2015年10月25日

犬に名前をつける日

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監督・脚本:山田あかね
撮影:谷茂岡稔
音楽:つじあやの
出演:小林聡美(久野かなみ)、上川隆也(前田勇祐)、渋谷昶子、ちばわん、犬猫みなしご救援隊

テレビディレクターの久野かなみは、愛犬のナツが病気で亡くなって以来気持ちが沈んだまま。大先輩の渋谷昶子(のぶこ)監督を見舞ったときに、「そんなに悲しんでいないで犬の映画を撮りなさい」と励まされる。背中を押されたかなみは、ほんとうは一番行きたくなかった「動物愛護センター」を訪ねる。ここで保護された犬猫は、一定の期間のうちに引き取り手がなければ殺処分されてしまう。東日本大震災の被災地で、飼い主がいなくなったまま取り残されている動物も目の当たりにした。ショックも大きかったが、そんな命を救いたいと活動する人たちにも出会った。「自分に何ができるのか」かなみは考える。

ドキュメンタリーとドラマをうまく融合させたドキュドラマです。監督の分身であるかなみ役の小林さんが施設を訪ね歩くところは、演出のないドキュメンタリー。愛護センターで処分がせまる犬に会ってしまった小林さんの口元がべそをかくようにゆがんで、こちらまでもらい泣きしてしまいました。震災後離れ離れに暮らしている老夫婦と愛犬の再会にも涙腺崩壊。
1匹でも多く救いたい、飼い主と別れた犬や猫たちに2度悲しい思いをさせたくないと奔走する「ちばわん」や「犬猫みなしご救援隊」の活動に頭が下がります。「自分には無理」と思いこんで目をつぶり、見なかったことにするのでなく、自分のできることを始めるヒントと勇気がもらえる映画です。(白)


2015年/日本/カラー/107分
配給:スールキートス
(C)スモールホープベイプロダクション
http://www.inu-namae.com/
★2015年10月31日(土)シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月21日

シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語   原題:Sivas

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監督・脚本:カーン・ミュジデジ
出演:ドアン・イズジ、ムターリップ・ミュジデジ、オカン・アヴジュ、バーヌ・フォトジャン、ハサン・ヤズルタシュ、ハサン・オズデミル

トルコ東部アナトリア高原の小さな村。11歳のアスランは小柄で、クラスの中でも何かとのけ者扱い。鬼ごっこで鬼になったアスランは、目をつむって数えている間に置いてきぼりにされてしまう。
ある日、4月23日の子どもの日に上演する「白雪姫」の衣装が届く。白雪姫は、憧れの美少女アイシェ。アスランは王子様を演じたい。でも、先生は村長の息子オスマンに迷うことなく王子様を指名する。教師宅を訪ねて、「王子になりたい」と言うが、取り合ってくれない。
村に闘犬の一団がやってくる。村長の息子オスマンの闘犬ボゾと闘って負けた犬シーヴァスが血だらけで息絶え絶えになる。アスランはシーヴァスを家に連れ帰り手厚く介護する。
学校では「白雪姫」の練習が進んでいるが、小人役では面白くないアスランは、学校に行かず、シーヴァスと過ごす日々だ。やがて、オスマンの闘犬ボゾとシーヴァスの再対決の日が訪れる・・・

村長の息子が王子役をもらうという理不尽。世の中、権力がものをいうことを象徴しているようでした。それに対抗しようとするアスラン。チビで何かとのけ者にされていても、なんとか思っていることを伝えようとする強い心の持ち主のアスラン。強権に黙っていてはいけないことを教えてくれます。そして、負けてよれよれになったシーヴァスを助ける姿からは、弱い者に手を差し伸べる慈悲の心を学びました。
映画の最後に2012年にこの世を去った吟遊詩人ネシェット・エルタシュの歌「悪いのは私だ」が流れます。彼に捧ぐと映画の最後にありました。来日した監督にお聞きしたら、「私がこの映画を彼に捧げたのではなく、映画そのものがネシェット・エルタシュのものなのです」との答えがかえってきました。もう一度映画を観て、詩の意味をじゅっくり噛みしめてみたいと思います。(咲)

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カーン・ミュジデジ監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2015/sivas/index.html

ユーロスペース公開初日・2日目 10月24日(土)、25日(日)
ハズレなし! ご鑑賞御礼くじ引き大開催!
特等 成田・関空⇔イスタンブール ペア航空券1組様
http://sivas.jp/campaign.html


配給:ヘブンキャンウェイト(第一回配給作品)
2014年/トルコ・ドイツ合作映画/トルコ語/ 97分
2014年/トルコ・ドイツ合作/トルコ語/97分/1:2.35/DCP
配給:株式会社ヘブンキャンウェイト
公式サイト:http://sivas.jp
★2015年10月24日よりユーロスペースほか全国にて公開
posted by sakiko at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月18日

アクトレス 女たちの舞台(原題:Sils Maria)

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監督・脚本:オリビエ・アサイヤス
撮影:ヨリック・ル・ソー
美術:フランソワ=ルノー・ラバルテ
出演:ジュリエット・ビノシュ(マリア・エンダース)、クリステン・スチュワート(ヴァレンティン)、クロエ・グレース・モレッツ(ジョアン・エリス)、ラース・アイディンガー(クラウス)、ジョニー・フリン(クリストファー)

ベテラン女優のマリアは、チューリッヒに向かう車内にいる。新人だった彼女を発掘し、女優に育ててくれた劇作家メルヒオールの代わりとして授賞式に赴くためだ。マネージャーのヴァレンティンは若いが有能で、スケジュールを調整し、年上のマリアにも臆せず自分の意見を言う。そんなときにシルス・マリアに寄るように言っていたメルヒオールが亡くなったとの知らせが入る。
レセプションで声をかけてきた演出家のクラウスは、マリアの記念すべき「マローヤの蛇」をリメイクの予定で、出演を熱望していると語る。かつてマリアが演じたシグリッド役は、新進女優のジョアン・エリスに決定しており、シグリッドに翻弄されるヘレナ役をマリアにと言うのだった。

