2016年05月29日

デッドプール(原題:Deadpool)

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監督:ティム・ミラー
脚本:レット・リース、ポール・ワーニック
撮影:ケン・セング
音楽:トム・ホルケンボルフ
出演:ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン/デッドプール)、モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ)、エド・スクレイン(フランシス/エイジャックス)、T・J・ミラー(ウィーゼル)、ジーナ・カラーノ(エンジェル・ダスト)

ハイウェイを飛ばすタクシーに赤いコスチューム姿の男が乗っている。「デッドプール」と名乗る彼は、自分をこんな姿にした敵に復讐に行くところだった。
2年前。元特殊部隊のウェイド・ウイルソンは、優秀な傭兵だった。リタイアしてからは好き勝手に悪い奴をこらしめて金を稼いでいる。たまたま選んだ娼婦のヴァネッサとのベッドインで、最高に「完璧」な相手だとわかる。結婚を決めた矢先、原因不明の痛みで病院に行ったウェイドは、全身にガンが転移していて余命わずかと宣告される。藁にもすがりたい彼の前に、特別な手術を受ければガンから生還できると薦める男が現れた。手術後、目が覚めると病気は治ったらしい…ところが!

マーベルコミックに登場している異色のヒーロー、レッドプール。口元もマスクの下で見えませんが、ひっきりなしに下ネタ・毒舌のお喋り男。とっても自己中といわれていますが、婚約者のヴァネッサを愛していることだけは間違いありません。
長年この映画化を切望し、制作もかねた主演のライアン・レイノルズ、堅物弁護士も似合えば、サイコキラー役もできる自在な人。顔から手足の先まで全身コスチュームに覆われているので、どこまで本人でどこまでがスタントの方かわからないのですが、とにかく派手なアクションが満載。どんなに緊迫した場面でもセリフがあり、ときには観客に向かって話しかけます。オヤジな熊のぬいぐるみのコメディ『テッド』が好きな方々は笑って楽しめるはず。

この作品の公開と同時にマーベルファンコミュニティサイトが開設されます。渋谷ヒカリエには1ヶ月限定で特設スペース「MARVEL FANS CONNECT」がオープン。(白)


2016年/アメリカ/カラー/ビスタ/108分/R15+
配給:20世紀フォックス映画
(C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/
★2016年6月1日(水)公開
posted by shiraishi at 22:03| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

シリア・モナムール   原題:Silvered Water, Syria Self-Portrait

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監督/脚本:オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン
撮影:ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン、約一千人のシリア人、オサーマ・モハンメド

アラブの春の動きを受けて、独裁政権に対して自由を求めデモを行うシリアの市民たち。
その非武装の市民たちに発砲する政府軍。
拷問される青年。焼き殺される人たち・・・

2011年5月、カンヌ映画祭のパネルディスカッションで、シリア政府軍に不当に逮捕された人々の釈放を訴えたオサーマ・モハンメド監督。脅迫を受け、フランスへの亡命を余儀なくされる。YouTubeで故国の人々の惨状を目の当たりにしながら、自分は安全な場所にいて何もできないでいることに苦悩する日々。パリで迎えたクリスマス、SNSを通じて知り合ったホムス在住のクルド人女性映像作家ウィアーム・シマヴ・ベデルカーンから、「もしあなたがシリアにいたら、何を撮りますか?」と問いかけられる。この言葉に、孤独から解き放たれたオサーマ監督。シリアにいるシマヴ(クルド語で銀の水)と対話しながら、シリアの人たちが実情を伝えようと命をかけて撮った映像の数々を綴って一つの作品に仕上げた。

詩情溢れる語りとともに映し出される映像には、あまりにも惨く直視できないものもあります。命を絶たれた人々の無念な思いがずっしりと伝わってきて、声を失います。
なぜ、これほど酷い仕打ちを自分の国民にできるのでしょう。

毎日、大勢のシリアの人たちが愛する故郷を離れ、難民と化しています。
シリアで何が起こっているのでしょう?
漏れ聞こえてくる政府軍やイスラム国による市民の弾圧。
外国人ジャーナリストを排除している今、現地にいるシリアの人たちからの発信でしか知りえない実情。
昨年公開された『それでも僕は帰る 〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』(監督:タラール・デルキ)でも、本作のシマヴと同じホムスに住む青年たちが内戦の惨さを伝えてくれました。

本作の冒頭に、「1000と一人が撮った映像」とあって、思い起こしたのは、「千夜一夜物語」。一夜を共にした女性を殺してしまう王様に、続きを聞きたくなる話を聞かせて、王様を改心させ、殺すのをやめさせた宰相の娘シェヘラザードの物語。1000と1は、正確に1001というだけではなくて、無数という意味も。
幾千というシリアの人たちの声が、非情な独裁者に届く日が、いつか来ることを願ってやみません。

シマヴは、町を破壊され、学ぶ場を失った子どもたちのために、学校を作ります。
「町は包囲されているけど、頭の中は自由だからね」
チャップリンの映画『街の灯』を観て、ひと時笑いを取り戻す子どもたち。
人々が笑って暮らせる日が来ることを切に祈ります。(咲)


2015年山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞
(*『銀の水 ― シリア・セルフポートレート』のタイトルで上映された)

2014年/シリア・フランス/96分/カラー/16:9, 4:/5.1ch
配給:テレザとサニー 協力:山形国際ドキュメンタリー映画祭
公式サイト:http://www.syria-movie.com
★2016年6月18日よりシアター・イメージフォーラム ほか全国劇場ロードショー!
posted by sakiko at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | シリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

或る終焉(原題:Chronic)

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監督・脚本:マイケル・フランコ
撮影:イブ・カープ
出演:ティム・ロス(デヴィッド)、サラ・サザーランド(ナディア)、ロビン・バートレット(マーサ)、マイケル・クリストファー(ジョン)

デヴィッドは妻や娘と別れて一人暮らしの介護士。担当している終末期の患者の家を訪ねて、親身なケアをする。自分の健康管理のためランニングも欠かさない。妻とは息子ダンの死以来疎遠のままだけれど、娘のナディアとはときどき会っている。患者との距離のほうがよほど近くて親密だ。患者の家族に嫉妬されるほどに。がんの末期で苦しむ患者マーサに、安楽死するのを手伝ってと頼まれるデヴィッドは…。

マイケル・フランコ監督は1979年生まれ。長編2作目の『父の秘密』(2012)で第65回カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリ、3作目の本作は第68回カンヌ映画祭脚本賞を受賞した俊英監督です。30半ばの若い監督がなぜこんな題材を?と資料を読めば「祖母が倒れて要介護になった」体験から生まれたのだとありました。介護する人、される人双方に細やかな心配りがあるのも納得です。
冒頭でやせ衰えた女性患者の身体を丁寧に洗うシーンがあり、在宅女性患者に男性介護士が?とちょっと驚きました。動けないわりに元気な患者ジョンにはぴったりですが、家族にセクハラだと言われてしまうんです。淡々と仕事を続けるデヴィッドの過去に何があったのか、デヴィッドが何を考えているのか観客はだんだん気になってきます。ラストまで気をぬくことができませんでした。
ティム・ロスは65回カンヌ映画祭で審査委員長をつとめ、フランコ監督にトロフィーを授与。本作では主演だけでなく製作総指揮に名を連ねています。(白)


2016年/メキシコ・フランス合作/カラー/ビスタ/94分
配給:エスパース・サロウ
(c)Lucia Films-Videocine-Stromboli Films-Vamonos Films-2015 (c)Credit photo (c)Gregory Smit
http://chronic.espace-sarou.com/
★2016年5月28日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
posted by shiraishi at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | メキシコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月27日

ヒメアノ〜ル

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監督・脚本:吉田恵輔
原作:古谷実
撮影:志田貴之
音楽:野村卓史
出演:森田剛(森田正一)、濱田岳(岡田進)、佐津川愛美(阿部ユカ)、ムロツヨシ(安藤勇次)

清掃会社で働いている岡田は流されていくだけの日常に不満と不安を感じていた。「僕は毎日恋をしている」と言い切る安藤先輩に、彼が「運命の人」と信じる相手の働くカフェに連れていかれる。片思いの彼女ユカはとっても可愛い子だった。岡田はそこで高校の同級生だった森田に再会するが、ユカからは森田にストーキングされていると打ち明けられる。
一方、森田は元同級生から金をむしり取りながら暮らし、ユカを付け回すほかに残忍な犯行を重ねていた。

強烈なギャグ漫画「行け!稲中卓球部」の古谷実さんの同名連載漫画が原作。濱田くんは嫌味のない良い人キャラ岡田君、佐津川さんは見た目より経験豊富なユカちゃん、純愛すぎて思い込みの強い安藤さんをムロツヨシさん。「大丈夫か、この人」的な役です。3人のほのぼの恋模様に、サイコキラーの森田の全く違うストーリーをかわるがわる観せます。笑わされていたかと思うと殺人に震撼させられ、引きずりまわされる脚本のうまさ。俳優さんたちの熱演にも見入りました。久しぶりの映画主演で役名も同じ森田くんが不気味で怖いのなんの。心が壊れて中身を落っことしてきたんだね、きっと。ラストに監督の温情を感じました。(白)

2016年/日本/カラー/ビスタ/99分/R15+
配給:日活
(C)古谷実・講談社/2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会
http://www.himeanole-movie.com/
★2016年5月28日(土))TOHOシネマズ新宿ほか全国公開
posted by shiraishi at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月22日

裸足の季節   原題:Mustang(野生の馬)

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監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン  
音楽:ウォーレン・エリス
出演:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハル・コルダシュ、アイベルク・ペキジャン

イスタンブルから1000km離れた黒海沿岸の小さな村。13歳のラーレは、10年前に両親を亡くし、祖母のもとで4人の姉たち、長女ソナイ、次女セルマ、三女エジェ、四女ヌルと、独身の叔父エロルと共に暮らしている。
ラーレの大好きなディレッキ先生がイスタンブルに転勤になった日。学校の帰り道、姉妹は海で男の子たちと騎馬戦をして無邪気に遊ぶ。家に帰るとお祖母さんから次々とおしおきを受ける。男の子の肩にまたがっていたことを近所の人が告げ口したのだ。叔父さんも、「傷物になっていたら、どうする?」と激怒。姉妹たちを病院に連れていき処女検査を受けさせる。この日以来、自由な外出を禁じられ、家で花嫁修業をさせられる姉妹たち。
そんなある日、どうしてもサッカーの試合を観たいラーレたちは、家を抜け出しトラブゾンまで行く。ところが、応援席にいる姿がテレビに映ってしまい、お祖母さんは卒倒。もう孫娘たちを結婚させるしかないと強行手段に出る。上から順にと、お見合いの場を設けるが、長女ソナイには相思相愛の相手がいた・・・

自分らしく生きようと羽ばたく少女の姿が実に眩しい!
結婚まで純潔を守らせるために、自由な外出までも禁じる祖母と叔父。ささやかに抵抗する姉妹たち。やがて次々と結婚を決めさせられる姉たち。その姿を見ながら、末っ子ラーレが自由を求めて着々と準備を進める姿の、なんといじらしいこと!

家を抜け出してサッカーを見に行く場面では、イラン映画『オフサイド・ガールズ』(2006年、ジャファール・パナヒ監督)を思い出しました。会場に向かうバスの中から、すでに熱く応援する姿がそっくりでした。でも、イランでは、女性がサッカー場に行くことすら禁じられているので、男装して忍び込むのです。どこの社会でも、禁止されると、それを突破する勇気ある人たちがいるものです。

処女検査といえば、昨年の東京国際映画祭で上映されたイラン映画『ガールズ・ハウス』(2015年、シャーラム・シャーホセイニ監督)で、結婚式前日に処女検査の為に医者のもとに連れてこられたことを知った花嫁が道路に飛び出し事故にあって亡くなるという場面がありました。身に覚えがあって拒否したのではなく、尊厳を傷つけられたからだと思わせてくれるエピソード。
(ちなみに、『ガールズ・ハウス』は、イラン国内での上映を禁止されました。内容が過激だったからか、古臭い因習を描いたからかどうかは不明)

パレスチナ映画『オマールの壁』(2013年、ハニ・アブ・アサド監督)では、オマールが親友のアムジャドから、オマールの恋人であるナディアを妊娠させたと聞いて、ナディアの名誉を守るため、自分の貯金をアムジャドに差し出してまで結婚を急がせます。アムジャドに早産だったことにしろとアドバイスしたり、ナディア本人に妊娠したのかと尋ねたりしないのも、彼女のことを尊重しているから。

また、イスラーム圏の映画でよくあるのが、初夜を過ごした翌朝に血のついたシーツを処女の証に見せる光景。『裸足の季節』でも、次女セルマが初夜に血が出なかったと、医者に連れて行かれる場面があります。医者に「世界中の男と寝た」と豪語するセルマ。小気味いい場面です。

出来ちゃった結婚を隠すこともない、今の日本からみると、ものすごく古臭い考えのように思えます。でも、世界には、婚外交渉を認めない社会も存在するのです。

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督は、トルコ生まれ、フランスやアメリカで育ち、パリで映画を学び、現在フランス在住。公式サイトにあるインタビューに、「トルコに毎回帰国するたびに、驚くほどの閉塞感を感じます。女性であることに関するすべてが、絶えず性的なものに落とし込められているのです。(中略)女性を家事にだけ従事させて子供を生産する機械に貶めるという社会的思考も現れています。トルコは1930年代という早い時代に女性に参政権を与えた国の一つだったのに、哀しいことです」とあります。
いろいろな形で自由を奪われている女性たちに向けて、勇気を与える映画を作った監督の原点を感じさせてくれる言葉です。ぜひ公式サイトでインタビュー全文をお読みください。

トルコは、宗教的に保守的で伝統的な価値観を持って暮らしている人もいれば、西洋的な生活をしている人もいるという二極化した社会。さて、この映画、トルコでそれぞれの立場の人にどう受け止められたのか気になるところです。(咲)


2015年/フランス・トルコ・ドイツ/97分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/hadashi/
★2016年6月11日(土) シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする