2015年05月30日
ダライ・ラマ14世
監督・構成・編集:光石富士朗
プロデューサー:吉田裕
企画・撮影:薄井一議、薄井大還
語り:柄本佑
出演:ダライ・ラマ14世
1991年、写真家の薄井大還がダライ・ラマ14世に出会ってから20数年。撮影を始めてあしかけ6年の歳月をかけて誕生したドキュメンタリー。これまで見たことのないダライ・ラマ14世のプライベートな素顔を垣間見ることができる。
さまざまな催しに気軽に参加し、行く先々で会う人々の手をとり、力づけ、質問にはウィットに富んだ答えを返し、茶目っ気たっぷりの表情も見せる。非暴力での解決を望み、ノーベル平和賞を受賞している高僧という近寄りがたさは全くない。取材班はインドのダラムサラのチベット亡命政府も訪ね、難民の生活、多言語を学ぶ子どもたちのようすも紹介する。
気さくでやさしい親戚のおじさんのような親近感のあるダライ・ラマ14世です。留学生の女の子たちが「チベット人として誇りを持ちましょう」と励まされ、滂沱の涙にくれるシーンにもらい泣きしながら、こういう人が世界中にたくさんいてくれたら、という甘いことをつい考えてしまう筆者。
若者から発せられた質問「日本人としてできることはなにか」に答えた14世の言葉にぐっときました。ぜひスクリーンでご確認ください。人頼みでなく、自分のできることを考える。戦後70年も平和で豊かな日本(最近はそうとも言い切れませんが)に生まれ育って享受しているものに感謝し、学ぶことを怠ってはいけない、とつくづく思ったのでありました。(白)
東京の街頭で集めた質問の数々を投げかけるのですが、即答する内容がユーモアに溢れていたり、真実を突いていたりと、ダライ・ラマ14世の人間味溢れる姿に出会えました。
「髪型を変えられるなら、どんな髪型に?」という質問にも楽しい答えが。
答えられない時には、率直に「I don’t know」ときっぱり。逆に「あなたが知っている」とも。
「仏陀の生まれ変わりでも、悪魔でもない、普通の人間」と語るダライ・ラマ14世。
「生まれ変わったら何に?」の答えも素敵でした。
「平和は内(心)から生まれるもの」という言葉を、世界の皆が噛みしめて実行したいものです。(咲)
2014年/日本/カラー/116分
製作・配給:ブエノスフィルム
cBuenos film
http://www.d14.jp/
★2015年5月30日(土)ユーロスペースほかにて全国順次公開
誘拐の掟(原題:A Walk Among the Tombstones)
監督・脚本:スコット・フランク
原作:ローレンス・ブロック「獣たちの墓」
出演:リーアム・ニーソン(マット・スカダー)、ダン・スティーブン(スケニー・クリスト)、デビッド・ハーバー(レイ)、ボイド・ホルブルック(ピーター・クリスト)、ブライアン・“アストロ”・ブラッドリー(TJ)、ダニエル・ローズ・ラッセル(ルシア)
マット・スカダーはNY市警の元刑事だったが、酒に溺れて失敗しキャリアを失った。今は探偵稼業で暮らしている。世間を騒がせている猟奇殺人事件で、妻を殺された夫から犯人を捜せと依頼がある。犯人の要求どおり身代金を渡したにも関わらず、人質は変わり果てた姿で発見されたのだった。マットの捜査中にもう一件の誘拐事件が起こる。依頼人と同じく麻薬関係者の娘が拉致され、高額な身代金を要求している。被害者側が警察に通報できない立場なのを知る狡猾な犯人と、マットとの交渉が始まる。
リーアム・ニーソンはこのところ家族を守るお父さん役が多かった気がしますが、今度はアル中で失敗した元刑事役。犯人は快楽殺人の変質者で残虐極まりなく、目を瞑りたくなるシーンありますが手前でストップされてレイティングはGです。これまでの作品では孤軍奮闘していたのが、今回はTJという少年の相棒ができます。被害者ルシア役のダニエル・ローズ・ラッセルは先が楽しみな美少女だし、ベテランの中で子役が光ると嬉しいですね。リーアム・ニーソンが主役なら解決するに違いない、という安心感があるのは…いいのか悪いのか?(白)
2014年/アメリカ/カラー/シネスコ/114分
配給:ポニーキャニオン
(C)2014 TOMBSTONES MOVIE HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS ESERVED.
http://yukai-movie.com/
★2015年5月30日(土)ロードショー
涙するまで、生きる(原題:oin des hommes)
監督・脚本:ダヴィド・オロファン
原作:アルベール・カミュ
撮影:ギョーム・デフォンテーヌ
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス
出演:ヴィゴ・モーテンセン(ダリュ/教師)、レダ・カテブ(モハメド)、ジャメル・バレク、ヴァンサン・マルタン、ニコラ・ジロー、ジャン=ジェローム・エスポジト
1954年のフランスからの独立運動が高まっているアルジェリア。元軍人のダリュは砂漠で一人小さな学校を開き、教師をしている。憲兵がアラブ人の男を連れてきて、裁判にかけるために街まで護送しろと言う。気が進まなくとも命令には逆らえない。男の名はモハメド、裁判は形式だけで処刑されることになるだろうと覚悟している。ダリュは縄をほどき自由にさせるが逃げようともしない。復讐のために追ってきたアラブ人たちに襲撃され、2人は追っ手を交わすために山を越える道を選ぶ。
『異邦人』で知られるノーベル賞受賞の作家アルベール・カミユの原作。彼はフランス人入植者の息子としてアルジェリアで生まれました。『最初の人間』(2011)で、子どもの頃の想い出が描かれています。本作はアルジェリア紛争の只中、違う民族の2人の魂の触れ合いを描いています。
ヴィゴ・モーテンセンは深い知性を感じさせる静かな印象の俳優で、『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で一気に世界中に知られました。この作品も砂漠のアラゴルンという雰囲気です。
レダ・カテブも個性的で印象を残す人。すぐに思い出せるのは『黒いスーツを着た男』(2013)、『愛について、ある土曜日の面会室』(2012)です。
アルジェリアに平和が来ることを願いながら、1960年に亡くなったカミユの思いが生きている作品でした。チラシに掲載されているカミユの言葉を掲げておきます。(白)
私の後ろを歩かないでください、
私はあなたを何処へも連れて行けないから。
私の前を歩かないでください、
私はあなたについて行けないから。
私の隣で、いつも一緒に歩いて欲しい。
だって私たちは友人なのだから。
2014年/フランス/カラー/シネスコ/101分
配給:レスペ、スプリングハズカム
(c)2014 ONE WORLD FILMS (c)Michael Crotto
http://www.farfrommen.com/
★2015年5月30日(土)イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー