2015年02月28日
トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜
監督:ドミニク・マルゴー
出演:トゥーマスト
配給・宣伝:アップリンク
サハラ砂漠西部。今は5つの国に分かれて住む遊牧の民トゥアレグ族。「トゥーマスト」は、トゥアレグ族の元レジスタンス兵士たちによって結成されたバンド。1980年代、リビアのカダフィ大佐は、トゥアレグ族の独立運動を支持しレジスタンス兵を募る。それに応じて訓練を受けた経験のあるメンバーたち。自分たちの誇りと自由を取り戻すために、武器の代わりに楽器を手に革命を訴える・・・
古くはアラブに、近年は欧米に伝統をないがしろにされた北アフリカの人々。
「トゥアレグの誇りを取り戻し、いにしえの様に、自由に砂漠を遊牧したい」と歌で革命を訴える「トゥーマスト」のメンバーたち。「トゥーマスト」とは、トゥアレグの言葉でアイデンティティのこと。
トゥアレグ族の独立と自治を支援しようというリビアのカダフィ大佐の言葉にのって、兵士となるも、イスラエルに戦闘に行けと言われ、イスラエルに敵対心はないと、除隊を申し出た「トゥーマスト」のメンバー。カダフィも結局は彼等を利用したにすぎないのだとわかる。
アメリカまでもが、テロ対策として介入してくるが、それもこの地に資源があるから。特に、ニジェールではウランが産出し、放射性物質の被害も出ているという。地元の犠牲のもとに、繁栄を求める大国・・・
「大地は我々のものでなく、我々が大地のもの」というトゥーマストの言葉が、しみじみと心に響く。(咲)
2012年 第7回UNHCR難民映画祭で上映
配給:アップリンク
スイス/2010年/ 英語/カラー/ 88分
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/toumast/
★2015年2月28日(土)より、渋谷アップリンクにて公開
2015年02月24日
みんなの学校
監督:真鍋俊永
撮影:大窪秋弘
ナレーション:豊田康雄
大阪の南住吉にある大空小学校の入り口には「みんなでつくるみんなの学校 大空小学校」と大きな文字が掲げられている。2012年度児童数220人のうち特別支援の対象児童は30人を越えていたが、ここには特別支援学級はない。どの子もみな同じ教室で学んでいる。
「不登校ゼロ」を目指して、粘り強い取り組みをする学校の評判を聞きつけて、ほかの地域から転校してくる子もいる。長くじっとしていられない子、教室から逃げ出す子、すぐに暴力をふるってしまう子たちには、彼らなりの理由がある。木村泰子校長はじめ教職員は保護者と密に連絡をとり、地域の方々の協力も仰いで、辛抱強く子どもたちに向き合っている。
大空小学校の先生と生徒に密着したドキュメンタリーです。なかなかユニークな子どもたちが、自分の居場所を見つけて落ち着いていくようすに、親戚のおばちゃんのように涙してしまいました。こんな学校と先生、クラスメートがいたなら、学校嫌いになんてならないはずです。
大空小の約束はたった一つ「自分がされていやなことは人にしない、言わない」です。約束を破った子どもは「やり直しの部屋(校長室)」に行き、木村泰子校長と「自分の言葉で」話をすることになっています。
大空小学校のHPには子どもにつける4つの力として
「人を大切にする力 」「自分の考えを持つ力」「自分を表現する力」「チャレンジする力」をあげています。簡単そうで難しいことです。しかも「こどもだけでなく、大人のめあてでもあることを共有しあう 」とあります。
子どもに声を荒げた若い男性講師を、木村校長が厳しく叱責する場面がありました。後に教員資格認定試験に通った彼に「これから倍叱るで」とダメ押ししていたのがおかしかったです。先生方も子どもの指導だけでなく、自分を含めて目標を実践し互いに学びあっているのが、この作品を観るとよくわかります。(白)
2014年/日本/カラー/106分
配給:東風
(c)関西テレビ放送
http://minna-movie.com/
★2月21日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
2015年02月22日
プリデスティネーション(原題:Predestination)
監督・脚本:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
原作:ロバート・A・ハインライン「輪廻の蛇」(早川書房刊)
撮影:ベン・ノット
音楽:ピーター・スピエリッグ
出演:イーサン・ホーク(バーテンダー)、サラ・スヌーク(ジョン)、ノア・テイラー
1970年。連続爆弾魔フィズル・ボマーの凶行に世間が慄いているとき、とあるバーに青年ジョンがやってくる。バーテンダーに酒代を賭けて、自分の数奇な物語を聞かせた。元はジェーンという“女の子”として生まれ、孤児院で育った。18歳のときに出会った男と恋したが彼は姿を消し、未婚のまま子どもを産むことになった。出産の際、赤ん坊と自分の命を救うため医師が両性具有だった自分を“男”として生き残らせたのだという。バーテンダーは長い物語を聞き終え、「その男に復讐したくはないか」とジョンに尋ねる。自分がタイムエージェントだと明かしたバーテンダーは、ジョンを連れて1963年へと飛んだ。
『デイブレイカー』(2010年)に続き、双子の兄弟監督マイケル&ピーター・スピエリッグトとイーサン・ホークがタッグを組んだ作品。前作は出演を快諾してくれたイーサン・ホークのおかげで、キャストが集まり映画化にはずみがついたそうです。今回もきっとそのご縁なのでしょう。
大好きなタイムトラベルもので、それにつきもののタイムパラドックスを扱っています。固唾を飲んで見つめました。登場人物が少ない分、演じるイーサン・ホークとサラ・スヌークはものすごく大変だったと思いますが、やりがいもあったはず。
原題の「Predestination(プリデスティネーション)」の意味は「宿命」。これと原作の短編「輪廻の蛇」のタイトルでおおよその予想がつくかもしれませんが、この時空を越えた複雑な物語を脚本化・映像化した兄弟監督、今後も目が離せません。1940年〜1990年代を移動するため、その時代を感じさせる衣装や美術にも注目です。撮影監督も時代ごとに色や質感を変えていたそうです。観終ったら「え〜!」と感嘆、もう一度観直したくなります。(白)
2014年/オーストラリア/カラー/シネスコ/97分
配給:プレシディオ
(C)2013 Predestination Holdings Pty Ltd, Screen Australia, Screen Queensland Pty Ltd and Cutting Edge Post Pty Ltd
http://www.predestination.jp/
★2015年2月28日(土)新宿バルト9他にて全国ロードショー
振り子
監督・脚本:竹永典弘
原作:鉄拳
撮影:西雄一
音楽:コーニッシュ、苗加琢人、大久保晶文
出演:中村獅童(長谷川大介)、小西真奈美(長谷川サキ)、石田卓也(学生時代の大介)、清水富美加(学生時代のサキ)、板尾創路(サキの父)、友情出演・武田鉄矢(八百屋・橋本梅吉)ほか多数
1976年、不良にからまれていたサキを大介が助けたことから、交際が始まった2人。やがて結婚して可愛い娘もさずかり、貧しいながらも幸せな暮らしを送っていた。大介の夢だったバイク修理店も開業した。旧友の頼みで中古バイクを引き取る商談にのった大介だったが、無理をして作った代金を渡した後相手先が消えてしまっていた。借金を返すため、大介は慣れないサラリーマンとなり、生活は次第に荒れていく。サキはどんなときでも大介を励まし、懸命に暮らしを立て直そうとするが…。
動画サイトで評判になった鉄拳のパラパラ漫画が元。エピソードを膨らませ、長篇映画にしています。30数年の暮らしを見守るのは、新婚の2人が時計屋で手に入れた中古の柱時計。休まずに動く振り子が、2人の時間を刻んでいきます。小西真奈美さん演じるサキがとても健気で、この人を傷つける大介役の中村獅童さんが憎まれ役になってしまうのですが、失って初めてわかることは誰にもありますね。
AKB48の松井珠理奈が大きくなった娘役ですが、彼女が大人っぽく、小西真奈美さんが若く見えるもので母娘より友だち2人に見えてしまいました。ほかにもたくさんの俳優が登場しますので「こんなところにあの人が」と発見するのも楽しいです。(白)
2014年/日本/カラー/99分
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(C)2014『振り子』製作委員会
http://furiko.jp/
★2015年2月28日(土)より角川シネマ新宿、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
クレヴァニ、愛のトンネル
監督・原案:今関あきよし
脚本:いしかわ彰、今関あきよし
撮影:藍河兼一
音楽:宮崎道
出演:未来穂香(柏木一葉)、小山田将(松田圭)、水野勝(若き日の松田圭)、板尾創路(伊藤)、岡村洋一(工場長)
20年前、高校の教師だった松田圭は、生徒の柏木一葉(ひとは)と許されない恋に落ちた。互いに唯一の理解者と信じる2人は、反対する両親の目を盗んでドライブに出かけて事故に遭ってしまった。学校を辞め、工場に勤める圭は、一葉を映した8ミリビデオを飽かず眺めている。一葉への気持ちを断ち切れない圭は、ウクライナの小さな村クレヴァニにあるという「愛のトンネル」へ行こうと決意する。そこでキスを交わしたカップルは願いが叶い、失われた人が甦るという伝説があった。
テレビドラマ「イタズラなKiss」シリーズ、『思春期ごっこ』(2014年)に続く未来穂香(みきほのか)主演作。愛した人は女子高生のまま、こちらは疲れた中年男、というちょっとイタイ設定で、小山田将さんがくたびれて見える分、未来穂香ちゃんが余計可愛く見えるという・・・監督の思惑通りでしょうか?8ミリの映像の中で、セーラー服姿の一葉が動き回ったり話しかけたりするところが、反則なくらい可愛くて、「萌え〜」な男性諸氏が多いことでしょう。セーラー服って超強力アイテムです。
幻想的なクレヴァニのトンネルは実在し、これが映画初登場だそうです。(白)
2014年/日本/カラー/85分
配給:アイエスフィールド、アルゴ・ピクチャーズ
(C)2014「クレヴァニ、愛のトンネル」製作委員会
http://www.is-field.com/klevani/
★2015年2月21日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー