2015年07月08日
踊るアイラブユー♪(原題:Walking on Sunshine)
監督:マックス・ギワ、ダニア・パスクィーニ
脚本:ジョシュア・セント・ジョンストン
撮影:フィリップ・ブローバック
音楽:アン・ダッドリー
出演:ハンナ・アータートン(テイラー)、アナベル・スコーリー(マディ)、ジュリオ・ベルーチ(ラフ)、グレッグ・ワイズ(ダグ)、ケイティ・ブランド(リル)
大学を卒業したばかりのテイラーは姉のマディに招かれて、南イタリアのプーリアにやってきた。3年前まだ学生だったテイラーが恋した思い出の場所でもあった。久しぶりに会った恋多き姉の突然の「結婚宣言」に驚き、相手が初恋の相手だったラフだと知って大ショック。姉と違って控えめで慎重派のテイラーは、自分の気持ちを打ち明けもせず、姉も知らないことだった。ラフにも友だちにも口止めし、初対面のふりをするテイラーは今更ながらラフを忘れられない自分に気づく。
1980年代のヒット曲とダンスシーンがいっぱいのミュージカル映画。ヒロインの2人はテレビで活躍していたようで、この作品で初めて観ました。テイラー役のハンナ・アータートンはジェマ・アータートンの3つ下の妹。『アバター』(09)の主題歌「I See You」を歌ったレオナ・ルイスがテイラーの友人エレーナ役で出演しています。マディとくっついたり離れたりするダグ役のグレッグ・ワイズは、エマ・トンプソンの旦那様です。キャストがみなはつらつとしていて、南イタリアのビーチにぴったりの楽しい作品。インド映画みたいにマサラシステム(歌ったり踊ったり)を導入すると盛り上がりそうです。(白)
2014年/イギリス/カラー/97分
配給:ファントム・フィルム
(C)WOS DISTRIBUTION (IRELAND) LTD. 2014
http://odoru-iloveyou.com/
★2015年7月10日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
2015年07月05日
サイの季節 英題: Rhino Season 原題:Fasle Kargardanha.
製作・監督・脚本:バフマン・ゴバディ(『亀も空を飛ぶ』『ペルシャ猫を誰も知らない』)
提供:マーティン・スコセッシ
撮影:トゥラジ・アスラニ
出演:ベヘルーズ・ヴォスギー、モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、カネル・シンドルク
1979年2月、イラン革命成就。クルド人詩人サヘルは、反政府的な詩を書いたとして投獄される。妻のミナは、大佐だった父親が国王派の烙印を押され、夫と共謀した罪で10年の刑となる。執事のアクバルが革命防衛隊に手を回して夫と面会する許可を取ったとミナに伝え、ミナは刑務所内で頭巾を被らされた状態で夫と肌をあわせる。ミナに横恋慕していた執事は途中で夫とすり替わる。やがて双子の赤ちゃんが生まれ、ミナは釈放される。夫は獄中で死んだと知らされ、ミナはトルコで新しい生活を始める。
一方、サヘルは投獄から30年後に釈放され、イスタンブルにいるという妻の行方を探す。サヘルは海辺の町で「詩が父の形見なの」という若い女性と出会う・・・
政治犯として収監された実在のクルド人詩人サデッグ・キャマンガールの体験をもとに描かれた作品。
サヘル役に、革命前イラン映画の大スターだったベヘルーズ・ヴォスギー、ミナ役に、イタリアの女優モニカ・ベルッチを起用。モニカ・ベルッチは短い台詞ながらペルシャ語の発音が綺麗で違和感がない。
『ペルシャ猫を誰も知らない』撮影後、イランに戻れないでいるゴバディ監督。トルコで撮った本作は、題材といい、大胆に肌を見せたことといい、決して今のイランでは撮れない作品。
サヘル演じるベヘルーズ・ヴォスギーの存在感がすごい。声をほとんど発しないのは、サヘルが30年間刑務所で沈黙の中にいたことと、ベヘルーズ自身、35年間映画に出ず沈黙を保っていたこと、そして、監督自身が言葉のわからない外国にいてあまりしゃべれない状態だったということを反映したものという。
一方で、トルコから資金を得たため、トルコの俳優も起用したため、できるだけペルシア語の台詞を減らしたという事情も。
サイが走り、亀が落ちる・・・
映画を詩を詠むように作ったという監督。
ダイナミックで詩的な映像は、ぜひ大きな画面で!(咲)
Web版シネマジャーナル特別記事「バフマン・ゴバディ監督来日レポート」
http://www.cinemajournal.net/special/2015/rhinoseason/index.html
●バフマン・ゴバディ監督インタビュー
●トークイベント@東京外国語大学
スタッフ日記:『サイの季節』7/11公開を前に、3度目の正直で来日したゴバディ監督と嬉しい再会(咲)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/420107143.html
2012/イラク・トルコ/スコープサイズ/DCP/93 分/カラー/ペルシャ語・トルコ語・英語
提供:新日本映画社、コムストック・グループ
配給・宣伝:エスパース・サロウ
公式サイト:http://rhinoseason-espacesarou.com
★2015年7月11日(土)からシネマート新宿ほか全国順次公開
2015年07月04日
“記憶”と生きる
監督・撮影・編集:土井敏邦
太平洋戦争下、「慰安婦」にさせられた朝鮮半島出身女性たちの消せない記憶”
元「慰安婦」の女性たちがよりそって暮らす韓国の「ナヌム(分かち合い)の家」を、土井監督は1994年から2年間に渡って取材した。取材したハルモニたちはすでに亡くなっているが、撮影から20年近くたった今、日本軍「慰安婦」問題が深刻な国際問題になっている状況に、「この証言映像が歴史的な資料となる。今きちんと記録映画としてまとめて残さなければ」という思いで、3時間半を超えるドキュメンタリー作品を作った。
第1部「分かち合いの家」で6人のハルモニ(おばあちゃん)たちの日常と証言をありのままに伝える(124分)。慰安婦にさせられた経緯、慰安婦時代の話、苦労した戦後の生活。慰安婦だったと申し出るかどうか、さんざん迷ったこと。ほんとは話したくない半生を彼女たちは声を振り絞って語る。深く刻まれた傷を抱え、戦後、壮絶な半生を送ったハルモニたちのありのままの声と日常生活を丹念に記録。
第2部では6人のうちで一番年下の姜徳景(カン・ドクキョン)の心情あふれる絵と、肺がんに倒れ、亡くなるまでの2年間を記録している(91分)。「女子挺身隊」として日本に渡るが、脱走したことで「慰安婦」にされたという。波乱の半生の体験と心情を姜徳景は絵で表現した。
姜徳景「奪われた純潔」
「強制連行」があったかなかったか、「軍の管轄か民間か」というような話ばかりが議論され、当事者たちの身に起こったこと、‶思い〞や‶痛み〞が何も語られていないことに疑問をもち、その手助けとなる映像を提供している。自分の妻や娘が慰安婦にされたらどう考えるか。売春婦として金もうけのために行ったなどという人たちは、自分の家族がそういう目にあったらと考えてみてほしい。「慰安婦」になった経緯や、正確な人数は確定されなくても、大勢のいろいろな国の女性が自分の意思に反して拘束され、「慰安婦」生活を強要されていたことは事実である。
「慰安婦」の存在は日本軍ばかりではない。韓国軍や米軍がベトナム戦争当時ベトナムの女性を凌辱したり、ボスニアやルワンダでも女性が蹂躙された。そして、今は「イスラム国」など、イスラム圏でも女性が性奴隷にされている。戦争がそういう状態を引き起こす。残念ながらそれは今も変わらない。戦争が起こらないようにすることが歴史の教訓である(暁)。
土井監督 著の書籍も発刊されました。
『“記憶”と生きる』 元「慰安婦」姜徳景の生涯
232ページ 本体1,800円+税
2015年4月20日 発売(大月書店)
2015年/日本/カラー//215分
配給:きろくびと
http://www.doi-toshikuni.net/j/kioku/
★2015年7月4日(土)アップリンクほか全国順次公開
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(原題:Avengers: Age of Ultron)
監督・脚本:ジョス・ウェドン
撮影:ベン・デイビス
出演:ロバート・ダウニーJr.(トニー・スターク/アイアンマン)、クリス・ヘムズワース(ソー)、クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ)、スカーレット・ヨハンソン(ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ)、ジェレミー・レナー(クリント・バートン/ホークアイ)、マーク・ラファロ(ブルース・バナー/ハルク)、サミュエル・L. ジャクソン、エリザベス・オルセン(ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ)、アーロン・テイラー=ジョンソン(ピエトロ・マキシモフ/クイックシルバー)
アイアンマンことトニー・スタークは、アベンジャーズだけに頼ることなく地球と人々を守るために、平和維持システム人工頭脳「ウルトロン」を開発する。ところが進化したウルトロンは、平和を維持するためには、自分の利益のため戦争を繰り返す「人類」を地球上から消し去るのが一番だという結論を導き出す。
最強チームアベンジャーズが再び集結するが、全て人間の上をいく人工頭脳を超えることはできるのか。
これまでの主要キャラに加えて、悪の組織ヒドラ党が人体実験で作り出した超能力を持つ双子が新しく参戦します。高速で動けるクイック・シルバーとテレキネシスや幻惑の能力を持つスカーレット・ウィッチ。ウルトロンは着々と進化するし、さしものアベンジャーズもてこずります。バトルスーツ軍団が登場すると、特に何の防御も持たないハルクがいつまで持つのか心配になります。マーベル・コミックに登場したのが1962年、怒りで変身した後コントロールできないという不器用なバナー博士。
上に書き切れないほどのキャラがいるうえ、今回はホークアイの家庭が出てきたり、誰かさんと誰かさんのロマンスが描かれたりとエピソードも多く、ちょっと詰め込みすぎの感があります。それだけみんなの期待値が高いのでしょうけど。アメリカでの動員数は『アナと雪の女王』を超えているそうです。(白)
2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/141分
配給:ディズニー
(C)Marvel 2015
http://marvel.disney.co.jp/movie/avengers.html
★2015年7月4日(土)全国公開
フレンチアルプスで起きたこと(原題:Turist)
監督・脚本:リューベン・オストルンド
撮影:フレドリック・ウェンツェル
音楽:オラ・フロットゥム
出演:ヨハネス・バー・クンケ(トマス)、リサ・ロブン・コングスリ(エバ)、クリストファー・ヒビュー(マッツ)、クララ・ベッテルグレン(ヴェラ)、ビンセント・ベッテルグレン(ハリー)
家族サービスでスキーリゾートにやってきた「できるビジネスマン」のトマス。愛する妻エバと可愛い子どもたちからの信頼は絶大。自他ともに認める良きパパ、だった。あの瞬間までは。
レストランのテラスでランチを楽しんでいたたくさんの家族連れやカップルのお客達。その目の前にスキー場が人工的に起こした雪崩がせまってきた。子どもたちが怖がるのを余裕でなだめていたパパのトマス。テラスが雪に包まれたとき、妻子を置いて一人その場から逃げ出してしまった。戻ってきたトマスを見るエバと子どもたちの目は雪よりも冷たかった。
豪華なリゾートホテルでの5日間のできごと。誰だって自分が大事、最初に素直に謝ればよかったのに、あ〜あと誰もがおもうはず。プライドが邪魔したのか、つい保身を図ったトマスはどんどんドツボにはまっていきます。その気持ちもわからないではありませんが、それは一番やっちゃいけなかったですね。観た人たちが「自分だったらどーする?」と議論できそうです。
憤懣やるかたないエバは友人たちを相手に話を蒸し返し、そこでも墓穴を掘るトマス。寝る前に並んで歯磨きをしていた家族は次第にバラバラになっていきます。休日を針のムシロの上で味わったトマスがようやく率直に認めたあと、帰りにもうひとつ監督がしかけるトラップがあります。
そういえばこのリューベン・オストルンド監督の『プレイ』(2011年の東京国際映画祭で上映され、監督賞受賞)も傑作でした。人間を辛らつだけど暖かい視線で描いているのが共通しています。(白)
2014年/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作/カラー/118分
配給:マジックアワー
(C)Fredrik Wenzel
http://www.magichour.co.jp/turist/
★2015年7月4日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開