2016年05月15日

『冬冬の夏休み』『恋恋風塵』デジタル・リマスター版

台湾の巨匠、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の郷愁溢れる1980年代の名作が、日本の修復技術でデジタル・リマスター版として蘇りました。世界に先駆けて、日本で上映されます。
かつてご覧になった方にも、初めてご覧になる方にも、懐かしさがこみ上げてくる物語です。どうぞこの機会をお見逃しなく!

◆冬冬(トントン)の夏休み

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監督:ホウ・シャオシェン
出演:ワン・チークアン、リー・ジュジェン、グー・ジュン、メイ・ファン、ティン・ナイチュ
台湾/1984年/98分/カラー/シネマスコープ/ステレオ

1984年の夏休み。台北に住む冬冬(トントン)と妹の婷婷(ティンティン)は、お母さんが重病で入院し、田舎に住む祖父母の家に預けられることになる。叔父さんに連れられ、台北駅から列車に乗るが、叔父さんのガールフレンドも一緒だ。途中の駅で彼女を送った叔父さんが列車に乗り遅れる。目的地の銅鑼駅で降りた冬冬たちは、叔父さんを待つ間、地元の少年たちと親しくなり、持っていたリモコンの車を亀と交換する。
冬冬が同年代の少年たちと川で水遊びしている間、仲間はずれにされる妹。一人で道を歩いていたところ、いきなり逃げてきた強盗に倒され怪我をする。助けたのは、ちょっと頭の弱い寒子(ハンズ)だった。
一方、叔父さんの彼女が妊娠したことがばれ、おじいさんに勘当される。冬冬は叔父さんが隠れ住む部屋を訪れる・・・
冬冬の夏休み3.jpg
cA MARBLE ROAD PRODUCTION, 1984 Taiwan

20年以上前に観た映画ですが、おじいさんの家が和洋折衷の日本家屋だったことだけは鮮明に覚えていました。物語は、小学生の冬冬が田舎の少年たちと過ごした夏休みとしか記憶になかったのですが、あらためて観てみたら、少年が大人の世界を垣間見る物語だったのですね。
おじいさんの「親は子どもの一生をみれない。まともに社会に送り出すこと位しかできない」という言葉が、じ〜んと響きました。無邪気な子ども時代から、社会のいろんなことを見て、人は大人になっていくのだなぁ〜としみじみ。それでも、親にとって、我が子はいつまでも子ども。心配の種はつきないのですねぇ。(咲)


◆恋恋風塵(レンレンフウジン)
renren fuujin.jpg

監督:ホウ・シャオシェン
出演:ワン・ジンウェン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー、チェン・シュウファン、リン・ヤン
台湾/1987年/110分/カラー/シネマスコープ/ステレオ

1960年代末。中学生の少年アワンと少女アフンは、同じ村で育った幼馴染。仲良く通学する二人は、列車を下りると山道をのぼって家に帰る。アワンは成績優秀だが、父親が鉱山で怪我をして働けなくなり、家計を助けるため、台北に出て印刷屋で働きながら夜学に通うことにする。アフンも一年遅れて台北に来て、洋装店で働き始める。台北で再会した二人は、大都会の中で絆を深め、心を寄せ合うようになる。やがて、アワンが兵役につかなければならなくなり、お互い、手紙で近況を知らせることを約束する。金門島に配属されたアワンのもとにアフンから毎日のように手紙が届き、皆からうらやましがられる。兵役について1年ほど経ったころから、アフンからの手紙が届かなくなる。自分が出した手紙も受取人不明で戻ってくる・・・
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(C) CENTRAL MOTION PICTURE CORPORATION 1987

確か2回観ているのに、とても切ない物語だったことしか記憶にありませんでした。あらためて観て、あ〜なんと切ない映画かと! どう切ないのかは、どうぞご覧になって確認ください。
『悲城城市』で、トニー・レオン演じる四男と恋に落ち、結婚する女性を演じたシン・シューフェンが、まだ少女の面影を残す初々しい姿で出ていることにも注目したい作品です。
そして、淡い初恋の物語の合間に、ハッとさせられる言葉が時折出てきます。
「昔は兵役が決まると泣いた。30人行って4人しか戻ってこなかった」
「戦死すると台湾人どうし情があって、せめてもと手を切って灰にして家族に持ち帰った」
「小学校を出たとたん終戦。“あいうえお”から“ボポモフォ”に変わった」
また、手紙に書かれている金門島に船で流れついた広東人の家族への対応も興味深いものでした。台湾の人たちの経てきた歴史にも思いをはせることのできる物語でした。(咲)

この映画の舞台になった十分(シーフェン)や九份(チュウフェン)に3月に行ってきました。25年以上前にこの映画を観て、このあたりが気になり、またその後、台湾映画をいろいろ観ているうちに、この十分駅がある平渓線周辺に行ってみたいと思い、ロケ地探訪ということで2009年に初めてこの平渓線沿線に行ったのですが、すでに、この作品が撮られた時の雰囲気は変わってしまって観光地化していたけど、それでもなんか懐かしい雰囲気のある場所でした。
この平渓線周辺の十分や九份、金瓜石などは、日本統治時代はこの映画にも描かれているように鉱山がたくさんありました。戦後も鉱山は続いていましたが、この映画が撮られたころは、十分も九份もすでに閉山して、このあたりは寂れていたようですが、『恋恋風塵』や『悲城城市』などの映画が公開された後は観光地化され、今ではすっかり旅行客が押し寄せるようになりました。
かくいう私も2009年に行ったあと、今度は天燈上げの写真を撮りに来たいと思うようになり、今年(2016年)それがやっと実現しました。天燈上げのシーンは、数々の映画に描かれてきましたが、やはり身近で見ると感動でした。自分の願いを天燈に書いてそれを一斉に飛ばすのです。
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十分の天燈上げ

この作品はシネマート六本木が去年閉館するときにも上映されたので観たのですが、長い年月がたちフィルムは退色し、画面には雨が降っていたりしましたが、今回リマスター版が作られ、色も綺麗になって画面もすっきりしました。この映画とこの場所が大好きな私は、こういう形で残していただいてとても嬉しいです。
今回九份では、この『恋恋風塵』の場面が書かれた看板があった昇平戯院という映画館に行って、その写真を撮ろうと思っていたのですが、なんと看板の絵は変わっていました。とても残念でした。(暁)

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2009昇平戯院

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2016.3昇平戯院

2009年に平渓線を訪ねたレポート
台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線 『台北に舞う雪』公開記念
http://www.cinemajournal.net/special/2010/pingxi/index.html


配給:熱帯美術館
公式サイト:http://tontonrenren.jp/
★2016年5月21日(土)〜6月3日(金)ユーロスペースにて2週間限定公開後、全国順次ロードショー。


☆映画『冬冬の夏休み』『恋恋風塵』 代官山蔦屋書店とのコラボ企画
舞台である「台湾」といえば、週末旅行にもピッタリな足の伸ばしやすさ、異国情緒溢れる街並みやグルメが人気の観光大国。目的ごとに、余すことなくその魅力を楽しむためにも、ガイドブックや関連書籍には目を通しておきたいもの。そんな台湾ファン、旅行好き、ホウ・シャオシェンマニアにオススメな【『冬冬の夏休み』+台湾本】コーナーが、代官山 蔦屋書店にて展開中です。
2F映像コーナーでは『冬冬の夏休み』関連の台湾映画DVDと、海外旅行で最も利用されているガイドブック「地球の歩き方」編集部推薦の台湾関連書籍を多数ご紹介。台湾エンタメに歴史、食紀行…読めばきっと旅に出たくなること間違いなし!

コーナー設置期間 5/14(土)〜5/27(金)
代官山 蔦屋書店:渋谷区猿楽町17-5 2階映像コーナー
http://real.tsite.jp/daikanyama/floor/shop/tsutaya-books/
posted by sakiko at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

海よりもまだ深く

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原案・脚本・監督・編集:是枝裕和
撮影:山崎裕
音楽・主題歌:ハナレグミ
出演:阿部寛(良多)、真木よう子(白石響子)、小林聡美(中島千奈津)、リリー・フランキー山辺康一郎)、池松壮亮(町田健斗)、吉澤太陽(白石真悟)、橋爪功(仁井田満)、樹木希林(篠田淑子)

良多は15年前に一度だけ文学賞を取った自称作家。取材と称して探偵事務所に勤めている。妻響子は、ギャンブル好きでいつまでも夢見るばかりの夫に愛想を尽かし、息子を連れて家を出て行った。口先だけの良多は毎月の養育費も滞りがち、息子・真悟にプレゼントもできない。ちょっと現金が入ると「増やす!」とギャンブルにつぎ込むが、儲けたためしがない。そんなダメ夫×ダメ父の良多を責めないのは、団地で一人暮らしの母親淑子だけ。たまたま淑子の家に集まった良太、響子、真悟は台風が近づいて帰れなくなり、思いがけず家族の時間を持つことになった。

いろいろな形の家族を暖かく描いてきた是枝監督。主演の阿部寛さんとは『歩いても 歩いても』(08)以来のタッグ。前作とこの作品で名前も同じ良多、樹木希林さんと2度目の親子役です。ずいぶんと大きな息子で、団地の部屋が狭くみえます。母と姉ふたりの掛け合いの間の良いこと!良多について「大器晩成」「身体だけはねぇ〜」というセリフや、母親のヘソクリまで探す弟をからかう姉に笑いました。
良多は別れたしっかりものの妻に未練たっぷりで、尾行したあげく羽振りの良さげな恋人が出来たのを知って嫉妬にかられます。阿部さんがここまでダメダメな男の役というのも珍しく、かなり情けないですが、逆に阿部さんのコミカルな面が出て悲劇に陥りません。そんな息子をどんなときでも信じる慈母の言葉は、ひとつひとつ腑に落ちるものでした
「山より高い父の愛、海より深い母の愛」と、昔から伝えられていますが、「愛」が「恩」になっていることもありますね。出典は何なんでしょうか。母の日・父の日に限らず、両親にはちょっと声かけたり思い出したりしたいものです。(白)


2016年/日本/カラー//117分
配給:ギャガ
(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
http://gaga.ne.jp/umiyorimo/
★2016年5月21日(土)公開
posted by shiraishi at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする