2017年03月19日

『タレンタイム〜優しい歌』 原題:Talentime

3月25日(土)よりシアター・イメージフォーラム、4月シネマート心斎橋ほか全国順次公開
公開劇場情報 http://www.moviola.jp/talentime/theaters/index.html

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c Primeworks Studios Sdn Bhd

監督・脚本:ヤスミン・アフマド 
撮影:キョン・ロウ 
音楽:ピート・テオ 
出演:パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショールほか
2009年 マレーシア
カラー |115分 | マレー語・タミル語・英語・広東語・北京語
公式サイト http://www.moviola.jp/talentime/

不寛容の時代に届けたい作品

マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドは2003年に監督デビューし、2009年に51歳で亡くなりましたが、6年の活動期間でマレーシア映画の新潮流を牽引し続け、6作の長編を残しました。この作品は6作目。8年の時を経て日本で劇場公開されます。
マレーシアは、マレー系、中国系、インド系と、主に3つの民族が住む多民族,多宗教国家ですが、ヤスミン監督の作品の底流にあるのは、民族、宗教、言語の違いを越えて生きる人々の姿です。民族、宗教の異なる恋愛や友情、近所づきあいが描かれ、民族間の争いによる悲劇もあるけど、違いを受け入れ応援する人々が必ず登場します。現実の社会では難しく、これはヤスミン監督が強い信念を持って、あるべき人々の姿を描いているともいえます。

この作品は、ある高校で開かれた音楽の才能を競うコンテスト「タレンタイム」を巡る物語。タレンタイムとは、「タレント性を発揮する時間」というような意味合いの造語だと思うのだけど、学校対抗の音楽コンクールに望むための学内オーディションを軸に、高校生の友情や恋、家族との絆など、マレーシアの若者の青春を瑞々しく描いています。
学校対抗の大会に出場が決まったマレー系の女生徒ムルーと、バイクでの送迎を担当するインド系男子学生マヘシュ。二人を巡る淡い恋の物語が進行します。二胡演奏が得意な中華系の生徒カーホウは、歌やギターが上手なマレー系の転校生ハフィズにトップの成績を奪われ敵対心を持ちます。マヘシュの叔父が近所のイスラム教徒に殺され、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母。闘病を続けるハフィズの母。民族や宗教の違いによる葛藤を抱えながら迎えるコンクール当日。彼らの恋や対立の行方は…。ムルーとマヘシュの周りの友人や家族との関係を描きながら、マレーシア社会の現実が浮かび上がってきます。民族や宗教の壁を越えるヤスミン・ワールド全開の作品です。

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c Primeworks Studios Sdn Bhd


初めてヤスミン監督の作品を観たのは2005年の東京国際映画祭で上映された『細い目』でした。それまでに観たマレーシア映画とは全然違う独特の表現、ユーモア感を持つヤスミンワールドに魅せられ、その後、映画祭やマレーシア映画の上映会などでほとんどの作品を観ました。
私が初めて行った外国はマレーシアということもあり、とても興味を持ったというのもあります。マレーシアはマレー系、中国系、インド系と主に3つの民族が暮らしていますが、住んでいる区域が民族ごとにけっこう明確に分かれていて、ヤスミン映画の中のように、他の民族同士がすれ違い交流するというにはほど遠い世界にも感じました。もっとも私がマレーシアに行ったのは1990年と26年も前なので、その後ヤスミン映画の中で描かれているような状況になっているのかもしれませんが…。
ヤスミン監督の作品には多民族国家であるマレーシアにおいて、異民族間の共存の意志がいつも描かれていますが、何かの記事に「三回結婚して、一度目はインド系、二度目は中華系の人」と語っていて、自分の実感が込められているのかなとも思います。あるいはあってほしい社会を描いてきた人だともいえます。
また、ヤスミン監督の家族はマレーシアではかなり進歩的な一家で、それが作品に反映されていると思います。たとえばお手伝いさんが家族と同等な立場で会話をしているシーンがあったり、妻や子供たち(女の子)が強くてお父さんはいつもやり込められていたりといったような場面にそれが生きていると思います。
ユーモアとヒューマンな心を持って作品を作っていたヤスミン監督。この不寛容な時代に一石を投じるヤスミンワールド。この作品をぜひ観ていただけたらと思います。
『タレンタイム〜優しい歌』では、いつもヤスミン監督の作品の中で、お手伝いさん役で出てくる貫禄あるアディバ・ヌールさんが、校長先生役で出てきて思わずニヤリ。その他にも、ヤスミン監督作品の常連俳優たちが出てきます。それを確認するために、あるいは、マレーシア社会をもっと理解するために、この作品の前に作られた5作品もぜひ観ていただけたらと思います(暁)。

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音楽を担当したピート・テオ(2015年)

ヤスミン・アフマド監督の他の作品が特集上映されます。ぜひ『タレンタイム』を観る前にごらんになってみてください。
特集上映期間:3月18日(土)3月24日(金)の1週間
シアター・イメージフォーラムにて
上映作品:『ラブン』(2003)
     『細い目』(2004)
     『グブラ』(2005)
     『ムクシン』(2006)
     『ムアラフ-改心』(2007)

参考記事

●2009.10.23 東京国際映画祭
アジアの風部門『タレンタイム』:ピート・テオ(音楽)インタビュー
http://2009.tiff-jp.net/report/daily.php?itemid=1310

●シネマジャーナルでは2007年にピート・テオさんにインタビューしています。
シネマジャーナルHP ピート・テオインタビュー記事
http://www.cinemajournal.net/special/2007/peteteo/index00.html

●ホー・ユーファン監督にもインタビューしています
http://www.cinemajournal.net/special/2009/Ho_Yuhang/

●シネマジャーナルスタッフ日記2015年4月 マレーシア映画ウィークの紹介
http://cinemajournal.seesaa.net/article/417481741.html

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『細い目』に出演したシャリファ・アマニ(左)&ン・チューセン(右)

●シネマジャーナル本誌69号ではヤスミン・アハマド監督を特集しています
http://www.cinemajournal.net/bn/69/contents.html










posted by akemi at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月15日

わたしは、ダニエル・ブレイク 原題:I, Daniel Blake

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監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ、 ヘイリー・スクワイアーズ

イギリス北東部ニューカッスル。59歳になるダニエル・ブレイクは最愛の妻を看取り、今は一人暮らし。心臓発作を起こし、医者から大工の仕事を止められ雇用支援手当てを受けている。紋切り型の継続審査で、心臓が悪いと言っても聞いて貰えず、「就労可能・手当中止」の通知を受け取る。窓口に電話するも、1時間48分も待たされ、「サッカーの試合が終る位待たされた」とつぶやく。あげく、苦情申し立てはネットからと言われる。
そんな折、遅刻して給付金を受け取れず、悲痛な声で担当者に申し立てしている若い女性ケイティを見かける。思わず加勢するダニエル。事情を聞いてみれば、ロンドンから役所が斡旋したアパートに越してきたシングルマザー。ぼろアパートの修理をしたり、食料や日用品が支給されるフードバンクに付き添ったりと、ダニエルは手助けする・・・

イギリスといえば、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒をみてくれるものと思っていたら、どうやらそうでもないらしい。「お役所仕事」に振り回されるのも、どこかの国と同じ。
苦情申し立てするのに、職業安定所で慣れないパソコンに向かい、四苦八苦してやっと入力したら、フリーズして時間切れ。あるある! こういう経験!と、同情します。
ほんとに今は何でもネットから。アナログ人間には住み難い世の中になってしまいました。
苦情くらい、ちゃんと人間が対応してほしいもの。
ダニエルは自身も窮地に立たされているのに、人を気遣う心の余裕を持っていて、見習いたい。
そして、最後にダニエルは、理不尽な役所の対応に、「人間、尊厳を失ったら終わり」と言い放って思い切った行動に出ます。声をあげなければ、何も変わらない!
これまで、社会的弱者に寄り添うように映画を作り続けてきたケン・ローチ監督。80歳を目前に、またもや社会に一石を投じてくれた一作です。(咲)


2016年/イギリス・フランス・ベルギー/1時間40分/アメリカンビスタサイズ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
公式サイト:http://danielblake.jp
★2017年3月18日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開
posted by sakiko at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月12日

世界でいちばん美しい村

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監督・撮影:石川梵
エグゼクティブプロデューサー:広井王子
音楽:Binod Katuwal、はなおと
編集:簑輪広二
編集協力:道正由紀
ナレーション:倍賞千恵子

2015年4月25日、M7.8の大地震がネパールを襲い、300万人が被災、約9000人が命を落とした。写真家・石川梵は首都カトマンズへと飛び、そこで集めた情報の中から「震源地の村が壊滅」というたった1行を見つける。そのラプラックへは麓までジープで行って1泊、後は山岳地帯を徒歩。2200mの高地にあるラプラックまで丸2日かかってたどり着いた。村の家屋はすっかり破壊され、人々はさらに登ったところにできた避難キャンプに身を寄せ合って住んでいた。石川監督はこの劣悪な環境の中で、澄んだ瞳のアシュバドル少年とその家族に出会う。

家をなくしても、家族の愛情と笑顔の絶えないアシュバドル一家。愛する人を失っても神の加護を信じて立ち上がる人たち。雄大なヒマラヤの懐でつつましくも着々と営まれる暮らし。写真家の目でそんな人々と風景を切り取った石川監督は、多くの人に伝えるために初めてのドキュメンタリーを仕上げました。被写体と長い時間をかけて向き合い、かけがえない一瞬をキャッチしてきた石川監督が「これまでやってきたことの全部が入っています」という作品です。観終わった後にラプラックに可愛い友達ができた気分になります。
ドキュメンタリー作品を東劇で公開、というのは初めてでした。後で著作「フリスビー犬、被災地を行く」(飛鳥新社)を読んで、支援のため被災地を足繁く訪れていた石川監督と陸前高田の菅野さんとの出会いを知りました。被災者と黄色いハンカチと山田洋次監督をつなげたのは石川監督だったのですね。それが松竹とのご縁になったのか、と納得。
南太平洋のクジラ漁や被災地を写した写真集も見ることができました。こういうお仕事をしながら、さらにフットワーク軽く細やかな支援も続けているお人柄にすっかり感銘を受けました。2月にお話を伺うことができたこちらのインタビュー記事もぜひ御覧ください。(白)


2016年/日本/カラー/108分
配給:太秦
(c)Bon Ishikawa
https://himalaya-laprak.com/
★2017年3月25日(土)より銀座 東劇ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

3月のライオン 前編

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監督:大友啓史
原作:羽海野チカ「3月のライオン」白泉社刊
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
撮影:山本英夫
出演:神木隆之介(桐山零)、有村架純(幸田香子)、倉科カナ(川本あかり)、染谷将太(二海堂晴信)、清原果耶(川本ひなた)、伊藤英明(後藤正宗)、豊川悦司(幸田柾近)

桐山零(きりやま れい)17歳。中学生でプロになった天才棋士と言われている。しかし彼には家も家族も友達もなかった。小学3年のときに両親と妹が交通事故で亡くなり、一人残された零は父の友人のプロ棋士・幸田に内弟子として引き取られる。幸田家の姉弟より零が強くなったとき、幸田は二人に将棋をあきらめさせた。その軋轢から零は幸田家を出て一人暮らしを始める。橋の向こうで和菓子屋を営む川本家の三姉妹と出会った零は、一人になってから初めて暖かな家庭の味を知る。

原作のコミック「3月のライオン」は2007年に連載(不定期)が始まり、2016年9月には第12巻が発行されています。数々の漫画賞を受賞した人気作品で、昨年10月からNHKでテレビアニメが放映。映画は前・後篇に分けられ、零が彼をめぐる人々とのふれあい、ぶつかりあいを経験しながら成長していく様子が描かれます。零が生きていくための唯一の拠り所だった将棋、その対戦相手たちがまあ綺羅星のごとく登場しますので、映画何本分もの濃さでした。昨年『聖の青春』で主人公・村山聖の後輩役だった染谷将太が、この作品では村山聖をモデルにした棋士・二階堂を特殊メイクで演じているのも見どころの一つです。最初誰かわからないくらいでした。なんでも零のせいにする香子のキレっぷりが怖い〜有村架純さん役の幅広げましたね。
韓国ドラマなみに不幸が襲ってくる零に、やっと嬉しい出会いがあってホッと一息。三日月堂の三姉妹とお爺ちゃんの住む川本家がほんとに居心地よさそうで、こんな親戚があったらいいなと思ってしまいました。お料理も美味しそうなので、腹ペコで観ないように。(白)


2017年/日本/カラー/シネスコ/138分
配給:東宝、アスミック・エース
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
http://3lion-movie.com/
★前編 2017年3月18日(土)、後篇4月22日(土)2部作連続・全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ひるね姫〜知らないワタシの物語〜

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監督・原作・脚本:神山健治
音楽:下村陽子
主題歌:森川ココネ
声の出演:高畑充希(森川ココネ/エンシェン)、満島真之介(佐渡モリオ)、古田新太(渡辺一郎/ベワン)、釘宮理恵(ジョイ)、高木渉(佐渡/ウッキー)、前野朋哉(雉田/タキージ)、清水理沙(森川イクミ)

岡山県倉敷市に住む森川ココネ。家でも学校でも居眠りばかりしている女子高生。なぜかこの頃同じ夢ばかり見ている。車の改造に熱中している無口な父モモタローと二人暮らし、母は事故死したと聞いている。ココネは小さすぎて一つも母の記憶がないが、詳しいことを話してもらえない。
東京オリンピックが間近になったある日、ココネが学校にいる間にモモタローが突如警察に逮捕され、東京へ連行されてしまった。いったいなぜ? 父の逮捕理由がわからないココネは、幼馴染の大学生モリオと一緒に父のいる東京に向かう。道中でまた眠ってしまったココネは、自分の見る夢と現実がリンクしていて、夢の中には知らない自分と両親の秘密があると気がつく。

夢と現実を行ったり来たりするストーリーで、ちょっと変わった設定です。スピード感もありますが、わかりにくくはありません。やたら眠たがりのココネですが、母のいない家庭をちゃんと支え、強い意志と行動力で夢の中でも大活躍です。こんなに自由自在に動ける夢が見られたら面白いだろうなぁ。主題歌の「デイ・ドリーム・ビリーバー」は、団塊の世代にはアメリカの人気グループ、ザ・モンキーズのオリジナルで、その後忌野清志郎さんのカバ―曲で日本語の歌詞が浸透しました。今の世代には「ひるね姫の主題歌」になるんでしょうか。
今作は10日から開催の東京アニメアワードフェスティバル2017のオープニング作品にもなりました。翌11日には「神山祭in TAAF2017」が開催され、神山健治監督の『攻殻機動隊S.A.C.』、『精霊の守り人』、『東のエデン』の第1話を上映しながら神山監督とProductionI.Gの石川光久社長が生オーディオコメンタリーを実施、制作秘話を披露したそうです。「攻殻機動隊というビッグタイトルに声をかけてもらったのが35歳、今51歳になりました。頑張って作ってきて、こうやって形になって嬉しいし、誇らしい気持ちになります」とコメント(宣伝さん提供)。観に行きたかった。(白)


2017年/日本/カラー//110分
配給:ワーナー・ブラザース
(C)2017 ひるね姫製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/
★2017年3月18日(土)よりロードショー
posted by shiraishi at 16:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする