2015年07月26日
筑波海軍航空隊
監督:若月 治
出演(証言):木名瀬信也 柳井和臣 橋本義雄 流 政之ほか
ナレーション:原日出子
音楽:西井夕紀子
戦闘機の教育訓練部隊だった筑波海軍航空隊(茨城県笠間市)。太平洋戦争末期、爆弾を抱えたゼロ戦で、アメリカの戦艦に体当たり攻撃を仕掛ける「神風特別攻撃隊=カミカゼ」に編入された84人の若者たち。生きて帰ることのない特攻で60名が亡くなった。本作は、戦争終結によって生き残ることができた元特攻隊員の人々の証言集。
<監督の言葉>
今なぜ「特攻隊」の映画なのか?そんな風に思われる方も多いかもしれません。
これまで特攻隊というと“国のために命を投げ出した英雄”という文脈で語られてきました。しかし様々なエピソードや当時の若者たちの声を聞いていくと、見えてきたのは屈託なく青春を謳歌する普通の若者たちの素顔です。恋をし、スポーツに熱中し、歌や文学に酔いしれる。そんな当たり前の日々を奪われてしまった哀しく切ない現実でした。
映画で語られるのは、単に歴史の証言でも過去の悲劇でもありません。戦争という現実は、今も身近にあり、誰もがいつ巻き込まれてもおかしくないからです。
敵も味方も含め、失われた多くの若者たちの命、その一人一人の人生を知り、命の重みを改めて感じることが、戦争を経験された方たちから託された最期のメッセージだと思います。
冒頭、昭和18年10月21日、明治神宮外苑競技場で開かれた出陣学徒壮行会に続き、荒海でのボート演習の資料映像。
あ〜これは、父の映画だと思った。
本作の証言者の多くが、学徒出陣で海軍航空隊の特攻隊員となった方たち。父も学徒出陣で海軍兵科魚雷艇隊に所属し、長崎の大村湾で震洋という特攻艇の搭乗員の訓練にあたっていた。父が大学在学中に徴兵され、一度は死を覚悟したことをあらためて考えさせられた。)
*学徒出陣: 昭和18年10月2日、政府はそれまで大学・高校(いずれも旧制)などの在学生に認められていた徴兵猶予の措置を文科系学生について停止。20歳以上の者は徴兵検査を受け、陸軍は12月1日に入営、海軍は12月10日に入隊した。これが狭義の学徒出陣。
父は話好きで、幼い頃から、戦争の頃の話もよく聞かされてきたが、恨み辛みは一度も聞いたことはない。海軍時代の話は、子ども心にむしろ楽しそうに聞えた記憶がある。
本作の冒頭に出てくる出陣学徒壮行会の時には、友人と3人で奈良の若草山にいて、ラジオ中継を聴きながら、「東京は雨だ」と話していたと聞かされていた。
今回、シネマジャーナル94号で戦後70年特集を組んだので、あらためて父に話を聞いた。壮行会を欠席することなどできたのか?というのが、ずっと疑問だったのだけど、別に強制されたものでもなく、案内があったかどうかも覚えてないという。
父は、昭和18年10月1日に大学に入学したとたん、学徒出陣が決まり、入隊までの2ヶ月ちょっと、それこそ、これが最後になるかもしれないと、自分の専攻以外の講義にも積極的に出たり、旅に出たりしたそうだ。
二等水兵として入隊してすぐ、予備学生試験を受け、1年後の19年12月25日、予備学生から海軍少尉に任官。第25魚雷艇隊(基地はダバオ)付の辞令を受ける。フィリピン行き26名一緒に乗れる船を探し、1月9日佐世保に集合。乗船の手続きに行った代表が両手をあげてにこにこ笑いながら、「取りやめになったぞ」と戻ってきたのをよく覚えているという。
前夜、佐世保の中村旅館で日記の最後に遺書らしきものをしたためて実家に送るように依頼。フィリピン行きが取りやめになって旅館に行ったら、もう発送した後だったが、家族は誰も日記を受け取ってないそうだ。
本作に証言者として登場する柳井和臣(やない・よしおみ)さん(92歳)が、母親宛てに遺書代わりに作ったアルバムを見せながら、つらかったことは伏せて、エンジョイした良い面だけを見せたと語っておられた。
慶應義塾大学在学中に学徒出陣
特攻隊員/第14期海軍飛行専修予備学生時代の柳井和臣さん
2015 プロジェクト茨城
ほかの証言者の話からも、特攻隊に所属した自らの運命を受け入れ、残された人生を精一杯生きた姿を感じた。その潔さに、未来ある若者たちを無駄死にさせた戦争の愚かさを憂うばかりだ。
ところで、よく映画やドラマで、「特攻に志願する者、一歩前へ」という場面があるが、父の経験では、皆の前で意思表明するようなことはなかったという。予備学生時代、翌日までに特攻志望の有無を上官に手渡すよう紙を渡され、「志願する者は熱望の上に大はいくつ付けてもよろしい」と言われたことがあるそうだ。
予備学生時代には特攻は志願によるが、任官後は辞令で否応なく特攻隊付きを任じられた。自ら「お国のために」と命を投げ出したという綺麗ごとだけではなかったことを認識する必要があると思う。
私の父は運よく生き残り、今の私がある。運命に感謝!(咲)
企画・製作:プロジェクト茨城
制作・配給:パルコ
制作・配給協力:シグロ
長編ドキュメンタリー/日本/DCP・BD/カラー(一部モノクロ)/99分
2015 プロジェクト茨城
公式サイト:http://www.cine.co.jp/tsukuba_tokko
★2015年8月1日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ミニオンズ(原題:Minions)
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ
脚本:ケン・ダウリオ、シンコ・ポール
声の出演:スティーブ・カレル、サンドラ・ブロック(スカーレット・オーバーキル)、ジョン・ハム、マイケル・キートン、アリソン・ジャネイ
吹き替え版声の出演:天海祐希(スカーレット・オーバーキル)、宮野真守(ハーブ)、設楽統(ウォルター・ネルソン)、LiSA(マージ・ネルソン)、藤田彩華(ティナ・ネルソン)
人間よりずっと早くに地球上に誕生していた謎の黄色い生物「ミニオンズ」。彼らの目的は「最強最悪のボス」に仕えること。ボスはすぐに見つけられるが、いなくなるのも早かった。失敗を繰り返した挙句、ミニオンズは生きる意欲を失っていた。そんなときに兄貴分のケビンが立ち上がった。みんなの期待を一身に背負い、音楽好きで一つ目のスチュワート、おチビのボブと一緒に新しいボスを探す旅に出る。
「怪盗グルー」シリーズにグルーの手下としてちょこまかと登場していたミニオンズを主役にした1本。彼らが何者で、どこからやってきたのかが始まりから描かれています。ミニオンズの言葉には、名前のほかにときどき通じる単語が混じっていますが、わからなくても問題ありません。表情豊かなのでちゃんと伝わります。小さな子から大人まで楽しめる作品です。
稀代の女悪党スカーレット・オーバーキルの声を当てたのは、サンドラ・ブロックと天海祐希。どちらも男前度が高いです。英国の女王様も気さくに出演。
何があってもめげない気にしない、バナナ好きで可愛いミニオンズ。さわったらぷにぷにしていそうです。前売り特典にはストラップがついていたのですが、私の行ける劇場では人気で早くになくなってしまいました。公式HPでいくつか予告編が観られます。(白)
2015年/アメリカ/カラー/91分/2D,3D
配給:東宝東和
http://minions.jp/
(C)2015 Universal Pictures.
2015年7月31日(土)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
パージ:アナーキー
監督・脚本:ジェームズ・デモナコ
出演:フランク・グリロ(レオ)、カルメン・イジョゴ(エヴァ)、ザック・ギルフォード(シェーン)、キーリー・サンチェス(リズ)、マイケル・K・ウィリアムズ
また“パージ”の日がやってきた。政府の施策により、一年に12時間だけ「殺人を含む全ての犯罪」が合法になる。ウエイトレスのエヴァは、病気の父親、娘のカリと3人でアパート住まい。低所得者の住むこの地域の家には、たいした防犯設備もないが、早く帰宅してなんとかやりすごしたい。シェーンとリズ夫婦は帰宅を急いでいたが、車が故障して立ち往生してしまう。刻々とパージ開始時間が迫る中、安全策もないまま取り残されていた。独り者のレオはこの晩のために、入念な準備をしてきた。完全武装をし、頑丈な車で街へと走り出す。
『パージ』1作目では高級住宅地のセレブな家族が中心でした。今度は貧困地域で襲われてしまった母娘と、帰宅できずに逃げこんできた夫婦、武器を持った男一人が行動を共にします。襲ってくる暴徒から身を守り闘っている人々をよそに、禁断の快楽にふけるセレブたちもいます。少しずつあかされるパージの秘密とは??
1作目を観た方々が抱いた疑問の答えがこの「アナーキー」にあります。しかし、来年には『パージ3』も控えているので、全部というわけにはいきません。う〜む、ひっぱってくれるわ。
規制の厳しい日本だと、銃器など一般の人は一生関わらずに済みそう(そのほうがいい)。「自分の身は自分で守る」歴史と文化のアメリカでは、この映画は絵空事でもないかもしれないと観ながら思いました。(白)
2014年/アメリカ/カラー/103分
配給:シンカ、パルコ
(C)Univesal Pictures
http://purge-movie.jp/
★2015年8月1日(土)TOHOシネマズ日劇ほか全国公開