2014年08月31日
さまよう刃(原題:THE HOVERING BLADE BROKEN)
監督・脚本:イ・ジョンホ
原作:東野圭吾
撮影:キム・テギョン
出演:チョン・ジェヨン(サンヒョン)、イ・ソンミン(オッグァン刑事)、ソ・ジュニョン(ヒョンス刑事)、イ・ジュスン(ドゥシク)、イ・スビン(スジン)
数年前妻をガンで失ったサンヒョンは一人娘のスジンと暮らしている。中学生のスジンはこのごろ母親に似てきて、残業続きの父親にあれこれ言うようになった。小言を言われても最愛の一人娘だ。またもや遅くなって深夜に帰宅したサンヒョンは、スジンの姿がみえずに探し回る。携帯も繋がらず、見つけられないまま出社したサンヒョンに警察からスジンの遺体が見つかったと電話がある。廃墟になっている古い銭湯で見つかったという遺体にはレイプされ、激しく抵抗した痕跡が認められた。
サンヒョンはショックで何も手につかない。娘を守ってやれなかった自分を責め、後悔するばかりだ。そこへ凶行を知る何者かからの連絡が入る。
ベストセラー作家東野圭吾原作。日本でも2009年に寺尾聰主演で映画化されています。ほぼ同じストーリーで、韓国版が濃い目の味付け。チョン・ジェヨンの絶望と後悔と憤怒の表情に、自分がその立場だったらと胸が痛くなります。それにひきかえ加害者の罪悪感のなさときたら!人を傷つけることを何とも思わないのはどうしてなのか??感情や想像力が育っていないわけ??
と、むかついているってことは、演じた若手たちがうまかったってことですね。いつも思うけど韓国映画界は層が厚い。
繰り返し報道される陰惨な事件も、そのときはショックでも自分に関わりがなければいつしか忘れてしまいます。そんな第三者の立場から引きずり降ろされた感じのした作品でした。(白)
2014年/韓国/カラー/122分
配給:CJ Entertainment Japan
(C)2014 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
http://samayouyaiba.net/
★2014年9月6日(土)角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー
イヴ・サンローラン(原題:Yves Saint Laurent)
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ(イヴ・サンローラン)、ギョーム・ガリエンヌ(ピエール・ベルジェ)、シャルロット・ルボン(ヴィクトワール)、ローラ・スメット(ルル・ド・ラ・フェレーズ)、マリー・ドゥ・ヴィルパン(ベティ・カトルー)、ニコライ・キンスキー(カール・ラガーフェルド)、マリアンヌ・バスレール(ルシエンヌ・サンローラン)
1957年パリ。10代のうちに才能を現し、ディオールに認められたイヴ・サンローラン。ディオールの死去により弱冠21歳で後継者に指名される。周囲の危惧はあったものの初のコレクションが大成功、華々しいデビューを飾った。26歳の実業家ピエールはイヴに出会ってたちまち2人は恋に落ちいっしょに暮らし始める。
ピエールのバックアップを得て、イヴは自身のブランドをたちあげ次々と革命的なコレクションを発表する。ピエールは繊細なイヴを守り、全ての雑事を引き受けてイヴがデザインだけに没頭できるように献身的に尽くした。
2011年4月公開のドキュメンタリー『イヴ・サンローラン』(2011年/ピエール・トレトン監督)を見て、ハンサムな彼の素顔に驚いたものでした。
本作ではピエール・ニネが繊細なイヴに扮しています。ジャリル・レスペール監督は、ドキュメンタリーではすくいきれなかった部分を脚色で補い、ピエールという生涯のパートナーに出会ってもなお孤独な心を抱えていた天才を描き出しています。パリの社交界とオートクチュールを舞台に有名なデザイナーたちも登場(俳優ですが)するので、会話に思わず聞き耳を立ててしまいました。
イヴが仕事を成功させ、華やかな世界に住みながらも薬や酒で酩酊したかったのはなぜなのでしょう。これで満足ということがないから高みを目指せるのでしょうが、なんと孤独で辛い道かと思います。凡人でよかった。(白)
イブ・サンローランの生涯を描いた映画と聞いて、私のもっぱらの関心事は、イブ・サンローランが晩年を過ごしたモロッコ時代がどのように描かれているか・・・でした。
ところが、冒頭に映し出されたのは、地中海に臨むオランの町。1936年、当時フランス領だったアルジェリアのオランで彼は生まれたのでした。(勉強不足で知らなかった!)サンローランがデザイナーを志してパリに移ったのが、1954年。ちょうどアルジェリアでフランスからの独立戦争が勃発した年。母親たちが、「アルジェは戦火?」「オランは大丈夫」などと話しています。その後、独立戦争は激しくなり、サンローランも1960年、フランス陸軍に撤兵されるのですが、1ヵ月も経たないうちに、神経衰弱で入院。最終的に除隊。翌年、すぐにピエール・ベルジュと<イブ・サンローラン>を設立しています。
ピエールに支えられながら、華やかに活躍し、2002年1月22日のパリでのオートクチュールコレクションを最後に引退。その後、2008年に亡くなるまで、モロッコのマラケシュでほとんどを過ごしました。映画には、マジョレル庭園と呼ばれる緑溢れる素敵な邸宅も映し出されました。世界の注目をあびるだけの功績をあげただけに、愛する人とひっそりと暮らしたかった彼の思いを感じました。
サンローラン自身のこと以上に印象に残ったのが、アルジェリア独立後、故郷を去らなければならなかった彼の両親のこと。父シャルル・マチュー=サンローランは、1988年にモナコで亡くなっています。父親が海を観てアルジェリアを想う姿をサンローランが眺める場面がありました。縁あって植民地で生まれ育った支配者側の民族の人々も、植民地支配の犠牲者であることに思いが至りました。(咲)
2014年/フランス/カラー/106分/シネスコ
配給:KADOKAWA
(C)WY productions - SND - Cinefrance 1888 - Herodiade - Umedia
http://ysl-movie.jp/
★2014年9月6日(土)角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他全国ロードショー
チング 永遠の絆(英題 FRIEND:The Great Legacy)
監督・脚本:クァク・キョンテク
出演:ユ・オソン(イ・ジュンソク)、キム・ウビン(チェ・ソンフン)、チュ・ジンモ(イ・チョルジュ)、チョン・ホビン(ウンギ)、チャン・ヨンナム(ヘジ)、キ・ジュポン(ヒョンドゥ会長)
2010年、親友のドンスの殺害を示唆した罪で服役しているジュンソクの元にヘジが面会にくる。息子のソンフンが同じ刑務所にいるので気をつけてやってほしいというのだ。ジュンソクは父親を知らずに育ったソンフンを出所後も弟分として面倒をみることになった。17年ぶりに故郷の釜山に帰ったジュンソクがみたのは、様変わりした裏社会地図だった。ヒョンドゥ会長の代わりに狡猾なウンギが勢力を拡大し、ジュンソクの居場所はすでになくなっていた。ジュンソクはヒョンドゥ会長に亡き父チョルジュが釜山を掌握した時代の話を聞き、釜山を一緒に取り戻そうとソンフンを誘う。
『友へ チング』(2001年/クァク・キョンテク監督)の続編。幼馴染の親友が大人になって再会したのは対立した組織の敵同士としてだった、という悲劇。若き日のユ・オソンとチャン・ドンゴンのとうの立ち過ぎた学生服姿に吹きそうになりましたっけ。しかし血も涙も義理も人情も果てしなく濃いストーリーに泣かされたのでした。未見の方はぜひ先に1作目をご覧下さい。
ヤクザ社会の物語ですが、渋い中年になったユ・オソン、若獅子のようなキム・ウビン(モデルで、映画初出演だそうです)2人の兄弟分というより親子のような情愛、回想場面の若き父チュ・ジンモの華と、女性にも受ける要素多々あり。(白)
2013年/韓国/カラー/122分/ビスタサイズ
配給:東京テアトル、日活
(C)2013 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
http://ching-kizuna.com/
★2014年9月6日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
フライト・ゲーム(原題:Non-Stop)
監督:ジャウム・コレット=セラ
撮影:フラビオ・ラビアーノ
出演:リーアム・ニーソン(ビル・マークス)、ジュリアン・ムーア(ジェン・サマーズ)、スクート・マクネイリー(トム・ボーウェン)、ミシェル・ドッカリー(ナンシー)、ネイト・パーカー(ザック・ホワイト)
ニューヨーク発ロンドン行の旅客機に搭乗したビル・マークスは、一般乗客の中で気づかれないように警備にあたる航空保安官。離陸して乗客が眠りについたころ、ビルの携帯電話に「1億5000万ドル送金しなければ、20分ごとに機内の誰かを殺す」と脅迫メールが届く。どこで監視しているのかビルの行動も逐一知られている。機長に告げ保安局に報告するが乗客名簿の照合には30分かかると言われる。あせるうちに20分経ち、最初の犠牲者が出てしまう。誰もが犯人に思える中、ビルは全ての乗客の荷物や携帯電話を調べるが何も見つからない。保安局の調べで、指定された口座がビルの名義とわかり一番の容疑者と疑われてしまった。
ハイジャック映画は数多く、どれもドキドキハラハラの連続ですが、これも例に漏れません。二転三転する状況に、ビルのあせりが伝わってきて同調してしまいます。どんな状況でも飛行機の中では逃げ出すこともできず、どの人もどの人も怪しく見えて、死と隣り合わせの犯人探しはスリル満点。かといって絶対体験したくありませんけど。60代のリーアム・ニーソンも身体を張ったアクションで熱演。『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴがCAの1人で出演しています。
搭乗時にどんなに厳しいチェックを受けても、その上をいってしまう悪意があれば乗客はなすすべがありません。無事に目的地に着くことが当たり前〜の陰にはこういう保安官の存在があるんですね。お疲れ様です。(白)
2014年/アメリカ/カラー/107分
配給:ギャガ
(C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. - STUDIOCANAL S.A.
http://flight-game.gaga.ne.jp/
★2014年9月6日(土)新宿ピカデリー ほか全国ロードショー
サスペクト 哀しき容疑者 (原題:容疑者 英題:The Suspect)
監督:ウォン・シニョン (『セブンデイズ』)
出演:コン・ユ(『トガニ 幼き瞳の告発』「コーヒープリンス1号店」)、パク・ヒスン、チョ・ソンハ、ユ・ダイン、キム・ソンギュン、ソン・ジェホ
北朝鮮特殊部隊の元エリート工作員チ・ドンチョル(コン・ユ)。妻子を殺され、脱北し、大都会ソウルの片隅で運転代行業をしながら犯人の行方を追う日々だ。
ある日、元上司で今は韓国財界で成功しているパク会長(ソン・ジェホ)を訪ねたドンチョルは、殺害現場を目撃してしまう。瀕死のパク会長から眼鏡を渡され、「これを必ず北に届けてくれ」と言い残される。唯一親身にしてくれていたパク会長の死を悲しむ間もなく、ドンチョルは会長殺しの容疑者として追われることになる。対北情報局室長のキム・ソッコ(チョ・ソンハ)は“国家の狩猟犬”の異名を持つミン・セフン大佐(パク・ヒスン)に捜査の指揮権を与える。やがて、ミン大佐はドンチョルを追っているのが自分たちだけでないことを知る。自分に指揮権を与えたキム室長自身が統括する北朝鮮出身者グループが、ドンチョルが会長から手渡された物を執拗に狙っていたのだ・・・
会長が守ろうとした眼鏡に隠されていた重要な機密事項に、最後、あっと驚かされます。カーチェイスや、アクションありのスピード感溢れる展開に、実はちょっとついて行けなくて、疲れたなぁ〜と思ったところに、思いがけない真相! 疲れは吹き飛び、ほのぼのとした気持ちになりました。あ〜最後まで観てよかったと思いました。
パク会長を演じるソン・ジェホは、『拝啓,愛しています』や「愛を信じます」で、人の良さそうな初老の男性を演じていますが、本作でも、脱北者支援や韓国と北朝鮮の交流事業に力を注いでいる善良な人物です。
一方、キム・ソッコを演じたチョ・ソンハは、「王(ワン)家の家族たち」では、会社が倒産して宅配屋を始める長男、「トキメキ☆成均館スキャンダル」では、朝鮮王朝第22代王正祖(チョンジョ)と、ドラマで好人物を演じていることが多いのですが、今回は悪役。なかなかの存在感です。
そして、最後になりましたが、ドンチョルを演じたコン・ユ。笑顔を封印して、家族を殺された男の哀愁を漂わせています。(咲)
韓国/2013年/2.35:1/137min./カラー/ドルビーデジタルSRD
配給:ツイン
公式サイト: http://www.suspect-movie.net/
2014年9月13日(土) 新宿武蔵野館 ほか全国順次公開