2015年08月23日

『薩チャン 正ちゃん〜戦後民主的独立プロ奮闘記〜』

8月29日(土)よりK's cinemaほか全国順次公開

『薩チャン』メイン_R.jpg
(C)独立プロ名画保存会 

監督:池田博穂
出演 早乙女勝元 山田洋次 高部鐵也
独立プロの熱い軌跡を知ってほしい
1950年〜60年代、大手映画会社に属さない独立プロの監督たちが続々と名作を世に送り出した「独立プロ映画黄金時代」があった。その全盛期に活躍した、薩チャンこと山本薩夫監督、正ちゃんこと今井正監督を中心に、その時代を築いた亀井文夫、新藤兼人監督などと、スタッフたちの軌跡と作品を紹介している。
戦後の民主的息吹の中で、映画の民主化と、労働のあり方を巡って闘われた東宝争議。1948年の東宝争議では、撮影所の接収に警視庁予備隊や米軍まで出動したという。その後、東宝を解雇された人々、レッドパージによって映画会社から追放された人々は、自分たちの作りたい映画を作ろうと、大手映画会社に頼らない映画作りに乗り出した。
東宝争議の解決金を基に作られた『暴力の街』(1950年/山本薩夫監督)が先陣を切りヒットした。独立プロの監督たちは、戦争の時代や、映画会社に押さえられていた思いを作品に託し、腕を競い合い、質の高い作品は人々に感動や勇気を与え、今も語り継がれる名作を生み出した。
彼らの姿勢や、気骨ある生き方は観る人々の胸を打ち、戦後の労働運動、平和運動などにも影響を与えた。そんな独立プロ全盛期を築いた監督たちの「映画魂」が描かれる。
山本薩夫監督の『荷車の歌』『真空地帯』。今井正監督の『にごりえ』『キクとイサム』。家城巳代治監督の『ともしび』『姉妹』、新藤兼人監督の『裸の島』『原爆の子』などの一場面も登場し、時代の流れを描くとともに、彼らが作ってきた作品も紹介される。これらの作品も一緒に上映される。

山本薩夫、今井正、新藤兼人監督などが、1950,60年代に独立プロを作って名作を作っていったいきさつが描かれている。東宝争議やレッドパージなどがあったということは、知識として少しは知っていたけど、この作品を見て、具体的なことが伝わってきた。こういう歴史も、ぜひ伝えていかなくてはならないと思う。『裸の島』『真空地帯』『雲ながるる果てに』など、気になっていながら観てなかった作品も上映されるので、それらも観にいきたい。
冒頭に、私の大好きな安曇野から撮った鹿島槍ヶ岳が出てきてびっくり。なんで?と思ったら、今井夫人のツヤさんの出身が長野県松本市で、ツヤさんが今井さんに嫁いだ話から始まったからだった。
(暁)


配給・宣伝 新日本映画社
公式FB www.facebook.com/satchanshouchan
2015年 日本
posted by akemi at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

僕たちの家(うち)に帰ろう   原題:家在水草豊茂的地方 英題:River Road

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監督・脚本・編集・美術:リー・ルイジュン(李睿珺)
出演:タン・ロン(湯龍)、グオ・ソンタオ(郭嵩濤)、バイ・ウェンシン(白文信)、グオ・ジェンミン(郭建民)、マ・シンチュン(馬興春)

中国北西部で暮らすユグル族の兄弟。両親は放牧できる土地を求めて奥地の草原に移住したため、兄バーテルは祖父のもとで暮らし、弟アディカーは学校の寮に住んでいる。夏休み、父親が迎えにこないため、二人は駱駝に乗って奥地の草原を目指す。兄は弟が母親の愛情を独占していると思い、弟はいつも兄のお下がりばかり着せられていると、お互い嫉妬心で仲が悪い。父から川に沿ってくればいいと教わっていたが、目印のはずの川が干上がってしまっている・・・・

2014年の東京国際映画祭で『遥かなる家』のタイトルで上映された作品。コンペティションの中で一番気に入った作品で、嬉しい公開となりました。
『家在水草豊茂的地方(我が家は水草茂るところにある)』という原題には、近代化で喪失した自然への思いを込めたそうです。
厳しい自然の中で、仲の悪かった兄弟が次第に分かち合えるようになる姿も見どころです。
記者会見で、監督にユグル族について伺ったところ、監督より「9世紀には河西回廊に強大なウィグル王国がありました。多くがイスラーム化した中、仏教を守った人たちがユグル族。今は、1万4千人しかいません。90%が自分たちの言葉である突厥語をしゃべれません。できるだけ言葉を入れようと私も勉強しました。私が言葉や駱駝の乗り方を教えないといけない状況でした。彼らの文化を映画に残したいと思いました」との説明がありました。
漢字で書いた場合、ユグルもウィグルも同じと聞きました。私にとっては、イスラーム化しないで仏教を守ってきた人たちが少数ながらいることを知り驚きました。
近代化や政権の都合で、自然も伝統文化もないがしろにされてきたことを憂うばかりです。
今からでも遅くない、わずかに残された伝統を守りつつ、近代化をはかってほしいものだと思います。(咲)


僕たちの家(うち)に帰ろうスタッフ_R.JPG

製作スタッフ 右から2番目リー・ルイジュン(李睿珺)監督、3番目ファン・リー(方励)プロデューサー(2010東京国際映画祭にて 撮影:宮崎暁美) 

2014年/中国/テュルク語、北京語/103分/カラ―
配給・宣伝:マジックアワー
公式サイト:http://www.magichour.co.jp/uchi/
★2015年8月29日(土) シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
posted by sakiko at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『わたしに会うまでの1600キロ』英題:WILD

2015年8月28日 (TOHOシネマズシャンテほか)公開
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コピーライトマーク Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
監督 ジャン=マルク・ヴァレ
脚本/製作総指揮 ニック・ホーンビィ 撮影監督 イヴ・ベランジェ
原作 シェリル・ストレイド
出演 リース・ウィザースプーン(シェリル・ストレイド)

人生には、バカなことをしなきゃ、乗り越えられない時がある?
母の死と離婚を経験し、一から出直すため、シェリル・ストレイドはアメリカ西海岸を南北に縦断する自然歩道パシフィック・クレスト・トレイルという過酷なコースに挑戦した。山歩きの経験もなく、トレーニングもせず1600キロの踏破に挑んだ無謀とも言える彼女の体験記がベストセラーになり、映画化された。
美しくも厳しい大自然のなかで、彼女が本当の自分と出会うまでを描くのだが、詰め込みすぎたバックパックにふらついたり、コンロの燃料を間違えて火が使えず、似たものや焼いたものは食べられない。食べ物も底をついたりと、そんな失敗のエピソードが次々と出てくる。
しかし、何よりこの山道は厳しかった。極寒の雪山、酷暑の砂漠に行く手を阻まれ、しかも、自分の不注意から登山靴を崖の上から落としてしまう。こんな状況の中を94日間歩き、やっと最終点にたどりつく。こんな経験の中で、彼女の喪失感や絶望感が癒されていく。
監督は『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ。

登山を趣味としていた私からすると、あまりに無知な自然に対する知識と準備に唖然とした。長い距離を歩くのにすごく重い荷物の量。それに、燃料を間違えてしまったりと、そんなことは考えられない。あまりにいきあたりばったり。この状態で、最終点までたどりつくことができたのは運が良かったとしか思えない。それでも、途中で補給したり、荷物を減らしたり、この道を歩く人たちとの出会いがあって、旅を続けることができた。やはり、人間ひとりでは生きていくことはできない。一人旅ただけど、一人旅ではなかったということだと思う(暁)。

製作年:2014年 製作国:アメリカ 上映時間:1時間56分
配給:20世紀フォックス映画 カラー/シネマスコープ
posted by akemi at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヴィンセントが教えてくれたこと(原題:St. Vincent)

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監督・脚本・製作:セオドア・メルフィ
出演:ビル・マーレイ(ヴィンセント)、メリッサ・マッカーシー(マギー)、ナオミ・ワッツ(ダカ)、クリス・オダウド(ブラザー・ジェラティ)、テレンス・ハワード(ズッコ)

母子家庭の小学生オリバーが引っ越してきた隣には、ガンコそうなお爺さんヴィンセントが一人暮らしをしていた。ママの仕事の都合で、下校後ヴィンセントがアルバイトでオリバーの面倒を見ることになった。酒とギャンブルが好きな不良爺さんのヴィンセントは、自分の都合だけで競馬場やバーにもオリバーを連れ回す。最初はしぶしぶのオリバーだったが、苛められていたところを助けられ、喧嘩のコツも伝授される。オリバーのおかげで競馬で儲けたヴィンセントもご機嫌。2人の間はいつしか近づき、最高の相棒に変わっていく。

セオドア・メルフィ監督はこれが初の長編作品ですが、広告業界出身でテレビやCMも手がけ、これまでも短編作品が高評価を受けています。主演にと切望したビル・マーレイに半年も電話をかけ続けて口説き落としたとか。粘った甲斐あって、第72回ゴールデングローブ賞の作品賞&主演男優賞にノミネートされています。この脚本にはたっぷりのユーモアと一緒に、老後の不安や不幸な結婚など社会の暗部もはめ込まれています。
ベテランの俳優たちに囲まれながら、小さなオリバー役のジェイデン・リーベラーが少しも萎縮せず、ビル・マーレイとの素晴らしいバディぶりを見せました。この作品の後も『アロハ』(日本未公開)でビル・マーレイと共演。出演作が続いているようです。ヴィンセントの家にやってくる娼婦のダカをなんとナオミ・ワッツ。出産間近のおなかでのポールダンスのシーンに目が丸くなりました。(白)

アルコールやギャンブルに溺れる、ちょい悪おやじのヴィンセント。面倒を見ることになったオリバーをバーや競馬場にまで連れていってしまう。でも、喧嘩に勝つ方法も教えてくれていい相棒になってゆく。ビル・マーレイのだめおやじぶりがいい。二人の最強コンビぶりがいい。(暁)


2014年/アメリカ/カラー/ビスタ/102分
配給:キノフィルムズ
(C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.
http://vincent.jp/
★2015年9月4日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バレエボーイズ(原題:Ballettguttene)

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監督:ケネス・エルベバック
撮影:トシュタイン・ノドランド
編集:クリストファー・ヘイエ
音楽:ヘンリク・スクラム
出演:ルーカス・ビヨルンボー、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド

ノルウェーの首都オスロ。プロのバレエダンサーを目指し、ひたむきにレッスンに励む少年たちの12〜16歳の多感な時期を撮影したドキュメンタリー。ルーカス、トルゲール、シーヴェルトは互いにライバルではあったが、仲も良くレッスンの合間にお喋りしたりふざけあったりしている。このままの関係が続くかと思われたある日、ルーカスに名門のロイヤル・バレエ・アカデミーから招待があった。いつのまにか3人はそれぞれに将来の選択の岐路に立っていたのだった。

3人の少年たちが成長していく4年間を遠い親戚のおばちゃんのような気分で観ました。可愛い子たちが競い合いながらステップアップし、だんだんと青年らしくなっていくのが頼もしいです。同じようにバレエを愛していても、行く道が分かれていくのはちょっと胸が痛みますが、きっとどんなことも糧にして大人になっていくはずと勝手に期待しています。彼らのその後が気になりますが、公式サイトに記述がありました。
「ルーカスは英国ロイヤル・バレエ・アカデミー卒業後、ロイヤル・バレエ団に研修生として入団。2015年8月より本拠地であるロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立つ事が決まっている。シーヴェルトはローザンヌ国際バレエコンクール2015」のファイナリストに選ばれる。トルゲールは7月からノルウェー軍へ入隊」ルーカスとシーヴェルトのinstaglamをたどると最近の画像が観られます。もうすっかり大人でした。(白)

男の子3人のバレエといえば、ビョン・ヨンジュ監督の『僕らのバレエ教室』(2004年/韓国)を思い出します。男の子にとって、バレエをやっているというのは、ちょっと気恥ずかしい思いがあるもの。『バレエボーイズ』の3人の男の子たちも、そんな気持ちをちらつかせながら、お互いに切磋琢磨して、ひたむきにプロを目指して練習にいそしみます。まだ10代の頃から、はっきりとした目標があっていいなぁ〜と、うらやましい限りでした。3人の中でも、東洋系の顔立ちのシーヴェルトが特に気になりました。これからの活躍も注目したい魅力的な男の子。
そして、本作でオスロのオペラハウスが登場したのも注目です。昨年の東京国際映画祭特別招待作品『もしも建物が話せたら』(WOWOWの国際共同制作ドキュメンタリー第1弾)で取り上げられた6つの建物の中で一番気になった建物でした。フィヨルドの淵に、まるで海面からそそり立つ氷山のように建てられた新しいオペラハウス。緩やかなスロープになった屋根の上を歩く人や、バレエの練習をする人の姿が印象的でした。本作の3人の少年たちも、屋根の上で練習したりしたのでしょうか・・・ 本作の中で、新しいオペラハウスは、低所得者層の住む地区に建てられたと知りました。この地区の誇りとなるような素晴らしい建物の存在は、人々に希望を与えてくれているのではないかと思いました。(咲)


2014年/ノルウェー/カラー/16:9デジタル/75分
配給:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/balletboys/
★2015年8月29日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開
posted by shiraishi at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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