2016年01月06日
ブリッジ・オブ・スパイ(原題:Bridge of Spies)
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:マット・シャルマン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
音楽:トーマス・ニューマン
出演:トム・ハンクス(ジェームズ・ドノヴァン)、マーク・ライランス(ルドルフ・アベル)、スコット・シェパード(ホフマン)、エイミー・ライアン(メアリー・ドノヴァン)、セバスチャン・コッホ(ウルフガング・ボーゲル)
1950年〜60年代の東西冷戦時代、世界は一触即発の緊張に包まれていた。アメリカに長く住んでいるルドルフ・アベルがソ連のスパイだとしてFBIに逮捕される。アメリカでの裁判の際、アベルに国選弁護人をつける必要があった。
ジェームズ・ドノヴァンは保険業界での弁護士として実直に働いてきたが、この畑違いの弁護を引き受けることになってしまった。風当たりの強い中、祖国と職務に忠実であろうとする二人は、立場を越えて相手への尊敬の念を持つようになる。死刑確実と思われていたアベルは、ドノヴァンの弁護で懲役30年となった。
5年後、今度はソ連上空を偵察飛行していたアメリカ人パイロットが墜落してソ連に逮捕される。アベルとパイロットを交換しようという両国の思惑により、ドノヴァンがベルリンに赴いて交渉に当たることになった。
実話をもとに、スピルバーグ監督+コーエン兄弟脚本+トム・ハンクス主演という強力な布陣で映画化したもの。派手なシーンなどほとんどありませんが、緊張感をもったまま画面から目を離せず、祈るような気持ちで見つめてしまいました。
ドノヴァンは敵国のスパイを弁護することで世間に冷たい目で見られ、家族にまで危害が及びそうになります。しかし弁護士としての信念はゆるぐことがありません。トム・ハンクスが演じると、どの人物も全幅の信頼がおける気がするのですが、その分命令を下して仕事をさせるお偉方たちが実に卑小に見えます。無茶ぶりする上司と有能な部下のようです。そのへんに笑いが生れて、少しだけ緊張が緩みます。アベル役のマーク・ライランスはイギリスの舞台俳優だそうで馴染みがありませんでしたが(08年『ブーリン家の姉妹』の父親役だった)、アメリカに紛れ住んで淡々と職務をこなすスパイの悲哀をにじませて印象に残りました。
ドノヴァンはパイロットのほかに、東ベルリンに拘束されたアメリカ人留学生をも一緒に救い出そうとし、事態は難しくなるばかり。東西ベルリンを分ける壁のシーンもあり、こんなことが実際にあったのかと今更ながら驚きます。戦うシーンがなくても戦争の非情さが現われる重厚な作品でした。エンドロールにドノヴァンやアベルのその後も報告されますので、最後まで席を立たずにご覧下さい。(白)
2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/142分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.
http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/
★2016年1月8日(金)全国ロードショー