2014年04月13日

神聖ローマ、運命の日 〜オスマン帝国の進撃〜  原題:11 settembre 1683/英題:THE DAY OF THE SIEGE

監督:レンツォ・マルチネリ (『プロジェクトV 史上最悪のダム災害』)
出演:F.マーレイ・エイブラハム(『アマデウス』、『薔薇の名前』)ねイエジー・スコリモフスキ(『アンナと過ごした4日間』)、エンリコ・ロー・ヴェルソ(『ハンニバル』、『チェ・ゲバラ -革命と戦いの日々-』)

1683年9月、オスマン帝国の大宰相カラ・ムスタファ率いる30万の大軍が、ハプスブルク家の都ウィーンを包囲する。ウィーンを守るのは、わずか1万5千の兵力。オイゲン公の槍騎兵やザクセン、バイエルンなどの援軍を含めても、総勢5万足らず。絶体絶命の淵で、神聖ローマ皇帝レオポルト1世に召喚されウィーンに赴いたのは、病を治す奇跡の修道士として、民衆から慕い敬われるマルコ・タヴィアーノだった。さらにポーランド王ヤン3世ソビェスキが、4万の援軍を従えてウィーンを目指す・・・
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(C) 2012 Martinelli Film Company International srl - Agresywna Banda

オスマン帝国軍が、ウィーン侵攻を果たせなかった第二次ウィーン包囲という歴史の断片を描いた作品。
キリスト教勢力が結集してイスラーム勢力を追い返したことを、イタリアとポーランドが合作で描いているところから、自ずから視点は想像できるでしょう。
少年時代に偶然出会ったマルコ修道士と大宰相カラ・ムスタファの因縁や、カラ・ムスタファと息子との関係など、背景に人間ドラマも描かれていて、戦闘場面だけに終始した作品ではありませんでした。
映画の使用言語が英語のため、言葉の違いによる意思の疎通に問題があったはずの現場が伝わってこないのが残念。せめて、キリスト教勢力とオスマン勢力とは言葉を違える工夫が欲しかった。ポーランド版やイタリア版はどうだったのでしょう・・・(咲)

2012年/イタリア・ポーランド映画/英語/120分/カラー
配給:アルシネテラン
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/roma/
★2014年4月19日(土)、有楽町スバル座他全国順次ロードショー
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2014年04月06日

8月の家族たち(原題:August: Osage County)

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監督:ジョン・ウェルズ
原作・脚本:トレイシー・レッツ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
音楽:カーター・バーウェル
出演:メリル・ストリープ(バイオレット)、ジュリア・ロバーツ(長女バーバラ)、ユアン・マクレガー(ビル)、クリス・クーパー(チャールズ)、アビゲイル・ブレスリン(ジーン)、ベネディクト・カンバーバッチ(リトル・チャールズ)、ジュリエット・ルイス(三女カレン)、マーゴ・マーティンデイル(マティ・フェイ)、ダーモット・マローニー(スティーブ)、ジュリアン・ニコルソン(次女アイビー)、サム・シェパード(ベバリー)、ミスティ・アッパム(ジョナ)

父親が失踪したとの連絡で、急遽オクラホマの実家に久しぶりに家族が集まった。母バイオレットはガンで闘病中だが、毒舌は相変わらず。長女バーバラは夫ビル(実は別居中)と反抗期の娘ジーンとともに。奔放な三女カレンは婚約者と。地元に残っている次女アイビーはいまも独身。気弱な一人息子がケンカの種になるバイオレットの妹夫婦。つい出てしまった本音が新たな波紋を起こし、次々と秘密があきらかになる・・・。

原作はトレイシー・レッツによる戯曲。2008年ピューリッツァー賞&トニー賞をW受賞しています。原作者が自らが脚本を手がけ、『カンパニー・メン』のジョン・ウェルズ監督がメガホンをとりました。映画が2,3本できそうな豪華キャストでの丁々発止の舌戦と演技合戦、取っ組み合いのバトルに目がくぎづけです。父の失踪を最初のきっかけに、それぞれが抱える葛藤や秘密が明らかになっていく過程がスリリングです。寡黙な父の胸の内は明かされませんが、病に侵されながらも揺るがない妻バイオレットの強さしたたかさに負けたような気がしてなりません。笑えるブラックコメディですが、大小問わず誰にでも刺さっていそうな棘に気づくと、深いところに痛みを感じます。(白)

2013/アメリカ/カラー/121分
配給:アスミック・エース
(c) 2013 AUGUST OC FILMS, INC. All Rights Reserved.
http://august.asmik-ace.co.jp/
★4月18日(金) TOHO シネマズ シャンテ ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:38| Comment(1) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジャック・タチ映画祭

1907年パリ生まれ、コメディアンとしてまた喜劇作家、監督として活躍したジャック・タチの全作品を、デジタルリマスターで新しく甦らせた映画祭が開催されます。代表作『ぼくの伯父さん』ほか短編、彼の死後見つかったラッシュを実子のソフィーが編集した『フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島』を上映します。この機会にぜひご覧下さい。

期日:4月12日(土)〜5月9日(金)4週間限定上映
   以後全国順次公開
会場:渋谷 シアターイメージフォーラム
上映作品:
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『プレイタイム』('67)
『ぼくの伯父さん』('58)+『家族の味見』('76)(短編)
『トラフィック』('71)+『陽気な日曜日』('35)(短編)
『パラード』('74)+『乱暴者を求む』('34)(短編)
『のんき大将 脱線の巻[完全版]』('49)+『郵便配達の学校』('46)『フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島』('78)(短編)
『ぼくの伯父さんの休暇』('53)+『ぼくの伯父さんの授業』('67)『左側に気をつけろ』('36)(短編)

(c) Les Films de Mon Oncle - Specta Films C.E.P.E.C.
http://www.jacquestati.net/
posted by shiraishi at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月05日

アクト・オブ・キリング  英題:THE ACT OF KILLING

監督:ジョシュア・オッペンハイマー
共同監督:クリスティン・シン、匿名希望

1965年9月30日深夜、インドネシア・スカルノ大統領(当時)の親衛隊の一部が陸軍トップの6人将軍を誘拐・殺害し、革命評議会を設立したが直ちに粉砕される。「9・30事件」と呼ばれ、国際関係にも大きな変化をもたらしたクーデター未遂事件である。その真相は明らかになっておらず、陸軍内部の権力争いという説も強い。当時クーデター部隊を粉砕し事態の収拾にあたり、後に第2代大統領となったスハルト少将らは、背後で事件を操っていたのは共産党だとして非難。その後の1〜2年間にインドネシア各地で、100万とも200万ともいわれる人たちを“共産党関係者”だとして虐殺した。それに対して、日本や西側諸国は何ら批判の声を上げることはなかった。
オッペンハイマー監督は、当初、虐殺被害者を取材したが、妨害にあって断念。逆に加害者に目を向ける。北スマトラの州都メダンで、虐殺を実行した者たちを紹介してもらい取材。誇らしげに当時のことを笑顔で自慢する加害者たちに驚き、その深層心理を探るべく、監督は彼らに殺人をどのように行ったか、自由な形で再現してもらう。さらに、撮った映像を本人たちに見せ、そのリアクションも映し出している。
●『アクト・オブ・キリング』ジョシュア・オッペンハイマー監督補正.jpg
特別記事 『アクト・オブ・キリング』ジョシュア・オッペンハイマー監督来日記者会見
http://www.cinemajournal.net/special/2014/aok/index.html

この映画を観て思い出したのが、2006年のアジアフォーカス福岡国際映画祭で観て、強烈な印象を受けたリリ・リザ監督の『GIE』という作品。「1960年代に激動のインドネシアで、中道を保って学生運動をしたスー・ホックギーの半生を鮮烈に描いた作品」と、私自身が書いているのですが、激動の政治の背景をちゃんと理解していたわけではありませんでした。『GIE』の主人公スー・ホックギーは、中国系ですが、共産主義者として虐殺されたのではなく、登山中に命を落とした人物。ですが、映画の中で共産主義者だと断定された人たちが弾圧されたことが描かれていました。
また、『GIE』でスー・ホックギーを演じたニコラス・サプトラが、『ビューティフル・デイズ』で演じたランガという詩が好きな青年も、父親がスハルト時代に共産主義者の疑いをかけられた知識人という設定でした。
「赤狩り」という名の下、世界各地で共産主義者(および、共産主義者であると勝手に断定された人たち)が弾圧されてきましたが、共産主義の是非というより、邪魔者を排する都合のいい理由なのでしょう。本作で驚いたのは、権力者からの命令に応じて弾圧する側に立った末端の人たちが英雄気取りで今も暮らしている姿でした。上のお墨付きであれば、殺人行為も自分の気持ちの中で許されるというのが、とても理解できないことでした。日本で、兵隊として戦争に行かされ、殺人を行わざるをえなかった人たちも大勢いると思います。でも、その人たちが実際の殺人行為を語る姿を見たことはほとんどありません。自分の胸の奥深くにしまっておくのが、常ではないでしょうか? 
と、ここまで書いて、はたと気が付いたのは、世界から戦争がいつまでたってもなくならないのは、戦争を起こす張本人の権力者が先鋒に立って殺人行為を犯すわけでないからかと。洗脳されたり、強制されたりして、加害者となる人たちも戦争の犠牲者であることには違いないのですが、本作をみると、それにしても・・・と複雑な思いが消えません。
また、本作のエンドロールのクレジットには、数多くの“ANONYMOUS”(匿名希望)の文字。インドネシアでまだわだかまりが消えていないことをまざまざと感じました。(咲)


2012年/デンマーク・ノルウェー・イギリス合作/インドネシア誤/121分/ビスタ/カラー/DCP/5.1ch
配給:トランスフォーマー
公式サイト:http://aok-movie.com/
★2014年4月12日より渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開
ラベル:インドネシア
posted by sakiko at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする