2016年08月21日
リトル・ボーイ 小さなボクと戦争 原題:LITTLE BOY
監督:アレハンドロ・モンテヴェルデ
脚本:アレハンドロ・モンテヴェルデ ペペ・ポーティーロ
出演:ジェイコブ・サルヴァーティ、エミリー・ワトソン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、マイケル・ラパポート、デヴィッド・ヘンリー、エドゥアルド・ヴェラステーギ、ベン・チャップリン、トム・ウィルキンソン
第二次世界大戦下のアメリカ、カリフォルニア州の小さな漁村。少年ペッパーは8歳なのに、99cmしかなくてリトル・ボーイといじめられていた。唯一の友達は父ジェームズ。ところが、兄ロンドンが偏平足のため徴兵検査に落ち、父が徴兵されてしまう。しょげているペッパーを兄は父が大好きだった奇術師のショーに連れて行く。壇上に呼ばれ念力を使うことに成功したペッパーは、戦場の父に念を送り続ける。やがて父が捕虜になったとの知らせが届く。
ある日、米国への忠誠心を示し収容所から釈放された日系人ハシモトが村に越してくる。父を捕虜にした日本兵を想像しハシモトの家に石を投げるペッパー。司祭はペッパーに信仰を示すリストを渡し、やり遂げれば父が帰るという願いは叶うと諭す。「飢えた人に食べ物を」などと書かれたリストの最後には、「ハシモトに親切を」とあった。
翌日からペッパーはハシモトの家に通う。兄は弟が日系人と付き合うのが不満だ。リストを完遂すれば父が帰るという話も信じがたい。ペッパーは辛子の粒程の信仰心があれば山だって動かせると、山に念を送る。地震が起こり、町の人たちはペッパーを信じるようになる。
やがて、広島に原子爆弾「リトル・ボーイ」が投下され戦争が終わる。ペッパーの念が通じたと町の人たちは大喜び。だがペッパーは、捕虜の父は立場が悪くなるし、大勢の人が死んだのは自分のせいだと悩む・・・
ペッパーは仕方なくハシモトと付き合い始めるのですが、だんだんハシモトと心を通わせていきます。ハシモトは、モンゴルが日本に攻めてきた時に勇敢に戦った小柄な侍マサオ・クメの話をしてペッパーを励まします。この話、聞いたことがないのですが、監督はどこから探し出してきたのでしょう。
監督は、10代の頃にメキシコからアメリカに移民。第二次世界大戦の時に、日系人が強制収容されたことや、捕虜になった米国兵のことなど、知らなかった歴史に興味を持ち、当時の米国の普通の家庭を舞台に本作の脚本を執筆。広島に投下された原子爆弾が“LITTLE BOY”と呼ばれていたことから、小柄な少年を主人公に仕立てます。
父親が戦地にいって不在の中、ペッパー少年の心のよりどころになったのが、カトリックの司祭と、当時、米国社会で差別されていた日系人のハシモト。二人の言葉のいくつもがペッパーだけでなく、映画を観ている私にも響きました。中でも、「できると信じていることは、やったほうがいい」というハシモトの言葉が心に残っています。(咲)
2014年/アメリカ/ 5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル
配給:東京テアトル
公式サイト:http://www.littleboy-movie.jp
★2016年8月27日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースほか全国ロードショー
海峡を越えた野球少年 原題:グラウンドの異邦人 英題: STRANGERS ON THE FIELD
監督・撮影・編集: キム・ミョンジュン (『ウリハッキョ』)
製作: クァク・ヨンス
プロデューサー・撮影: チョ・ウンソン (『60万回のトライ』)
日本プロデューサー: 力武俊行
音楽: カン・サング
ナレーション: クォン・ヘヒョ (「冬のソナタ」「私の名前はキム・サンスン」)
出演:李孝範、姜孝雄(セカンド)、権仁志(キャッチャー)、金勤(レフト)、菲俊漢(サード)、梁視鉄(ピッチャー)、張基浩(センター)
朝鮮戦争後の1956年、戦後復興のため「鳳凰(ポンファン)大旗全国高校野球大会」の開催が始まった。予選なしで韓国全ての高校チーム約50校が参加できるという大会で、一大センセーションを巻き起こした。さらに、もう一つの大きな話題が、在日韓国人の高校生から選抜した在日学生野球チームを招聘したことだった。当時、日本と韓国の高校球児のレベルの差は大きく、洗練された在日チームのプレイは、韓国の球児を刺激し、その後の野球ブームの礎となった。在日高校球児の祖国訪問試合は、韓国の経済が大きく落ち込む1997年まで続いた。その42年の間に、海を越えた在日球児は約620名。在日チームは、74年、82年、84年の3回準優勝している。
その82年に決勝戦まで勝ち進んだ在日同胞チームのメンバーにプロ野球の始球式に登板してもらおうという企画が持ち上がる。熱心な韓国の野球ファンが日本にやってきて、当時の選手を探すが難航する・・・
キム・ミョンジュン監督は、「誰かが伝えないと、この海を渡った在日高校球児のことが、韓国の野球史から忘れ去られてしまう」という言葉を耳にして気になり、野球のことはよく知らないながら、監督を引き受けたそうです。
在日野球球児の多くが、日本語のほうが堪能で、意思疎通が上手く出来るか、在日というアイデンティティによる様々な事情があって取材に応じてくれるかどうかなどの不安があったそうですが、ゆかりのある人たちの協力を得て取材を進め、本作が仕上がりました。
日本と韓国の間で、こんな野球史もあったのだと興味深く拝見しました。
30年の時を経て集まった高校球児たち。選抜チームとして、その年、単発的に集められた彼らにとって、ほんとに思いがけない再会だったのでしょう。苦楽を共にした高校時代に一気に戻ってはしゃぐ姿に、かけがえのない思い出を持っていることをうらやましく思いました。ちょうど私も、4年に一度の高校の同期会があったばかりで、あ〜青春時代だったなぁ〜と。(咲)
2014年/韓国/103分/16.9/カラー・モノクロ/ドキュメンタリー
配給: スプリングハズカム 配給協力: 太秦
公式サイト:https://www.facebook.com/yakyusyonen/
★2016年8月20日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー