2017年06月25日

ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女   英題:THE LAST PRINCESS

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監督:ホ・ジノ(『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』『四月の雪』『きみに微笑む雨』)
出演:ソン・イェジン(『四月の雪』『私の頭の中の消しゴム』)、パク・ヘイル(『殺人の追憶』、ユン・ジェムン、ペク・ユンシク、ラ・ミラン、戸田菜穂

「朝鮮」から「大韓帝国」へと国号が変わり、李氏朝鮮第26代国王・高宗(コジョン)が初代皇帝の座についていた日本統治時代。高宗(コジョン)の娘である徳恵翁主(トッケオンジュ)の激動の人生を描いた物語。
7歳の時、目の前で父を毒殺される。わずか13歳で日本に留学させられ、大学卒業後も祖国への帰国を許されない日々を過ごす徳恵(ソン・イェジン)の前に、かつて父が結婚相手に考えていたジャンハン(パク・ヘイル)が現われる。大日本帝国軍少尉である一方、密かに朝鮮独立運動に尽力していた。徳恵と対馬藩主の子息・宗武志(キム・ジェウク)との政略結婚が決まり、残された道は亡命のみ。甥のイ・ウ王子(コ・ス)やジャンハンが上海臨時政府に亡命させようとするが失敗する。その時を最後に徳恵とジャンハンは引き離されてしまう。
宗武志と結婚し、娘も出産するが、やがて徳恵は心を病んで入院する。そして、日本敗戦。だが、韓国初代大統領となった李承晩は徳恵の帰国を許さなかった。1961年、朴大統領が就任し状況が変わる。新聞記者となったジャンハンは、徳恵を帰国させようと日本に赴く・・・

日本統治時代、政略結婚で韓国の王室に嫁がれた方子(まさこ)さまのことは知っていましたが、逆の立場の皇女さまがおられたことを、この映画を通じて初めて知りました。実は、韓国でも徳恵翁主のことは、あまり知られていないそうです。一方、方子さまは奉仕活動もされて、韓国ではいいイメージで受け止められて、尊敬されている方と監督から伺いました。宮家のご出身で気品のある方子さまを演じた戸田菜穂さんも気品があって適役だったと監督。戸田菜穂さんは、日本でリメイクされた『八月のクリスマス』に出演していて、ご縁があるとも監督は語りました。★監督インタビューは本誌100号 および 特別記事でお届けします。

徳恵翁主の人生を、ドラマティックに脚色して描いていますが、日韓併合時代を生きた人たちの様々な運命にも思いの至る物語です。(咲)


2016年/韓国/127分/カラー/5.1chデジタル
配給:ハーク
公式サイト:http://www.lastprincess.info
★2017年6月24日(土) シネマート新宿ほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ふたりの旅路   原題:MAGIC KIMONO

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監督・脚本・編集:マーリス・マルティンソーンス
出演:桃井かおり、イッセー尾形、アルトゥールス・スクラスティンス、マールティンシュ・シルマイス、アリセ・ポラチェンコ、木内みどり、石倉三郎

神戸に住むケイコ(桃井かおり)は、不慮の事故により娘を亡くし、さらに阪神・淡路大震災ですべてを失う。夫も行方不明だ。それ以来、自分の殻に閉じこもって1人淋しく暮らしてきた。いつしか20年の月日が流れ、ケイコは神戸の姉妹都市であるラトビアの首都リガで開催される着物ショーに出演することになる。1枚の黒留袖を携えて訪れたリガの町で、ケイコは震災で行方不明になっていた夫(イッセー尾形)と再会する・・・

神戸とリガの姉妹都市提携40周年を記念しての共同製作。
神戸の高架下商店街、元町駅山側付近、摩耶山中腹にある灘丸山公園から眺めた神戸港など、神戸の町の断片が出てきて、ちょっと懐かしい。(神戸の東端で育った私には、どちらかというとそれほど馴染みのない景色だけど!) リガの町並みも美しい。

行方不明になった夫との再会は現実なのか夢なのか・・・ 喪失感が幻想を生んだのでしょうか。愛する人を突然失った悲しみは、時がぬぐいさってくれるものでないことを、つくづく感じさせられました。(咲)


2015年/ラトビア・日本/89分/カラー
配給:エレファントハウス
公式サイト:http://www.futarimovie.com
★2017年6月24日(土)より、渋谷ユーロスペース、丸の内TOEI他全国順次公開
posted by sakiko at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ありがとう、トニ・エルドマン   英題:Toni Erdmann

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監督: マーレン・アデ
出演: ペーター・ジモニシェック、サンドラ・ヒュラー

イネスは、大手コンサルタント会社の社員としてブルガリアの首都ブカレストのオフィスで働くキャリア・ウーマン。たまにドイツの実家に帰っても、父と話すこともなく仕事の電話ばかりしている。そんなイネスを心配して、ある日、父が前触れもなくブカレストにやって来る。大手石油企業との契約更新をかけた重要プロジェクトで頭がいっぱいのイネスは、そんな父をかまっていられない。仕事上のレセプションに父であることを隠して同席させたりするが、いつになく元気のない父。ようやく愛犬が亡くなったことを知るイネス。やがて父はドイツに帰っていくが、ほどなくして、トニ・エルドマンと名乗る男がやって来る。出っ歯の入れ歯をして変装した父だった・・・

トニ・エルドマンは、仕事でいっぱいいっぱいのイネスの前に、いろんな姿でふっと現われます。ほんとに神出鬼没! 中でも、2メートルはある毛むくじゃらの「クケリ」という幸せを呼ぶ精霊になったトニ・エルドマンは最高! 娘を思う親心にほろっとさせられます。
なんだかよくワケがわからないけど、トニ・エルドマンが現われるたびに、笑わせられました。(咲)


本年度アカデミー賞・外国語映画賞ノミネート

2016年/ドイツ=オーストリア/カラー/162分/5.1ch/1:1.85
配給: ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/tonierdmann/
★2017年6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿 武蔵野館ほか、全国順次ロードショー!
posted by sakiko at 20:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月24日

ラオス 竜の奇跡(原題:サーイ・ナームライ)

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監督:熊澤誓人
脚本:熊澤誓人、守口 悠介
撮影:金子正人
音楽:栗コーダーカルテット
出演:井上雄太(川井)、ティダー・シティサイ(ノイ)

1960年(昭和35年)ラオス。ダム建設の調査のため日本からやってきた青年・川井。調査中の事故で行方不明となったが、首都ビエンチャンは内戦が勃発。川井の捜索は打ち切られてしまう。
2015年のラオス。ノイは家族との軋轢で家を飛び出し、憧れていた都会生活を始めていた。友人に誘われ湖の観光に来たが、いつしか友人とはぐれてしまう。アイフォンも不通になり、困っているノイを村人が世話をしてくれた。話が食い違うのを怪訝に思っていたが、タイムスリップして1960年に来てしまったらしい。半信半疑のまま村で暮らすしかないノイは、ある日川のほとりに流れ着いた川井を見つける。

ラオスと日本、初の合作映画です。まず、ラオスってどこにあるの?というくらい馴染みのない国でした。インドシナ半島の内陸部にあり、5つの国(ミャンマー、中国、ベトナム、タイ、カンボジア)と国境を接しています。本州くらいの広さに約700万人が暮らしています。東南アジアで海に面していない唯一の国で、国の7割が山岳地帯と高原。都市部は急激に開発が進んでいます。
この映画にはまだ開発の波が来る前の、緩やかな川が恵みをもたらす農村の風景と、近隣との絆や風習を大切にする暮らしがありました。祭りのようすなどなんだか懐かしくほっこりします。
タイムスリップして、知らなかった時代の人や暮らしにふれ、これまでの自分を振り返る、少しだけいい方向に変わるというのはよくある設定ですが、全然知識のなかったラオスが舞台なのが新鮮でした。最初何かと文句の多いノイはほんとに今どきの女の子で、これはいずこも同じ。
川井役の井上雄太さんは、イケメン+長身でモデル経験もあり。大卒後サラリーマンだったのが俳優の道が諦められず、転身したのだそうです。これが初主演ということで注目しています。これからもぜひ精進してくださいね。(白)


2016年/日本・ラオス合作/カラー/シネスコ/112分
配給:アークエンタテインメント
http://saynamlai.movie/
★2017年6月24日(土)有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いつまた、君と 何日君再来(ホーリージュンザイライ)

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監督:深川栄洋
原作:芦村朋子
脚本:山本むつみ
撮影:石井浩一
音楽:平井真美子
主題歌:高畑充希「何日君再来」
出演:尾野真千子(芦村朋子)、向井理(芦村吾郎)、岸本加世子(芦村真美/現代)、駿河太郎(高杉幹夫)、イッセー尾形(芦村忠)、成田偉心(芦村理)、野際陽子(芦村朋子/現代)

昭和15年。3年文通を続けていた芦村吾郎と初めて会った朋子は、南京に戻る予定だという吾郎に「共に生きたい」という思いがわきあがる。結婚して子供を授かるも戦争は激化。上海で終戦を迎えた二人は、幼い子供たちを連れてようやく日本に引き揚げてきた。身を寄せた朋子の実家で、父に罵倒され慣れない農作業に苦労する吾郎に、朋子は実家を出て自分たちだけで暮らそうという。落ち着いた暮らしを求めて一家は茨城、福島、大阪へと移り住んでいく。まっすぐで誠実な吾郎をたびたび不運が襲うが、2男1女に恵まれ、朋子は弱音を吐かず明るく支えていく。

俳優の向井理さんが大学生のころ祖母の芦村朋子さんの手記をまとめ、家族や親せきと自費出版。7年かけて映画化にこぎつけたもの。手記には戦前の祖父母の出会いから終戦後の厳しい生活、夫を失って女手一つで三人の子を育てあげるまでが書かれていました。それはそのまま多くの日本人たちの暮らしや思いと重なります。街の風景やこまごました家の作り、調度品や衣服、子どもたちの遊ぶようすを懐かしく思い出す人も多いはずです。いかにも昭和の顔立ちの子どもをよく探し出されたこと!
向井さんが若き日の実直な祖父・吾郎を、いつも笑顔だった祖母・朋子を尾野真千子さんが演じています。つい先ごろ亡くなられた野際陽子さんが現代の朋子さん役で出演しています。タイトルの「何日君再来」は吾郎と朋子の思い出の歌で、上海で大ヒットし日本でも多くの歌手に歌われました。私にはテレサ・テンの歌ですが、この映画のエンドロールでは高畑充希さんが澄んだ歌声を聞かせてくれています。(白)


2017年/日本/カラー/ビスタ/115分
配給:ショウゲート
(C)2017「いつまた、君と 〜何日君再来〜」製作委員会
http://itsukimi.jp/
★2017年6月24日(土)より、TOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする