2016年04月24日

永遠のヨギー ヨガをめぐる奇跡の旅   原題:AWAKE:The Life of Yogananda

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監督:パオラ・デ・フロリオ、リサ・リーマン
出演:アヌパム・ハー(ナレーター)、ディーパック・チョプラ、ラッセル・シモンズ、マス・ヴァーラル、ジョージ・ハリスン

「西洋ヨガの父」として知られる偉大なヨギー(ヨガをする行者)、パラマハンサ・ヨガナンダ。本作は、1920年代にヨガと瞑想の奥義を西洋に伝えたヨガナンダの生涯を追ったドキュメンタリー。
著書「あるヨギの自叙伝」が、ザ・ビートルズのジョージ・ハリソンやスティーブ・ジョブズなど多くの著名人の座右の書ともなったヨガナンダ。世界30カ国での撮影を敢行し、彼が東洋西洋を問わず受け入れられた原点を探る。

日本でもヨガといえば、多くの人がインド伝来の静かな体操で瞑想もするものというイメージを持っているのではないでしょうか。本作を観て、数千年の昔、インドで生まれた魂を目覚めさせるクリヤヨーガの行法が、パラマハンサ・ヨガナンダという人物によって、まずはアメリカで広められたことを知りました。人種差別が横行する1920年代のアメリカで、世界中の宗教の共通性を強調し、ヨガのもたらす調和と愛を説き、多くの人々に受けられたのです。その後、ヨーロッパでも伝道し、1935年には故国インドでも各地をまわります。長年インドを離れていたヨガナンダが、インド独立の父、ガンジーに会いたい!と、インドに戻る場面には、思わず涙が出てしまいました。心の平和が世界の平和にも繋がると信じて伝道したであろうヨガナンダ。意に反して、ますます混迷する世界・・・  ラスト近く、原爆の映像がずしんと響きました。(咲)

2014年/アメリカ/カラー/87分/DCP/配給:ブロードウェイ
配給:ブロードウェイ
公式サイト:http://yogi-movie.com/
★2016年4月30日 (土)よりユーロスペースにて公開! ほか全国順次
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2016年04月17日

花、香る歌(原題:桃李花歌 The Hymn)

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監督:イ・ジョンピル
脚本:イ・チョルオ
音楽:キム・テソン
出演:スジ(チン・チェソン)、リュ・スンリョン(シン・ジェヒョ)、ソン・セビョク(キム・セジョン)、イ・ドンフィ(チルソン)、アン・ジェホン(ヨンボク)、キム・ナムギル(興宣大院君)

朝鮮時代末期。広場で繰り広げられるパンソリの公演に、涙する少女チン・チェソン。母を亡くして妓楼で下働きをする我が身をその歌に重ねたのだった。涙をふいてくれたのはパンソリ塾「桐里精舎(トンニチョンサ)」を開いたシン・ジェヒョ。「涙のあとは笑顔になれる。それがパンソリだ」とかけられたかけられた言葉を宗に刻み、チェソンはパンソリの唄い手になることを決意する。塾の練習を盗み見ながら長じたチェソンは、シン・ジェヒョに直訴するが女であることを理由に断られてしまう。伝統芸能でありながらパンソリは女人禁制だった。男装してまで入塾したチェソンが女であるのがばれてしまうが、熱意を認められて初めて稽古をつけてもらえるようになる。しかし両班の後援が必要なため、遊びに付き合う塾長の姿に失望したチェソンは桐里精舎を去ってしまった。

実在の初の女性の唄い手となったチン・チェソンの波乱の人生を描いた作品。アイドルグループ“miss A”のボーカルのスジがパンソリの特訓を重ね、チェソンが歌い手として、同時に一人の女性として成長していく過程を見せています。撮影は順撮りだったそうで、スジが実際に力をつけていくようすがよくわかります。師匠のシン・ジェヒョは『7番房の奇跡』のリュ・スンリョン。師匠としてチェソンの想いを受け止められず、心ならずもすげなくする場面、二人が苦悩しながらも互いのために命がけでパンソリを披露する場面は必見+必聴!
塾の仲間たちが重くなりがちな物語に笑いを足してくれています。ソン・セビョクは『私の少女』父役、イ・ドンフィは『ビューティ・インサイド』でのサンベク、アン・ジェホンは『レッドカーペット』のプンチャ。興宣大院君のキム・ナムギルは『パイレーツ』で山賊の頭でした。テレビドラマが放映されて、日本でも公式ファンクラブがあるほどの人気です。(白)


パンソリとは、一人の唄い手が太鼓の伴奏に合わせて唄とせりふ、身振りで物語を語る韓国の伝統芸能。パンソリを知ったのは、映画『風の丘を越えて/西便制』(1993年、イム・ グォンテク監督)を通じてのことでした。オ・ジョンヘ演じる少女が養父から厳しく鍛えられ、腹の底から絞り出すような声で唄う姿が印象的でした。今回、『花、香る歌』を観て、パンソリが朝鮮王朝末期には女人禁制だったことを知りました。
『建築学概論』で透明感溢れる女子高生を演じたスジが、男装までしてパンソリを学ぼうとする姿を健気に体現しています。景福宮(キョンボックン)の慶会楼(キョンフェル)の周りに広がる池に浮かべた船の上で唄う場面は絶品。
また、冷酷な興宣大院君を演じるキム・ナムギルもはまり役。彼の最近の出演作は、『パイレーツ』といい、ドラマ「サメ〜愛の黙示録〜」といい、眼光鋭くて凄味がある。数年前、韓国KBSの「芸能街中継」に出てきた彼を見て、このカッコいい男は誰?と思ったのが、兵役を終えて復帰したばかりのキム・ナムギルでした。出演作を調べてみたら、2005年のドラマ「がんばれ!クムスン」で見ていたことがわかりました。その時の彼は、ヒロインの夫で、すぐに交通事故で死んでしまう役だったのですが、優しい面持ちで、今の鋭いイメージとは全然違いました。口髭のせいもあると思うのですが、年を経て、ほんとにいい男になったと思います。兵役前の出演ドラマ「善徳女王」(2009年)を最近観たのですが、この時の役も面持ち鋭い男で、兵役を経て変わったわけではないのを知りました。今後も楽しみなキム・ナムギルです。(咲)



2015年/韓国/カラー//109分
配給:CJ Entertainment Japan
(C)2015 CJ E&M CORPORATION,ALL RIGHTS RESERVED
http://hanauta-movie.jp/
★2016年4月23日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フィフス・ウェイブ(原題:The 5th Wave)

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監督:J・ブレイクソン
原作:リック・ヤンシー「フィフス・ウェイブ」(集英社文庫刊)
脚本:スザンナ・グラントほか
撮影:エンリケ・シャディアック
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:クロエ・グレース・モレッツ(キャシー・サリヴァン)、ニック・ロビンソン(ベン・パリッシュ)、ロン・リビングストン(オリヴァー・サリヴァン)、マギー・シフ(リサ・サリヴァン)、アレックス・ロウ(エヴァン・ウォーカー)、ザッカリー・アーサー(サム・サリヴァン)、マイカ・モンロー(リンガー)、リーヴ・シュレイバー(ヴォーシュ陸軍大佐)、マリア・ベッロ(レズニック軍曹)

アメリカのオハイオ州。キャシーはアメフト部のベンにひそかに憧れるごく普通の女子高生。両親と小さな弟サムとの穏やかな暮らしがずっと続くと信じていた。上空に謎の飛行物体が現れるまでは。それは数日空中に浮かんでいたが、強力な電磁波が放たれ世界中の電気が止まった。飛行機が墜落し、地上でも事故が頻発、夜は真の暗闇となった。正体のわからないそれは「アザーズ」と呼ばれた。
なすすべもなくパニックに陥った人々に追い打ちをかけるように、大地震が起き、続いて津波が押し寄せる。
キャシーは家族と森の中へと逃げることができたが、生き残った人間に鳥インフルエンザが蔓延する。99%が死亡、治療にあたっていたキャシーの母も命を落とした。父と弟と難民キャンプにたどり着くが、軍隊により大人と子供が別々に分けられる。弟とはぐれたキャシーが戻ると父は暴動に巻き込まれて亡くなり、キャシーは一人残されてしまった。

「アザーズ」が登場してから次々と災難に見舞われる人類。そこにはヒーローも救世主も現れず、右往左往する人々は倒れていくばかりです。キャシーが見失った弟サムを探しに一人旅立ちますが、特殊能力もなく、サバイバルにたけているわけでもありません。「アザーズ」は人間の中に入り込んで寄生するので、外見でそれとはわかりません。誰が敵か味方かわからない中、ただただ弟のため、初めて武器を手にするのです。観客はキャシーに感情移入して一緒に不安な思いをすることになります。
『キック・アス』(2010)のヒット・ガール役で私たちを仰天させたクロエ・グレース・モレッツが、おどおどして震えるふつうの女の子役。逆境にあって強くならざるをえないんですが、何をしても可愛いです。
「フィフス・ウェイブ」は5番目の波。第1はアザーズの登場と停電、第2は地震と津波の天災、第3が伝染病、第4は侵略。第5の波とはなにか?は劇場で。(白)


2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/112分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.5thwave.jp/
★2016年4月23日(土)より公開
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ズートピア(原題:Zootopia)

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監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
共同監督ジャレッド・ブッシュ
製作総指揮ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッキノ
主題歌:シャキーラ 日本語版:Dream Ami「トライ・エヴリシング」
声の出演:ジニファー・グッドウィン/上戸彩(ジュディ・ホップス)、ジェイソン・ベイトマン/森川智之(ニック・ワイルド)、イドリス・エルバ/三宅健太(チーフ・ボゴ)、ネイト・トレンス/高橋茂雄(クロウハウザー)、J・K・シモンズ/玄田哲章(ライオンハート市長)

「ズートピア」はテクノロジーが発達し、あらゆる動物が平和に共存する動物たちの楽園。ニンジン農家に生まれたウサギのジュディの夢は警察官になること。警察官は大きくて強い動物(ウマ、サイ、ウシなど)ばかり。これまで警察官になったウサギは一匹もいない。
両親の心配もよそに努力を重ねたジュディは、警察学校を首席で卒業した。憧れの警察に赴任したけれど小さくて可愛いジュディは戦力外とみなされ、見習いとして交通係に回される。なんとか認めてもらいたいジュディはボゴ署長の無茶ぶりもクリアした。不穏なにおいのする行方不明事件の捜査を開始するが、タイムリミットはわずか2日間、解決できなければクビ!?キツネの詐欺師ニックに協力を頼み、核心へと迫っていく…はずだった。

動物総出演+表情豊かな可愛いキャラで親しみやすくなっていますが、人間界と同じです。ハイテクで楽園に見えたズートピアにも実は問題が山積み。種類や性別の差別もあれば、犯罪もおき、金や権力の亡者も同じようにいます。かつて天敵だったキツネとウサギが事件解決に進むにしたがって友情が深まっていく、というストーリーも人間界映画の王道。本当に悪いヤツは誰?かは劇場で。お子様も大人も楽しく観られます。
背景となるズートピアの4つのエリアの造形が美しく、都会へ向かうジュディが車窓から目を丸くする場面がとってもいいです。たぶんこちらの目も丸くなっているのでしょう。試写室内笑いさざめいたのが、お役所の職員たちがナマケモノだったこと。めちゃくちゃブラックジョークですね。そこだけ時間の進み具合が違いました。
スマホ専用公式サイトがオープンしています。もしもあなたがズートピアの住人だったら?どんな動物?ズートピアのエリア紹介などお楽しみ情報が満載です。そちらもアクセスしてみてね。(白)


2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/109分
配給:ディズニー
(C)2016 Disney. All Rights Reserved.
http://www.disney.co.jp/movie/zootopia.html
★2016年4月23日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

レヴェナント 蘇えりし者(原題:The Revenant)

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監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
原作:マイケル・パンク
脚本:マーク・L・スミス、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:坂本龍一、アルバ・ノト、ブライス・デスナー
出演:レオナルド・ディカプリオ(ヒュー・グラス)、トム・ハーディ(ジョン・フィッツジェラルド)、ドーナル・グリーソン(アンドリュー・ヘンリー)、ウィル・ポールター(ジム・ブリジャー)、フォレスト・グッドラック(ホーク)

1823年冬。アメリカ北西部を狩猟を生業とする男たちの一団が進んでいる。未開の地を案内するのはヒュー・グラス。先住民の妻との間に授かった息子ホークも同行し、ヘンリー隊長の指揮のもと獲物を捕りながら砦を目指していた。途中、先住民の襲撃で犠牲者が出てしまい、偵察に出たヒューはハイイログマに襲われひん死の重傷を負った。隊長はヒューが死んだら埋葬してやるようにと言って先発する。息子のホークとヒューを慕う若者ジムが付き添い、なにかとヒューを目の敵にしていたフィッツジェラルドも報奨金を目当てに居残ることにした。フィッツジェラルドは予想に反してすぐに死なないヒューに苛立ち、反抗するホークを手にかけたうえ、ヒューを生き埋めにして置き去りにする。

これまで無冠の帝王となっていたディカプリオに、ノミネート5度目にして悲願のオスカーをもたらした話題作です。『タイタニック』で共演して以来の親友というケイト・ウインスレット(2008年『愛を読むひと』でお先に主演女優賞を受賞)に祝福されて本当に嬉しそうでした。
イニャリトゥ監督には昨年に続いての監督賞、撮影のエマニュエル・ルベツキが3年連続の撮影賞を獲得。どんだけ〜!(古っ!?)な作品かは劇場でお確かめくださいませ。
圧倒的な映像美に究極のサバイバル、ディカプリオがこれでもかと苦労させられるシーン続きで、あのチャーミングな笑顔のないのがちょっと残念ですが、俳優としてやりきった感のある大作。敵役となるトム・ハーディが助演男優賞に初ノミネートされて個人的に嬉しかったです。受賞なりませんでしたが、これからいくらでもチャンスがあるでしょう。
クマに襲われて重傷を負い、仲間に見捨てられながらも生き延びて復讐を誓った、というヒュー・グラスは実在の人物で、いくつもの本や劇となってよく知られているようです。実話をもとにしたフィクションの原作「The Revenant」(マイケル・パンク著)は映画と同名でハヤカワ文庫から発売中。(白)


2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/157分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
★2016年4月22日(金)公開
posted by shiraishi at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする