2015年07月11日
パージ(原題:The Purge)
監督・脚本:ジェームズ・デモナコ
製作ジェイソン・ブラム、マイケル・ベイ
出演:イーサン・ホーク(ジェームス・サンディン)、レナ・ヘディ(メアリー)、アデレイド・ケイン、マックス・バークホルダー、エドウィン・ホッジ
ジェームス・サンディンはセキュリティシステムの会社のトップセールスマン。政府が定めた一年に12時間だけ「殺人を含む全ての犯罪」が合法になる“パージ”により、セキュリティシステムが売れに売れ、高級住宅地に家を構え、今日も昇進が決定したばかり。美しい妻メアリーと彼氏に夢中な高校生の娘、引っ込み思案の息子との生活を満喫していた。
この法律が設定されて以来、ガス抜き効果で犯罪は激減し、社会の安定が保たれていた。
パージでは一定の水準以上の武器の使用を禁じ、また政府高官はそのターゲットにしてはならない。夜7時から翌朝の7時まで警察・消防・医療など救急サービスは全てストップする。いきおい堅牢なセキュリティシステムを導入できる富裕層は安全な一夜を過ごし、貧困層はターゲットにならないよう息を潜めて嵐の過ぎ去るのを待つことになる。
サンディン家も自慢のセキュリティシステムを始動し、全ての窓や出入り口は封鎖された。しかしパージ開始のサイレンが鳴った直後、ターゲットとなった黒人男性が追われるのを見た息子が家に匿ってしまう。すぐに追っ手が現われて、ジェームスに引き渡すよう要求する。
フィクションとはいえ全くなんという法律でしょう。よく成立したものです。普段恨まれている人間がターゲットになるシーンも出てきますが、合法で罰せられなければ何をしてもいいという輩が跋扈して手当たり次第という感じです。「殺された人間は浄化された」と手を下すほうに都合の良い理屈までついて、それじゃあ殺され損、残された遺族に保障があったりお見舞金でも出るわけ?と「?」が噴出します。
法律は作った方になんらかの得があるはず、それは何?と考えると先が読めてきますが、背景はちょっと置いといて。低予算ながらヒットしたこの作品は、襲うものと襲われるものとの攻防が見せ場です。
『パラノーマル・アクティビティ』シリーズを製作したジェイソン・ブラムと『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイが共同プロデュースして、第2弾の『パージ:アナーキー』に続き、第3弾も来年公開が決まっているそうです。「殺すなかれ」という戒めはどこに?(白)
2013年/アメリカ/カラー/HD/85分
配給:シンカ、パルコ
(C)Univesal Pictures
http://purge-movie.jp/
★2015年7月18日(土)TOHOシネマズ日劇ほか全国公開
ルンタ
監督・企画:池谷薫
製作:権洋子
撮影:福居正治
音響構成渡辺丈彦
出演:中原一博、ダムチュ・ドルマ、ジャミヤン・ジンパ、ロプサン・ジンパ、ロプサン・ノルブ
1949年中国はチベットに侵攻、2年後チベットは事実上支配下におかれた。ダライ・ラマ14世が1959年インドに亡命した後、多くのチベット人がヒマラヤを越えてインドやネパールに亡命した。チベットでは中国の圧政に対し抗議行動が続き、取り締まりがさらに厳しくなった。一人我が身に火をつけての焼身抗議≠ェ2009年から141件(2015年3月現在)もあった。
建築家の中原一博(62歳)は、亡命政府が樹立されたダラムマサラに1985年から移住。亡命政府の建築設計を手がけ30年間住み、ブログからチベット人の非暴力の抗議活動リポートを発信し続けている。
1989年に中原氏に出会った池谷監督は、中原氏を案内人に「慈悲と利他の心」を持つチベット人を訪ね始めました。外国のメディアに必死で訴える若い僧侶、長い監獄生活でも自分の信仰を捨てなかった男性。拷問に耐え抜いた元尼僧…チラシを配っただけで逮捕、何年も収監される人もいます。なぜこんなにもひどい目に会わねばならないのでしょう。昔でなく今のチベットの話です。撮り溜めたフィルムが作品になり長い準備期間を経てようやく上映までたどりつきました。
下の公式HPに監督がチベットに出会ったエピソードから書かれた「ルンタへの旅」が掲載されています。「ルンタ」とは天翔けて人々の願いを仏や神々に届けてくれる「風の馬」のこと。この映画にこめられた思いがルンタに乗って各地の人々へ届くように願ってやみません。(白)
2014年/日本/カラー/DCP/111分
配給:蓮ユニバース
(C)Ren Universe 2015
http://lung-ta.net/
★2015年7月18日(土)よりシアターイメージフォーラムほか順次公開
インサイド・ヘッド(原題:Inside Out)
監督:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:ジョナス・リベラ
脚本:ピート・ドクター、メグ・レフォーヴ、ジョシュ・クーリー
音楽:マイケル・ジアッチーノ
声の出演:エイミー・ポーラー(ヨロコビ)、フィリス・スミス(カナシミ)、ルイス・ブラック(イカリ)、ミンディ・カリング(ムカムカ)、ビル・ヘイダー(ビビリ)、ケイトリン・ディアス(ライリー)、カイル・マクラクラン(パパ)、ダイアン・レイン(ママ)
吹き替え版声の出演:竹内結子(ヨロコビ)、大竹しのぶ(カナシミ)、佐藤二朗(ビンボン)
ミネソタの田舎町で明るく元気に育った11歳の少女ライリー。パパの仕事の都合で急に都会のサンフランシスコに引っ越すことになった。今までと違う新しい学校、新しい友だちにライリーは心が不安定になってしまう。ライリーの頭の中の司令部では、「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」の5つの感情が集まって、ライリーを幸せにしようと頑張っていた。そんなときに、喜びでいっぱいだったライリーの思い出を「カナシミ」がさわったことから、悲しい思い出に変わってしまう。慌てて元に戻そうとした「ヨロコビ」は「カナシミ」と一緒に司令部の外に放り出されてしまった。
頭(心)の中が視覚化され、感情たちが司令部でコントロールしている様がアニメになりました。広大な倉庫仕様なのが面白いです。よく「記憶や思い出の引き出し」と言いますが、思い出がそれぞれ感情の色に染まったボールの形でレール様の棚に整然と並べられていました。無限といえそうな数で日々増えていき、捨てられていきます。頭(心)は広〜くて、深〜いようです。
ピート・ドクター監督が「自分の11歳の娘の頭の中で何がおこっているんだろう」と考えたのが始まりだそうです。11歳ころは子どもから大人への入り口の手前あたりで、難しい年頃です。感情が成長とともに分化され、自分の中で葛藤しているのをはっきり描き出します。子どもたちが感じているモヤモヤは、こういう形かも、とディズニースタッフが考えたわけですね。小さな子にはファンタジーと冒険の楽しさを、ちょうどその年頃の子には共感を得られるのではないでしょうか。大人は捨てられ忘れられる記憶、それを思い出せないことに涙するかも。パパとママの声の役者さんが懐かしい〜。(白)
2015年/アメリカ/カラー/ビスタ/1時間42分(短編『南の島のラブソング』含む)
配給:ディズニー
c2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
http://www.disney.co.jp/movie/head.html
★2015年7月18日(土)全国ロードショー
アリエル王子と監視人
監督:稲葉雄介
脚本:稲葉雄介、中野太
撮影:パイラット・クムワン
出演:チャーノン・リクンスラガーン(ノン)、伊澤恵美子(リサ)、忍成修吾(謎のエージェント)、セリーナ・ウィスマン(クリス)、石田えり(リサの母)、篠井英介(支配人/ヒデ)
ルベール王国のアリエル王子が休日をすごすためにおしのびで来日する。かつて父王の学友だったヒデが支配人をしている熊本のホテルに、付き人のクリスと宿泊することになった。いつものプレッシャーから逃れて自由を満喫したい王子。気持ちはわかるものの、監視しなければならないクリス。苦肉の策として公認のデートの相手+臨時監視人のできる女性をヒデに頼み、リサが選ばれた。
ローマならぬ「熊本の休日:王子編」。
アリエルは普段から王位継承者としてふるまうことが身についてどんなときも笑顔、手袋も外すことはありません。アリエルと反対に、何にも縛られず、自由に生きてきたリサとの3日間の交流を描いています。
キャスティングの決め手になったというチャーノン・リクンスラガーンの笑顔がとてもいいです。それがふっと消えるシーン、手袋を外すシーンを見逃さないで。彼はタイの人気バンドのギタリストなんだそうですが、ほんとに可愛い子犬系の人です。伊澤恵美子さんは『子宮に沈める』(2013年)の若い母親役でしたが、全く印象が違ってプレスを読むまでわからず。(白)
2015年/日本・タイ合作/カラー/70分
配給:キリンジ
(C)TNC inc./KIRINZI inc./Little Help Co., Ltd. 2015
http://handintheglove.jp/
