2017年01月21日

エゴン・シーレ 死と乙女  原題:Egon Schiele: Tod und Madchen

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監督:ディーター・ベルナー
出演:ノア・サーベトラ、マレシ・リーグナー、ファレリエ・ペヒナー、ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ

20世紀初頭、ウィーン画壇に彗星のごとく現われ、スキャンダルな逸話の数々と挑発的な名画を残し、28歳の若さで世を去った天才画家エゴン・シーレの半生を描いた物語。

1910年、ウィーン美術アカデミーを退学したエゴン・シーレは画家仲間アントンたちと「新芸術集団」を結成。16歳の妹ゲルティをモデルにした裸体画で頭角を現す。
やがてシーレは、場末の演芸場で知り合った褐色の肌のモアに惹かれ、モアをモデルに裸体画を描くようになる。嫉妬した妹ゲルティは当て付けるようにアントンと契りを結び、それを許せないシーレ。新芸術集団は解散する。
1911年、尊敬するクリムトから、若すぎる少女を描くのは危険だとして、17歳のモデル、ヴァリを紹介される。赤毛のヴァリとたちまち恋に落ちたシーレは同棲生活を始める。半年後、シーレは13歳の少女タチアナを誘拐した罪に問われるが、ヴァリの証言で禁固刑を免れる。が、幼児性愛者の汚名を着せられ、パトロンの多くが去っていく。
やがて、第一次世界大戦が勃発。兵役に就くことになったシーレは、結婚すれば兵舎でなく、ホテルで妻と過ごせることを知り、同棲していたヴァリではなく、近所に住む良家の娘エディットと結婚する。シーレはヴァリに「結婚しても僕たちの関係は変わらない」と言うが、嫉妬深いエディットが二人の関係を許すはずもなく、シーレはヴァリをモデルに最後の絵を描く。後に「死と乙女」と名付けられることになった絵だった・・・

監督がシーレ役に抜擢したノア・サーベトラが、美形でスキャンダラスな天才画家を体現していて、ぐっと惹かれます。
映画俳優志望なれど、演技経験はなく、写真のモデルの経験があるだけだったノア・サーベトラに非凡なエネルギーを感じた監督。彼を1年間演劇学校に通わせます。ついには有名なエルンスト・ブッシュ演劇大学の入学試験にも合格。 さらに、彼は映画の中で自分で絵を描けるようにと、芸術アカデミーの「彩色画と素描」の講義を2学期間受講したとのこと。今後が楽しみな魅力溢れる俳優です。
エゴン・シーレという画家も、この映画で初めて知りました。その人生は、本人の起こしたスキャンダラスな事件よりも、戦争に翻弄されたものだと感じました。戦争が起こってなければ、もっと多くの作品を残したのではないでしょうか。(咲)



2016年/オーストリア・ルクセンブルク/109分/シネマスコープ/デジタル5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://egonschiele-movie.com/
★2017年1月28日(土) Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほか全国順次ロードショー
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僕と世界の方程式  原題:X+Y  

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監督:モーガン・マシューズ
出演:エイサ・バターフィールド(『ヒューゴの不思議な発明』)、サリー・ホーキンス、レイフ・スポール、エディ・マーサン

ネイサンは、人とのコミュニケーションは苦手だけど、数学は大得意の少年。大好きだった父親が事故で突然亡くなり、ますます周囲に心を閉ざしてしまう。母親ジュリーは、普通の学校生活に適応できない息子のために、数学の個人教師を探す。学校から紹介してもらった高校教師のマーティンは、ネイサンに可能性を感じて、全力で数学を教える。やがて、ネイサンは数学オリンピックのイギリス代表に選ばれ、台北でのトレーニング合宿に参加する。そこでネイサンは中国チームの聡明で美しい少女チャン・メイとパートナーを組むことになる・・・

心を閉ざして、数学にしか興味のなかった少年が、だんだん心を開いていく様が生き生きと描かれていて爽やかな作品。中国の美少女を演じたジョー・ヤンがとてもキュート。北京電影学院を卒業した中国系イギリス女優。

ネイサンは自閉症スペクトラムと診断されているのですが、1月21日公開の『ザ・コンサルタント』の主人公クリスチャン・ウルフも、自閉症スペクトラムで、やたら数字に強い人物でした。他者との係わりが苦手な反面、集中力が凄いのですね。
ネイサンの個人教師を務めた教師マーティンは、かつて数学オリンピックにも挑戦したこともあるけれど、多発性硬化症のため、すべてを諦めていた人物。教えることで、生き甲斐を見つけます。
人は一人では生きていけないことを強く感じさせてくれます。

ところで、ネイサンが挑戦する数学オリンピックの本番の会場は、イギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ。到着した時に、ここは偉大な数学者の数々が学んだところと、名前が挙がる中に、ラマヌジャンの名前が。 『奇蹟がくれた数式』 (2016年、イギリス/マシュー・ブラウン監督)で、その人生が描かれた1920年、32歳の若さでこの世を去ったインドの天才数学者です。私は映画で初めてラマヌジャンの名前を知ったのですが、インドだけでなく、数学の世界では名を轟かせている人物であることを実感しました。(咲)


☆イギリスでは『X+Y』、アメリカでは『A Briliant Young Mind』のタイトルで公開されました。

2014年/イギリス/111分/カラー/シネマスコープ
後援:ブリティッシュ・カウンシル
製作:BBC Films
配給:レスペ
公式サイト:http://bokutosekai.com
★2017年1月28日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
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マグニフィセント・セブン(原題:The Magnificent Seven)

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監督:アントワン・フークア
脚本:ニック・ピゾラット、リチャード・ウェンク
撮影:マウロ・フィオーレ
音楽:ジェームズ・ホーナー、サイモン・フラングレン
出演:デンゼル・ワシントン(サム)、クリス・プラット(ジョシュ)、イーサン・ホーク(グッドナイト)、ビンセント・ドノフリオ(ジャック)、イ・ビョンホンビリー)、マヌエル・ガルシア=ルルフォ(バスケス)、マーティン・センズメアー(レッドハーベスト)、ピーター・サースガード(バーソロミュー・ボーグ)、ヘイリー・ベネット(エマ)

西部開拓時代の小さな町、ローズ・クリークは酒場や娼館を営むボーグに支配されていた。保安官は抱きこまれ、住民たちは暴力に屈服させられ、教会に火までつけられた。目の前で最愛の夫を殺されたエマは苦しんできた人々に声をかけ、なけなしのお金を集める。ボーグの一味と戦える屈強な男たちを雇うつもりだった。
賞金稼ぎのサムが中心となり、早撃ちのガンマン、ギャンブラー、ナイフの達人など7人の男が集まった。

『七人の侍』(1954)『荒野の七人』(1960)は、誰でも一度は観ているはず…観てますよね?その名作の魂を受け継いで、新しい空気を吹き込もうとしたのは、アントワン・フークア監督。主役のデンゼル・ワシントンとは『トレーニングデイ』『イコライザー』についで3作目のタッグです。
稼ぐつもりで集まったのは、みな今でいうマイノリティな出自で一癖も二癖もある男たち。それぞれに主役をはれる豪華メンバーが、命がけの戦いに身を投じていきます。韓国スターのイ・ビョンホンはナイフ投げの達人。ギャンブラーのイーサン・ホークとかわす目線が気になります。ほかもなかなかのつわもの揃いなので、お気に入りのキャラができるのではないでしょうか。
夫(マット・ボマー)を殺されたエマ役はヘイリー・ベネット。この西部劇では土ぼこりで汚れていますが、11月に公開された『ガール・オン・ザ・トレイン』では輝く金髪美女でした。
アントワーン・フークア監督のコメント「重要なのは『七人の侍』のDNAに忠実であること。クロサワが生きていれば、現代版のこの物語を観たいと思ってくれると信じている」(白)


2016年/アメリカ/カラー/ビスタ/133分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.magnificent7.jp/
★2017年1月27日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドクター・ストレンジ(原題:DOCTOR STRANGE)

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監督:スコット・デリクソン
脚本:ジョン・スペイツ、スコット・デリクソン、C・ロバート・カーギル
撮影:ベン・デイヴィス, BSC
音楽:マイケル・ジアッキーノ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ(ドクター・ストレンジ)、ティルダ・スウィントン(エンシェント・ワン)、レイチェル・マクアダムス(クリスティーン・パーマー)、キウェテル・イジョフォー(モルド)、マッツ・ミケルセン(カエシリウス)、ベネディクト・ウォン(ウォン)
日本語版声優:三上哲(ドクター・ストレンジ)、樋口可南子(エンシェント・ワン)、松下奈緒(クリスティーン・パーマー)、小野大輔(モルド)

天才的な技術を誇る傲慢な外科医ドクター・ストレンジ。突然の交通事故により、その神の手と全てのキャリアを失う。絶望の淵から這い上がるために、あらゆる治療法を試すが元に戻ることはなかった。彼は魔術の力に頼ろうとチベットを目指して旅をする。たずねあてたエンシェント・ワンに弟子入りし、厳しい修行を経て、ついに人智を超えた力を手に入れるが、“闇の魔術”を駆使した勢力との闘いに巻き込まれていく。

1963年に発表されたマーベルのコミック作品が原作です。知力にたけた人の役、といえばカンバーバッチ?と言いたいくらい、こういう役がはまりますね。シャーロック・ホームズの印象が強いせいでしょうか。今回は順風満帆の人生から奈落に落ちた男が魔術師に、イリュージョンでなくスーパーヒーローとして復活するのです。ティルダ・スウィントンが師匠となるワン役。僧服で登場し、頭の形も綺麗で坊主頭もお似合いです。闇の魔術をあやつる敵との戦闘場面に「お〜!」と試写室がどよめきました。万華鏡の中にいるような(?)天地左右が次々と動き変化するシーンは必見です。強敵カエシリウス役はデンマークの俳優マッツ・ミケルセン。『ローグ・ワン〜』でも重要な役でしたが、どの作品に出ても印象に残る人です。キウェテル・イジョフォーは兄弟子モルド役。続編もありでしょう。(白)

2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/115分
配給:ディズニー
(c)2016 Marvel. All Rights Reserved.
http://marvel.disney.co.jp/movie/dr-strange.html
★2017年1月27日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

島々清しゃ(しまじまかいしゃ)

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監督:新藤風
脚本:磯田健一郎
撮影:山崎裕
音楽:磯田健一郎
出演:伊東蒼(花島うみ)、安藤サクラ(北川祐子)、金城実(花島昌栄)、山田真歩(花島さんご)、渋川清彦(真栄田)

沖縄・慶良間(けらま)諸島に住む小学生の花島うみは耳が良すぎて、ずれた音が聞こえると気持ちが悪い。「ワジワジする」のでいつも耳をふさいでいる。学校では変わり者扱いされ、母親も扱いかねているが、三味線の名手のおじいだけはうみの味方。
東京からバイオリニストの北川祐子がコンサートにやってくる。吹奏楽部の指導をすることになった祐子に促され、うみも参加してみるが生徒たちの演奏がどうしても我慢できない。

新藤兼人監督のお孫さんである新藤風監督の11年ぶりの作品。病床にあった新藤兼人監督のお世話のために中断していたそうです。兼人監督は東京国際映画祭で『一枚のハガキ』(2011年)車椅子で登場されましたが、そのときそばにいらしたのが風監督だったのかな。
うみ役の伊東蒼(いとうあおい)さんは『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)にオダギリジョーの娘役で出演。こちらも幸せ薄いけれども芯の強い子どもの役でした。どんな女優になるのか成長が楽しみです。
安藤サクラさんは初のバイオリニスト役で、特訓した成果を見せています。
映画の冒頭でうみの耳が特別なことを示すエピソードがあります。音感などどこに?な筆者には想像もつきませんが、雑音にあふれている都会ではこういう耳は辛いだけでしょう。慶良間の美しい海、おじい花島昌栄さんの歌と三線(サンシン)に癒されてください。(白)


2016年/日本/カラー/ビスタ/100分
配給:東京テアトル
(C)2016「島々清しゃ」製作委員会
http://www.shimajima-kaisha.com/
★2017年1月21日(土)テアトル新宿ほか全国公開
posted by shiraishi at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ザ・コンサルタント  原題:The Accountant

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監督:ギャビン・オコナー
出演:ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J.K.シモンズ、ジョン・バーンサル、ジーン・スマート、シンシア・アダイ=ロビンソン、ジェフリー・タンバー、ジョン・リスゴー

シカゴ近郊の田舎町のしがない会計士のクリスチャン・ウルフ。愛想のないウルフだが、今日も農家の老夫婦に税金対策をアドバイスして感謝されている。そんなウルフに、大企業から財務調査の依頼が舞い込む。15年分の帳簿をたった1日で調べ上げ、存在しない会社への送金を洗い出す。だが、依頼先から調査は突然終了すると言われる。財務担当者が不正がばれたことを苦に自殺したというのだ。その日から、何者かに命を狙われるウルフ。彼は襲ってくる武装した男たちを、驚くべき戦闘能力で返り討ちする。実はウルフは高機能自閉症スペクトラムで、少年時代に将来を心配した父親から様々な特殊能力を教え込まれていたのだ。次第に明らかになるウルフの凄腕の殺し屋という裏の顔。彼は麻薬カルテル、武器商人、マネー・ロンダリングの達人などを顧客に持つ「裏社会の掃除屋」なのだった。アメリカ政府も、そんな彼の存在に気づき、正体を明かそうと必死になっていた・・・

サスペンス・アクションかと思って観ていたら、ただそれだけではない側面が最後にぐっと見えてきて、実は家族の物語だったことに驚かされました。思えば、映画の冒頭は、主人公の子供時代、両親に連れられて自閉症の専門医の診察を受けている場面でした。医者は、ハンディキャップではなく、むしろ才能に恵まれているのだと両親に告げます。その言葉を受けて父親のとった行動、そしてそれが息子に与えた影響については、ぜひ映画をご覧ください。(咲)

2016年/アメリカ/128分/スコープサイズ/5.1ch リニアPCM+ドルビーサラウンド7.1(一部劇場にて)
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/consultant-movie/
★2017年1月21日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー 他 全国ロードショー

posted by sakiko at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする