2015年01月18日
ナショナル・ギャラリー 英国の至宝(原題:National Gallery)
監督・製作・編集:フレデリック・ワイズマン
ロンドンの中心地トラファルガー広場に面してナショナル・ギャラリーがある。1824年の設立から190年、英国が誇るこの国立美術館で3ヶ月間に渡って撮影したドキュメンタリー。収蔵・展示された名画の数々、学芸員たちの会議から、ギャラリートーク、ワークショップ、絵画の修復作業、多くの来館者の表情などが目の前に繰り広げられる。
『パリ・オペラ座のすべて』(2009)『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』(2012)のフレデリック・ワイズマンが長年撮影を切望していたというナショナル・ギャラリー。一人の銀行家のコレクションが基礎になったのだそうです。王族、貴族所蔵の美術品ではないところがほかとは違いますね。3時間もの作品ですが、名画を間近に見せてもらえるほか、来館者の目が触れることのない絵画の修復作業のようすも紹介されています。
日本の美術館で特別展を催すと、行列のうえ人人人で何重もになった人の頭越しに観ることもあります。めったに観られないからこその混雑なのですが、無料でゆっくり名画鑑賞ができる外国の美術館を羨ましく思っていました。海外に出かけずに体験できるこの機会、お見逃しなく。私は長さを感じることなく、ワクワクしながら観られました。(白)
2014年/フランス・アメリカ合作/カラー/181分
配給:セテラ・インターナショナル
http://www.cetera.co.jp/treasure/
★2015年1月17日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開
チョコリエッタ
監督:風間志織
脚本:風間志織、及川章太郎
原作:大島真寿美 「チョコリエッタ」(角川書店刊)
撮影:石井勲
音楽:鈴木治行
出演:森川葵(宮永知世子)、菅田将暉(正岡正宗)、市川実和子(宮永香世子)、村上淳(宮永周一)、須藤温子(宮永霧湖)、宮川一朗太(岡見)、中村敦夫(爺さま)
知世子(ちよこ)と犬のジュリエッタは子どものころからの親友。母は知世子を二人分あわせてチョコリエッタと呼んでいた。その母が亡くなって、ジュリエッタも年を取って死んでしまって…知世子には何の楽しみもなくなってしまった。進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらったけど、それは本当の本当なんだ。
母が好きだったフェリーニの『道』を探して、高校の先輩の正宗に出逢った。『道』のビデオを見せてくれた正宗は知世子を主人公に映画を撮るという。二人は“ここじゃないどこか”を探しに撮影の旅に出ることになった。
ベリーショート(昔は3分刈り、5分刈りと言った坊主頭。運動系男子だけでしたが)女子高生の知世子を演じるのはファッション誌のモデルの森川葵さん。小さなお顔に似合って可愛いです。知世子は森川葵、森川葵は知世子そのものだそうです。
映画好きな先輩を菅田将暉さん。『海月姫』の女装男子が似合い過ぎていました。ここでは寂しくて不機嫌な知世子を問い詰めたりせず、そばにいてくれるという身近に一人いてほしい(なかなかいません)先輩。
10年ぶりの新作を手がけた風間志織監督は「とにかく二人が美しいなぁと思ってやってきた」そうで、「二人と一緒に映画が作れて幸せだった」とか。そんな気持ちの詰まったちょっと不思議で映画愛に満ちた作品です。(白)
2014年/日本/カラー/158分
配給:太秦
(c)寿々福堂/アン・エンタテインメント
http://www.suzufukudo.com/chokolietta/
★2015年1月17日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
KANO〜1931海の向こうの甲子園〜 原題:KANO
製作総指揮:ウェイ・ダーション(魏コ聖)
監督:マー・ジーシアン(馬志翔)
脚本:ウェイ・ダーション(魏コ聖)、チェン・チャウェイ(陳嘉蔚)
プロデューサー:ウェイ・ダーション(魏コ聖)、ジミー・ホアン(黄志明)
出演:永瀬正敏、坂井真紀、ツァオ・ヨウニン(曹佑寧) /大沢たかお
主題歌:「風になって〜勇者的浪漫〜」Rake、中孝介、ファン・イーチェン(范逸臣)、スミン、ルオ・メイリン(羅美玲)(EPICレコードジャパン)
日本統治時代の台湾。1929年、嘉義農林学校(KANO)野球部に、名門・松山商業を率いた近藤兵太郎(永瀬正敏)が監督として就任する。日本人、台湾人、台湾原住民の3民族からなる弱小チームだったが、鬼監督近藤の愛ある猛特訓で、1931年、ついに台湾代表となり、夏の甲子園に出場する。一球たりとも諦めないKANOは、決勝戦まで勝ち進む・・・
☆12月1日に行われた来日記者会見の模様は特別記事でどうぞ!
http://www.cinemajournal.net/special/2015/kano/index.html
製作総指揮のウェイ・ダーション(左)とマー・ジーシアン監督(右)
2014/台湾/185分/制作会社:果子電影有限公司(ARS Film Production)
配給:ショウゲート(C)果子電影
公式サイト:http://kano1931.com
★2015年1月24日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
ミルカ 原題:Bhaag Milkha Bhaag
監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
出演:ファルハーン・アクタル、ソナム・カプール、ディヴィヤ・ダッタ、プラカーシュ・ラージ、パワン・マルホトラ、アート・マリク、ジャプテージ・シン、ヨグラージ・シン
1960年、ローマオリンピック。400メートル走決勝戦で、インド代表選手ミルカ・シンは、ゴールを目前にして後ろを振りかえり4位となり金メダルを逃してしまう。帰国後、国民からバッシングを受けながらも、パキスタンで開催される陸上親善大会のインド団長に指名される。パキスタン行きを断固拒否するミルカを説得するため、ネール首相の命を受けてスポーツ大臣とミルカのコーチがミルカの住むチャンディガルに向かう。道中、コーチはシク教徒であるミルカが印パ分離独立でパキスタン領となった故郷の村からインドに避難してきた壮絶な少年時代を語り始める・・・
映画の中で心に残ったのが、ミルカがパキスタンになった故郷で幼友達に再会した時に、その友達が語った「人じゃない、分離独立のせい」という言葉。宗教や民族の違いによる対立は、政治が起こすものだということ、そして、世界の各地で歴史に翻弄される人たちがいることも思い起こさせてくれる言葉でした。
ミルカは悲しい過去を乗り越えて、自分を鍛え、アスリートとして成功します。
印パ分離独立から70年近く経ち、この映画は若い人たちや後世の人たちに当時のことを知らしめるとともに、どんなことがあっても屈しない心を教えてくれることと思います。
シク教徒のきっちりしたターバン姿は、いかにもインド人のイメージですが、実はシク教徒はインドの人口のわずか2%位。軍隊の10%がシク教徒だという状況は、体格もよく勇敢だからというだけでなく、今回、映画を見ていて、カースト制度のこともあって、シク教徒の人たちがつける職業が限定されて、軍隊に入る人が多いのではないかと思い当たりました。
競技中、ミルカは髪の毛を頭上にお団子のように丸めてドアノブカバーのような布で被っています。確か東京オリンピックの時に、ターバンは帽子とみなされ競技中は認められないけれど、宗教上、わずかな布で被うことは認めていると聞いた記憶があります。シク教徒が髪の毛を切ってはいけないと知ったのもその時のことです。私がテレビで観たインド人選手はミルカだったのかもしれません。
さて、ローマオリンピックでミルカがゴール目前に後ろを振り返った理由は? どうぞ映画をご覧ください! (咲)
公開を前に来日したラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ監督にお話を伺いました。
特別記事をご覧ください!
http://www.cinemajournal.net/special/2015/milkha/index.html
2013/インド/ヒンディー語・パンジャービー語/153分(インターナショナル版)
配給:日活/東宝東和
公式サイト:公式サイト:http://milkha-movie.com/
★2015年1月30日(金)、TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー