2017年04月02日

LION ライオン 25年目のただいま(原題:Lion)

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監督:ガース・デイヴィス
原作:サルー・ブライアリー“25年目の「ただいま」”静山社刊
脚本:ルーク・デイヴィス
出演:デヴ・パテル(サルー)、ルーニー・マーラ(ルーシー)、ニコール・キッドマン(スー)、デビッド・ウェンハム(ジョン)、サニー・パワール(サルー幼少期)

インドで生まれたサルーは、オーストラリアの養父母に引き取られ、たっぷりの愛情を注がれて大人になった。恋人と幸福に暮らしていたサル―だったが、あるきっかけで忘れていた古い記憶が蘇る。インドの貧しい田舎町に生まれたサルーは、兄を手伝って石炭拾いをして日銭を稼いでいたが、5歳の時兄とはぐれて回送列車の中に閉じ込められてしまった。長い間走行して着いたのは故郷からはるか遠くの都会コルカタ。言葉も通じず、帰る道もわからないまま放浪した末、施設に入れられ養子縁組でオーストラリアに来たのだった。育ててくれた両親への愛情と感謝はあるけれども、インドで自分を探しているはずの家族に会いたい思いは止められない。サルーはわずかな手がかりを頼りにGoogle Earthでインドの生まれ故郷を探し出そうとする。

実話が元、というのにびっくり!“Google Earth”は世界中どこの街へでも画像がありさえすれば行けるので、大好きです。観光地も楽しいですが、離れている故郷や友人知人の家をときどき見ています。これを昔迷子になった人が利用するなんて!!結果はわかっているのですが、それまでの過程と演じる俳優たちが素晴らしいので、引き込まれて観てしまいました。
デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンを差し置いて目を奪われるのが、サル―の子ども時代を演じたサニー・パワール。何千人もの候補者の中から見出されたサニー君は、これまで観たいろんな子役の中でもダントツに吸引力があります。たった5歳で迷子になったサルーの心細さ、家族を恋いながら都会でサバイバルする強さと賢さも十二分に見せていました。自分や子供や孫が5歳で同じ目に遭ったら?
サル―の人生は、なんとも数奇で奇跡的でした。エンディングロールもぜひご覧ください。(白)


友人から、Google Earthで故郷を探し出せるかもと言われたサルーは、当時の列車の時速と、乗っていた時間から、探す範囲をまず割り出しました。記憶にあるのは、列車に乗り込んだときに見かけた給水塔だけ。こつこつと、給水塔がそばにある駅をチェックし、なんと、5年かかって列車に乗り込んだ駅を探し当て、ついに実母とも嬉しい再会を果たすことができました。町の名前も自分の名前も、少し間違って記憶したのに、それでも、見つけ出すことができたのは、ほんとにすごい。
タイトル『ライオン』の意味するところや、兄クドゥのその後の人生など、映画の最後に明かされるのでお見逃しなく。

成人したサルーを演じているのは、『スラムドッグ$ミリオネア』での主演が印象的なデヴ・パテル。その後、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』では、ホテルの若きオーナー、『奇蹟がくれた数式』ではインドの数学者、シュリニヴァーサ・ラマヌジャンを演じています。本作では、ぐっと精悍な姿を見せてくれています。(咲)


2016年/オーストラリア/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/119分
配給:ギャガ
(C)2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia
http://gaga.ne.jp/lion/
★2017年4月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
posted by shiraishi at 18:10| Comment(0) | TrackBack(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夜は短し歩けよ乙女

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監督:湯浅政明
原作:森見登美彦
脚本:上田誠
アニメーション制作:
音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION
出演:星野源(先輩)、花澤香菜(黒髪の乙女)、神谷浩史(学園祭事務局長)、秋山竜次(パンツ総番長)、中井和哉(樋口師匠)

京都のとある街。大学のクラブの後輩“黒髪の乙女”に恋してしまった“先輩”は積極的なアプローチができず、“るべくのじょのにとまる”という「ナカメ作戦」を毎日実践する。しかし彼女はそんな思惑に気づかず「先輩、奇遇ですね!」というばかり。仲間の珍事件に巻き込まれながら時は過ぎて行くが、彼女との距離はなかなか縮まらない。

アニメをよく観ているほうだと思いますが、湯浅政明監督の作品はこれがお初でした。プロフィールによると、同じ原作者の森見登美彦さんの「四畳半神話大系」も、湯浅監督のアニメーションで2010年に深夜枠のノイタミナで放映されていました。映画「クレヨンしんちゃん」の設定・デザインにも長く関わっていらしたようです。シンプルな絵柄や摩訶不思議なストーリーが共通しているかな。
本作では、どこにでもいそうな地味キャラの“先輩”を今人気の星野源さんが声をあてています。彼と黒髪の乙女のほかは、かなり個性的な登場人物だらけのお話。中でも出色は“パンツ総番長”、声は秋山竜次さん。CMで初めて見たときは独特のねっとり感に目が釘付けになりました。ロバート秋山という人気の芸人さんだったんですね。もし同じ配役での実写映画ができたら、そちらも面白そうです。(白)


2017年/日本/カラー/ビスタ/93分
配給:東宝映像事業部
(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会
http://kurokaminootome.com/
★2017年4月7日(金)全国公開
posted by shiraishi at 15:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

レゴバットマン ザ・ムービー(原題:The LEGO Batman Movie)

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監督:クリス・マッケイ
脚本:セス・グラハム=スミス
声の出演:ウィル・アーネット(バットマン/ブルース・ウェイン)、マイケル・セラ(ロビン/ディック・グレイソン)、レイフ・ファインズ(アルフレッド)、ロザリオ・ドーソン(バッドガール/バーバラ・ゴードン)、ザック・ガリフィアナキス(ジョーカー)

日夜街の平和のために戦うヒーロー、バットマン。彼は大富豪で自信家で頭脳明晰だったが、実は寂しがり屋の“超かまってちゃん”だった。帰宅してブルースに戻ると独りぼっち。執事のアルフレッドは「家族をつくったら」というのだけれど、バットマンの大ファンだという少年ディックもうざいとしか思えない。そんなとき「バットマンの最強の敵」と自負するジョーカーがバットマンに黙殺されて怒り心頭、世界征服を狙い悪人軍団を率いて闘いを挑んできた。

背景も登場人物も全てレゴでできたフルCGアニメーション。小さな顔に描かれた表情がちょっと変化するだけなのに、ちゃんと感情豊かに見えるところがすごい!どれもこれもカラフルなので、最初は目がちかちかするけれど、そのうち慣れます。
明るくて能天気+周りをウロチョロするパンツ一丁(パンイチというそう)の少年も可愛いし、作品を越えて登場するたくさんの悪役も「レゴだとこうなるのか」な造形に感心しきりでした。レゴ体験がある人は帰って作ってみたくなるようなメカもどっさり出てきます。“俺様キャラ”のバットマンがしだいに仲間とつながり、その大切さを知っていくストーリーは、お子さんと一緒に大人も楽しめます。ご家族連れでどうぞ。(白)


2017年/アメリカ/カラー/105分
配給:ワーナー・ブラザース
(c)The LEGO Group. TM(c)&DC Comics.(c)2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
http://wwws.warnerbros.co.jp/legobatmanmovie/
★2017年4月1日(土)より公開
posted by shiraishi at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リトル京太の冒険

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監督・脚本・編集:大川五月
撮影:千葉史朗
出演:土屋楓(京太)、清水美沙(絹子)、アンドリュー・ドゥ(ティム先生)、木村心結(詩織)、眞島秀和(篤史)、ステファニー・トゥワイフォード・ボールドウィン(モリー)

小学生の京太は母の絹子と二人暮らし。大事なアイテムは蛍光色の防災頭巾。震災以来手放せなくなって毎日かぶっている。もう誰もかぶろうとしないのが不思議だ。よれよれになった英単語帳は英語のティム先生と話したくていつも持ち歩き、気になった単語はすぐに書きとめている。ティム先生は震災のときに故郷に帰ってしまったけれど、また桐生に戻ってきてくれて京太は大喜び。

大川監督は2012年に桐生市の要請で短編『京太の放課後』を製作しました。好評を得て続編『京太のおつかい』も誕生、本作は初めての長編になります。小さかった京太や詩織が作品の中で大きくなっていて、5年の歳月が目に見えます。桐生市・みどり市でオールロケ、山や街並みの背景が美しく、住まいも登場人物が今もそこにいるような感じがします。子役には脚本を渡さずに自然な反応をとらえたそうで、お芝居くさいところが全くありません。京太が知る限りの英単語でティム先生と会話するシーンに、思わず頬がゆるみます。話したい気持ちがあれば通じるものなんだよね〜。
京太が「safe(安全)」のよりどころにしている防災頭巾、当時は誰もが真剣だったはず。時間が経ったからといって忘れてしまっていいのか、と自問自答しました。(白)


2016年/日本/カラー/82分
配給:日本出版販売
(C)2016 Little Neon Films
http://www.littleneonfilms.com/littlekyota

★2017年4月1日(土)よりシアターイメージフォーラムにて公開
posted by shiraishi at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

標的の島 風(かじ)かたか

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(C)『標的の島 風かたか』製作委員会

3月11日(土)より沖縄・桜坂劇場にて
3月25日(土)より東京・ポレポレ東中野にて 他全国順次ロードショー
公開劇場紹介チラシ
http://www.tongpoo-films.jp/Kazi-Tokyo-Flyer-N.pdf

監督・ナレーション 三上智恵
プロデューサー 橋本佳子・木下繁貴
撮影監督 平田守
編集 砂川敦志

「標的の島」とは、沖縄のことではない。それはあなたが暮らす日本列島のこと


この作品は、東村・江のヘリパッド問題を描いた『標的の村』、オスプレイ配備に抵抗する県民の姿を描いた『戦場ぬ止み』と、沖縄の米軍基地問題を描き続けている三上智恵監督によるドキュメンタリー。
沖縄では米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画による新基地建設、高江のオスプレイのヘリパッド建設、そして宮古島、石垣島の自衛隊配備とミサイル基地建設などさまざまな問題を抱え、反対派の住民たちによる激しい抵抗、警察や機動隊との衝突が続いている。
そんな現実を描きながら、沖縄の文化や伝統、県民性も浮き彫りにし、なぜ沖縄の人たちがこの基地建設に反対するに至ったのかということをわかりやすく描いている。
2016年6月、沖縄県那覇市で行われた米軍属女性暴行殺人事件の被害者を追悼する県民大会で、稲嶺進名護市長は「我々は、また命を救う“風かたか”になれなかった」と言い、その言葉をキーワードにしている。「風(かじ)かたか」とは風よけ、防波堤の意味だという。
たくさんの沖縄県民の反対の声を黙殺した辺野古への新基地建設、全国の警察から1000人もの機動隊を投入して高江で強行されるオスプレイのヘリパッド建設。負傷者うあ逮捕者を出しながら、激しい抵抗が続いている。宮古島、石垣島ではミサイル基地建設と自衛隊配備が進行していることも描かれる。
これは日本列島と南西諸島を防波堤にして中国を軍事的に封じ込める、「エアシーバトル構想」というアメリカの戦略の一環であり、日本を守るためではなく、基地があれば軍事的な標的になる。それは太平洋戦争中の沖縄自身が体験してきたこと。沖縄の人たちはそれを実感しているからこそ、基地を作ること、増強することに反対してきた。それらを映画は映し出す。

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(C)『標的の島 風かたか』製作委員会


三上監督の作品は沖縄への愛に満ちている。愛ゆえに沖縄を蹂躙し、支配しようとする権力に抵抗する。東京生まれだが、両親の沖縄への転勤により住まいを移したことがきっかけで、民族学への興味が沖縄に向いたと語っていた。沖縄の人たちの基地への抵抗を描いた作品はいくつもあるけど、三上監督の作品は、単に抵抗する姿だけを描くのではなく、なにゆえに沖縄の人たちはこういう行動をしているということを描く。それこそが、本土の人たちへのメッセージになっていると伝わってくる(暁)。

公式サイト http://hyotekinoshima.com/
協力 沖縄タイムス社、琉球新報社
製作協力 沖縄記録映画製作を応援する会
製作 DOCUMENTARY JAPAN、東風、三上知恵
2017年/119分/DCP・BD/16:9/日本/ドキュメンタリー

シネマジャーナルでは『標的の村』公開時に三上監督にインタビューしています。
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hyoteki/
posted by akemi at 09:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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