すでに熟練の大女優となりながら、過ぎていく時の流れを受け入れられないマリア。新人だったころに演じた役をまた自分が再演できるとは思えないはずなのに、素直に認められません。若く溌剌としたジョアンに会い、彼女を一番好きな女優というヴァレンティンの言葉にも心が騒ぎます。
女優3人の競演がお芝居か素なのか、見まがうような女の戦いがありました。
無邪気なところを残したまま大女優になったマリアと、仕事と割り切ってクールに対応するヴァレンティンの対比が際立ちます。可愛い顔でしたたかに生きる(それも才能)ジョアンに、『キック・アス』のヒットガールから美人女優になったクロエ・グレース・モレッツも適役。

思い出したのが『イヴの総て』(1950年)。ベティ・デイビス演じるベテラン女優が若い後進アン・バクスターに追い越され、さらにその後ろにもトップ女優を目指す女の子がいる、という芸能界の裏側を描いていました。この『アクトレス〜』も舞台裏や人に会う前にもらす本音や、取り繕う表情の変化を見せて笑えます。どろどろした雰囲気にならないのは、ジュリエット・ビノシュの笑顔や背景の雄大な自然がきいているのでしょう。
谷をうねりながら這っていく雲のシーンが幻想的です。原題の「シルス・マリア」は、スイス東南部のリゾート地サン・モリッツからバスで20分程。標高1,815mの小さな集落だそうです。山の好きな方がきっと行って見たくなる景勝地です。(白)


2014年/フランス・スイス・ドイツ/カラー/シネスコ/124分
配給:トランスフォーマー
(C)2014 CG CINEMA - PALLAS FILM - CAB PRODUCTIONS - VORTEX SUTRA - ARTE France Cinema - ZDF/ARTE - ORANGE STUDIO - RTS RADIO TELEVISION SUISSE - SRG SSR
http://actress-movie.com/

★2015年10月24日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ボクは坊さん。

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監督:真壁幸紀
原作:白川密成「ボクは坊さん。」ミシマ社
脚本:平田研也
撮影:柴崎幸三
音楽:平井真美子
出演:伊藤淳史(白方進/光円)、山本美月(越智京子)、溝端淳平(桧垣真治)、渡辺大知(峰岸孝典)、遠藤雄弥(品部武志)、松金よね子(白方宣子)、濱田岳(栗本広太)、松田美由紀(白方真智子)、イッセー尾形(新居田明)

四国八十八カ所霊場の第57番礼所・栄福寺で生まれ育った白方進は、当然のように高野山大学へ進み、お坊さんの修行をおさめ阿闍梨(あじゃり)の位を得た。しかし卒業して実家へ戻ってもまだお坊さんになる決心はつかず、書店員として働き始める。大学での友人孝典は実家の寺に入ったが、広太は進と同じくサラリーマンになった。家族は進の気持ちを尊重して見守ってくれていたが、現役住職の祖父が突然倒れ、進はようやく心が定まった。後を託すように祖父が亡くなり、進は僧名「光円」に改名し、24歳で栄福寺の住職となった。住職となって初めてわかる様々な事柄と向き合いながら、光円は精進の日々を送っていく。

栄福寺の住職・白川密成氏が、住職になった年から「ほぼ日刊イトイ新聞」で「坊さん―57番札所24歳住職7転8起の日々―」を連載。2010年書籍となった原作を映画化したもの。脚色ももちろんされていますが、ほとんどお葬式でしか知らないお寺の内側やお坊さんの大学生活が覗けて、とても面白く観ました。お坊さんの野球チームもあるんです。笑いながら仏教がちょっと身近になりました。
実際にお坊さんになってからのあれこれは修行の続きのようです。光円の努力がなかなか身を結ばず、悩んでいるのを檀家の長老がさりげなく諭して「年の功」を感じます。頑固なだけではない懐の深さを見せたイッセー尾形さん、素直で応援したくなる光円の伊藤淳史さん、いい配役でした。
密成さんご本人は住職になってすでに14年。ウェブサイトはこちら。参拝する人が増えそうですね。(白)


2015年/日本/カラー/ビスタ/99分
配給:ファントム・フィルム
(C)2015 映画「ボクは坊さん。」製作委員会
http://bosan.jp/
★2015年10月24日(土)より、全国ロードショー、四国エリアは17日(土)より先行!
posted by shiraishi at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月13日

『夢は牛のお医者さん』がシネコンで上映されます

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昭和62年、新潟県の山あいにある小学校に子牛がやってきた。みんなで世話する中で一人の少女が「牛のお医者さん」になりたいと夢を持つ。その姿をテレビのディレクターが追いかけ、撮りためた26年間の記録。
2014年に東京で上映され、全国を回って多くの人の感動をよんだ作品。このたび千葉県佐倉市のシネコンでの上映が決まりました。昨年見逃した方はぜひお出かけ下さい。
★この5月に時田監督が「日本映画批評家大賞ドキュメンタリー映画賞」を受賞されました!おめでとうございます。

●10月17日(土)〜30日(金)
●イオンシネマ・ユーカリが丘
 〒285-0858 千葉県佐倉市ユーカリが丘4-1-4 ユーカリプラザ5F
 043−463-9922 (自動音声ダイヤル)
 HP
●公式HP http://www.teny.co.jp/yumeushi/
シネジャブログでの作品紹介はこちら
posted by shiraishi at 11:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする