2016年09月14日

歌声にのった少年   英題:The Idol 

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監督・脚本:ハニ・アブ・アサド(『パラダイス・ナウ』『オマールの壁』)
出演:タウフィーク・バルホーム、ナーディーン・ラバキ、ムハンマド・アッサーフ

ガザの難民キャンプで育ったパレスチナ人で、「ロケット」の愛称で呼ばれるスーパースター、ムハンマド・アッサーフ。本作は、彼が「アラブ・アイドル」で優勝するまでを描いた物語。

2005年、パレスチナのガザ。ムハンマドは歌が上手な少年。一歳上の姉ヌールや、友だちのアハマド、ウマルとガラクタを楽器にしてバンドを組んでいる。本物の楽器が欲しいと、魚を売ったり、集会で歌ったりして貯めたお金で闇商人から楽器を手に入れる。結婚式で歌う仕事を貰うが、女付き子ども馬鹿バンドとからかわれる。
 そんな折、姉ヌールが腎不全で倒れる。家族は血液型が適合しない。腎臓を買うしかない。音楽教室のカマール先生に「最後に残るのは夢だけだ」と励まされ、ヌールの手術代を稼ぐため結婚式で歌うムハンマド。透析を続けるが、結局ヌールは亡くなる。「歌で世界を変えて!」と言い残して。
2012年、学費稼ぎにタクシー運転手をしているムハンマド。ガザが壊滅的な状況とニュースが伝えている。オーディション番組「パレスチナスター」に出たいが、開催地ヨルダン川西岸地区のラーマッラーに行く許可が出ない。同じ国なのに。
停電が続く中、発電機でなんとか繋いでスカイプで出場するが途中で発電機が壊れて火事になってしまう。「イスラエルの攻撃にガザの人たちが立ち直れますように」とアナウンサー。
 ムハンマドは一大決心をして、カイロで開催される「アラブ・アイドル」の予選に出ることにする。「成功の為には失敗を恐れないで」と送り出す母。そうはいっても、ガザから出国するのは容易ではない。「エジプトまで泳いで行け」という友人。検問所を突破し出入国審査へ。「ビザは本物?」と聞かれ、正直に偽物と答えるムハンマド。クルアーンの朗誦コンクールに出場すると、係員の前でクルアーンを朗誦する。
「神に祝福された声。エジプト人を負かしてやれ」と係員。
 会場のカイロ・オペラハウスにようやくたどり着くと長蛇の列。チケットがないと入場できないといわれるが、なんとか中に入り、トイレで歌っていると、「上手いね」と声をかけられる。事情を話すと「俺は勝てない。使ってくれ」とチケットを譲ってくれる。
 こうして予選に出場したムハンマドは、どんどん勝ち進み、いよいよベイルートでの決勝大会に出演する・・・

姉の手術費用を稼ぐため、「ワクドナルド」(マクドナルドをぱくって MをWに)のハンバーガーをトンネルを抜けてエジプトに届ける仕事をする場面があります。国境を封鎖されているガザに食糧や物資を届ける為、千本以上あったトンネルですが、武器の密輸路だとして、今はイスラエルに破壊されてしまっています。映画の中では、エジプト側からパレスチナに食糧を届けるのでなく、逆に使われていて、それもありだったのかと。
ムハンマドは、現在、国連パレスチナ難民救済事業機関青年大使も務めていますが、ガザ出入国には許可がいるのだそうです。自分の故国なのに!
爆撃にあって破壊されつくしたガザの町で実際にロケをしていて、和平への思いもずっしり感じますが、それ以上に、本作では、どんな境遇にあっても夢を忘れず突進することの素晴らしさを教えてもらいました。(咲)


2015年/パレスチナ/アラビア語/98分/シネスコ/デジタル5.1ch
提供:ニューセレクト 
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://utagoe-shonen.com/
★2016年9月24日(土) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町 他全国順次ロードショー
posted by sakiko at 17:16| Comment(0) | TrackBack(0) | パレスチナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

函館珈琲

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監督:西尾孔志 
出演:黄川田将也、片岡礼子、中島トニー、Azumi、あがた森魚、夏樹陽子

夏のある日、丸い木の椅子を片手に函館にやってきた桧山英二。めざすは、古い洋館のアパート翡翠館。入居するはずだった先輩の家具職人・藪下の紹介で来たのだった。翡翠館のオーナー荻原時子は、夢を追う若者たちにアトリエ兼住居として部屋を貸していた。1ヵ月後に、正式に入居を決定するという。条件はただ一つ。翡翠館にふさわしいかどうか。
現在入居しているのは、装飾ガラス職人の堀池一子、テディベア作家の相澤幸太郎、ピンホールカメラ専門写真家の藤村佐和。個性豊かながら、皆、どことなく寂しく、人生を試行錯誤している様子だ。
桧山英二は、先輩が家具作りをする予定だった部屋で古本屋を開業する。古本屋といっても、ねらい目の本と薄利多売の本を仕入れて、主にネット販売だ。桧山が仕事の合間に入れる珈琲は絶品で、入居者どうし、くつろぎの時を持つようになる。
実は、桧山が古本屋を開業したのは表向きのこと。実は、小説『不完全な月』で新人賞を受賞したものの、その後、筆が進まなくて悩んでいたのだ。
やがて、正式入居を決める1ヵ月が経つ・・・

画面から、珈琲の香りが漂ってきそうな、とても趣のある映画でした。
古い洋館の似合う町、函館。皆それぞれに、自分のやりたいことにまい進して、人生を模索しているのが素敵です。 テディベア作家の相澤幸太郎を演じた中島トニーさんが映画の中で、とても楽しそうにミシンをかけていて、一緒に試写を観ていた中島トニーさんに、「ミシンがお上手でしたね」と声をかけたいところ、ぐっと我慢して会釈だけしました。
あとから、映画に出てくるテディベアは、中島トニーさんの手作りだったと知り、残念なことをしました。
小説家・桧山を演じた黄川田将也さんも試写の会場にいらしていて、長身のとても素敵な方でした。
自分も好きなことにまい進したい!と、元気をもらいました。(咲)


2016 年/日本/カラー/DCP/90分
配給:太秦
公式サイト:http://www.hakodatecoffee.com/
★2016年9月24日(土)渋谷ユーロスペースより全国順次公開!
posted by sakiko at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする