2015年08月29日

しあわせへのまわり道  原題:Learning to Drive

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監督:イサベル・コイシェ(『死ぬまでにしたい10のこと』『エレジー』)
主演:パトリシア・クラークソン、ベン・キングズレー、ジェイク・ウェバー、グレース・ガマー、サリター・チョウドリー

ニューヨーク、マンハッタン。文芸評論家として認められ、充実した人生に幸せいっぱいのウェンディ(パトリシア・クラークソン)。ある夜、友人を交えた会食中に、21年間連れ添った夫テッド(ジェイク・ウェバー)の浮気が発覚。しかも浮気相手と再婚するといわれ、帰り道のタクシーの中で大喧嘩。翌日、ほんとに夫に立ち去られ呆然としているウェンディのところに、ターバン姿のインド人タクシー運転手ダルワーン(ベン・キングズレー)が忘れ物を届けにくる。その時、ふと目に止まったのが、タクシーの上の「運転教えます」の広告。車を運転できないウェンディは、夫がいないと郊外の娘のところにも行けないのだ。翌日から、ウェンディはさっそくダルワーンから運転を習い始める・・・

本作は、夫に見捨てられたウェンディが、移民のインド人ダルワーンから運転を習ううちに人生の舵取りの仕方も学んでいく物語。なのですが、私にとっては、ニューヨークのシク教徒の人たちの暮らしを垣間見ることのできる作品として興味津々でした。
インドには様々な民族がいるけれど、先のとがったターバンをきっちり巻いたシク教徒は、マイノリティーなのに、インド人を代表するがごとくの存在。ですが、「アラブ野郎!」と言われる場面が二度ほど出てきて、9.11以降、ターバン故にアラブと間違えられて殺されたシク教徒がいたことを思い出します。監督は、そんな状況もさりげなく織り込んでいます。

さて、本作には、ニューヨークの広々としたシク教寺院(グルドゥワーラー)が出てきて、かなり多くのシク教徒が暮らしているらしいことがわかります。プレス資料に溝上富夫先生(大阪外国語大学名誉教授)の「シク教徒の特徴とアメリカのシク教徒」と題する解説があって、ニューヨークだけでも10以上の寺院があるとのこと。特にクイーンズ地区には、7〜8あり、この地区にかなり多くのシク教徒が集中して暮らしているようです。
昨年公開されたドキュメンタリー映画『聖者たちの食卓』で紹介されたシク教寺院でのランガル(無料提供の菜食料理を皆でいただく)はもちろん、皆で楽器を弾きながら歌う場面や、伝統的な結婚式なども出てきます。ターバンを巻くところも! 一生切らない髪の毛が頭上に団子になっているのも見せています。

ダルワーンがなぜニューヨークにいるのかについて多くは語られないのですが、本国では大学で教鞭をとっていたこと、テロリストだと誤認されて収監されていたことがあって政治亡命したという言葉が出てきます。前述の溝上先生の解説には、1980年代の過激派シク教徒による独立運動に端を発するアムリトサルの総本山ゴールデンテンプルへの軍隊介入、そして、シク教徒によるインディラ・ガンディー首相暗殺という一連の動きの中で、海外に亡命したシク教徒がいることがわかりやすく書かれています。

ダルワーンを演じたベン・キングズレーの父はインド人医師、母はイギリス人モデル&女優。本物のシク教徒の方が見たらちょっと違うかもしれませんが、ターバン姿はまさにシク教徒のインド人。アメリカに亡命したイラン人家族を描いた『砂と霧の家』では、ちゃんとイラン人に見えました。

「シートベルトを締めて」という言葉に始まり、落ち着いた面持ちでウェンディに運転だけでなく人生の処し方も示唆するダルワーンですが、母親の指示でインドからやってきた花嫁との結婚式では、中年男らしい戸惑いを見せて笑わせてくれます。ちなみに花嫁役のサリター・チョウドリーは、『ミシシッピー・マサラ』(1991年/ミーラー・ナーイル監督)のヒロインを演じていた女優さん。といっても、かなり時を経たのでわかりませんでした・・・ 

イサベル・コイシェ監督はスペイン出身の女性。人種のるつぼニューヨークを舞台に、素敵な1作を仕上げてくれました。(咲)


2014年/アメリカ/90分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
公式サイト:http://shiawase-mawarimichi.
★2015年8月28日(金)よりTOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
posted by sakiko at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クーデター(原題:No Escape)

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監督:ジョン・エリック・ドゥードル
脚本:ジョン・エリック・ドゥードル、ドリュー・ドゥードル
撮影:レオ・アンスタン
出演:オーウェン・ウィルソン(ジャック)、ピアース・ブロスナン(ハモンド)、レイク・ベル、スターリング・ジェリンズ、クレア・ギア

ジャックは妻と娘2人を伴い、東南アジアのとある国に赴任した。大きな規模の支援事業を始めるため、顔写真つきの歓迎横断幕がホテルに張られていて気恥ずかしい。新しい生活に胸を躍らせていた矢先、クーデターが勃発する。なにがなんだかわからないうちに政府の要人が次々と殺され、街は無法地帯と化している。「外国人を殺す」という怒号が聞こえ、ホテルに面した道路に発砲する暴徒の群れが見える。ジャックは妻子を守り、宿泊客とともに屋上に駆け上がるが、救助のヘリと思われたのは容赦なく狙い撃ちをする敵だった。間一髪で逃げ延び、現地で出会ったハモンドに助けられる。国境を越えろと言われるのだが・・・。

あちこちでテロが頻発するこのごろ、どこかでこんなことに巻き込まれることがあるかもしれません。そんな目に遭うことはあるまいと思いますが、万が一、自分だったら何ができるのか・・・何にもできなさそうです。
初めは少し頼りないパパだったジャックが、窮地に陥ったときにみせた頑張りに胸が熱くなります。あれよあれよというまに周りは危険な状態になり、すぐ外国人と知れる一家はいっときも気がぬけません。ジャックと一緒に逃げ道を探し、子どもたちをなんとか助けたいとドキドキします。ママと娘たちもどれだけ頑張ったか、劇場でごらんください。
ピアース・ブロスナン演じるハモンドはなかなか正体が明らかにならないのですが、“いやいや元007よ、悪いようにはしないだろ”とつい思ってしまいます。違う作品だというのに、刷り込みはいつまでも残るものです。(白)


2015年/アメリカ/カラー/ビスタ/101分
配給:クロックワークス
(C)2015 Coup Pictures, LLC. All rights reserved.
http://www.coup-movie.com/

★2015年9月5日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー!!
posted by shiraishi at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Dearダニー 君へのうた(原題:Danny Collins)

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監督・脚本:ダン・フォーゲルマン
撮影:スティーブ・イェドリン
音楽:セオドア・シャピロ、ライアン・アダムス
出演:アル・パチーノ(ダニー)、クリストファー・プラマー(フランク)、アネット・ベニング(メアリー)、ボビー・カナベイル(トム)、ジェニファー・ガーナー(サマンサ)、ジゼル・アイゼンバーグ(ホープ)、カタリーナ・キャス(ソフィー)

ベテランミュージシャンのダニーは、往年のヒット曲を歌うだけの日々にうんざりしていた。それだけで若い婚約者の満足する派手な生活を支えられはしたが、新曲を作る意欲もなく空しい心をもてあましている。そんなときに長く彼を支えたマネージャーのフランクから、誕生日プレゼントにと、ジョン・レノンの手紙を手渡される。ダニーが駆け出しのシンガーだった43年前、雑誌社あてに出した手紙へのレノンの返事だった。「Dearダニー」と始まる手紙は真情にあふれ、電話番号まで記されている。それが雑誌社からダニーの元へ送られることなく、コレクターの手に渡っていたのをフランクが見つけて手に入れたのだった。ダニーは生活を立て直そうと決意する。

オスカー俳優アル・パチーノの久しぶりの新作です。初めてのミュージシャン役に挑戦、かつて一世を風靡しながら怠惰な生活を送る愛すべきダメ男を、チャーミングに演じています。舞台でのパフォーマンスはシカゴの公演中のグリーク・シアターに10分間だけ割り込み、シカゴのために集まった観客と共につくりあげたのだそうです。映画のために作られたオリジナルの曲を、ダニーと観客がかけあいで歌うところも見所です。
ジョン・レノンの手紙の話は実話で、ジョン・レノン財団の協力のもと、その歌もふんだんに使われています。息子のトムと会うときに流れる「ビューティル・ボーイ」にはグッときます。もう一人の出演者ともいえるジョンの歌声に包まれながら、ドラマをお楽しみください。(白)


2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/107分
配給:KADOKAWA
(C)2015 Danny Collins Productions LLC
http://deardanny.jp/
★2015年9月5日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:14| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

天使が消えた街(原題:The Face of an Angel)

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監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:ダニエル・ブリュール(トーマス)、ケイト・ベッキンセール(シモーン)、カーラ・デルビーニュ(メラニー)

2011年、映画監督トーマスはローマにやってきた。4年前に古都シエナで起こったイギリス人留学生殺人事件を取材するためだった。被害者エリザベスの他殺体が発見されてまもなく、ルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカとその恋人のイタリア人青年らが容疑者として逮捕されている。若く美しいジェシカがマスコミの注目を浴び、事件の本質とかけ離れた過激な報道合戦が巻き起こっていた。トーマスは事件についてのノンフィクションを書いたジャーナリスト、シモーンの協力を得て、エリザベスとその周辺の真実をあぶりだす作品をつくろうと考えていた。新しい展開も見い出せず行き詰まるトーマスの前に、天使のような微笑の女子学生メラニーが現われる。

実際にイタリアのペルージャで起こった事件をもとに、その映画化を図る監督の視点もあわせ、重層的なドラマとした作品。
気鋭の監督と期待されながら、思うような作品が撮れずにいるトーマスは、この作品で起死回生を目論んでいます。メラニーは何の見返りももとめず、親切に世話を焼きますが、学生なのに知り合いが多く裏道にも通じている謎の存在です。トーマスをほっとけなくて面倒をみているという感じで、離婚問題まで抱えている頼りないトーマスの守護神のようです。トップモデルだというカーラ・デルビーニュが、どこにいて何を背景にしても目を引きました。
事件の実際の判決は有罪、逆転無罪、さらにまた有罪となり、被告2人は懲役28年、25年で服役中とか。
マイケル・ウインターボトム監督作品は『いとしきエブリデイ』の後、スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン2人のグルメ旅『イタリアは呼んでいる』が公開されています。
このトーマスを見て、監督もちょっとお疲れなのかと思ったことです。(白)


2014年/イギリス・イタリア・スペイン合作/カラー/101分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)ANGEL FACE FILMS LIMITED / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014.
http://www.angel-kieta.com/
★2015年9月5日(土)より全国順次公開
posted by shiraishi at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする