撮影:池田俊巳・浜崎務・横山友昭・山内泰
現場録音:山田健太郎・高木酉一 録音:吉田茂一
音楽&ピアノ:谷川賢作 ギター&ハミング:小室等
テルミン:トリ音 パーカッション:河野"菌ちゃん"俊二
録音エンジニア:ichiro
ナレーション:伊藤惣一
編集協力:野村太
技術協力:菊池純一
スチール:村田次郎
制作デスク:若宮正子・中村達史・伊藤純子
プロデューサー:陣内直行
50年間、殺人犯というレッテルを背負いながら、泣き・笑い・怒り・日々を「凛」と生き抜いている石川一雄さん&早智子さん夫婦の物語2013 映画「SAYAMA」製作委員会 All Rights Reserved.
1963年に起きた「狭山事件」。これは女子高生の誘拐殺人事件で、犯人を取り逃がした警察は、付近の被差別部落に住む石川一雄さんを別件逮捕した。石川さん24歳の時だった。
二審から無実を訴えるも無期懲役判決を受け、32年獄中生活を送った後、1994年に仮出獄。何度も再審請求をしているが、出獄後20年たっても実現されず、50年もの間、殺人犯というレッテルをはられたまま、罪は晴れていない。この免罪事件の石川一雄さんと、出獄後結婚した妻の早智子さんを主人公とした映画。
金聖雄(キム・ソンウン)監督が「運動としてではなく、人間を描きたかった」というようように、石川夫妻のほのぼのとした日常を描き、その日々の生活や運動を追うことで、事件の全貌が見えてくる。取調べ中、兄が真犯人と思い込まされ、一家の大黒柱である兄の身代わりで虚偽の自白をした事情、二度にわたる家宅捜索で何も出なかったのに、「自供後」の3回目の家宅捜査で被害者の万年筆が突然みつかった不自然な状況、犯行現場とされた場所・時間には、近くに農民がいたのに殺人事件が起こったことを気づかなかったことなどが語られる。
また、貧しさから満足に学校にも行っていない状況で、読み書きも自由にできないのに、脅迫状を書いたとされた。入獄後、読み書きを覚え、弁護団や支援者たちとの「公正な裁判」を求める運動になっていった。そんな支援者たちとの交流、事件の検証なども描かれる。
仮出獄後は、免罪を晴らすことが人生の目的となっている石川夫妻。そんな生活だけど、石川さんは自分を惨めとは思っていない。「不運だったけど、不幸ではない」と語っている。そうは言っても、無罪が晴らされないまま生活をし、運動を続ける状態は平穏なはずはありません。そして、いつかは再審請求が通ってほしいと思います。
狭山事件は、私が子供の頃、免罪事件として大きな問題になっていた。この裁判のその後のことは、ここ数年マスコミに登場することもなく知らなかったが、この映画ができてまだ再審申請中ということを知った。
足利事件、布川事件、袴田事件などが相次いで無罪判決を得たにもかかわらず、狭山事件は今も再審請求の却下が続いている。これを機に、免罪事件の記録を調べてみたら、あまりにもたくさんの免罪事件があり、また過去の出来事などではなく、現在もいくつもあることを知りました。権力によって作り出される「犯罪者」はこんなにも多いのだということを全然知らなかった。この作品の中で、先輩裁判官が下した判決に疑問を持っても、後輩の裁判官が覆しにくいという現状を指摘していたが、日本の司法の現実も語られる。(暁)
2013年 105分 ハイビジョンサイズ
協力 アズマックス/神奈川人権センター/KimoonFilm/翔の会/部落解放同盟中央本部
製作 映画『SAYAMA』製作委員会
5月31日〜 ポレポレ東中野にて公開
『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』HP
http://sayama-movie.com/
金聖雄監督