2015年03月01日

パリよ、永遠に   原題:Diplomatie

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監督:フォルカー・シュレンドルフ 
脚本:シリル・ジェリー、フォルカー・シュレンドルフ
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ

第二次世界大戦末期、ベルリンを破壊されたヒトラー総統がパリ壊滅作戦にでる。
本作は、ヒトラーの命を受けた男と、それを思い止まらせた男の物語。
1944年8月25日未明。パリ中心部、セーヌ河沿いのホテル ル・ムーリス。ここの一室に駐留するドイツ軍パリ防衛司令官コルティッツ将軍の前に、隠し通路から男が現れる。その男、スウェーデン総領事ラウル・ノルドリンクは、生まれ育ったパリの町を爆撃から守りたいと停戦交渉にやってきたのだった・・・
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c 2014 Film Oblige – Gaumont – Blueprint Film – Arte France Cinema

フランスで大ヒットした舞台を映画化。舞台と同じくノルドリンクをアンドレ・デュソリエ、コルティッツをニエル・アレストリュプが演じ、緊張感に溢れながらも、時に人間的な心も見せる駆け引きを体現している。 
「お子さんは何歳? パリを破壊すると同じ年頃の子どもたちが何人も犠牲になる」というノルドリンクに、「君が僕ならどうする? 自分の妻や子を犠牲にして町を守るか?」とコルティッツが問う。
実は、コルティッツのパリ赴任直前に親族連座法が公布されている。家族を人質に命令に従わせようという権力者の卑劣な発想に唖然とする。
国家権力に屈して戦争に加担せざるを得ない人々のやるせない気持ちに思いが至る。
シュレンドルフ監督は、ドイツで生まれ育ち、フランスで映画を学んだ方。両国への思いが公平に表れているのはそれ故か。

冒頭、破壊し尽されたワルシャワの町が写る。かつてワルシャワの旧市街を訪れたことがある。人々が記憶を頼りに復元した美しい町並みには、銃弾の跡がある壁もあって涙が出た。日本も空襲で各地の町が焼失してしまった。再生された町は伝統的町並みとは程遠い。空襲を免れた京都ですら、瓦屋根が並ぶ戦前の美しさはない。パリをはじめヨーロッパでは、外観を変えずに内部を近代化して町並みを保っていて羨ましい。一方、歴史に育まれた町を戦争で破壊するという愚かな行為は、今も世界のどこかで続いている。悲しい。(咲)


提供:日活 配給:東京テアトル 
2014年/仏・独/83分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:丸山垂穂
★2015年3月7日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開!!
posted by sakiko at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

博士と彼女のセオリー(原題:The Theory of Everything)

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監督:ジェームズ・マーシュ
脚本:アンソニー・マッカーテン
撮影:ブノワ・ドゥローム
音楽:ヨハン・ヨハンソン
出演:エディ・レッドメイン(スティーヴン・ホーキング)、フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ワイルド)、チャーリー・コックス(ジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズ)、エミリー・ワトソン(ベリル・ワイルド)、サイモン・マクバーニー(フランク・ホーキング)、デヴィッド・シューリス(デニス・シアマ)

ケンブリッジ大学で出会ったスティーヴン・ホーキングとジェーン・ワイルド。似通ったユーモアのセンスの2人は恋人になり、互いに高めあう良い間柄だった。ところが体調が悪くなったスティーヴンが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)とわかり、余命2年との宣告を受ける。ジェーンは周囲の反対をよそにスティーヴンを支えて生きることを決意して結婚式を挙げた。余命2年の予想を覆し、やがて2人の子どもにも恵まれる。スティーヴンはジェーンの献身的な介護と励ましを受けて研究をすすめ、理論物理学者としての地位を得ていく。
一方、ジェーンは聡明な頭脳を持ちながら、スティーヴンの介護と家事に忙殺され、疲労と苛立ちを募らせていた。母親のすすめで教会の聖歌隊に入ったジェーンは、指導をしているジョナサンと親しくなる。

ジェーンによって書かれた原作を元に映画化された作品。つい先日、エディ・レッドメインはアカデミー賞主演男優賞を獲得しました。彼もケンブリッジ大卒。見た感じも博士ご本人と似ているのですが、20代から50代くらいまで演じたその力が評価されました。
車椅子の天才物理学者として高名なホーキング博士の若い時代、発病してから支え続けたジェーン夫人との別離までを描いています。今ならもっと公的な支援も受けられると思いますが、育児家事だけでも手に余る当時、夫人には「よく頑張りましたで賞」を贈りたいくらいです。天才の夫を誇りには思っても、日々溜まっていく疲れは解消できませんから。
それにしてもALSとの診断は間違いであったのか、進行が止まって72歳の今もお元気なホーキング博士は患者さんたちの希望の星ですね。(白)


2014年/イギリス/カラー/シネスコ/124分
配給:東宝東和
(C)UNIVERSAL PICTURES
http://hakase.link/
★2015年3月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口(原題:The Vatican Museums 3D)

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監督:マルコ・ピアジャーニ
脚本:ドナート・ダラバーレ
撮影:マッシミリアーノ・ガッティ
日本語版ナレーション:石丸謙二郎

カトリックの信者さんなら誰でも一度は訪問を夢見るヴァチカン市国。ローマ中心部の「不思議な国」の最大級の美術館には、歴代の教皇の収集品が収蔵展示されている。ルネサンス美術の3大巨匠ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ラファエロをはじめ、近代・現代のゴッホ、シャガール、ダリ、フォンターナなど、そうそうたる美術品が集められている。初めて4Kカメラがとらえた精緻な映像を美術館長の案内で観ることができる。

なかなか観られないだろう有名な美術品が、次から次へと紹介されて“至福&濃い”体験ができます。66分という上映時間が短いのでは、と観る前は思ったのですが作品の力に圧倒されるので、これでも充分でした。西欧の美術は聖書と切り離せないので、いくらか知識があったほうがより深く鑑賞できるかと思います。が、何も知らなくても目が丸くなること必至。(白)

2013年/イタリア/カラー/66分(2D/3D)
配給:コムストック・グループ
(C)direzione dei muse i - governatorato s.c.v
http://vatican4k3d.com/

★2015年2月28日(土)よりシネスイッチ銀座にてロードショー
posted by shiraishi at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

迷宮カフェ

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監督・脚本:帆根川廣
撮影:石井浩一
音楽:松岡政長
出演:関めぐみ(マリコ)、市川由衣(アスカ)、角田信朗(松浦)、藤原薫(スグル)、大迫一平(榎木田)、螢雪次朗

週刊誌記者の榎木田は、これといった記事も書けずにいたところ、ようやくネタを手に入れる。あるカフェを訪れた客が次々と失踪しているというのだ。書けたら金を出す、ということばに釣られ真相を探るため人里離れた店を訪ねることにした。物静かな店主のマリコ、常連客らしい男女がいるだけだったが、腰を落ち着けて観察していると、彼らが何かの絆で結ばれているのがわかってくる。
マリコはかつて目の前で親友を失った過去があり、なにもできなかった自分を責めていた。その後悔から一人でも多くの人が救えたら、という気持ちで始めた秘密の仕事があった。

「迷宮カフェ」というタイトルから、なにかホラーチックな展開になるのか、と予想しましたがあたりませんでした。とても真面目な展開になる後半を観ると、別に隠さずに堂々とやればいいのに、と思ってしまいます。常連客のエピソードが練り足りない感じでした。
関めぐみさんは学生の印象が強かったのですが、いつのまにかしっとりした大人の女性になっていて驚き。物語の先導役になる大迫一平さんは、活躍している劇団「PU−PU−JUICE」の舞台をいくつか観ています。この作品ではくたびれた記者役で無精ひげなど目だっていますが、背筋がぴんと伸びてスーツのよく似合う方です。裃姿で町中を走る映画『サムライダッシュ』(2013)では笑わせてもらいました。
角田信朗さんが気弱なボディビルダーという役柄で出ていて(笑←いけませんね)、哀愁を漂わせていました。(白)


2014年/日本/カラー/111分
配給:KADOKAWA
(C)2015/ワンワークス
http://www.meikyu-cafe.com/

★2015年3月7日(土)角川シネマ新宿ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 18:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

妻への家路(原題:帰来 Coming Home)

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監督:チャン・イーモウ
脚本:ヅォウ・ジンジー
原作:ヤン・ゲリン
撮影:チャオ・シャオティン
音楽:チェン・キーガン
出演:コン・リー(馮婉玉フォン・ワンイー)、チェン・ダオミン(陸焉識ルー・イエンシー)、チャン・ホエウェン(丹丹タンタン)、チェン・シャオイー(コン・スーチン)、イエン・ニー(リ主任)

1977年、文化大革命が終結した。強制労働に従事していたルー・イエンシーは家族の元に戻ってくる。迎えに来たのは娘タンタンだけであった。一度脱走した折に危険を顧みず会いにきた妻フォン・ワンイーは家にいるという。ようやく再会した妻には20年前の夫の記憶しかなかった。イエンシーは夫として受け入れられず、他人として向かいの家に住み、妻に思い出してもらえるように心を砕く。

ものすごく稀有な夫婦愛の物語。チャン・イーモウ監督とコン・リーが久々に映画をときいたら観なくちゃ、チェン・ダオミンが夫!観なくちゃ、です。
毎日妻の元に通い、自分の書いた手紙を読み聞かせるイエンシー。何百通もの手紙の束に長い歳月と2人の思いの深さが読み取れます。それなのに、夫の顔がわからないということがあるのでしょうか?年取っても声はそう変化しないはず。夫とわかるものが何か残っているのでは?実際にこういうことが起こりうるのか?とそこだけが疑問です。仲たがいもせず一生恋しい妻のそばにいられるなら、それもまた良いのかもしれませんが。
中国最高の俳優2人に娘役で加わった新星のチャン・ホエウェン。彼女もまたイーモウ監督に見い出され、世界的な女優となったコン・リーやチャン・ツィイーの後に続くのでしょうか。この先がとても楽しみです。(白)

チェン・ダオミン演じる陸焉識が捕えられたのは、文化大革命(1966-1976)より前の反右派闘争。1957年に毛沢東が発動した中国共産党に反対する右派分子を摘発する闘争だ。自由主義的思想傾向のある知識層の多くが、辺地に送られ強制労働をさせられた。文化大革命の時代を経て、やっと解放された人々・・・ 待ち続けた妻が、夫を認識できなくなるほどの長い年月。国家権力によって人生をないがしろにされたことに涙が出る。
反右派闘争として、知識人が弾圧されたことを初めて知ったのは、今はなき千石の三百人劇場で開催された中国映画の全貌で観た映画だが、タイトルが思い出せない。
最近では、ワン・ビン監督の『無言歌』があるが、反右派闘争を真正面から描いた映画は少ない。文革が4人組の誤りとされ、間違いだったと公式に認められる一方で、反右派闘争は毛沢東自身の誤りである為、公式に誤りだと認められてないそうだ。チャン・イーモウ監督は、少年時代から無念な思いを味わってきたとのことで、『初恋のきた道』でも、憧れた先生が町に連れ戻されたのは右派とされたから。カレンダーの1958年という年号で文革ではないことがわかるとのこと。 (プレス資料 水野衛子さんの解説)
『HERO』や『王妃の紋章』で、チャン・イーモウ監督、どこへ行く?という思いだったけど、今回は回帰し過ぎ! でも、きっと、いつか反右派闘争を正面から描きたいのでしょうねぇ。(咲)


2014年/中国/カラー/シネスコ/110分
配給:ギャガ
(C)2014, Le Vision Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved
http://cominghome.gaga.ne.jp/

★2015年3月6日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開
posted by shiraishi at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする