意そうな愛くるしい少年時代、家族との別れ、留学中の厳しい練習風景、友人との悪ふざけ」などなど。本人や関係者へのインタビューに加え、華やかな舞台映像、MV撮影の舞台裏、恩師や家族との再会のようすも盛り込まれています。2014年、ダンスと決別しようと踊ったホージアのMV「Take Me To Church」(演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル)は、世界中で注目の的となりました。現在の視聴回数は2千万回を超えています。最後のつもりの映像が再起へ導くきっかけとなったとは、なんともドラマチックです。
本誌100号に来日時の会見、藝大奏楽堂プレミアイベントのレポート記事を掲載しています。(白)


2016年/イギリス,アメリカ/カラー/85分
配給:アップリンク、パルコ
http://www.uplink.co.jp/dancer/
(C)British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016
★2017年7月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

☆マスコミ向けプレス(非売品)を抽選で3名様にプレゼント!
(配給・宣伝のアップリンクより提供)
ご希望の方はシネマジャーナルfacebookに「いいね!」を押して「プレスシート希望」とメッセージをお寄せください。facebookをご利用でない方は、右の封筒アイコン“メッセージを送る”から「プレスシート希望」とご連絡くださいませ。
7月31日締め切り。当選の方のみご連絡いたします。

◆セルゲイ・ポルーニン 写真展[ビギニング・オブ・ジャーニー]
写真/ハービー・山口
会場:GALLERY X BY PARCO(渋谷区宇田川町13-17)
会期:7月15日(土)〜7月23日(日)11:00〜20:00
入場料:無料
協力:イルフォード・ジャパン株式会社
IMG_3746s.jpg

お問い合わせ:03-6712-7505(GALLERY X BY PARCO)
公式サイト:http://www.parco-art.com/web/gallery-x/exhibition.php?id=1115
posted by shiraishi at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハートストーン(原題:Hjartasteinn)

heartstone.jpg

監督・脚本:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドル・エイナルソン(ソール)、ブラーイル・ヒンリクソン(クリスティアン)、ディルヤゥ・ワルスドッティル(ベータ)、カトラ・ニャルスドッティル(ハンナ)

ソールとクリスティアンは幼なじみで、何をするのも一緒の大親友だった。ソールは母親と個性的な二人の姉と暮らしている。母親がほかの男に女の顔を見せるのが嫌でたまらない。クリスティアンは支配的な父親を怖れ、気弱な母親は夫に従うばかりだ。けれどもソールにはそんなところは見せず、いつも優しい。
ソールは同級生の少女ベータが気になっているが、気持ちを伝えられない。クリスティアンが後押ししてくれて、少し前進することができた。ベータの友達のハンナがクリスティアンに想いを寄せて、4人は一緒に出掛けるようになる。

アイスランドから届く映画を何本か観ましたが、どれも心に沁みてきました。思春期にさしかかった少年たちのこの物語もその一つ。チラシ画像のこちらを見据える少年がソール、彼を見守るようなまなざしを向けているのがクリスティアンです。アイスランドを地球儀で見ると(南北が広がっているメルカトル図法の地図では大きくなってしまいます)北大西洋のグリーンランド寄りにぽつんとある島国(北海道と四国を足したくらいの広さ)です。約31万人が住んでいます。人口密度は3人/km2。
自然だけは豊かな小さな漁村で、少年たちは思春期を迎え、大人に近づいていきます。しかし大人の世界に楽しそうな要素が見当たりません。
小さな村では人の出入りが少なく、どの人も長い付き合い、家の事情もお互いに知られています。そういう村で異分子とされたら、住み続けることができません。人に埋もれてしまう都会の孤独も辛いでしょうが、狭い社会で好奇と嫌悪の視線にさらされる辛さも相当なものでしょう。通らねばならない道だと思っても、ソールとクリスティアンの友情と愛情の切なさに胸が痛みました。出演している少年たちの情報がなにもありませんが、1982年生まれの監督の青春時代の思い出が色濃く反映されているそうです。(白)


2016年/アイスランド、デンマーク/カラー/シネスコ/129分
配給・宣伝:マジックアワー
http://www.magichour.co.jp/heartstone/
★2017年7月15日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | アイスランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする