2014年05月31日

『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』

SAYAMAチラシ.jpg
監督:金聖雄
撮影:池田俊巳・浜崎務・横山友昭・山内泰
現場録音:山田健太郎・高木酉一 録音:吉田茂一
音楽&ピアノ:谷川賢作 ギター&ハミング:小室等
テルミン:トリ音 パーカッション:河野"菌ちゃん"俊二
録音エンジニア:ichiro
ナレーション:伊藤惣一
編集協力:野村太
技術協力:菊池純一
スチール:村田次郎
制作デスク:若宮正子・中村達史・伊藤純子
プロデューサー:陣内直行

50年間、殺人犯というレッテルを背負いながら、泣き・笑い・怒り・日々を「凛」と生き抜いている石川一雄さん&早智子さん夫婦の物語
IMG_0882.jpg雨の高裁前.jpg
徳島、思い出の海での石川夫妻.jpg
コピーライトマーク2013 映画「SAYAMA」製作委員会 All Rights Reserved.

1963年に起きた「狭山事件」。これは女子高生の誘拐殺人事件で、犯人を取り逃がした警察は、付近の被差別部落に住む石川一雄さんを別件逮捕した。石川さん24歳の時だった。
二審から無実を訴えるも無期懲役判決を受け、32年獄中生活を送った後、1994年に仮出獄。何度も再審請求をしているが、出獄後20年たっても実現されず、50年もの間、殺人犯というレッテルをはられたまま、罪は晴れていない。この免罪事件の石川一雄さんと、出獄後結婚した妻の早智子さんを主人公とした映画。
金聖雄(キム・ソンウン)監督が「運動としてではなく、人間を描きたかった」というようように、石川夫妻のほのぼのとした日常を描き、その日々の生活や運動を追うことで、事件の全貌が見えてくる。取調べ中、兄が真犯人と思い込まされ、一家の大黒柱である兄の身代わりで虚偽の自白をした事情、二度にわたる家宅捜索で何も出なかったのに、「自供後」の3回目の家宅捜査で被害者の万年筆が突然みつかった不自然な状況、犯行現場とされた場所・時間には、近くに農民がいたのに殺人事件が起こったことを気づかなかったことなどが語られる。
 また、貧しさから満足に学校にも行っていない状況で、読み書きも自由にできないのに、脅迫状を書いたとされた。入獄後、読み書きを覚え、弁護団や支援者たちとの「公正な裁判」を求める運動になっていった。そんな支援者たちとの交流、事件の検証なども描かれる。
仮出獄後は、免罪を晴らすことが人生の目的となっている石川夫妻。そんな生活だけど、石川さんは自分を惨めとは思っていない。「不運だったけど、不幸ではない」と語っている。そうは言っても、無罪が晴らされないまま生活をし、運動を続ける状態は平穏なはずはありません。そして、いつかは再審請求が通ってほしいと思います。

狭山事件は、私が子供の頃、免罪事件として大きな問題になっていた。この裁判のその後のことは、ここ数年マスコミに登場することもなく知らなかったが、この映画ができてまだ再審申請中ということを知った。
足利事件、布川事件、袴田事件などが相次いで無罪判決を得たにもかかわらず、狭山事件は今も再審請求の却下が続いている。これを機に、免罪事件の記録を調べてみたら、あまりにもたくさんの免罪事件があり、また過去の出来事などではなく、現在もいくつもあることを知りました。権力によって作り出される「犯罪者」はこんなにも多いのだということを全然知らなかった。この作品の中で、先輩裁判官が下した判決に疑問を持っても、後輩の裁判官が覆しにくいという現状を指摘していたが、日本の司法の現実も語られる。(暁)


2013年 105分 ハイビジョンサイズ
協力 アズマックス/神奈川人権センター/KimoonFilm/翔の会/部落解放同盟中央本部
製作 映画『SAYAMA』製作委員会
5月31日〜 ポレポレ東中野にて公開
『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』HP
http://sayama-movie.com/
金聖雄監督金聖雄監督2.jpg


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2014年05月26日

ドキュメンタリー映画 『美しいひと』

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韓国、オランダ、日本。あの原爆を生き抜いた人たち、そして、生きることができなかった人たちの物語

撮影・監督/東志津 
プロデューサー/野口香織 整音/永峯康弘 音楽/横内丙午
題字/赤松陽構造 

原爆投下から69年。被爆者も人生の最終章を迎えています。彼らはあの日、何を見たのか、原爆後の人生をどう生きたのか。日本は唯一の被爆国と常に言われるが、広島、長崎で被爆したのは日本人だけではない。この作品は、被爆後を生き抜いてきた人たちに取材し、原爆が日本人だけの悲劇ではなかったことを伝えている。

<映画の舞台1 韓国>
原爆の犠牲者は、広島・長崎あわせて、およそ21万人にのぼると言われる。そのうち約4万人が、当時、日本の植民地だった朝鮮半島からの労働者、あるいは移住者だったという。
韓国の陜川(ハプチョン)原爆被害者社福祉会館では、広島・長崎で被爆した韓国人が余生を送っている。70歳代〜90歳代の日本で教育を受けたり、青春時代を過ごした人たち。この施設に暮らす人たちに、被爆当時の話、その後どう生きたかを訊ねているが、差別の中、補償もなく苦しい生活をしてきたという。苦難を乗り越えてここにたどり着き平穏の時を過ごしている。日本時代を懐かしんで、広島弁で語る言葉は穏やかで、この施設に来て、やっと穏やかに暮らせるようになった人たちなのかもしれない。
この施設は韓国政府と日本政府の支援で1996年に開館し、運営は大韓赤十字社が行っている。
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韓国陜川原爆被害者福祉会館の藤棚に集う被爆者たち
コピーライトマークS.Aプロダクション

<映画の舞台2 オランダ>
長崎の爆心地付近に捕虜収容所があり、イギリス、オランダ、オーストラリアなどの連合国軍兵士の捕虜195人が被爆し、7名が亡くなった。当時、オランダはインドネシアを植民地支配していたが、1942年、日本軍のインドネシアへの侵攻で、オランダ軍は降伏。多くのオランダ軍の若者が捕虜となって日本へ送られ、強制労働に従事させられていた。そういうことで捕虜の中にはオランダ人が多かったという。
ここでは、長崎で被爆した3人の元捕虜をオランダに訪ねているが、彼らは忘れられない原爆の記憶を語り、トラウマに苦しんできたと語る人もいる。そして一人は、自分の体験を語った3週間後に亡くなった。

<映画の舞台3 日本>
被曝した母が亡くなり、その黒こげの遺体のそばにたたずむ姿の写真が被爆の象徴になった龍(りゅう)智江子さん。16歳の時に長崎で被爆。家族を失い、親戚の人の助けをうけ、戦後は看護助手などをしながら生きてきた。原爆の後遺症と戦いながら暮らしてきた年月を語り、龍さんの一人息子は、自身も被爆2世として、いわれのない差別を受けたことを語った。

監督は、この『美しいひと』というタイトルについて、「原爆に屈することなく、自分の人生を見事に生き抜いた人々、そして、“その瞬間”まで確かにそこにいた人々の、美しい人生の記憶を残しておきたい―そんな思いから本作は生まれました」と語っている。

原爆を描いた映画は毎年のように作られているが、日本人以外の被爆者について描いた作品は、朴寿南(パク・スナム)監督の『もうひとつのヒロシマ−アリランのうた』、スティーブン・オカザキ監督の『ヒロシマ ナガサキ』などでも描かれてきたが、マスコミで報じられることはめったになくて、ほとんどの人が知らないのではないかと思います。それにしても、広島で朝鮮人だけでも4万人の犠牲者がいたとは思ってもいませんでした。それに、陜川原爆被害者社福祉会館の存在も初めて知りました。映画は知識の源です。
被爆の話は、忘れないように繰り返し若い人に伝えてゆく必要があるけど、被爆した人たちの証言を聞く機会は急がないと時間がない。
東監督にインタビューしたので、HP,本誌91号掲載予定です。(暁)

東志津監督
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『美しいひと』公式HP http://utsukushiihito.jimdo.com/
製作協力/ヒポ・コミュニケーションズ いせフィルム 
製作・配給/活鼡社 S.Aプロダクション
助成/文化芸術振興費補助金 
2013年 日本 116分 カラー 
5月31日(土)新宿・K's cinemaにてロードショー!
posted by akemi at 02:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月25日

ポリス・ストーリー レジェンド(原題:警察故事2013 Police Story)

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監督・脚本・編集:ディン・シェン
アクション監督:ヘ・ジュン
キャスト:ジャッキー・チェン(ジョン・ウェン)、リウ・イエ(ウー・ジアン)、ジン・ティエン(ミャオ)、グーリー・ナーザー(シャオウェイ)、リュウ・ハイロン(ファイター)、ジョウ・シャオオウ(ウェイ・シャオフー)、ユー・ロングァン(隊長)

ジョン・ウェン刑事は半年振りに一人娘ミャオに会った。待ち合わせた巨大なナイトクラブ「ウー・バー」のオーナーのウー・ジアンと結婚したいというのだ。仕事に追われ、家庭を2の次にしていたジョンをミャオは許せず、ことさら反抗的になっている。
娘との間が持てず、バーの中を見ていたジョンは、急に何者かに襲われ気を失ってしまう。気がつくと出入り口が封鎖され、ジョン親子を含めた十数人の客が檻のような囲いに閉じ込められていた。しかもあちこちに爆弾がしかけられ、警察もうかつに手が出せない。これはウーが巧妙に仕組んだ籠城事件だった。ウーの目的は何なのか?

冒頭シーンが、チラシ画像の「涙目で銃をこめかみに当てているジャッキー」のアップです。何が起こるの?とくいつくように観てしまいました。
『ポリス・ストーリー』第1弾が30年前(今観ても面白いです!)、香港のアクションを牽引してきたジャッキーも今年60歳になりました。アクションはこの前の『ライジング・ドラゴン』が最後、と言ってなかったっけ?と思いつつ、娘を思う父の心情がにじみ出るジャッキーに、全部封印しないでアクションもできるスターでいて、と応援したくなります。悪役のリウ・イエが新鮮。猫型少女のジン・ティエンも可愛いです。
監督は『ラスト・ソルジャー』でジャッキーが抜擢したディン・シェン。アクション監督が成家班のヘ・ジュン。ナイト・クラブでのバトルが多いですが、アクションのためのような作りなので(?)飽きさせません。トンネルだけは無駄に見えましたが。(白)


2013年/中国/カラー/108分/シネスコ
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2013 Jackie & JJ Productions Limited, Wanda Media Company Limited and Starlit HK International Media Company Limited All rights reserved 

★6月6日(金)TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

どうしても触れたくない

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監督:天野千尋
原作:ヨネダコウ(大洋図書)
脚本:高橋ナツコ
キャスト:米原幸佑(嶋俊亜紀)、谷口賢志(外川陽介)、富田翔(小野田良)

大手の会社から転職した嶋は、出社した初日にエレベーターで酒臭い大柄な男と一緒になった。
彼は上司になる外川。その夜の歓迎会で前の会社を辞めた理由を聞かれ、返事につまった嶋に助け舟を出してくれる。一見粗野に見えて、こまやかな気遣いをする外川に嶋はひかれていくが、また傷つくのが怖くて素直になれない。

監督は2012年の「したまちコメディ映画祭in台東」で、『フィガロの告白』を発表。グランプリと観客賞を獲得した天野千尋。受賞作は4人の男子中学生たちが初々しくて可愛さ満点、短編ながらもしっかりと構築されていた作品でした。
初長編デビューとなったこの作品は、人気のBL(ボーイズラブ)コミックの映画化。女性が描く男子の恋愛ものはどちらも美形ですが、これも例にもれず。米原くんは岡田准一くんにちょっと似ていて、谷口くんは戦隊モノでデビューした長身のさわやか青年。舞台でも映えそうな俳優さんです。(白)


(C)2014ヨネダコウ・大洋図書/「どうしても触れたくない」製作委員会
2014年/日本/カラー/84分
配給:日本出版販売
http://www.doushitemo.com/
★5月31日(土)よりシアターイメージフォーラムにてレイトショー
posted by shiraishi at 18:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ミッション:15(原題:Event 15)

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監督マシュー・トンプソン
キャスト:ジェニファー・モリソン(ホワイト大尉)、ジョシュ・スチュワート(オールズマン軍曹)、スティーブン・ライダー(ディエゴ上等兵)

ワシントンの米軍医療施設では、多くの帰還兵がPTSD(=心的外傷後ストレス障害)の治療のためカウンセリングを受けている。アフガニスタンで敵の拷問を受けたシングルマザーのホワイト大尉は、日常生活に戻った今も出会う人々の死ぬ様子が目に浮かんでしまう。上官の命令にそむき女性と子どもしかいない施設を攻撃したオールズマン軍曹は、薬物中毒の傾向があり女性蔑視の言葉を吐く。ディエゴ上等兵は、敵の急襲に遭った際仲間を助けられなかったことを悔やみ、戦場の光景のフラッシュバックに悩んでいる。この3人が同じエレベーターに乗り合わせたが、下降中突然停止し外部と連絡がつかなくなる。ホワイトはスマートフォンで「ワシントンが攻撃された」という驚愕のニュースを目にする。

エレベーターに閉じ込められた3者3様の行動。それぞれに抱えたトラウマが異常な事態の中で増幅し、表面に現れてきます。
この緊迫した状況が実は軍による極秘の心理実験なのだ、と途中で観客には種明かしされ、仕掛けた者と仕掛けられた3人を交互に観ることになります。つくづく軍(国家)とは非情なものだと憤慨。ほぼエレベーター内で進む息詰る展開にドキドキさせられました。3人のキャラだてが良かったです。ジェニファー・モリソンはスタートレック最新作で、カークの母親役で出ていたらしいのですが、記憶に残っておらず。子どものために生き延びようとするこのホワイト大尉が似合っていました。(白)


2013年/イギリス・アメリカ合作/カラー/85分
配給:プレシディオ
(C)Event 15 AG / Millbrook Pictures 2013
http://mission15.jp/

★5月31日(土)よりヒューマントラスト渋谷他全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 17:22| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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