★2015年7月11日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015(第12回)
期 間:2015年7月18日(土)〜 7月26日(日) 9日間
会 場:
SKIPシティ 映像ホール/多目的ホール ほか 〔埼玉県川口市上青木3-12-63〕
こうのすシネマ 〔埼玉県鴻巣市本町1-2-1 エルミこうのすアネックス3F〕
彩の国さいたま芸術劇場 〔埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1〕
主 催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
共 催:こうのすシネマ、公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
デジタルシネマの新しい才能を発掘する目的で2004年にスタートした「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」も12年目を迎えました。
本映画祭のメイン「コンペティション」は、長編部門、短編部門に加え、昨年、アニメーション部門が設立され、計3部門で構成されています。長編部門は広く世界中から公募し、本年も74の国と地域から500本にせまるエントリーがありました。短編部門とアニメーション部門は、日本のクリエイター支援を目的として国内作品に限定しています。
オープニングには、映画祭実行委員会が主体となって製作した作品で、福山功起監督が地元川口を舞台に“家族のあり方“を繊細に描いた『鉄の子』が上映されます。
その他、シネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』、『GODZILLA ゴジラ 日本語吹替版』のバリアフリー上映、長編アニメーション『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』『STAND BY ME ドラえもん 2D版』の上映なども行われます。
また、映画以外にもSKIPシティ夏祭りなどイベントも盛りだくさん。家族ぐるみで楽しめる映画祭です。
ちょっと遠いとお思いの方も多いと思いますが、会期中は川口駅より無料のシャトルバスがあって、楽々会場に行くことができます。
★SKIPシティへのアクセス:
会期中、JR川口駅東口キャスティ前臨時バス停より、SKIPシティまで直行の無料シャトルバスが20分間隔で運行されます。(所要:約12分)
http://www.skipcity-dcf.jp/access.html#
車でお出かけの方には、上映チケットの半券提示で駐車料無料のサービスもあります。
★長編部門コンペティション作品
『それでも、お父さん』 監督:高橋朋広
『うつろう』 監督:久保裕章
『あした生きるという旅』 監督:内田英恵
『ビヘイビア』 監督:アーネスト・ダラナス・セラーノ (キューバ)
『ガーディ』 監督:アミン・ドーラ (レバノン、カタール)
『絶え間ない悲しみ』 監督:ホルヘ・ペレス・ソラーノ (メキシコ)
『牝狐リザ』 監督:カーロイ・ウッイ・メーサーロシュ (ハンガリー)
『スウィング!』 監督:チャバ・ファゼカシュ (ハンガリー)
『ペインキラーズ』 監督:テッサ・シュラム (オランダ)
『サンタ・クロース』 監督:アレクサンドレ・コフレ (フランス)
『モンテビデオの奇跡』 監督:ドラガン・ビエログルリッチ (セルビア)
『君だってかわいくないよ』 監督:マーク・ヌーナン (アイルランド)
短編部門、アニメーション部門、その他詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト:http://www.skipcity-dcf.jp/
ガイドPDFダウンロード:
http://www.skipcity-dcf.jp/pdf/Guide_J_2015.pdf
昨年の映画祭の模様は、スタッフ日記ブログでどうぞ!
●SKIPシティ国際Dシネマ映画祭でトルコとウクライナが出会う『ラブ・ミー』
http://cinemajournal.seesaa.net/article/402407676.html
●猛暑の中、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014も終了!
http://cinemajournal.seesaa.net/article/402838977.html