2015年09月07日

NORIN TEN〜稲塚権次郎物語

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監督:稲塚秀孝
主演:仲代達矢、松崎謙二(無名塾)、野村真美、益岡徹、藤田弓子、舞川あいく

1960年代、世界の食糧危機が起こった時、インドやパキスタンの人々を飢えから救った小麦があった。その小麦の基となったのは「NORIN TEN」(小麦農林10号)と呼ばれた、日本人が育種した小麦だった。本作は、「NORIN TEN」を作った育種家稲塚権次郎(1897〜1988)の物語。

明治末期、貧しい農家の長男に生まれた権次郎。富山県立農学校(現在の南砺福野高校)を首席で卒業。恩師を通じ「種の起源」(ダーウイン著)に出会う。貧しい農家を救うためには、美味しくて収量が高い米を作ることが大切だと育種家を目指し、東京帝国大学農学実科に進学する。大正7年農商務省に入り、秋田県農事試験場陸羽支場(大曲)に配属。「水稲農林1号」の育種に取りかかる。生真面目で周りに溶け込むことのできない権次郎に、上司の永井が「謡」を習うよう勧める。そこで、生涯の伴侶となる佐藤イトと出会う。
大正15年、突然岩手への転勤を命じられ、稲ではなく小麦の育種改良に当たることになる。昭和10年秋、小麦農林10号=NORIN TENが完成する。従来の小麦に比べ、背の低い品種で穂が倒れにくく、栄養が行きわたりやすいものだった。
昭和13年、権次郎は華北産業科学研究所(北京)に異動。妻イトも同行する。昭和20年、敗戦後も中国側の意向により研究指導の名目で留め置かれる。昭和22年秋、ようやく中国から帰国。権次郎は育種家の道を諦め、地元金沢農政局に勤務する。敗戦後、中国での滞在が長引き精神的に錯乱を起こしたイトをいたわる為に穏やかな生活を選んだのだ。
昭和41年、母・こうを野焼きで見送った権次郎の元に、思いがけない知らせが届く。「小麦農林10号」の種が戦後米国に送られ、世界の食糧危機を救う「緑の革命」の基になったというのである。ノーマン・ボーローグ博士は、その業績により、1970年(昭和45年)にノーベル平和賞を受賞する。昭和56年、権次郎はノーマン・ボーローグ博士との対面を果たす。

「インドやパキスタンの人々を飢えから救った小麦」といううたい文句に惹かれて試写にいきました。なぁんと、冒頭からニューデリーのインド門! そして、オールドデリーのチャンドニーチョウクの雑踏。Kと黄色のタクシーで向かった先は、インド農業調査研究所。そこの小麦畑に、ボーローグ博士の開発した小麦と、その基になったNORIN TENに感謝すると書かれた看板。試写が終わって、ちょうど監督がいらしていたので、お伺いしたら、どうしてもこの場面を入れたくて、わざわざインドまで撮影にいらしたのだそうです。
今では世界の小麦の70%以上の基となった「NORIN TEN」の育種者の生涯を通じて、映画は大正から昭和初期、そして戦争を経て現代へと移り変わる日本の風俗をも映し出しています。自宅の客間でお膳を並べての結婚式。そこで踊る人々・・・ 母親や妻イトが亡くなった時には、田んぼ道を野辺送りして、野焼きで見送ります。日本の美しい原風景を見る思いでした。
貧しい家に生まれたことが原動力となって、育種を開発した稲塚権次郎さん。世界に誇れる人物のことを映画を通じて初めて知ることができました。(咲)


2015年/日本/1時間50分
配給:アークエンタテイメント
公式サイト:http://www.norinten.net/
★2015年9月19日、有楽町スバル座ほか全国にて公開
posted by sakiko at 08:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする