2017年03月31日
ハードコア 原題:HARDCORE HENRY
製作・脚本・監督:イリヤ・ナイシュラー
出演:シャールト・コプリー(『第9地区』)、ダニーラ・コズロフスキー、ヘイリー・ベネット、ティム・ロス
目を覚ますと、そこは近未来的な研究室。
「ヘンリー、準備はいい?」と呼びかける美しい女性研究者エステル。
事故にあい、記憶と声、そして左側の手足を失ってしまった身体に、新しい身体の一部となる機械が接合されていく。声帯の処置にかかろうとした時、突然警報が鳴り、何者かが侵入してきて研究者たちを次々と惨殺していく。エステルと二人で研究室から脱出ポッドを使って離脱。二人はモスクワのハイウェイに墜落する・・・
次々に起こる事態に対処していく姿は、なんだかゲームのよう。
監督のイリヤ・ナイシュラーは、ロシアのパンクロックバンド「バイティング・エルボーズ」のフロントマン。映画製作者としては無名の方。
不思議な世界が体験できること、請合います! (咲)
2016年/ロシア・アメリカ/96分/DCP5.1ch/ビスタ/英語・ロシア語
配給:クロックワークス
公式サイト:http://hardcore-eiga.com/
★2017年4月1日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
ジャッキー ファーストレディ 最後の使命 英題:JACKIE
監督: パブロ・ラライン
出演: ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、ビリー・クラダップ、ジョン・ハート
1963年11月22日、テキサス州ダラスに到着し、オープンカーでパレードしていたジョン・F・ケネディ大統領が銃撃に倒れる。目の前で夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディ。突然の愛する夫の死。深い悲しみの中で、ジャッキーは葬儀を執り仕切る。さらに、ホワイトハウスから立ち去る準備もしなくてはならない・・・
24歳で未来の大統領と結婚。
31歳でファーストレディとなりホワイトハウスに入る。
そして、34歳で未亡人となったジャッキー。
本作は、突然の悲劇に見舞われたジャッキーが、大統領夫人として毅然と振舞った姿を描いた映画。
ケネディ大統領暗殺は、日本とアメリカの初めての宇宙中継で飛び込んできたニュースで、あの日のことは今でもよく覚えています。葬儀でのジャクリーン夫人と二人の子どもたちの姿も忘れられません。ただ、その後、ジャッキーがギリシャの海運王オナシスと再婚するというドラマティックな人生を歩んだことがわかっているだけに、複雑な思いがよぎりました。
ケネディ大統領暗殺については、これまで散々語られてきましたが、ジャクリーン夫人に焦点をあてたことには興味津々。ホワイトハウスを去る時の気持ちを思うと、胸がしめつけられるようでした。オナシス氏亡き後の彼女の人生はどうだったのだろうと、プレス資料を見てみたら、出版社で編集者として働き、1988年にはマイケル・ジャクソンの自伝を出版。1994年、64歳で癌で亡くなり、ケネディ大統領のお墓の隣に埋葬されたとのこと。最後はケネディ夫人として安眠の地を得られたと知り、ほっとしました。
それにしても、ケネディ大統領暗殺当時、5歳の少女だったキャロラインさんが、大使として日本に来られたことには感無量でした。彼女の人生もいつか映画になるといいな。(咲)
2016年/アメリカ・チリ・フランス/カラー・モノクロ/99分/ヨーロピアンビスタ(1.66:1)/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式サイト:http://jackie-movie.jp
★2017年3月31日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
2017年03月19日
ムーンライト 原題:MOONLIGHT
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
出演:トレバヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホーランド、ジャネール・モネイ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、
マイアミの黒人コミュニティで暮らすシャロンの成長物語。
少年期: 母ポーラと暮らすシャロン。内気で、学校ではリトルと呼ばれている。ある日、いじめられているところを麻薬ディーラーのファンに助けられる。泳ぎを教わりながら「自分の道は自分で決めろ」とファンに諭される。ファンを父のように感じて慕うシャロン。学校では、同級生のケヴィンだけが心を許せるただ一人の友達だった。
青年期: 高校生になったシャロンは、相変わらずいじめられている。母ポーラは麻薬におぼれる日々。家に居場所はなく、ファンの家を訪ねるが、ファンは亡くなっていた。ファンの妻テレサが優しく接してくれる。学校で同級生に罵られ、落ち込んだシャロンが夜の浜辺に佇んでいると、ケヴィンがやってくる。月の光の下で、二人は寄り添う。翌日、学校で怒りを爆発させたシャロンは事件を起こす・・・
成人期: あの事件のあと、マイアミから姿を消したシャロン。成長し、体格もよくなったシャロンは、アトランタで麻薬ディーラーとして幅をきかせている。ある夜、突然ケヴィンから電話がかかる。ダイナーで料理人として働くケヴィンは、シャロンに似た客を見かけて事件のことを思い出し、謝りたいという。声を聞き、急に会いたくなったシャロンは高級車をケヴィンのもとへと走らせる。
月明かりのもと、お互いの気持ちを確認しあうシャロンとケヴィンの姿が愛おしい。そういうことだったの・・・と、その場面になるまで気付かなかった私。思えば、オカマとからかわれていたのでした。
ケヴィンがシャロンのために特別メニューを作るといってキッチンに消えたあと、シャロンの取る行動をお見逃しなく!
これまたケヴィンを思う気持ちが、じ〜んと伝わってくる場面です。
アカデミー賞作品賞に輝いた本作。まさに心に染みこむような映画。
いじめられても刃向かうことなく下を向いていたシャロン。ファンという男と知り合うことで、シャロンの中でなにかが変わる。運命的な出会いが、誰しもにもあることを感じさせてくれます。そうやって人は大人になっていくのだつくづく思います。(咲)
☆第89回アカデミー賞 作品賞、脚色賞、助演男優賞 計3部門受賞
シャロンに大きな影響を与えたファンを演じたマハーシャラ・アリが、アカデミー賞助演男優賞を受賞。少年期の部分のみで、出番は多くはないけれど、存在感が光ります。
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム
2016/アメリカ/111分/シネマスコープ/5.1ch/R15+
公式サイト:http://moonlight-movie.jp
★2017年3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開
アカデミー賞作品賞ほか受賞で、公開が前倒しになりました。
パッセンジャー(原題:Passengers)
監督:モルテン・ティルドゥム(『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』)
脚本:ジョン・スパイツ
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ジェニファー・ローレンス(オーロラ・レーン)、クリス・プラット(ジム・プレストン)、マイケル・シーン(アーサー)、ローレンス・フィッシュバーン(ガス・マンキューゾ)、アンディ・ガルシア
20XX年、新たな移住地を目指して、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が地球を旅立った。目的地ははるかに遠く、到着予定は120年後。乗客は冬眠状態にあり、目的地の数ヶ月前にならないと目覚めない。アヴァロン号は自動操縦で快適な旅を続けていたが、その途中で予定外に早く目覚めてしまった男女がいた。一人はロウアーデッキ(エコノミークラス)にいたエンジニアのジム、もう一人は美貌の作家でゴールドクラス(ファーストクラス)にいたオーロラだった。普通の生活では会うはずもない二人が、宇宙という究極の空間でなんとか生きる道を探す。旅はまだ90年も残っている・・・。
宇宙に取り残されるという作品はこれまでもありました。『ゼロ・グラビティ』『オデッセイ』など。それぞれに助かるかどうかハラハラさせられましたが、今度は宇宙空間の旅の途中で早く目覚めてしまい、残りの年数は客船の中だけという悲劇的状況です。5000人もの乗客がいるのに、乗務員がこれだけ?なのには驚き。何もかも機械化されていて、ミスや故障や事故などありえないというのです。「想定外」という語句がぴったりの早い目覚めに、地球の会社にヘルプと連絡をとっても返事が来るのが何年も後、ってどんだけ遠くへ行くんでしょうか。
特別の状況下どうするのが一番いいのか思わず考えさせられます。観ているうちにあまりに杜撰では、と突っ込みどころが出てくるものの、ほとんど出ずっぱりの2人の魅力+乗員のアーサーの良い味に2時間近く見入ってしまいました。宇宙船の造形や内部の美術、宇宙、プール(観てのお楽しみ)など美しい場面がたくさんあります。(白)
2016/アメリカ/カラー/シネスコ/116分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.passenger-movie.jp/
★2017年3月24日(金)より全国ロードショー
サクラダリセット 前篇
監督・脚本:深川栄洋
原作:河野裕「サクラダリセット」シリーズ
撮影:清久素延
出演:野村周平(浅井ケイ)、黒島結菜(春埼美空)、平祐奈(相麻菫)、健太郎(中野智樹)、玉城ティナ(村瀬陽香)、恒松祐里(岡絵里)、岡本玲(宇川紗々音)、岩井拳士朗(坂上央介)、矢野優花(皆実未来)、奥仲麻琴(若き日の魔女)、吉沢悠 (津島信太郎)、丸山智己(加賀谷)、中島亜梨沙(索引さん)、大石吾朗(佐々野宏幸)、加賀まりこ(魔女)
咲良田(さくらだ)の住人は半数が特殊な能力を持っている。彼らの力は公的な機関である管理局が厳重に監視・制御し、街の外で使われることはない。男子高校生の浅井ケイは“記憶保持”の能力を持ち、一度あったことは忘れることなく細部まで思い出すことができる。ケイといつも行動を共にする春埼美空は“リセット”の能力を持ち、セーブされた時点・最大3日前まで巻き戻すことができる。美空を含め全ての人の記憶がなくなるが、ケイの記憶だけはなくなることがない。
2人は2年前に相馬菫によって引き合わされ、以来様々な問題を能力で解決してきた。しかしある日リセットして戻った世界では相馬菫が亡くなっており、2人の能力をもってしてもやり直しはできなかった。
人の役に立ったりそうでなかったり、いろいろな能力者がいました。なぜそんな能力者がいるのか、どう管理されるのか詳しくは映画本編をご覧下さい。全7巻の原作はケイと美空が出会い、解決していく問題がいくつも語られています。自分だったらどんな能力があれば嬉しいか、ちょっと想像すると面白いです。高校は卒業した年齢の出演者たちですが、演技力にプラスして制服姿がみんなを初々しくさせていますね。制服の力は大きい!
年々出演作が増えている平祐奈さん、目力あり声もよく通ってお姉さんの愛梨さん(ご結婚おめでとう)に負けない女優さんになりそう。黒島結菜さん演じる美空は“ケイに出会って自分の存在意義を考える”ので内にこもる分、表現が難しそうですが守ってやりたくなるタイプ。若い俳優さんたちの先が楽しみです。加賀まりこさんが出ているのも嬉しい。(白)
2017年/日本/カラー/ビスタ/103分
配給:ショウゲート
(C)2017 映画「サクラダリセット」製作委員会
http://sagrada-movie.jp/
★前編 2017年3月25日(土)、後篇5月13日(土)2部作連続・全国ロードショー