2015年09月12日

ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏  英題:BOLSHOI BABYLON

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監督・撮影:ニック・リード
製作兼共同監督:マーク・フランチェッティ
製作総指揮:サイモン・チン(『マン・オン・ワイヤー』『シュガーマン 奇跡に愛された男』)、マキシム・ポズドローフキン
出演:マリーヤ・アレクサンドロワ(プリンシパル・ダンサー)、アナスタシア・メーシコワ(ファースト・ソリスト)、マリーヤ・アラシュ(プリンシパル・ダンサー)、セルゲイ・フィーリン(ボリショイ劇場 バレエ芸術監督)、ウラジーミル・ウーリン(ボリショイ劇場 総裁)

2013年1月17日、ボリショイ・バレエ団の芸術監督セルゲイ・フィーリンが帰宅途中、覆面の男に襲われ、顔に硫酸を浴びせられた。美形でスターダンサーとして有名だったフィーリンの顔は焼けただれ、失明の危機に瀕した。やがて容疑者として身柄を拘束されたのは、バレエ団のソリストであるパーヴェル・ドミトリチェンコと実行犯の運転手。パーヴェルの恋人ダンサーがフィーリンから主役を貰えなかったことを恨んでのこととされた。バレエ団のメンバーに取材を続けるうち、襲撃されたフィーリンを支持する人たちがいる一方で、独断的なキャスティングをするフィーリンに反発する者も多く、ドミトリチェンコが労働組合のリーダーとして皆に慕われていることもわかってくる。
バレエ団内の勢力争い、横領、賄賂などのスキャンダルまでもが暴かれていく中で、ロシア政府は新しい総裁としてモスクワ音楽劇場バレエ団の総裁だったウラジーミル・ウーリンを送りこむ。そこへ片目を失明したフィーリンが復活する。フィーリンはかつてモスクワ音楽劇場でウーリンのもと芸術監督を務めていたが、何かと反目していた因縁の仲だった・・・

ロシアが世界に誇るボリショイ・バレエ団の華麗な表舞台の裏に潜む、どろどろとした世界を暴き出したドキュメンタリー。
気になったのは、タイトルに付けられた「バビロン」という文言。バビロンといえば、メソポタミアの実在の古代都市。ユダヤ人を強制移住させた「バビロン捕囚」や、バベルの塔を思い起こします。ウィキペディアには、「新約聖書のヨハネの黙示録の故事から、ヨーロッパなどのキリスト教文化圏においては、退廃した都市の象徴(大淫婦バビロン)、さらには、富と悪徳で栄える資本主義の象徴、として扱われることが多い」とありました。う〜ん、このタイトルを付けた監督たちの思いは?
この映画が描き出した権力を巡る争いや嫉妬は、どこの世界にもあることだけど、バレエという世界、主役や撮影監督となれば目立ち方が違います。しかも、ボリショイ・バレエ団ともなれば、誰が主役になってもおかしくない実力者揃い。本作は、裏舞台での熾烈な争いを暴きながらも、あくまで華麗で、人々を魅了するボリショイ・バレエ団の真髄を見せようとしたのではないかとも思います。
実際、「白鳥の湖」「ラ・バヤデール」「スパルタクス」「ロスト・イルージョン:失われた幻影」「イワン雷帝」「アパルトマン」などのバレエの華麗な舞台もたっぷり楽しめます。(咲)


2015年/イギリス/ロシア語・英語/87分/シネスコ
配給:東北新社 / Presented by クラシカ・ジャパン
公式サイト:http://bolshoi-babylon.jp/
★2015年9月19日(土)Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カプチーノはお熱いうちに (原題:Allacciate le cinture)

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監督・脚本:フェルザン・オズペテク
撮影:ジャンフィリッポ・コルティチェッリ
音楽:パスクァーレ・カタラーノ
出演:カシア・スムトゥアニク(エレナ)、フランチェスコ・アルカ(アントニオ)、フィリッポ・シッキターノ(ファビオ)、カロリーナ・クレシェンティーニ(シルヴィア)、パオラ・ミナッチョーニ(エグレ)

南イタリアの美しい街、レッチェのカフェで働くエレナは金持ちの御曹司ジョルジュと交際中だったが、カフェの同僚シルヴィアの恋人のアントニオと恋に落ちてしまう。波乱を乗り越えて結ばれ、2人の子宝にも恵まれた。エレナは親友のファビオと、夢見ていた自分たちの店を持つことができた。
多忙で充実した生活を送って13年。エレナはアントニオの浮気にも気づいていたが、事業を大きくすることで頭はいっぱいだった。しかし、叔母のがん検診に付き合って、自分が乳がんにおかされていたのを知って愕然とする。

フェルザン・オズペテク監督は『あしたのパスタはアルデンテ』(2011年)で知られているのではないでしょうか? 今回はさらに多くの個性的なキャストをうまく配して、イタリアで大ヒットしたそうです。恋愛と結婚、仕事、突然の病気、愛する家族・・・どの国でも共通する悩みや喜びを描いています。
ヒロインのカシア・スムトゥアニクは『パリより愛をこめて』(2010年)で、ジョナサン・リース・マイヤーズの恋人役で出演していました。スキン・ヘッドのジョン・トラボルタが強烈でしたっけ。フィリッポ・シッキターノは2013年公開の『ブルーノのしあわせガイド』や『ふたりの特別な一日』に主演。覚えているのは「冬ソナ」のパク・ヨンハ似だったから。マイペースな叔母さんと、病院での友人エグレが特に印象に残りました。
乳がんは日本でも罹患率が高いそうです。検診の機会を逃さないで。(白)


監督のフェルザン・オズぺテクという名前、イタリア人っぽくない、というかトルコ人?と思ったら、やはりそうでした。(今さらですが) 1959年2月3日トルコ、イスタンブール生まれ。1977年 イタリアへ移住。ローマ・ラ・サピエンチァ大学を経て、シルヴィオ・ダミーコ国立演劇アカデミーで演出を学ぶ。
監督デビュー作は、『私の愛したイスタンブール(Hamam)』(1997年)。2作目は、オスマン・トルコの最後の日々を描いたイタリア=フランス=トルコ合作映画 『ラスト・ハーレム(Harem suare)』(1999年)。いずれも故国を題材にしたものでした。
最近観た『あしたのパスタはアルデンテ』(2010年)も、本作も、まさにイタリアという映画で、監督がトルコの方とは資料を見るまで気が付きませんでした。
次回作は、著作“Rosso Istanbul”(赤いイスタンブール)の映画化。異国で成功した映画監督が故郷に帰るという自伝的物語とのこと。楽しみです。(咲)


2014年/イタリア/カラー/シネスコ/112分
配給:ザジフィルムズ
(C)2013 All rights reserved R&C Produzioni Srl - Faros Film
http://www.zaziefilms.com/cappuccino/
★2015年9月19日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒロイン失格

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監督:英勉
原作:幸田もも子
脚本:吉田恵里香
出演:桐谷美玲(松崎はとり)、山崎賢人(寺坂利太)、坂口健太郎(弘光廣祐)、福田彩乃(中島杏子)、我妻三輪子(安達未帆)

女子高生のはとりは、幼馴染の利太(りた)がずっと大好き。彼こそが“運命の人”と思いこんでいる。ところが利太のほうは、はとりがそばにいるのが当たり前で恋心なんてこれっぽちもなさそう。おまけにけっこうモテる。ヒロインたるべく日々女を磨いているはとりにかまわず、地味〜でイケてない安達さんと付き合い始めてしまった。「なぜ脇役キャラと?!ヒロインは私よ〜!」と、奪還作戦に突入するはとりを「可愛い!」とアプローチしてきたのは学校一のモテ男弘光(ひろみつ)だった。クールな利太と違って積極的でよく気のつく弘光に、利太ひとすじだったはとりの気持ちが揺らぎ始める。

桐谷美玲が元気な女子高生を演じてとっても可愛いです。親友の愚かなる中島役の福田彩乃さんのキャラもクラスに一人はいそう。安達さん役の我妻三輪子さんは『こっぱみじん』が良かったですよね。青春から遠く離れてしまったおばちゃんも楽しめましたから、現役女子高生は、ムネきゅん+笑って泣けるはず。イケメン2人に挟まれた幸せで贅沢な悩みをちょっと分けてもらってください。。
英勉(はなぶさ つとむ)監督は『ハンサム★スーツ』でデビュー。以後『高校デビュー』『行け!男子高校演劇部』と続き、コミックが原作のこのラブコメ。コメディがお得意かと思ったら『貞子3D』も監督されていたんですね。これはオリジナルも怖くて観られなかったので未見です(ホラー作品苦手で)。
公式サイトに原作コミックためし読みのリンクがあります。(白)


2015年/日本/カラー/112分
配給:ワーナー・ブラザース
(C)2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社
http://wwws.warnerbros.co.jp/heroine-shikkaku/
★2015年9月19日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ポプラの秋

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監督:大森研一
原作:湯本香樹実
脚本:大森研一、日下部哲
撮影:中堀正夫(JSC)
音楽:清塚信也
出演:本田望結(星野千秋)、中村玉緒(ポプラ荘の大家のおばあさん)、大塚寧々(千秋の母つかさ)、村川絵梨(大人になった千秋)、藤田朋子(佐々木さん)、宮川一朗太(西岡さん)、山口いずみ(団子屋のおかみさん)、内藤剛志(山根さん)、伊澤柾樹(オサムくん)

大好きなお父さんが突然亡くなってしまい、8歳の千秋は笑わなくなった母と新しい生活を始めた。大きなポプラが目印のポプラ荘の大家さんは一人暮らしのおばあさん。お母さんは仕事で遅くなるので、熱を出した日から千秋はおばあさんと一緒に過ごす時間が多くなる。おばあさんは「あの世に手紙を届けられる」と秘密を教えてくれた。千秋は天国のお父さんに手紙を書いて届けてもらうことにした。

公開中の洋画『ヴィンセントが教えてくれたこと』は、おじいさんと隣の男の子。遊び人のおじいさんは、子守代金をしっかり取っていました。
こちらはおばあさんと母子家庭の女の子。ちょっと懐かしい佇まいのアパートの大家さんと店子のやりとりは、個別化しているこのごろではもう見られないかもしれません。同じアパートの隣人たちとも暖かい繋がりがあります。中村玉緒さんがお元気で、子役の本田望結ちゃんとほぼ2人が出ずっぱりです。
父にあてて手紙を書くことで、千秋の心の穴は知らず知らずに埋まっていきます。大人のお母さんのほうはもっと傷が深くて、日々生きることだけでいっぱいです。ラストで明かされる秘密にうるうるする方が多いことでしょう。
湯本香樹実さんは『夏の庭 The Friends』(1994年/相米慎二監督)の原作者。10年ぶりの映画化作品ですが、10月には『岸辺の旅』も公開になります。3本の共通点は主人公が「死」と関わるお話。別れる悲しみはありますが、帰る場所に向かうやすらぎも感じました。(白)


2015年/日本/カラー/98分
配給:アスミック・エース、シナジー
(C)2015「ポプラの秋」製作委員会
http://popura-aki.com/
★2015年9月19日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女   原題:A Girl Walks Home Alone at Night

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監督:アナ・リリ・アミリプール
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ、マーシャル・マネシュ、モジャン・マーノ、マースカ(猫)

人気のない夜のバッド・シティ。黒いチャードルを纏った美少女がスケートボードに乗って現れる。町にはびこる悪人を見つけては、そのあとをつけていく。少女の正体は、人間の血を吸って生きるヴァンパイア。
バッド・シティに住む青年アラシュ。父親の借金のカタに、薬の売人でポン引きのサイードに、バイトで溜めたお金でやっと買った愛車を奪われてしまう。
サイードは盗んだピカピカの車で、チャードルの美少女をナンパし家に連れ込むことに成功する。彼女がヴァンパイアだとも知らずに・・・
車を取り返そうとサイードの家に向かったアラシュは、美しい少女とすれ違う。家に入り、サイードの変わり果てた姿に出くわすアラシュ。車のキーを取り戻し、麻薬の入ったアタッシュケースを奪って、これで貧しい暮らしから抜け出そうと決意する。
ハローウィンの夜、ドラキュラに扮したアラシュはチャードルの美少女と出会い、恋に落ちる・・・

アナ・リリ・アミリプール監督は、イラン人の両親のもとイギリスで生まれ、8歳の時、アメリカに移住。その後、イランにも住み、現在はアメリカ在住。
イラン映画を作りたかったという監督。もちろんイランでは撮影できないので、カリフォルニア州の誰もいなくなった石油の町をイランの「shahare badi(Bad City)」という町に仕立てて撮影。実は、イラン革命後、アメリカに移住したイラン人の多く(百万人以上!)がカリフォルニア州にいて、ロサンジェルスはイランジェルスと呼ばれるほど。ピスタチオやレーズンが名産なのでもわかる通り、気候が似ていて居心地がいいのだと思う。ちょっと乾いた感じのBad City。夜のシーンばかりだし、イランにある町と言われてもあまり違和感がない。といっても、手書きのペルシャ語の町の標識が、いかにも偽物っぽいのですが。ちなみに、ペルシャ語でも「悪い」はbad。
本作は、全編ペルシャ語ですが、これがまたすごくわかりやすいペルシャ語で、勉強中の学生さんにお奨めしたい。背後にはペルシャ語の曲も流れてきて、イラン贔屓にはどこか懐かしいものばかり。イランを知らない人には、異国情緒を楽しんでいただければと思う。そして、本作、吸血鬼の登場するホラー映画というより、boy meets girl の物語。ホラーはちょっと・・・という方も、怖がらずにどうぞ!
猫が、ちゃんとマースカとキャストの中に入っているように、重要な役どころ。猫好きにもお奨め。

同じ9月19日公開の『ハッピーボイス・キラー』のマルジャン・サトラピ監督も国外に住むイラン女性。彼女は自身のグラッフィックノベルを映画化して『ペルセポリス』を作っているが、本作のアナ・リリ・アミリプール監督は、映画を作った後に、映画をもとにグラッフィックノベルを出している。アナ・リリ・アミリプールも、マルジャン・サトラピ同様、多才なイラン女性。映画の資金は、ポールダンサーとして稼いだお金をもとに増やしたのだとか。今後の活躍が楽しみだ。(咲)


2014年/アメリカ/ペルシャ語/101分/モノクロ
配給:ギャガ・プラス
公式サイト:http://vampire.gaga.ne.jp/
★2015年9月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする