2015年04月29日
アラヤシキの住人たち
監督:本橋成一(『ナージャの村』『アレクセイと泉』)
山道の向こうにふとあらわれる小さな村。
そこに住むちょっと風変わりな人たちの、
春から春への暮らしを映したドキュメンタリー。
北アルプスの山裾、長野県小谷村。車の通わない山道を1時間半歩いたところに真木共働学舎(☆注)はある。立派な茅葺きの家「アラヤシキ(新屋敷)」。生きることの根源的な意味を考える「共に働く学び舎」として創設され、現在20代〜60代の男女十数人が犬や猫、ヤギ、鶏などの動物たちとともに暮している・・・
☆注) 共働学舎: 1974年、自由学園の教師だった宮嶋眞一郎により創設された、農業、酪農、工芸などを生活の基礎とした共同体。本作の舞台、真木共働学舎には、1978年、集落全体の高齢化などによって廃村となった後の集落で、宮嶋眞一郎と数人の同士が生活を始めた。
1981年から85年まで延べ5年、長野県北安曇郡白馬村に住んでいた。その時、隣の小谷村に「共働学舎」という共同体があって、身体的、精神的、様々な境遇を持つ人たちが協同生活を送っているという話を聞いたことがあった。行ってみようかと思ったこともあったけど、結局そこを訪ねることはなかった。
それから30年近くたって、この作品を観て、40年もの間この共同体は続いていたのだとあらためて思った。ここに暮らして一番古い人は30年にもなるという。そして、小谷村には2ヶ所の共働学舎があることを知った。これまでは共働学舎は小谷村に1ヶ所だけかと思っていた。このアラヤシキは小谷村の真木という地区というところにある。『楢山節考』(1983年)の撮影地でもある。
「競争社会ではなく、協力社会を」という宮嶋眞一郎氏の理念で始まった共働学舎は、小谷村立屋集落から始まり、現在では北海道に2ヶ所、東京にも1ヶ所あり、長野と合わせて5ヶ所になり、それぞれ特徴をいかしながら運営されている。
その中で、北海道新得にある共働学舎も、別の映画に登場している。田代陽子監督の『映画の森』では、新得の共働学舎での暮らしが出てくる。こちらも、ぜひ観てほしい作品だ。
『映画の森』紹介サイト
http://www.mmjp.or.jp/pole2/kusonomori.html
宮嶋眞一郎さんが亡くなったあとも、志を継いで共働学舎は続いていくことでしょう(暁)。
◆公開記念イベント
5月1日(金)、2日(土)11:00の回上映後
初日舞台挨拶
本橋成一(監督)、宮嶋信、榎戸三津雄、野村瑞穂、小倉久仁彦(以上、出演者)
本橋監督(左)が見守る中、宮嶋信さんのギター伴奏で「時間よ止まれ」を歌う榎戸三津雄さん。ずっとうつむいて歌って、歌い終わると「煙草吸いにいかせてもらいます」とうつむいたまま退場!
初日舞台挨拶の模様は、スタッフ日記ブログでどうぞ!
http://cinemajournal.seesaa.net/article/418287325.html
5月3日(日)11:00の回上映後
トークイベント
小沼純一(早稲田大学教授、音楽・文芸批評) × 本橋成一(本作監督)
5月4日(月・祝)11:00の回上映後
トークイベント
前田英樹(批評家) × 本橋成一(本作監督)
5月5日(火・祝)11:00の回上映後
トークイベント
坂田明(ミュージシャン) × 本橋成一(本作監督)
5月6日(水・祝)11:00の回上映後
トークイベント
島村菜津(ノンフィクション作家) × 本橋成一(本作監督)
5月16日(土)11:00の回上映後
トークイベント
羽仁進(映画監督) × 本橋成一(本作監督)
5月17日(日)11:00の回上映後
トークイベント
田沼武能(写真家) × 本橋成一(本作監督)
製作・配給:ポレポレタイムス社 / ポレポレ東中野
2015年/日本/117分/HD/カラー/ステレオ/ドキュメンタリー
公式サイト:http://arayashiki-movie.jp
★2015年5月1日(金)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
2015年04月26日
小さな世界はワンダーランド(原題:Tiny Giants )
監督:マーク・ブラウンロウ
製作・脚本:マーク・ブラウンロウ、マイケル・ガントン
日本語版ナレーション:斎藤工
原生林に住むシマリスの子ども、砂漠に住むスコーピオンマウスの子どもがそれぞれ自立のときを迎えた。一人でエサを見つけて暮らしていかねばならない。シマリスの子は冬越し用にせっかくためたエサをずる賢い大人に横取りされてしまった。スコーピオンマウスの子は、エサを手に入れる前にこちらがエサになりそうだ。命を脅かす大きな敵だらけの世界で、彼らは生きていく。
『アース』『ライフ―いのちをつなぐ物語―』ほか素晴らしいネイチャードキュメンタリーを送り出してきたBBCアースと、『トイ・ストーリー』『モンスターズ・ユニバーシティ』など夢いっぱいの大ヒットアニメーション作品のピクサー・スタジオが手を組んで、“ドラマチック・ドキュメンタリー”が誕生しました。特別なカメラを使い、小さな動物の視点からの驚くような映像を見せてくれています。44分という時間は短いですが、小さなお子様が集中して観るには十分な時間。ぜひご家族でご覧下さい。(白)
2014年/イギリス/カラー/ビスタ/44分/2D&3D上映
配給:ギャガ
(C)BBC 2014
http://wonderland.gaga.ne.jp/
★2015年5月9日(土)全国順次ロードショー
ホーンズ 容疑者と告白の角(原題:horns)
監督:アレクサンドル・アジャ
脚本:キース・ブーニン
原作:ジョー・ヒル「ホーンズ 角」(小学館刊)
出演:ダニエル・ラドクリフ(イグ・ペリッシュ)、マックス・ミンゲラ(リー・トゥルーノー)、ジョー・アンダーソン(テリー・ペリッシュ)
子どものころからの友だちイグとメリンは今は恋人同士。プロポーズの準備もして幸せの絶頂にいたイグだったが、急に別れを切り出したメリンが理解できず、激昂して飛び出してしまった。酔いつぶれて眠っていた翌日メリンの遺体がいつも逢っていたツリーハウスの下で見つかり、イグに殺人容疑がかかってしまう。
やり場のない悲しみと怒りに苦しむイグに異変が起こった。目が覚めると額の両側に角が生えていたのだ。病院に駆け込むが医師も手のうちようがない。不思議なことに、医師をはじめイグに出会う誰もが異様な反応をした。なぜか隠したいはずの秘密を語り、本音を口に出してしまうのだった。イグはこの角の力を使って真の犯人を探し出そうとする。
ハリー・ポッターシリーズでは可愛い坊やだったラドクリフくんも、いつのまにやら20代半ば。濃い髭も胸毛もあってすっかり男っぽくなりました。ハリポタの影響が大きかったせいか、シリーズ完結後の主演作『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』(2012)も本作もファンタジー&ホラー色の濃いものです。絵で見る悪魔のような角が生えて、それが真実を語らせるという原作を書いたのはスティーブン・キングの息子ジョー・ヒル。人の真実の声がいやおうなく吐き出されるなんて、何より怖い。イグも信じていた家族の本音を聞いてしまっておおいに傷つきます。そんな体験したくはないけど、映画は観たい、原作は読んでみたい。(白)
2014年/カナダ/カラー/シネスコ/120分
配給:ショウゲート
(C)2014 The Horns Project, Inc. All Rights Reserved.
http://horns-movie.jp/
★2015年5月9日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開
ゲキ×シネ「蒼の乱」
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:天海祐希(蒼真)、松山ケンイチ(将門小次郎)、早乙女太一(帳の夜叉丸)、梶原善(弾正淑人)、森奈みはる(邦香)、高田聖子(桔梗)、橋本じゅん(黒馬鬼)、平幹二朗(常世王)
渡来衆の長である蒼真(そうま)は、招かれた貴族の宴で国家大乱の卦を見たことから、仲間の桔梗と処罰されそうになる。危ういところを救ったのは坂東武者の将門小次郎だった。追われる3人は帳の夜叉丸(とばりのやしゃまる)に案内され、西海へと旅し伊予の純友に出会う。腐敗した都を揺るがすために、伊予と東国が手を結んで蜂起しようと小次郎にせまるのだった。蒼真を連れて東国に戻った小次郎は、私腹を肥やす国司やその取り巻きを見る。故郷の惨状を嘆く小次郎に、蝦夷(えみし)の常世王も民のために新しい国づくりをと誘う。蒼真は小次郎の妻となり、小次郎は将門新皇と名乗って戦いに身を投じていく。
「劇団☆新感線」最新作。スケールアップした壮大な物語が舞台いっぱいに展開していきます。日本史の中の武士の世の始まりを平将門を中心に、理想に燃える若武者を愛する一人の女性を高らかに描いています。一足先に公開になった『阿修羅城の瞳 2003』から10余年、両方のヒロインの天海祐希さんの美しいこと凛々しいこと!まっすぐで純な将門を松山ケンイチさん好演。大衆演劇の舞台で育った早乙女太一くんに負けない立ち回りを見せました。『カムイ外伝』(2009)の谷垣アクション監督が彼の身体能力の高さを誉めていましたっけ。
黒馬鬼の橋本さんには目が丸くなりました。舞台美術、美しい数々の衣装でさらに際立つ役者さんのパワーをぜひぜひ大きな画面で堪能してください。(白)
2015年/日本/カラー/168分
配給:ヴィレッヂ、ティ・ジョイ
http://www.aonoran.com/
★2015年5月9日(土)全国ロードショー
ブラックハット(原題:Blackhat)
監督:マイケル・マン
脚本:モーガン・デイビス・フォール、マイケル・マン
出演:クリス・ヘムズワース(ニコラス・ハサウェイ)、ワン・リーホン(チェン・ダーワイ)、タン・ウェイ(チェン・リエン)、ヴィオラ・デイヴィス(キャロル・バレット)、ホルト・マッキャラニー(マーク・ジェサップ)
香港の原発が爆破され、アメリカの金融市場が大打撃を受ける。ネットワークに不法侵入(ブラックハット)したハッカーの仕業と推測されたが、なんの要求も声明も出されなかった。中国とアメリカが合同捜査を開始するが、手がかりさえ掴めなかった。中国の捜査官チェン・ダーワイの提案で、ハッキングの罪で獄中にいる天才プログラマー、ニコラス・ハサウェイを捜査に加える。犯人が使用したプログラムは、ダーワイの親友ハサウェイが考案したものの応用であった。ダーワイの妹で優秀なエンジニアのリエンもチームの一員となり、姿の見えないサイバーテロリストを追い詰めていく。
犯人を追いながら、シカゴ、香港、マレーシア、ジャカルタと舞台が変わっていきます。冒頭の原発事故にハラハラしてしまいました。香港全土が放射能汚染されてしまいます。今の時代、どこにいてもどんなに離れていてもネットワークさえあれば、凶悪犯罪も可能なのだと背筋に悪寒が…。しかし、悪意もあれば、それを防ぐ善意も知恵もあると信じたいものです。
リーホンとタン・ウェイをハリウッド映画で観るとは、クリス・ヘムズワースやヴィオラ・デイヴィスと共演とは、なんだか嬉しい〜。英語ができるって強いですね。日本の俳優さんたち、語学も頑張って!世界が広がります!(白)
冒頭から空撮の香港のダイナミックな夜景。
ヤウマテイ(油麻地)の天后廟に廟街の夜市・・・
懐かしい香港の風景に、どんどん映画に惹き込まれました。
追われたリーホンとタン・ウェイが地下鉄に乗って逃げ切る場面があります。乗った駅は、香港島のクオリー ベイ (鰂魚涌)駅。香港島内を走る港島線と、海を渡って九龍半島の方に行く将軍澳線が合流する駅。「次の駅に追いかけて来れない」という言葉で、将軍澳線に乗ったのがわかります。
リーホンとタン・ウェイに加え、アンディ・オンも出演しています。最近公開された映画では『クリミナル・アフェア 魔警』『ファイアー・レスキュー』などでお馴染みの顔。
思いのほか香港での場面が多いし、香港ファン必見です!
そして、香港以外の撮影地にも、とても興味を惹かれました。
マレーシア、ペラの異様な地形。錫って、こんなところで取れるんだ〜と初めて見た光景にびっくり。
インドネシア、ジャカルタのパプア広場では民族色豊かな盛大な伝統行事の真っ只中で、銃撃戦が繰り広げられて圧巻。
ところで、他のコンピューターに侵入という業、先日、我が家のパソコンのインターネットの環境設定の変更に苦慮して問い合わせたら、遠隔操作で設定変更しましょうと。私が何もしないのに、勝手に文字が打ち込まれていくのを目の当たりにして、どこからでも操作できてしまう凄さに怖くもなりました。もちろん、これは遠隔操作に同意しての作業でしたが、プロにとってネットワークへの不法侵入なんて、お茶の子さいさいなのでしょうね。(咲)
2015年/アメリカ/カラー/シネスコ/133分
配給:東宝東和
(C)Universal Pictures
http://blackhat-movie.jp/
★2015年5月8日(金)TOHOシネマズ みゆき座 他全国ロードショー