2016年09月25日
シーモアさんと、大人のための人生入門 原題:Seymour: An Introduction
監督:イーサン・ホーク
出演:シーモア・バーンスタイン、イーサン・ホーク、マイケル・キンメルマン、アンドリュー・ハーヴェイ、ジョセフ・スミス、キンボール・ギャラハー、市川純子ほか
俳優・脚本家・映画監督・演出家・小説家としてキャリアを積んできたイーサン・ホーク。1970年生まれ。人生の折り返し点を迎え、行き詰まりを感じ悩んでいたとき、ある夕食会で当時84歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインと隣り合わせる。たちまちシーモアに魅了されたイーサン・ホーク。安心感を覚え、悩みを打ち明ける。やがて、彼のドキュメンタリーを撮ろうと決める。
1927年生まれのシーモアは、ピアニストとしてキャリアを積んできたが、演奏会の商業的側面に幻滅を感じ、もっとクリエイティブな活動をしたいと50歳の時、引退コンサートを開く。以後は自分の知識を教え子に伝え、自信を持たせることに人生を費やしている。
映画では、6歳の時、母親にピアノを習いたいとせがみ、誰かから譲ってもらった中古のピアノでレッスンを始めたこと、ピアニストとしてキャリアを積んできたけれど、演奏会では不安や恐怖を感じたこともあること、朝鮮戦争に従軍し、鹿が近寄ってきた時には戦死して天国にいるに違いないと思ったことなどが語られます。
映し出されるシーモアさんのふくよかなお顔を観ているだけで、なんとも幸せな気持ちになります。
シーモアさんの語ることすべてが心に響くのですが、中でも「金や物で幸せになっている人はいない」という言葉はぐさりとささりました。
人生を豊かにするものは何かを教えてもらったような気がします。(咲)
配給・宣伝:アップリンク
2014年/アメリカ/81分/英語/カラー/1:1.85/DCP
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/seymour/
★2016年10月1日(土)シネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか、全国順次ロードショー
2016年09月24日
スーパーメンチ 時代をプロデュースした男!(原題:Supermensch: The Legend of Shep Gordon)
監督:マイク・マイヤーズ
撮影:マイケル・プルット=ブルン、アンドレア・フォン・シェーレ
出演:シェップ・ゴードン、アリス・クーパー、スティーヴン・タイラー、マイケル・ダグラス、シルベスター・スタローン他多数
1968年大学卒業後、ロサンゼルスに向かったシェップ・ゴードンはチェックインしたホテルで“たまたま”ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリクスらと知り合った。その場のなりゆきで音楽マネジメントの道に進むことになる。その後、1970年代のミュージックシーンを牽引する辣腕×剛腕プロデューサーとなり、今日まで多くのスターを誕生させてきた。1991年にゴードンと知り合ったマイク・マイヤーズは、それ以来親交を深め、ゴードンの破天荒な半生をドキュメンタリーにまとめた。
この作品を観るまで全く存在を知りませんでした。それもそのはず、プロデューサーとして裏方に徹してきたので、一般には知られていない人でした。しか〜し、ハリウッドでは超有名人物で陰の実力者といっても過言ではないらしいです。「暴力、セックス、反逆」をキーワードに、大人の嫌がることをすればあたる!とロックスターを作り出したようです。スターは過激ですが、ご本人は気さくで明るく人好きのする印象です。しかも、いつでも人のために全力を注ぎ、後押しをしてきたパワフルかつチャーミングな方でした。カリスマシェフの仕掛け人もこの方だったとは。
喧噪の都会から離れ、今やっと心安らぐ時間を持ったゴードン氏。「家族」に憧れながらついに自分の家族を作れずに来てしまった、と語る姿が寂しそうです。モテモテだったのにあんなに仕事していては、プライベートの時間はさぞ少なかったでしょう。たくさんの有名人の貴重なアーカイブ映像に、この人たちと一緒に走り続けてきたゴードン氏を重ねました。お疲れ様。(白)
2013年/アメリカ/カラー/86分
配給:ピクチャーズデプト
(C)2013 NoMoneyFun Films Inc.and A&E Television Networks LLC. All Rights Reserved.
http://www.supermensch.jp/
★2016年9月24日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
白い帽子の女(原題:By the Sea)
監督・脚本:アンジェリーナ・ジョリー・ピット
撮影:クリスティアン・ベルガー
音楽:ガブリエル・ヤーレ
出演:アンジェリーナ・ジョリー・ピット(ヴァネッサ)、ブラッド・ピット(ローランド)、メラニー・ロラン(レア)、メルビル・プポー(フランソワ)、ニエル・アレストリュプ(ミシェル)
1970年代の南フランス。作家のローランドと妻のヴァネッサが海辺のホテルにヴァカンスで訪れた。ローランドの執筆は進まず、カフェに入り浸り。ヴァネッサは殆どの時間をホテルで過ごしている。二人は思いがけない不幸に見舞われて以来、心の傷がふさがらずお互いに距離をおくようになっていた。
たまたま壁の穴に気づいたヴァネッサは、好奇心から覗いてみると隣の寝室が目に入った。ハネムーンでやってきた新婚カップルのむつまじい様子から目が離せなくなる。
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー・ピット夫妻のハネムーンの地でもあったマルタ島での物語。二人が知り合った『Mr. & Mrs. スミス』以来10年ぶりの共演作なのに、なぜかとても寂しい内容で、アンジェリーナは激やせで表情は暗いし、このとき体調が悪かったのかしら?とつい思ってしまいました。ドキュメンタリーじゃないんですけど。
屈託なく明るい新婚さんと、妻を亡くしたカフェの主人、毎日やってくる馴染み客との対比もあり、ローランド夫婦の愛と絆に思いをはせる作品。風景も優しいです。
ああ、それなのに現実ではつい先日“アンジェリーナから離婚申請”のニュースが駆け巡り、おしどり夫婦にいったい何が??(白)
本作で初めて、アンジェリーナ・ジョリー・ピットの名義で監督・製作・脚本に名を連ねているアンジェリーナ。なのに、離婚・・・ 養子を含めて6人の子どもたちはどうなるの?と心配です。
それはさておき、本作の邦題『白い帽子の女』、確かに白い帽子を被って出てくる場面はあるのですが、原題の『By the Sea』の方が、やっぱりしっくりします。美しすぎる海辺での出来事。人生は美しいばかりでないのが際立ちます。(咲)
2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/122分/R15+
配給:ビターズ・エンド、パルコ
(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS
http://shiroiboushi.jp/
★2016年9月24日(土)シネスイッチ銀座、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
メカニック ワールドミッション(原題:Mechanic: Resurrection)
監督:デニス・ガンゼル
脚本:フィリップ・シェルビー
出演:ジェイソン・ステイサム(アーサー・ビショップ)、ジェシカ・アルバ(ジーナ)、トミー・リー・ジョーンズ(マックス・アダムス)、ミシェル・ヨー(メイ)、サム・ヘイゼルダイン(クレイン)
元殺し屋のビショップは正確無比な仕事ぶりから“メカニック”と呼ばれていた。今は足を洗って身元を隠し、リオデジャネイロで穏やかに暮らしていた。ある日、子どもの頃いっしょに育てられたクレインという因縁の男から仕事の依頼が来る。クレインの追っ手をまいてタイに身を隠していたが、たまたま出くわした罪もない女性を人質に取られ、やむをえず依頼を受けることになってしまった。暗殺のターゲットは3人。いずれも武器商人として裏世界を牛耳る大物たちだった。
『メカニック』(2011/サイモン・ウェスト監督)から間があきましたが、待望の2作目です。前作でもその手際の良さに驚きました。紹介記事はこちら。今回も変わらず。整理整頓が苦手、段取りの悪い筆者には神業のように見えます。
ビショップが仕事をする上のルールは3つ、「一切の痕跡を残さない、100%事故死に見せる、誰とも組まない」。今回は3人がターゲットですが、セキュリティが半端なく高い相手ばかり。『ミッション:インポッシブル』かと思うような難題をこなしていきます。ジェイソン・ステイサムは全然年取っていないような気がしますが、もうすぐ50歳になるのでした。ミシェル・ヨーが顔を見せているのに、アクションは封印でちょっと残念。その分ジェシカ・アルバがお飾りでなく頑張っています。(白)
2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/99分
配給:ショウゲート
(C)ME2 Productions, Inc. 2016
http://mechanic-movie.com/
★2016年9月24日(土)より新宿バルト9他全国ロードショー
神聖なる一族24人の娘たち 原題:Nebesnye zheny lugovykh mari 英題:Celestial Wives of the Meadow Mari
監督: アレクセイ・フェドルチェンコ
出演:ユーリア・アウグ、ヤーナ・エシポビッチ、ダリヤ・エカマソワ、オリガ・ドブリナ
500年もの間、ロシア西部のヴォルガ河畔で独自の言語と文化を保ってきたMari(マリ)人たち。ロシア連邦の中でも際立って特異な民族で、どこにもない宗教や世界観を持つ彼らの住むマリ・エル共和国は、まるで魔法のような世界。
10代から老婆まで、O(オー)で始まる名前の24人の女性たちが、「生」や「性」にまつわる自分の物語を語る。
理想の夫を選ぶ目を養うためにキノコの形を丹念に調べるオシュチレーチェ、か細い身体を豊満にするための儀式を受けるオシャニク、夫の股間の匂いを嗅いで浮気の確証を得ようとするオーニャ、夫に恋した森の精霊に呪いをかけられてしまうオロプチー・・・
マリ人のことを初めて知り、興味津々でした。ウラル語族系民族で、「マリ」という語には、《夫、男》という意味があるそうです。マリ語は、フィンランド語やハンガリー語と同系統のフィン・ウゴル系。伝統的に、人間と自然とが密接に繋がっていると考える自然崇拝とのことで、日本人にも相通じるところがあるような気がします。
アレクセイ・フェドルチェンコ監督は、民俗学者で作家のデニス・オソーキンと組み、マリの伝承や慣習をモチーフに女性たちの物語を作り上げ、マリ・エル共和国に移り住んで1年かけて撮影。四季折々の風景の中で女性たちが語る話には、ちょっと大胆な性にまつわる話もあって、実におおらか。
O(オー)で始まる名前にこだわったのは、“O”という文字が、車輪のような形で、太陽のようにも見え、なんといっても単純に美しいからだそう。
なんとも摩訶不思議な世界でした。 (咲)
配給:ノーム
2012年/ロシア/106分/カラー/DCP
公式サイト:http://24musume-movie.net/
★2016年9月24日(土) シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー