昨年12月、初めて開かれた『イスラーム映画祭』。イスラーム文化圏を扱った映画の数々に、連日、多くの観客が詰めかけました。映画を通じて、多様なイスラーム世界に触れたいという多くの人の願いに応えて、2回目のイスラーム映画祭が2017年1月14日(土)より渋谷ユーロスペースを皮切りに全国3都市で開催されます。
【東 京】※全9作品
会期 : 2016年1月14日(土)〜20日(金)
会場 : 渋谷ユーロスペース(
http://www.eurospace.co.jp/ )
【名古屋】※全9作品
会期 : 2016年1月21日(土)〜27日(金)
会場 : 名古屋シネマテーク(
http://cineaste.jp/ )
【神 戸】※全8作品
会期 : 2016年3月25日(土)〜31日(金)
会場 : 神戸・元町映画館(
http://www.motoei.com/ )
主催 : イスラーム映画祭実行委員会
オフィシャルWEBサイト
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http://twitter.com/islamicff 上映作品
◆『私たちはどこに行くの?』★オープニング作品原題 : Et maintenant on va où? 英題 : Where do we go now?
監督 : ナディーン・ラバキ(『キャラメル』)
2011年/フランス=レバノン=エジプト=イタリア/102分 / ブルーレイ
戦争で荒廃した、ムスリムとクリスチャンが半数ずつ暮らすレバノンの小村。
争いの絶えない男たちの間に入って、女性たちが宗教を越えて共闘して争いを止めようとする悲喜劇。
中東=イスラーム一色というイメージと異なるレバノンならではの作品で、アラブ各国でヒットし、トロント国際映画祭では観客賞を受賞。
女優でもあるナディーン・ラバキ監督の作品。
◆『敷物と掛布』原題 : Farsh w Ghata 英題 : Rags & Tatters
監督 : アフマド・アブダッラー
2013年/エジプト/87分 / ブルーレイ
2011年1月25日のエジプト革命。その中心地だったタハリール広場ではなく、周辺の貧困地域を舞台にしたドラマ。台詞を極力排して音楽が効果的に使われ、“敷物と掛布”とは一つの音楽ジャンルを表す。
2016年2月11日に、中東映画研究会主催の上映会(@東大)で拝見した映画。
エジプト革命の時に、刑務所から大勢の服役囚が脱走したが、主人公はその一人。イスラーム教徒の主人公が、デモに参加して投獄された青年と一緒に逃げるが、その青年の家を訪ねてコプト教徒(キリスト教徒)だとわかる。エジプトにおけるコプト教とイスラームの関係など映画の背景について、ニューズウィーク日本版のコラムに、川上泰徳氏が解説を書かれています。ぜひお読みください。
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2016/12/post-27.php主な舞台は死者の町(お墓)。ゴミ収集人たちなど底辺の人たちが登場するのですが、とてもスタイリッシュな映像。台詞や説明があまりないので、よくわからなかった部分もあり、もう一度観るのが楽しみな作品。
11月末にアフマド・アブダッラー監督が来日し、『マイクロフォン』(2010年)が上映されましたが、こちらも洗練された映画で、これまでのエジプト映画のイメージを覆されました。(咲)
◆『泥の鳥』原題 : Matir moina 英題 : The Clay Bird
監督 : タレク・マスゥド
2002年/バングラデシュ=フランス/98分 / ブルーレイ
バングラデシュ独立戦争を背景にした、ある家族の物語です。作者の幼少体験を基に、子供たちの姿が叙情味豊かに描かれます。ベンガルに伝わる“バウル音楽”も興味深い、カンヌ国際映画祭・批評家連盟賞受賞作です。
◆『蝶と花』原題 : Peesua lae dokmai 英題 : Buttefly and Flowers
監督 : ユッタナー・ムクダーサニット
1985年/タイ/127分/ブルーレイ
ムスリムが多いマレーシア国境付近の町を舞台に、貧しい一家を支える主人公が、闇仕事を通じて成長する姿を描く、みずみずしい青春ドラマです。緑豊かな自然や列車からの風景も心に沁みる、タイ映画史上の名作です。
◆『改宗』原題 : Muallaf 英題 : The Convert
監督 : パーヌ・アーリー、コン・リッディー
2008年/タイ/83分/ブルーレイ
結婚と改宗という二つの決断を果たした女性の、新たな人生を描くロードドキュメンタリーです。結婚とは何かについても考えさせられ、彼女の迷いや歓びから、やがてぎこちなくも素朴な夫婦の愛の物語が見えてきます。
◆『バーバ・アジーズ』原題 : Bab'Aziz 英題 : Bab'Aziz
監督 : ナーセル・ヘミール / Nacer Khemir
2004年/チュニジア=ドイツ=フランス=イギリス/アラビア語、ペルシャ語/96分/35mm
盲目のイスラーム修道僧とその孫娘が、30年に一度だけ開かれるという集会を目指し、沙漠を歩いていく。
アラブからペルシャ、そして中央アジアへと旅をする、ロード・ムービー。スーフィー音楽や様々な国の民族音楽が物語を彩り、“アラビアンナイト”さながらの世界を堪能させてくれます。
今やフランス映画やハリウッドでも活躍するイランの女優ゴルシーフテ・ファラハーニーさんが、男装の麗人という雰囲気で登場しますので、お見逃しなく!(咲)
◆『十四夜の月』
原題 : Chaudhvin Ka Chand 英題 : The Moon of the Fourteenth
監督 : M.サーディク
1960年/インド/ウルドゥー語、ヒンディー語/170分/35mm
イスラーム文化花咲く北インドのラクナウを舞台にした、古典メロドラマです。女性が顔を隠す習慣ゆえに始まる三角関係の悲恋を、歌や踊りも満載に描いています。ヒロインの美しさを讃える歌が当時大ヒットしました。
◆『マリアの息子』原題 : Pesar-e Mariam 英題 : The Son of Maryam
監督 : ハミド・ジェベリ
1999年/イラン/ペルシャ語/72分/35mm
第12回東京国際映画祭(1999年)で日本初上映。
2006年2月 イラン大使館で上映
イラン西部オルーミーイェ近郊の村で、イスラーム教徒の男の子が、病気で倒れたキリスト教司祭に代って教会を守るという心温まる話。
オルーミーイェ近郊には、キリスト教だけでもアルメニア教会、アッシリア教会のほか、カトリックやプロテスタントの教会があります。ユダヤ教のシナゴーグもあって、かつては様々な宗教の人たちが共生していたことがわかります。10年程前にアッシリア教会とシナゴーグのそれぞれの長に会いたいと訪ねたのですが、イスラーム革命以降、テヘランや外国に移住してしまったと聞きました。(咲)
◆『ミスター&ミセス・アイヤル』
原題・英題: Mr.and Mrs. Iyer
2002年/インド/英語、ヒンディー語、タミル語、ベンガル語/118分/ブルーレイ
監督 : アパルナ・セン
宗教対立に巻き込まれた、ヒンドゥー女性とムスリム男性のドラマです。
緊迫した状況下で惹かれあう2人の姿に、融和への祈りが込められていま
す。深刻な題材を描きつつも胸をしめつける、珠玉のラブストーリーです。
◆『神に誓って』 ★名古屋と神戸のみ特別上映原題 : Khuda Kay Liye 英題 : In the name of god
監督 : ショエーブ・マンスール
2007年/パキスタン/ウルドゥー語、英語、パンジャブ語、アラビア語、パシュトウ語/168分/ブルーレイ
パキスタン国内における過激な原理主義とリベラルなムスリムの軋轢や、欧米のイスラーム嫌悪など、様々なテーマを重厚に描いた社会派ドラマです。