2014年05月19日
ぼくたちの家族
監督・脚本:石井裕也
原作:早見和真「ぼくたちの家族」(幻冬舎文庫)
出演:妻夫木聡(若菜浩介)、原田美枝子(若菜玲子)、池松壮亮(若菜俊平)、長塚京三(若菜克明)、黒川芽以(深雪)
郊外の一戸建てに住む若菜家はごく普通の家族だった。小さな会社を経営する父克明、専業主婦の母玲子。中学生のときは引きこもりだったが今は会社員、結婚もしてもうすぐ父親になる長男浩介、気楽な大学生の次男俊平は家を出て自活、ときどき母に無心している。
このごろ物忘れが多くて、という玲子のようすがおかしい。嫁の深雪の両親との会食で独り言をつぶやき、何度も名前を間違う。克明と浩介は玲子を病院に連れて行き、医師に「脳腫瘍で末期。治療法がなく、余命は1週間」と告げられる。慌てふためく克明と浩介。玲子の病状は進み、俊平を他人だと思ったり、急に明るく笑ったりする。今後の費用を心配する浩介と俊平は、父の多額の負債と家のローン、母のサラ金からの借金を初めて知って愕然とする。
『舟を編む』で昨年度の映画賞を総なめにした石井裕也監督・脚本の新作。試写室は満員でした。
突然母を襲った病魔に、家族が大揺れに揺れ、それまで見えなかったひずみが大きく出てきます。童女のような無邪気な母の本音が可愛らしくも涙を誘い(原田美枝子さん素敵!)、いたたまれない気弱な父と生真面目な長男(まじめな妻夫木くん似合う!)にしっかりしてといいたくなります。次男(池谷くん儲け役!)はヘラヘラしながらも存外に役に立ち、幸運を呼び込んできてくれるのでした。
妻夫木くん扮する長男の「悪あがきしてみる」のセリフに、自分だったら1週間で何ができるだろう?と考えてしまいました。どこの家にでも似たような問題がひとつふたつはありそうですが、投げ出さずに悪あがきすれば道は開けていくのだ、と背中を押してもらった気分です。いや、崖っぷちで押すのはなしね。(白)
2014年/日本/カラー/117分/シネスコ
配給:ファントム・フィルム
(C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会
http://bokutachi-kazoku.com/
★5月24日(土)より、新宿ピカデリー他全国ロードショー
ディス/コネクト(原題:Disconnect)
監督:ヘンリー・アレックス・ルビン
キャスト:ジェイソン・ベイトマン(リッチ・ボイド)、ホープ・デイビス(リディア・ボイド)、フランク・グリロ(マイク・ディクソン)、ミカエル・ニクビスト(シューマッカー)、ポーラ・パットン(シンディ・ハル)
内気な少年が、SNSで知り合った相手に送信した1枚の画像が、あっというまに拡散してしまった。架空の女性になりすまして少年をからかったイタズラだったのだ。傷ついた少年は自殺未遂を起こし、加害者になった少年は自分のしたことの深刻さに慄く。父には絶対に知られたくなかった。
孤独な主婦は、夫には話せない本音をチャットでなら言える。銀行の残高がなくなったことに気づいた夫が調査を依頼して、妻がネット詐欺にかかったことを知った。
ポルノサイトで働く少年を取材したい女性記者は、彼に近づくことに成功する。テレビ放映が評判になったことで、少年は彼女に裏切られたと思い込む。
ネット事件が専門の探偵をしている父親は、息子がネットでしでかしたことに気づかない。わが子には厳しくしていれば愛情は伝わるはず・・・?!
一昔前には想像もできなかったほどのパソコンやスマホの普及率。家でも外でもその画面を見つめない日はない、と言い切れるほどです。気軽にコミュニケーションがとれるSNSは、つい自分と相手だけが直接結びついているような気になってしまいがちです。この作品はネットで繋がりを求める人に忍び寄る悪意や、落とし穴に嵌ってしまう怖さを描いています。別々の物語がちょっとした繋がりで、一つに収束していきます。
ここに挙げられた事例はとてもリアルです。日本でもネットのいじめは多発しているようですし、他人になりすまして悪意の加害者となる事件が起こっています。ネットで他人とは話せても、実際の家族や友達との意志の疎通がおろそかになっている人もいることでしょう。便利さに依存してしまって、それがなければお手上げの事態を作っている自分にも気づきます。何もないときには戻れないけれど、なんとかしなきゃとまじめに反省しました。(白)
2012年/アメリカ/カラー/115分/
配給:クロックワークス
(c) DISCONNECT, LLC 2013
http://dis-connect.jp/
★5月24日(土)より 新宿バルト9他にて公開