2015年09月12日

ハッピーボイス・キラー   原題:THE VOICES

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監督:マルジャン・サトラピ(『ペルセポリス』『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』)
出演:ライアン・レイノルズ、ジェマ・アータートン、アナ・ケンドリック、ジャッキー・ウィーヴァー

ジェリー・ヒックファン(ライアン・レイノルズ)は、バスタブ工場に勤めるちょっと根暗な青年。動物の声が聞こえてしまうジェリーは、精神科医に罹りながら、家では慈悲深い犬のボスコと邪悪な猫ミスター・ウィスカースに何かと諭されている。そんな彼が会社の懇親会企画ミーティングで、憧れのフィオナ嬢(ジェマ・アータートン)をデートに誘うことに成功! 派手なショーを見せてあげようと中華料理店ShiSenで待ち合わせするも、フィオナ嬢はすっぽかして女子会でカラオケに行ってしまう。店の前で待ち伏せしていたジェリーはフィオナ嬢を車に乗せて家に送ることに。ところが、森を通りかかったとき、鹿と正面衝突。大怪我をした鹿から「喉を切って殺してくれ」と言われ、止めを刺してしまう。これを見て驚いたフィオナ嬢も、ジェリーは刺し殺してしまう。家で遺体を切り刻み、顔だけ冷蔵庫に収めたジェリー。証拠隠滅の為に、次々に女性を殺してしまう。家に帰ると、フィオナ嬢たちの生首を出しては、会話する日々・・・ 

監督のマルジャン・サトラピは、イランで生まれ育ち、イラン革命後に国外に出て、現在はパリを拠点に活躍している女性イラストレーターであり作家。自伝的グラフィックノベル『ペルセポリス』を映画化したのを機に監督業も。『ペルセポリス』や『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』では、故国イランの香りがたっぷり漂っていたが、本作はマルジャン・サトラピが、その感性を見込まれて監督を依頼されて作り上げた映画で、イランの要素は全くない。遺体を切り刻むというおぞましい場面もあるのに、動物や生首がしゃべるというキッチュでポップな映画。さぞかし楽しみながら作ったことと想像してしまう。
同じ9月19日から公開される『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』も、イラン国外に住むイラン女性による映画。こちらもシュールで、ちょっと飛んだ作風。イラン女性恐るべし!(咲)


マルジャン・サトラピが、『ペルセポリス』日本公開の折に来日した時の記者会見とインタビューはこちらでどうぞ! 

2014年/アメリカ/カラー/103分/DCP
配給:ポニーキャニオン
公式サイト:http://happy-voice.jp/
★2015年9月19日(土)より、シネマート新宿・シネマート心斎橋にて公開ほか全国順次ロードショー

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2015年09月07日

NORIN TEN〜稲塚権次郎物語

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監督:稲塚秀孝
主演:仲代達矢、松崎謙二(無名塾)、野村真美、益岡徹、藤田弓子、舞川あいく

1960年代、世界の食糧危機が起こった時、インドやパキスタンの人々を飢えから救った小麦があった。その小麦の基となったのは「NORIN TEN」(小麦農林10号)と呼ばれた、日本人が育種した小麦だった。本作は、「NORIN TEN」を作った育種家稲塚権次郎(1897〜1988)の物語。

明治末期、貧しい農家の長男に生まれた権次郎。富山県立農学校(現在の南砺福野高校)を首席で卒業。恩師を通じ「種の起源」(ダーウイン著)に出会う。貧しい農家を救うためには、美味しくて収量が高い米を作ることが大切だと育種家を目指し、東京帝国大学農学実科に進学する。大正7年農商務省に入り、秋田県農事試験場陸羽支場(大曲)に配属。「水稲農林1号」の育種に取りかかる。生真面目で周りに溶け込むことのできない権次郎に、上司の永井が「謡」を習うよう勧める。そこで、生涯の伴侶となる佐藤イトと出会う。
大正15年、突然岩手への転勤を命じられ、稲ではなく小麦の育種改良に当たることになる。昭和10年秋、小麦農林10号=NORIN TENが完成する。従来の小麦に比べ、背の低い品種で穂が倒れにくく、栄養が行きわたりやすいものだった。
昭和13年、権次郎は華北産業科学研究所(北京)に異動。妻イトも同行する。昭和20年、敗戦後も中国側の意向により研究指導の名目で留め置かれる。昭和22年秋、ようやく中国から帰国。権次郎は育種家の道を諦め、地元金沢農政局に勤務する。敗戦後、中国での滞在が長引き精神的に錯乱を起こしたイトをいたわる為に穏やかな生活を選んだのだ。
昭和41年、母・こうを野焼きで見送った権次郎の元に、思いがけない知らせが届く。「小麦農林10号」の種が戦後米国に送られ、世界の食糧危機を救う「緑の革命」の基になったというのである。ノーマン・ボーローグ博士は、その業績により、1970年(昭和45年)にノーベル平和賞を受賞する。昭和56年、権次郎はノーマン・ボーローグ博士との対面を果たす。

「インドやパキスタンの人々を飢えから救った小麦」といううたい文句に惹かれて試写にいきました。なぁんと、冒頭からニューデリーのインド門! そして、オールドデリーのチャンドニーチョウクの雑踏。Kと黄色のタクシーで向かった先は、インド農業調査研究所。そこの小麦畑に、ボーローグ博士の開発した小麦と、その基になったNORIN TENに感謝すると書かれた看板。試写が終わって、ちょうど監督がいらしていたので、お伺いしたら、どうしてもこの場面を入れたくて、わざわざインドまで撮影にいらしたのだそうです。
今では世界の小麦の70%以上の基となった「NORIN TEN」の育種者の生涯を通じて、映画は大正から昭和初期、そして戦争を経て現代へと移り変わる日本の風俗をも映し出しています。自宅の客間でお膳を並べての結婚式。そこで踊る人々・・・ 母親や妻イトが亡くなった時には、田んぼ道を野辺送りして、野焼きで見送ります。日本の美しい原風景を見る思いでした。
貧しい家に生まれたことが原動力となって、育種を開発した稲塚権次郎さん。世界に誇れる人物のことを映画を通じて初めて知ることができました。(咲)


2015年/日本/1時間50分
配給:アークエンタテイメント
公式サイト:http://www.norinten.net/
★2015年9月19日、有楽町スバル座ほか全国にて公開
posted by sakiko at 08:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月05日

アントマン(原題:Ant-man)

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監督:ペイトン・リード
原作:エドガー・ライト ジョー・コーニッシュ
脚本:エドガー・ライト & ジョー・コーニッシュ、アダム・マッケイ & ポール・ラッド
撮影:ラッセル・カーペンター, ASC
音楽:クリストファー・ベック
出演:ポール・ラッド(スコット・ラング/アントマン)、エバンジェリン・リリー(ホープ・ヴァン・ダイン)、マイケル・ダグラス(ハンク・ピム)、コリー・ストール(ダレン・クロス)、ボビー・カナベイル(パクストン)、マイケル・ペーニャ(ルイス)
吹き替え版 声の出演:内田有紀(ホープ役)/小杉竜一(ブラックマヨネーズ)(ルイス役)

スコットはやる気も能力も持ち合わせながら、やることなすこと裏目に出て刑務所入り。仕事も家庭もなくしてしまった。最愛の娘は妻に連れられ新しいパパ候補と暮らしていた。それも警官・・・。
父親の責任を果たしたいと仕事を探しても、前科がばれてクビ。進退窮まってワル友だちの口車に乗り、金持ちの家の金庫破りをするはめに。しかし、ここで見つけたのは現金でも金塊でもなく、謎のヒーロースーツ。スーツを発明したピム博士は、スコットを見込んで特訓を課し、スコットは愛娘のために体長1,5cm、世界最小のスーパーヒーローとなった!

マイナーでサイズがアリくらいの小さなヒーロー。しかもヒーローになった動機は娘の養育費を払うためで、戦うフィールドもそれなりに小さいです。アベンジャーズのように地球や人類を救いたい!という高邁な理想があったわけではないんですが、ストーリーが進んでいくと、いやおうなく話は地球規模に大きくなるのです。
アントマンだけあって、いろんな種類のアリを率いて戦えるというのが特色!それぞれの能力を生かして作戦を展開していくのが面白いです。おとぼけな3人組が笑わせてくれて、アクションとコメディの加減もいいです。子ども部屋でのバトルはお子様が喜びそう。アリの視点で見える世界を体感してみてください。エンドロールの後にマーベルヒーローが登場しますので、最後まで観てねー。(白)


2015年/アメリカ/カラー/ビスタ/117分
配給:ディズニー
(C)Marvel 2015
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html
★2015年9月19日(土)TOHOシネマズ日劇ほか2D/3Dロードショー
posted by shiraishi at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ピエロがお前を嘲笑う(原題:Who Am I - No System Is Safe)

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監督・脚本:バラン・ボー・オダー
楽曲提供:ボーイズノイズ、ロイヤル・ブラッド
出演:トム・シリング(ベンヤミン)、エリアス・ムバレク(マックス)、ハンナー・ヘルツシュプルンク(マリ)、トリーヌ・ディルホム(ハンナ・リンドバーグ)、ボータン・ビルケ・メーリング(ステファン)、アントニオ・モノー・Jr.(ポール)

一人の青年が警察に出頭してきた。天才ハッカーとして世間を騒がせ、殺人事件に関与を疑われて指名手配になっているベンヤミン本人だった。彼が指名した捜査官ハンナ・リンドバーグは、事件の顛末を聞かされる。
高校生のころのベンヤミンは内向的で、意中のマリに声をかけることもできず一人パソコンに向かう日々だった。女子大生になったマリに再会したベンヤミンは、自分を覚えていてくれたことに感激し、マリのために試験問題を盗もうとする。マリが参加したパーティでマックスと知り合い、ベンヤミンのハッカーの才能を認めたマックスはハッカー集団「CRAY」を結成する。彼らが手当たり次第に楽しむハッキングは、ほかのハッカーたちにも知られるようになったが、軽率な行動が殺人事件を起こしてしまう。

バラン・ボー・オダー監督の作品はこれが初めての公開。DVDでは『23年の沈黙』が出ているようです。若い俳優たちもほとんど馴染みがありませんので、どっぷりストーリーにはまれます。テンポの良い脚本、散りばめられたトリックに観客も振り回され、特に若い方々に受けそうな音楽にのって、ラストまで走っていきます。
ハッカーの犯罪を扱った映画は数多いですが、現実での進化が早いので、技術については少し前の作品は既に古いのでしょう。スマホがこれだけ普及するなんて以前は想像もしませんでしたよね。機器が進歩しても扱う人間自体はそう変わらないので、ドラマがよく描けていれば映画はいつまでも鑑賞に堪えます。(白)


2014年/ドイツ/カラー/シネスコ/106分
配給:ファントム・フィルム
(C)Wiedemann & Berg Film GmbH & Co. KG, SevenPictures Film GmbH 2014; Deutsche Columbia Pictures Filmproduktion GmbH
http://pierrot-movie.com/
★2015年9月12日(土)新宿武蔵野館他全国ロードショー
posted by shiraishi at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黒衣の刺客(原題:聶影娘 The Assassin)

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監督:ホウ・シャオシェン
原作:ハイ・ケイ
脚本:チュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン
撮影:リー・ピンビン
音楽:リン・チャン
出演:スー・チー(インニャン)、チャン・チェン(ティエン・ジアン)、妻夫木聡(鏡磨きの青年)、忽那汐里(青年の妻)、シュー・ファンイー(ジャーチャン/ジャーシン)

唐の時代。隠娘(インニャン)は幼ないころから親の手を離れ、女道士のジャーシンのもとで暗殺者として育てられた。13年後、実家に戻った彼女の使命は、かつて許婚でもあった暴君ティエン・ジィアンを亡き者にすることだった。しかし、追い詰めながらどうしても彼にとどめを刺すことができず、自分にいまだ情があることに戸惑う。窮地に陥ったインニャンは、日本人の鏡磨きの青年に助けられる…。

台湾の名匠ホウ・シャオシェン監督8年ぶりの作品です。リー・ピンビンのカメラワークが美しく、見とれてしまいました。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しましたが、撮影賞は?といいたくなります。海外の俳優とのコラボを続けてきたホウ監督、今回は遣唐使としてやってきた青年に妻夫木聡を起用しています。粗末な衣に身を包み、愛妻の面影を抱いて笑みを絶やさない青年と、贅を尽くした宮殿に住み、華美な衣装でやたら怒りまくる不幸せな暴君ティエン・ジアンが好対照です。
ストイックな刺客を演じたスー・チーは、デビュー当時から20年近くずっと観ていますが、スタイルの良さと可愛らしさは変わらず、全然年取った感じがしません。今回は笑顔を封印して、舞踊のように美しいアクションを見せています。男性のアクションだと、力いっぱい技につぐ技の応酬を見せますが、こちらでは居合いのように一瞬の立ちあいが多く余韻を残します。師匠の道士役のシュー・ファンイーは高名な舞踊家だそうで、立ち姿からきりりとしています。ホウ監督の念願だったという初の武侠映画を、ぜひ大きなスクリーンでご覧下さい。(白)


2015年/台湾・中国・香港・フランス合作/カラー/スタンダードサイズ/108分
配給:松竹メディア事業部
(C)2015光點影業股イ分有限公司 銀都機構有限公司 中影國際股イ分有限公司
http://www.kokui-movie.com/
★2015年9月12日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする