2016年07月31日
太陽のめざめ(原題:La tete haute)
監督:エマニュエル・ベルコ
脚本:エマニュエル・ベルコ、マルシア・ロマーノ
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:カトリーヌ・ドヌーブ(ブラック・フローランス判事)、ロッド・パラド(フェランド・マロニー)、ブノワ・マジメル(ヤン)、サラ・フォレスティエ(マロニーの母親)、ディアーヌ・ルーセル(テス)
家庭裁判所のフローランス判事は、若い母親に置き去りにされた6歳の少年マロニーを保護した。10年後、再会した彼は、母親に育児放棄され学校へもろくに通わずいっぱしの不良少年になっていた。判事はマロニーを立ち直らせようと田舎の更生施設に入れる措置をとる。施設には同じような境遇の少年たちが喧嘩やもめごとを繰り返していた。マロニーに判事が教育係としてつけたヤンにも「父親でもないくせに」と反発するばかり。しかし、職員の娘テスに恋したことから、荒れた心が次第に潤っておちついていく。
女優としても活躍するエマニュエル・ベルコ監督の本作は、2015年のフランス映画祭のオープニングを飾りました。女性監督としては2度目の快挙だそうです。年々貫禄の増すカトリーヌ・ドヌーブ久しぶりの主演作。『しあわせの雨傘』(2010年)以来でしょうか。『神様メール』では意外な役で、多くの登場人物のうちの一人でした。
非行を繰り返すマロニー少年を演じたロッド・パラドはこれまで演技経験がなく、大抜擢ですが早くもセザール賞の有望男優賞などを受賞して注目されています。陰のある端正な顔立ちが早世したリヴァー・フェニックスのようだと評判だとか。
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』と同じく、こどもを見守る大人の存在がどれだけ重要かと知らせてくれる作品です。物語の中に、「ママに会いたい」と施設の電話口で涙ぐんだり、ほかの大人から母親をかばったりするシーンがあり、どんなに荒れた子も母親を慕い続けているのにジーンとしました。この世にこどもを産み出した親はもっと自覚しなくちゃいけません。(白)
2016年/フランス/カラー/シネスコ/119分
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
(C)2015 LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 2 CINEMA - WILD BUNCH - RHONE ALPES CINEMA – PICTANOVO
http://www.cetera.co.jp/taiyou/
★ 2016年8月6日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国公開
奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ(原題:Les heritiers)
監督・脚本・プロデューサー:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
原案・脚本:アハメッド・ドゥラメ
出演:アリアンヌ・アスカリッド(アンヌ・ゲゲン)、アハメッド・ドゥラメ(マリック)
パリ郊外の貧困層が暮らす地区にあるレオン・ブルム高校。人種も宗教も様々な子どもたちが集まっている。学力別で分けられ、問題児ばかりが集められた1年の底辺のクラスを、赴任してきたばかりの歴史教師アンヌが受け持った。生徒たちは好き勝手なことをし、授業がなりたたない。校長まで「あの子たちに手をかけるのは時間の無駄です」という始末。しかしアンヌは諦めず、彼らに学ぶことの楽しさと、自信を持たせたいと歴史コンクール出場を提案する。テーマは「アウシュビッツ」、初めは殆どの生徒たちが反発し、放課後に集まったのは数人だった。資料を集め、戦争の施設を訪ね、アウシュビッツ収容所を生き延びた証人を学校に招き体験を語ってもらった。生の声を聴いた日から生徒たちは劇的な変化を見せた。自主的に居残りしてテーマを掘り下げ、発表の準備を着々と進めていった。
この映画はマリックを演じているアハメッド・ドゥラメが、自分の体験を元にした脚本をマリー監督に渡したことから始まりました。アハメッドと話し合い、共同で脚本を練りあげました。反抗的だった子どもたちを情熱をもって指導する先生のモデルのアンヌ・アングレス先生の授業も見学したそうです。こういう先生に出会ったこどもたちは幸せです。
アウシュヴィッツ強制収容所の生存者レオン・ズィゲルさんご本人の生の講演シーンは、ズィゲルさんと生徒たちの表情を捉えて深く印象に残ります。日本でも被爆された方々が語り部となっておられますが、ズィゲルさんも戦後自分の体験を語り継ぐことをずっと続けてこられた方です。
落ちこぼれているこどもたちは家庭に問題を抱えていますが、彼らに選択肢はありません。学校でも自分が最下層だとレッテルを貼られています。それを引き上げたのは後押しをしてくれる先生、過酷な状況にあっても未来を信じて生きてきた大人に会ったことでした。こどもはこれから大人になりますが、私たちはかつてこどもでした。虚飾なく昔を思い出して、彼らに寄り添って見守りたいものです。(白)
2014年/フランス/カラー/シネスコ/105分
配給:シンカ
(c)2014 LOMA NASHA FILMS - VENDREDI FILM - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - UGC IMAGES-FRANCE 2 CINEMA - ORANGE STUDIO
http://kisekinokyoshitsu.jp/
★2016年8月6日(土) YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿ほか全国順次公開
ターザン:REBORN 原題 The Legend of Tarzan
デビッド・イェーツ監督
キャスト
アレクサンダー・スカルスガルド ターザン/ジョン・クレイトン3世
サミュエル・L・ジャクソン/ジョージ・ワシントン・ウィリアムズ
マーゴット・ロビー/ジェーン・クレイトン
ジャイモン・フンスー/族長ムボンガ
ジム・ブロードベント/首相
原作 エドガー・ライス・バローズ
アフリカに生まれジャングルで育った英国貴族ターザン。E・R・バローズの古典小説「ターザン」シリーズを元に、ターザンの冒険を描くアクションアドベンチャー。生後間もなく、コンゴの密林で類人猿に育てられたターザンだったが、ジェーンと結婚し英国に戻り、貴族として政府の要人として、ロンドンで妻と裕福な暮らしを送っていた。しかし、ジャングルでの生活が忘れられない。
ある日、政府からの依頼で故郷コンゴへ赴くことになった。しかし、これは罠だった。妻ジェーンを、彼女が育った村に預けて仕事にでかけたが、ジェーンがさらわれてしまった。妻を救うため、ジャングルで鍛えた強靭な体と本能で、妻を取り戻すための行動を起こすターザン。ジャングルの中を蔓をつかって飛び回るお馴染みの姿。そして雄たけび。彼を育ててくれたジャングルの動物たちとの共同作業。果たして彼は愛する妻を取り戻すことができるのか?
子供の頃読んでいた「ターザン」シリーズ。ジャングルを動物と共に走り回るターザンの姿に魅了され、シリーズ全部を読破した。その中で、英国貴族であることがわかって、英国に行ったターザンがアフリカのジャングルにもどるという話があったことは覚えているが、詳しい内容までは覚えていなかった。今回の作品はその原作に基づいているのは確かだろう。しかし、サミュエル・L・ジャクソンがアメリカからの特使としてターザンの協力者として出てくるのは、今の時代だから出てきたキャラクターなのだろう。
「ターザン」は、過去幾度となく映画化されてきたが、今回のようにCGだらけというのは初めてなのだろうか? それにしても類人猿のイメージが今まではチンパンジーに近かったのだけど、今回はゴリラっぽい。これはいまひとつかな。今までと比べて愛らしくない。(暁)
2016年7月30日(土)全国ロード ショー
2016年 アメリカ 2D/3D 上映時間110分
配給 ワーナー・ブラザース映画
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/tarzan/
2016年07月30日
ヒマラヤ 〜地上8000メートルの絆〜 原題 Himalaya
監督イ・ソクフン
製作ユン・ジェギュン
製作総指揮チョン・テソン
キャスト
ファン・ジョンミン オム・ホンギル役
チョンウ パク・ムテク
チョ・ソンハ イ・ドンギュ
キム・イングォン パク・ジョンボク
ラ・ミラン チョ・ミョンエ
2005年エベレストに眠る仲間の亡骸を探すため、名誉も栄光もない遠征をした韓国の「ヒューマン遠征隊」の実話を元にした作品。仲間たちが命をかけたのは、登頂よりも大切な「絆」。
13年をかけ、アジア初のヒマラヤ8000メートル峰14座の登頂に成功した実在の登山家オム・ホンギルは、ヒマラヤ4峰を共に登頂した後輩ムテクが悪天候のため、エベレスト(8848m)登頂後、下山中に遭難死したことを知る。そこはエベレスト山頂直下8750m。誰もが遺体の回収を諦める中、ホンギルはかつて数々の偉業を一緒に成し遂げた仲間たちを集め「ヒューマン遠征隊」を結成、その地に向かう。遺体がある位置は写真に撮ってあったので場所はわかっているのだが、そこにたどり着くのは容易ではない。やっとたどり着いても遺体を降ろすのは大変。危険をかえりみない作業が続くが下まで降ろせず、泣く泣くそこに葬った。
前半はホンギルとムテクとの出会い、韓国登山界の人間模様が描かれる。
『国際市場で逢いましょう』『ベテラン』のファン・ジョンミンが強く優しいリーダー像を全身で体現しカリスマ登山家を熱演。後輩ムテク役を「応答せよ1994」のチョンウがそれぞれ演じる。監督は「パイレーツ」のイ・ソクフン。
このところ、毎年のようにエベレストや世界の高峰をテーマにした映画が公開されているが、登頂を目指したものではなく、遭難した人の救助を描いた作品は少ない。『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』でも、遭難した仲間を助けるために集まった各国の登山家たちが描かれていたが、そんな高所での救助はなかなか難しい。自身の危険をも顧みず挑戦する姿が描かれる。そして、神々しいまでの朝焼けの光景が素晴らしい。雪崩や滑落シーンも迫力満点。韓国登山界の状況は、日本の山岳雑誌であまり取り上げられてこなかったので、貴重な映像でもある。(暁)
*7月30日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
2015年 韓国 上映時間124分
配給 CJ Entertainment Japan
公式HP http://himalayas-movie.jp/intro.html
2016年07月24日
あなた、その川を渡らないで(英語題:My Love, Don't Cross That River)
監督・撮影:チン・モヨン
出演:チョ・ビョンマン(おじいさん)、カン・ゲヨル(おばあさん)
韓国・江原道 横城(カンウォンドウ フェンソン)郡の小さな村、古時里(コシリ)に住む老夫婦の一年を追ったドキュメンタリー。おじいさんは98歳、おばあさんは89歳。結婚して76年になる今も、お揃いの韓服を着て若い恋人同士のように手をつないで歩く。
子どもたちは独立して町に住み、二人は支えあいながら仲睦まじく暮らしている。春は花を摘み、夏は川辺で遊び、秋は落ち葉を集め、冬は雪ダルマを作る。高齢の二人には身体の不調も多々あり、別れのときも近づいている。
この小さなドキュメンタリー作品はチン・モヨン監督が二人が登場するテレビ番組を見たことから始まりました。ひとつの季節だけだったので、一年を通じた二人の暮らしぶりを映像に残したいと思われたのだそうです。色鮮やかな韓服が四季折々の里山の風景によく映えて、一幅の絵のようです。このお年で腰も曲がらず、目も耳もしゃんとしているのには感心しました。
ほほえましいシーンが続きますが、美しく楽しいことばかりではありません。幼いうちに亡くした子供たちのために、当時は買ってやれなかったパジャマを供えて、おばあさんは涙にくれます。
二人の姿に理想の夫婦を見出し、長い年月の間にどれほど苦労があったかと自分の来し方も重ねて、観客は笑ったり泣いたりするのでしょう。韓国でドキュメンタリーとしては異例の大ヒット作品となりました。(白)
2014年/韓国/カラー/86分
配給:アンプラグド
(C)2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.
http://anata-river.com/
★2016年7月30日(土)シネスイッチ銀座ほかにてロードショー