2016年06月26日
神様たちの街
監督・製作・撮影・編集:田中幸夫
助監督:北川のん
『徘徊 ママリン87歳の夏』の田中監督が地元神戸のシニア中心のファッションショーを取材したドキュメンタリー。1995年の阪神淡路大震災で街は甚大な被害を受けた。兵庫区では2005年から毎年「兵庫モダンシニアファッションショー」を開催している。モデルは公募し、12月の本番に向けて出演が決まったモデルさんや関係者たちが準備をしていく。
戦災を生き延び、平和な時代を謳歌しているときに大震災に遭ったシニアたち。様々な思いを抱えながら、身体の不調とも折り合って日々を大切に生きる様子を映し出しています。ランウェイを進む方々のなんと誇らしそうなこと。とびきりの笑顔が見られました。『徘徊 ママリン87歳の夏』も同時期に凱旋上映いたします。(白)
2016年/日本/カラー/HD/75分
配給:風楽創作事務所
宣伝:オリオフィルムズ
http://kamisamaga.com/
★2016年7月2日(土)新宿K'sシネマにて上映
海すずめ
監督・脚本:大森研一
撮影:今井哲郎
音楽:中橋孝晃
主題歌:「ただいま。」植村花菜(キングレコード)
出演:武田梨奈(赤松雀)、小林豊(岡崎賢一)、内藤剛志(赤松武男)、岡田奈々(赤松京子)、目黒祐樹(赤松辰三)、吉行和子(三好トメ)、佐生雪(原田ハナ)
赤松雀は宇和島市立図書館自転車課に勤めている。市民のリクエストにこたえ、探し物をしたり希望の本を届けたりが仕事だ。一方通行や狭い道も自転車でひた走る。雀はもともと作家志望で、初めて書いた小説が受賞した後上京したのだが、編集者の期待する作品がどうしても書けずに故郷へ舞い戻ってきたのだった。反対していた父とは今も気まずい。
宇和島は伊達政宗の長男秀宗が藩主として入部して以来400年となるため、記念の大イベントが計画されていた。中でも目玉となるのが姫君の衣装が完全復刻されて400年祭の行列でお披露目されること。それなのに豪華な打掛が出来上がっていない。その図案がある刺繍図録が図書館から紛失しているのだ。おまけに自転車課の存続もあやしくなってきた。あと3日の期限を突きつけられ、雀たち自転車課は一丸となって解決に当たる。
伊達政宗の長子秀宗が10万石を賜ってこの宇和島へ入部していたとは知りませんでした。現在十三代めとなる当主が宇和島伊達400年を記念して、この映画の企画を愛媛県出身の大森監督とともに立ち上げたそうです。映画にもご本人として出演されています。
切れの良いアクションで魅了してきた武田さんはアクションを封印、作家を夢見て挫折したヒロインの雀を演じています。お母さん役の岡田奈々さんがお久しぶりで、可憐なアイドル歌手から青春スターとなった●10年前が懐かしいです。
自転車課は実際にはありませんが、海と山を背景にペダルを踏む姿が軽快ですがすがしいです。エコだし、小回りはきくし、ほんとにあっても良さそうな課ですが。400年祭は実際に昨年開催されて、その映像が使われています。(白)
2016年/日本/カラー//108分
配給:アークエンタテインメント
(C)2016「海すずめ」製作委員会
http://umisuzume.com/
★2016年7月2日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー
ブルックリン(原題:Brooklyn)
監督:ジョン・クローリー
原作:コルム・トビーン
撮影:イヴ・ベランジェ
脚本:ニック・ホーンビィ
出演:シアーシャ・ローナン(エイリシュ・レイシー)、ジュリー・ウォルターズ(キーオ夫人)、ドーナル・グリーソン(ジム・ファレル)、エモリー・コーエン(トニー・フィオレロ)、ジム・ブロードベント(フラッド神父)、ジェーン・ブレナン(メアリー・レイシー)、フィオナ・グラスコット(ローズ・レイシー)
アイルランドの田舎町で母と姉ローズと暮らすエイリシュ・レイシー。街に女性の働く場所は少なく、エイリシュは口うるさい女主人の店で我慢しながら働いている。大人しく控えめなエイリシュは、会計士をしている美人で聡明な姉ローズを尊敬し憧れていた。そんな妹にチャンスを、とローズはアメリカに行って働くことを薦める。思い切って渡米したエイリシュは、姉の知り合いのフラッド神父の口利きで、ニューヨーク、ブルックリンのキーオ夫人の下宿に住み、高級デパートの店員となった。しかし故郷とあまりにも違う環境に、自信を失いホームシックになってしまう。
心配した神父の薦めで大学の会計士コースを受講し、アイルランド出身者のダンスパーティに参加したエイリシュは、イタリア系の青年トニーに出会った。次第に自信と笑顔を取り戻していった矢先、故郷から悲報が届く。
1950年代にアイルランドからアメリカに渡った少女が職を得て、恋人に巡り合い、成長していくストーリーが前半。一度懐かしい故郷に戻り、悲しい思いをする反面、新しい出会いに心揺れるのが後半。人生はいろいろな岐路に立ち、どの方向に行くか選択・決断する連続だと思いますが、この物語もまさにそうです。ヒロインのエイリシュ本人だけでなく、周りの人々の決断も互いに影響しあいます。エイリシュに渡米を薦めたローズは、自分が残るほうを選びますし、大勢の中からエイリシュに声をかけたトニーもまた選択しているわけです。エモリー・コーエン演じる明るくて愛嬌のあるトニー、ドーナル・グリーソン演じる家柄の良い落ち着いた物腰のジムの二人…あなたもきっと「う〜〜む」と迷ってしまうはず。
シアーシャ・ローナンはニューヨーク生まれですが、3歳で両親の故郷アイルランドに戻っています。新天地を求めて海を渡った祖父母や両親世代のことなので、深く理解したようです。すっかり大人の女性になった彼女がほんとに美しいです。心情と成長ぶりが現れる彼女の衣装にもぜひ注目を。エイリシュのコートはアイルランドのナショナルカラーの緑。故郷と共にあるかのように自分を守るようにきっちりと着ています。この緑がとても目立ちます。
作品中で歌われるアイルランド語の民謡が哀切で印象に残りました。ホームレスの老人たちに食事がふるまわれるシーンです。国を捨てて出てきてきつい労働をしてアメリカに貢献したけれど、仕事がなくなって貧しくなり、かといって帰るところもない移民たちです。少女の成長とラブロマンスだけでなく、アメリカにやってきた移民の歴史やアメリカとの関わりも知ることのできる作品でした。(白)
2015年/アイルランド、イギリス、カナダ合作/カラー/ビスタ/112分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
http://www.foxmovies-jp.com/brooklyn-movie/
★2016年7月1日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ
監督・脚本:宮藤官九郎
撮影:相馬大輔
音楽:向井秀徳
出演:長瀬智也(キラーK)、神木隆之介(大助)、尾野真千子(なおみ)、森川葵(ひろ美)、桐谷健太(COZY)、清野菜名(邪子)、古舘寛治(松浦)、皆川猿時(じゅんこ)、シシド・カフカ (修羅)、清(鬼姫)、古田新太(えんま校長)、宮沢りえ(手塚ひろ美)、坂井真紀(よしえ)
大助はシャイな高校生。同級生のひろ美ちゃんが大好きだったが、いまだ告白できないでいた。修学旅行で接近のチャンスをつかもうと思っていたのに、なんとバスが崖下に転落。大助が目覚めると、そこは紅蓮の炎が燃える地獄だった!死んでしまったらしい。見回しても同級生はいなかった。
なんで俺だけ〜?まだ17歳なのに〜キスもしてないのに〜!パニくる大助は、地獄専属ロックバンド“地獄図(ヘルズ)”のボーカル&ギターの赤鬼キラーKの誘いで、地獄農業高校の軽音楽部に入ることになった。えんま様の判定次第では、現世に転生できるかもしれない!と一縷の希望を胸に“鬼特訓”を受ける大助だった…が。
クドカン監督の4作目の作品。本来は2月6日からの公開予定で、ずいぶん前に試写を見ていました。1月末にバス転落事故が起きたため、公開が延期されて今になりました。試写室入口にずっと等身大(長瀬くん大きい!)のキラーKのパネルがあって、鬼だけど仁王様のようでした。公開まで見守ってくれていたのかも。
時間をおいても、地獄のロックバンドの楽しさ面白さがいっぱいつまった作品なのを思い出します。地獄だっていうのにみんな楽しそう。現世に思いを残している者ももちろんいて、家族がどうしているのか気にしています。転生しても人間になれるとは決まっていない上、地獄と現世では時間のすすみ方が違い、地獄の1週間は現世の10年間、速い!!転生できる回数は限られていて、使い切るとずっと鬼のまま。さあどうする!?
たくさんの俳優さんタレントさんが出演していますが、地獄メイクでわかりにくいかもしれません。ライブはノリノリで、テーマ曲が脳内ヘビロテとなります。地獄が舞台なのに、テンション上がって元気出る映画です。(白)
2016年/日本/カラー/シネスコ/125分
配給:東宝、アスミック・エース
(C)2016 Asmik Ace, Inc./TOHO CO., LTD./J Storm Inc./PARCO CO., LTD./AMUSE INC./Otonakeikaku Inc./KDDI CORPORATION/GYAO Corporation
http://tooyoungtodie.jp/
★2016年6月25日(土)ロードショー
日本で一番悪い奴ら
監督:白石和彌
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社刊)
脚本:池上純哉
撮影:今井孝博
音楽:安川午朗
出演:綾野剛(諸星要一)、YOUNG DAIS(山辺太郎)、植野行雄(アクラム・ラシード)、矢吹春奈(田里由貴)、瀧内公美(廣田敏子)、青木崇高(栗林健司)木下隆行(加賀谷力)、音尾琢真(国吉博和)、ピエール瀧(村井定夫)、中村獅童(黒岩勝典)
諸星要一は柔道の腕を買われ、北海道警の刑事になった。正義感が強い諸星はまじめに勤めるが、点数主義の道警の中ではまったく成績があげられない。先輩刑事の村井はそんな諸星に「点数を稼ぐためには裏社会にS(スパイ)」を作れ」と助言する。暴力団幹部の黒岩、麻薬の運び屋の山辺、盗難車をさばくラシードらと次々に知り合い、手元に引き入れていく。しかし、それを維持していくには多額の現金が必要だった。
「日本で一番悪い奴ら、それは警察だった」という惹句に、そこに行きつくだろうというのは映画をたくさん見ていると予想がつくのですが、これがほんとにあったことだとは!しかも私の故郷北海道では有名な事件(2002年に稲葉圭昭が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕)だったようです。現職の刑事の覚せい剤使用、さらに銃刀法違反、さらにさらに芋づる式に子飼いのSたち、および警察内部の者が送検されることになりました。26年の間にこのまじめだった警官に何があったのか、『悪人』の白石和彌監督の手際で、まるで青春群像劇のように笑いもちりばめながら見せていきます。
悪に手を染めて黒くなっていくに従い、服装や態度がおっさん化していく綾野剛さん。綾野さんがテンパったという中村獅童さんの迫力にもご注目ください。例によって捉まるのはピラミッドの底辺の関係者。根深い問題は組織の体質だと思うんですけど。笑いもちょっと苦くなります。(白)
2016年/日本/カラー/シネスコ/135分/R15+
配給:東映、日活
(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
http://www.nichiwaru.com/
★2016年6月25日(土)ロードショー