3月19日(木)から3月23日(月)までTOHOシネマズ日本橋で開催されていました。
コンペティション部門グランプリ(※東京都知事賞もあわせて授賞)
長編アニメーション『Song of the Sea』
短編アニメーション『Mi ne mozem zhit bez kosmosa』
cCartoon Saloon, Melusine Productions, The Big Farm, Superprod, Norlum
http://animefestival.jp/ja/post/3020/
TAAF2015アニメ オブ ザ イヤー部門グランプリ
『アナと雪の女王』、『ピンポン THE ANIMATION』
http://animefestival.jp/ja/post/3009/
TAAF2015 アニメファン賞
『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』
http://animefestival.jp/ja/post/3050/
開催期間中3回しか参加できませんでしたが、招待作品の『ヒックとドラゴン2』を大画面で観られたのが嬉しかったです。あんな展開になるとは〜。本誌次号で詳しいレポを書きますが、『LUPIN THE VRD 次元大介の墓標』上映会と「ルパン三世」原作者 モンキー・パンチ氏と小池健監督、浄園(きよぞの)祐プロデューサーのスペシャルトークも中味の濃い面白いものでした。客席にはルパンのコスプレ姿のファンも。アニメファンの皆様、次回はぜひふるってご参加ください(白)。
2015年03月29日
2015年03月28日
間奏曲はパリで 原題:Ritournelle 英題:PARIS FOLLIES
監督:マルク・フィトゥシ
出演:イザベル・ユペール(『8人の女たち』)、ジャン=ピエール・ダルッサン(『サン・ジャックへの道』『ル・アーヴルの靴みがき』)、ピオ・マルマイ
フランス北東部ノルマンディ地方で畜産業を営むグザヴィエとブリジット夫妻。一人息子は家を出てしまい、今は夫婦二人暮らし。グザヴィエのもっぱらの興味は我が牛を品評会で優勝させること。学生時代の恋を実らせ結婚した二人だけど、今さら心ときめくこともなく淡々と過ぎゆく日々。
ある夜、ブリジットは成りゆきで隣家のパーティで25歳の青年スタンと踊り、ほのかな恋心を抱く。スタンがパリの「アメリカンアパレル」で働いているのを知ったブリジットは、胸の湿疹をパリの名医に診てもらうという口実を見つけていそいそとパリへ行く。店にスタンを訪ね、仕事が終わった後に会う約束を取り付ける・・・
若造スタンとの顛末は、イケメンでもないのに熟女をそんな扱いしてフン!という感じなのだけど、ブリジットにふさわしい紳士と知り合ってパリの町を楽しむことに。かたや、パリの名医がもう廃業してしまったことを知った夫グザヴィエは、そっとパリに様子を伺いに行って、妻が見知らぬ男と楽しそうに歩いているのを見てしまいます。
倦怠期の夫婦の危機をユーモアたっぷりに描いていて、パリの町もたっぷり楽しめる1作。セーヌ河の船や大きな観覧車に乗って、一緒にパリを観光している気分♪
グザヴィエが、家業を継がなかった息子がアクロバット修行している様子を眺める場面もじんわり素敵です。
なお、原題Ritournelleは、音楽用語でリフレイン。繰り返される言葉や行為のこと。
あと、私的に、思わず画面に釘付けになったのが、ブリジットがパリでサンドイッチを食べたお店。ガラス窓に大きく HALAL(イスラームにのっとった食べ物)と書かれていたのです。さすが、移民の多いパリの町! そして、湿疹に効くからと、イスラエルの死海に行くので、これは楽しみ〜と思ったら、テルアビブの空港からまず訪れたのが、砂漠の淵にある牛舎! なんてったってグザヴィエの興味は他国の畜産業の現状だったのですね。そして、目的地の死海へ。 イスラエルでロケしていて、出てきたのはそれだけ! パリをあちこち歩いたように、イスラエルもあちこち見せてほしかった!(咲)
2013/フランス/99分/ビスタサイズ/カラー/5.1ch
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://kansoukyoku-paris.jp
★2015年4 月4日(土)、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA 他全国ロードショー
2015年03月22日
恋する♡ヴァンパイア
原作・脚本・監督:鈴木舞
出演:桐谷美玲、戸塚祥太、田辺誠一、大塚寧々、中川晃教、三戸なつめ、斉藤歩、モン・ガンルー、チェ・ジニョク、イーキン・チェン、柄本明
台湾でヴァンパイアの両親の元に生まれ、森の中の洋館で育ったキイラ。ある日、森で日本人の少年・哲と出会い仲良くなる。ギターの弾き語りで自分の作った曲を聞かせてくれる哲に、キイラは恋してしまうが、自分がヴァンパイアだとは明かせない。そんなある日、キイラの両親が殺されてしまう。12歳のキイラは、日本に住む祖父・宋二郎とキイラの母の妹・まりあ夫妻の元に引き取られる。祖父がヴァンパイアも人間と同じように年を取る薬を発明し、一家は人間と同じように暮らしている。
キイラが日本に来て8年、一家で営むパン屋“ヴァンパン屋”で、パン職人になることを夢見て、新しいパン作りに挑戦する日々。ある日、パン屋に飛び入りで売り込みに来たダサい青年が哲だと判明。つらいことがあってギターを封印してしまったという哲に、ミュージッシャンになる夢を取り戻してほしいとキイラはパンにまつわる曲のコンテストを企画する・・・
試写状をいただいて、ヴァンパイアは、ミッキーおばぁこと白井さんにお任せ!と思ったのですが、ふっと目に入ったのが、「特別出演イーキン・チェン」の文字! これは観なくちゃ!と駆け付けました。もう20年近く前のこと、香港映画『古惑仔』シリーズで一世風靡したイーキン。表参道でイーキンをはじめ、監督や出演者を招いてファンの集いが開かれた時に、日本の女性の感想を聞かれたイーキン、会場を右から左に、左から右に見渡して「太ってる」と言ったのが語り草に。『ディバージェンス 運命の交差点』(2005年)公開の折にラウンドインタビューに参加し、「あの場にいました」と明かしたら、「あぁ〜また言われてしまった!」と、恥ずかしそうに顔を隠したイーキンでした。
さて、本作でイーキンはキイラ一家が人間のように暮らしていることに怒るヴァンパイアの大ボス役。今も若々しいけど、「イーキン、あなた、ずいぶん福々しくなったじゃない?」と面と向かって言ってやりたいほど丸くなってました。
この映画には、イーキンの部下のヴァンパイア役として韓国のイケメン俳優チェ・ジンヒョクや、キイラの友人役として台湾女優・孟耿如(モン・ガンルー)も出演していて、とても国際色豊か。何より、冒頭の台湾での一家の暮らしは、中国語で語られていて、それもとてもメルヘンチックで、ヴァンパイア映画というイメージを突端からくつがえされます。この映画を作った監督って、どんな人?と興味津々。
観終わってプレス資料を見てみたら、「日本女子大学を卒業後、大山勝美氏が校長を務めたアクターズスクールで演技を、さらに北京の中央戯劇学院(コン・リー、チャン・ツィーイーを輩出)で演劇を学び、本作が監督デビュー」とありました。中央戯劇学院の方針で、演じるだけでなく、映画製作も学んだそうです。まだ若い監督さん。映画は若い子はもちろん、年取った私が観ても、明るく元気になれるものでした。これからどんな映画を作ってくれるか楽しみです。(咲)
ミッキーの毎日・映画三昧
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/article/416043095.html
2015年/日本/1時間42分/カラー
配給:ファントム・フィルム
公式サイト:http://love-vampire.com/
★2015年4月17日(金)からTOHOシネマズ新宿ほかで公開
パプーシャの黒い瞳 原題:Papusza
監督:ヨアンナ・コス=クラウゼ、クシシュトフ・クラウゼ
出演:ヨヴィタ・ブドニク、ズビグニェフ・ヴァレリシ、アントニ・パヴリツキ
ポーランドの女性詩人ブロニスワヴァ・ヴァイス(1910-1987)の物語。
文字を持たないジプシーの一族に生まれた彼女は、愛くるしさから“パプーシャ(人形)”の愛称で呼ばれて育つ。幼い頃から、言葉に惹かれ、文字を学びたいと願う。やがて詩を詠み、ジプシー女性として初めての詩人となる。
父の意向で年のはるか離れたジプシー音楽家と結婚。詩人イェジ・フィツォフスキが秘密警察に追われ、逮捕から逃れるためジプシーに匿ってもらおうと彼女の夫のところにやってくる。イェジ・フィツォフスキはパプーシャの詩人としての才能に気づく。フィツォフスキの逮捕状が取り下げられ、彼女のもとを去るが、彼は彼女の詩を出版する。しかし、そのことで彼女は古くから伝わるジプシーの秘密を外部にさらしたとして、ジプシー社会から追放される・・・
パプーシャが生きた時代のポーランドは、第二次世界大戦をはさみ、激動の時代。ポーランドの現代史を背景に、ジプシーの女性がたどった運命が、モノクロの美しい映像と、ジプシーの切ない音楽で語られる。
文字を持たない社会に生まれた彼女が、なんとか文字を学びたいと努力する姿が素晴らしい。一方で、ジプシーの人たちが波乱の歴史の中で被った運命を知り、涙。(咲)
4/12追記:
ジプシー(ロマ)の人たちが、インド西部から世界に散らばり、ヨーロッパ各地にもいることは知っていたのですが、ポーランドにも多くのジプシーの人たちがいることを知ったのは本作を通じてのことでした。
『ジプシー・キャラバン』(2006年)のジャスミン・デラル監督にインタビューした折に、「流浪して千年以上経っていますが、言葉に共通項は?」と伺ったら、「もちろん! 各地で変化はしているけれど、ロマ語がきちんと話されています。インドのサンスクリット系の言葉。私自身インドを知っているので、聴いた感じでわかります。あと、すべてのロマの人たちに共通するのが、老人を敬うこと。これは、欧米に比べものにならないですね。伝統的に、なによりも家族が最優先。No.1以上。No.1から2、3、4、5まで、とにかく家族が一番。女性はその中で順列があるけど、特定の女性は敬われていて、母親は特に敬われています。女性が映画監督になろうだとか、議員になろうだとかいったことは大変。ロマの女性が社会進出をするのはかなり難しいことですね」と答えておられました。パプーシャが詩人として認められるにいたったのは、大変なこととあらためて思います。
「世界中のロマの人たちが、いろいろなチャットルームを作っていて、共通のロマ語で会話しています」ともおっしゃっていて、住む場所が違っても、口伝えで言葉が連綿と繋がっていることを感じました。
インタビュー記事はこちら
http://www.cinemajournal.net/special/2008/gypsycaravan/index.html
ウルドゥー文学研究者の麻田豊氏も、「『パプーシャの黒い瞳』は全編を通してほぼIndic語派のロマニー語で語られるが、案の定いくつかのヒンディー/ウルドゥーと共通する単語が聞き取れた。pani, dekh, sunなど」とおっしゃっている。もう一度、ちゃんと台詞を聴きとりしなくちゃ!(咲)
この作品を観て、あまりにジプシーのことを知らないのに気づいて愕然としました。流浪の民、長いスカートとスカーフ、音楽と占いなどなど、昔少女マンガで得た印象から少しも増えていないのです。実在の女性詩人の一生に、胸を痛めながらもなぜ?と思うことも多く、わからないことばかり。
プレスに紹介されていた「立ったまま埋めてくれ―ジプシーの旅と暮らし」(イザベル・フォンセーカ著くぼたのぞみ訳/1998年青土社刊/430p)を図書館で探して読み、やっとおぼろげながら納得しました。言語や慣習など独自の文化を頑なに守ってきた民族であることが詳細に綴られています。大戦時に虐殺されたジプシーの人々もかなりの数にのぼったこと、各国で受け入れられず辛酸をなめてきたこと、今も差別の根は存在していることがわかりました。著者はユダヤ系アメリカ人の女性で、実際に彼らと暮らして言葉を学び、東欧諸国を旅した上で書かれたというのにも感銘を受けました。この本の最初の章がパプーシャについてなのです。映画の前でも後でも楽しみを損なうことはありません。より深く理解するのに役立ちます。(白)
配給:ムヴィオラ
後援:ポーランド広報文化センター
2013年/ポーランド/ロマニ語&ポーランド語/2時間11分/モノクロ/1:1.85/5.1chデジタル/DCP
公式サイト:http://www.moviola.jp/papusza/
★2015年4月4日より、岩波 ホールほか全国順次公開
傷だらけのふたり 英題:Man in Love
監督:ハン・ドンウク
出演:ファン・ジョンミン,ハン・ヘジン,クァク・ドウォン,チョン・マンシク,キム・ヘウン,ナム・イル,カン・ミナ
海沿いの町、群山(クンサン)。高利の金融会社テサン実業の部長テイルは、今日も借金の取り立てに忙しい。一見粗野だけど、回収したお金から子どもの月謝分だけ返してあげるような情に厚い男だ。ある日、病院に入院中で昏睡状態の男のところに取り立てにいく。部下たちが父親の寝ているベッドを引きずり出すのを必死になって阻止する娘ホジョン。テイルは無理矢理月利49%の覚書に捺印させるが、その時、40歳独身男のテイルはひと目でホジョンに恋に落ちていた・・・
恋に落ちる瞬間って、ほんとに突然やってくる! 甲斐甲斐しく父親の看病をしているホジョンに、男心をくすぐられたのでしょうね。最初は嫌がっていたホジョンも、毎日毎日勤め先の銀行の窓口にやってくるテイルに心を開いていきます。取り立て稼業のテイルと、純情な銀行員ホジョンの恋の行く末はぜひ劇場で!
ハン・ヘジンは、「がんばれ!クムスン」での明るく元気なシングルマザーや、「朱蒙」での商団を率いる気丈なお姫様が印象深いのですが、本作ではどこにでもいそうな銀行勤めの女性を好演しています。本作撮影後、年下のサッカー選手と結婚。
ファン・ジョンミンは、『新しき世界』では犯罪組織のナンバー2、本作では取り立て屋と、悪の社会で生きる男、一方、『国際市場で逢いましょう』では、離散した父親に代わって家族を必死になって支える純朴な男と、色々な顔を見せてくれて、活躍がめざましいです。悪の世界もなかなか似合いますが、私は「アクシデント・カップル」での、しがない郵便局員があこがれのトップ女優と偽装結婚するという小市民的な役どころが好きです。
2014年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭では、『恋に落ちた男』のタイトルで上映されたのですが、ハン・ドンウク監督が来日。上映後のQ&Aで、「恋に落ちた経験は?」との問いに、「実は、この作品を作っている最中に激しい恋に落ちてしまって、今、ちょうど大恋愛中です!」と恥ずかしそうに明かしました。一見、本作の主人公同様、チンピラ風なのですが、とてもお茶目な方でした。 (咲)
配給:アルシネテラン
2014年/韓国/カラー/5.1ch/シネマスコープ/120分
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/maninlove/
2015年4月4日(土)よりシネマート新宿ほか全国公開