2017年04月16日

草原の河  原題:河   英題:River

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監督・脚本:ソンタルジャ
出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテン

広大なチベット高原で暮らす6歳の少女ヤンチェン・ラモ。春のはじめ、父グルのバイクの後ろに乗って、祖父に会いに行く。祖父は村から離れた洞窟に篭って仏教の修行をしていて、村人から行者さまと呼ばれ尊敬されている。でも、父は4年前の出来事が許せないと言って会いたがらない。重い腰をあげて出かけたが、凍った河を走って氷が割れてお見舞いの品が水浸しになってしまう。手ぶらでは会えないという父の頼みで、ヤンチェンは一人で祖父に会いにいく。
ある日、母羊が狼に襲われる。遺された子羊にジャチャと名づけて母親代わりをするヤンチェン。一方、母のお腹に赤ちゃんが宿ったことを知ったヤンチェンは、お母さんを独占できなくなってしまうと面白くない・・・

海抜3000メートルを越える厳しい自然環境の中で半農半牧の暮らしを営むチベットの家族の物語。
少女ヤンチェン・ラモの仕草が、とにかく可愛い。子羊に、「ジャチャ、ジャチャ」と呼びかけながらミルクをあげるところなど絶品。上海国際映画祭2015で最優秀女優賞を受賞しています。
実は、彼女ありきで出来たのが本作。ソンタルジャ監督が、初監督作品『陽に灼けた道』(2011年)発表後、次は子どもが主人公の映画を撮りたいと考えていた時に、故郷の青海省同徳県で出会ったのが遠い親戚であるヤンチェン・ラモ。彼女を軸に、映画を撮りながら脚本を書いたそうです。
子羊や生まれてくる赤ちゃんへのヤンチェンの思いだけでは物足りないと登場させたのがお祖父さん。文革で一度僧衣を脱いだけれど、改革解放の時代になって、再び僧衣を着て修行をしているという人物。ヤンチェンの家を訪ねてくる母方のおじさんも、文革前にはお祖父さんと同じお寺で学んでいた設定で、かつては一家に一人はお寺で修行していたことを思い起こしました。
撮影も、ヤンチェン・ラモの実際の家族の牧草地やテント、監督の実家などで行っています。チベット人であるソンタルジャ監督だからこそ描けた、チベットの人たちのリアルな姿。変わりゆくチベットの人たちの暮らしを映画に留めた意義は大きいと思います。(咲)


2015年、第28回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で『河』のタイトルで上映。
チベット人監督作品として、日本で初めて劇場公開される映画。

『草原の河』公開記念 二つのイベント
http://www.tufs.ac.jp/event/tufs_cinema_20170405.html

◆TUFS Cinema チベット映画特集(@東京外大府中キャンパス)
2017年4月15日(土)12:30〜 
『ティメー・クンデンを探して』 『オールド・ドッグ』
いずれも監督:ペマ・ツェテン、撮影:ソンタルジャ

2017年4月22日(土)12:30〜
『チベット牧畜民の一日』撮影:カシャムジャ
『陽に灼けた道』監督:ソンタルジャ
トークイベント(1作目上映後)
「東北チベットの暮らしとソンタルジャの世界」
三浦順子(翻訳家)×星泉(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
司会:武井みゆき(映画配給会社ムヴィオラ代表)

◆『草原の河』公開記念チベット映画傑作選〜ソンタルジャとの出会い〜
@大阪第七藝術劇場
5月6日(土)〜12日(金)

2015年/中国/チベット語/98分/DCP/ヴィスタサイズ
配給:ムヴィオラ
公式ページ:http://moviola.jp/kawa/
★2017年4月29日(土) 岩波ホール他全国順次公開
posted by sakiko at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

3月のライオン 後編

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監督:大友啓史
原作:羽海野チカ「3月のライオン」白泉社刊
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
撮影:山本英夫
出演:神木隆之介(桐山零)、有村架純(幸田香子)、倉科カナ(川本あかり)、染谷将太(二海堂晴信)、清原果耶(川本ひなた)、新津ちせ(川本モモ)、佐々木蔵之介(島田開)、加瀬亮(宗谷冬司)、伊勢谷友介(甘麻井戸誠二郎)、伊藤英明(後藤正宗)、豊川悦司(幸田柾近)

零が川本家の三姉妹に出会い、安らげる場所を得てから1年。将棋界では獅子王戦トーナメントがせまっていた。養父である幸田は引きこもりの息子歩に突き飛ばされて頭に怪我を負い、不戦敗となった。後藤の妻の容態は悪化し、難病を抱える二海堂も体調は良くない。生真面目な島田は、故郷の人々からの期待に胃を痛めていた。一方、川本家では、家族を捨てて失踪していた父の誠二郎が突然戻って来る。

前編から1年後の桐山零と、彼をめぐる人々を描いた後編。前にもましてエピソードが数多く詰め込まれているので、140分もあっというまでした。連続ドラマならもっとゆったり描けたでしょうに、関係者のみなさまご苦労様と言いたいです。
零がトーナメントをどう制していくのか?将棋の勝負だけでなく、自分一人生きるのでいっぱいだったこれまでと違い、大切な人を守りたいと願う零が見られるこの後編もお見逃しなく。(白)


2017年/日本/カラー/シネスコ/140分
配給:東宝,アスミック・エース
(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会
http://3lion-movie.com/
★2017年4月22日(土)全国ロードショー

“3月のライオン 映画とアニメの展覧会”も開催中
2017年4月1日(土)〜4月30日(日)
西武渋谷店 モヴィーダ館 6階、7階
詳細はこちら
posted by shiraishi at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メットガラ ドレスをまとった美術館(原題:The First Monday in May)

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監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター、アンドリュー・ボルトン、ジョン・ガリアーノ、カール・ラガーフェルド、ジャン=ポール・ゴルチエほか

ニューヨークのメトロポリンタン美術館(MET)では、毎年服飾部門主催のファッションとアートの展覧会が開催される。2015年のテーマは「鏡の中の中国」。一般公開の前にお披露目される“メットガラ”のレッドカーペットは、テーマに沿ったゴージャスな衣装に身を包んだセレブたちで賑わう。年々豪華になり、ファッション業界最大のイベントとなっている。アナ・ウィンター、MET服飾部門キュレーターのアンドリュー・ボルトンを中心に、8ヶ月にわたってスタッフは奔走。準備に忙殺される日々と当日の舞台裏を追ったドキュメンタリー。

『プラダを着た悪魔』のモデルと言われるファッション誌「ヴォーグ」のアナ・ウィンター、キュレーターのアンドリュー・ボルトン、ファッション界の重鎮たちが登場。展覧会の芸術監督として香港のウォン・カーウァイ監督も顔を見せていました。『グランド・マスター』(2013年)以降新作が発表されないと思っていたら、こんな仕事もされていたんですね。
アナ・ウィンターは『ファッションが教えてくれること』(2009年)『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010年)でも観ていますが、ボブカットに黒いサングラス、最新ファッションは変わりません。辣腕の起業家であり、ぶれないポリシーと頭の良さに感嘆します。
メットガラの席料はなんと25000ドル(約285万円)!600席があっというまに満席になるのはアナの人脈と情熱の賜物とか。この収益金はMET服飾部門の活動費にあてられるそうです。これだけのセレブが集まるなら高くないのかも。展覧会の準備からガラの当日まで映像で見られるのは嬉しいですね。ちなみに2017年は「川久保玲/コムデギャルソン」(5月4日〜9月4日)、メットガラは5月1日の開催です。(白)


2016年/アメリカ/カラー//91分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2016 MB Productions, LLC
http://metgala-movie.com/
★2017年4月15日(土)Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
posted by shiraishi at 14:58| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月15日

ターシャ・テューダー 静かな水の物語

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監督:松谷光絵
撮影:高野稔弘
出演:ターシャ・テューダー、セス・テューダー、ウィンズロー・テューダー、エイミー・テューダー

アメリカで最も愛される絵本作家、世界中のガーデナーの憧れのターシャ・テューダーは、1915年ボストンの富裕な家庭に生まれました。父は飛行機や船の設計・製作技師、母は肖像画家。母には社交界へのデビューを期待されましたが、農村の生活を好み、両親の親友の住むコネチカット州で成長します。22歳で結婚、夫と農場を営みながら絵本作家としてデビューしました。子どもや身の回りにある草花や動物を暖かな筆致で描いた絵本は人気を博します。4人の子どもに恵まれましたが、後に離婚。絵筆で生活を支え、子どもたちを育て上げました。
1971年、バーモント州の山中の土地を手に入れ、夢見ていた18世紀風のコテージ(長男セスの手仕事)を建てて一人住まいを始めます。日々の暮らしを大切にゆったりと送りながら、長い時間と手間をかけて花いっぱいの美しい庭を作り上げ亡くなるまで暮らしました。

このドキュメンタリー作品は松谷光絵監督が10年にわたって取材したものに、新しく撮影された映像を加えてまとめられました。ターシャのプライベートな書斎、3方向の窓から光が入り外が見えるベッドルームも見られます。晩年(2008年92歳で逝去)までそばに寄りそった愛犬メギーをなでるターシャ。少し小さくなった彼女の「幸せは自分で作り出すもの」「忙しすぎて心が迷子になっていない?」と語りかける言葉がしみこんできます。広い広い庭はとても真似できませんが、手を抜かないていねいな暮らし方はすぐにお手本になります。
2010年に日本全国を巡回した展覧会には、愛用したティーセットや台所道具、手作りの洋服がありました。この作品でまたターシャに会うことができます。(白)


ターシャさんは、新しい種を植える時、3カ所に植えて、咲き具合をみて、一番その花が幸せに過ごせる場所を見つけるそうです。その言葉を聞いて、亡き母が、植木鉢をしょっちゅう動かしていたのを思い出しました。母は、ターシャさんの番組も大好きでよく観ていました。私はといえば、花を枯らすのが得意。母が大事に育てていた草花も瀕死の状態に。
ターシャさんが草花を思う気持ちは、もちろん人を思う気持ちにも通じていて、映画を観て、あらためて素敵な人生だったなぁ〜と思いました。(咲)


2017年/日本/カラー/105分
配給:KADOKAWA
(C)Richard W Brown
http://tasha-movie.jp/
★2017年4月15日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開
posted by shiraishi at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月13日

パージ:大統領令(原題:The Purge: Election Year)

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監督・脚本:ジェームズ・デモナコ
制作:ジェイソン・ブラム、マイケル・ベイ
出演:フランク・グリロ(レオ)、エリザベス・ミッチェル(ローン上院議員)、ミケルティ・ウィリアムソン(ジョー)、ジョセフ・ジュリアン・ソリア(マルコス)、ベティ・ガブリエル(レイニー)、テリー・セルピコ(アール)、エドウィン・ホッジ(ビショップ)

1年に1度、12時間だけ殺人を含む全ての犯罪が合法となる“パージ”が近づいてきた。これが犯罪の抑止力になっていると主張する現政府に対して、大統領選に「パージ廃止」を掲げて立候補したローン上院議員。彼女の当選を阻止したい政権は、パージ中に亡きものにしようと暗殺者を送り込んだ。警護役のレオはローンを守りながら、殺人集団の跋扈する街中で逃げ惑うことになってしまった。

『パージ』(2013)、『パージ:アナーキー』(2014)につぐ第3弾。このとんでもない政策を押しすすめているのが誰なのか、その目的は何なのかがはっきりします。
第1作から見て、よくこんなストーリーを考えつくなぁと思いました。タガの外れてしまった人間は、罰せられなければ殺人も楽しむのか…と暗澹たる気持ちになります。が、振り返れば戦争も同じ。今も絶えることなく戦火は続いています。絵空事に思えないのがますます怖い。(白)


2016年/アメリカ/カラー/109分/R15+
配給:パルコ
(C)2016 Universal Studios.
http://purge-movie.com/
★2017年4月14日(金)TOHOシネマズ日劇ほかにて緊急公開!!!
posted by shiraishi at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする