2014年02月23日

シネマパラダイス★ピョンヤン  英題:The Great North Korean Picture Show

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監督:ジェイムス・ロン、リン・リー 

2008年、カンボジアの地雷撤去活動家を描いた映画『アキ・ラーの少年たち』がピョンヤン国際映画祭に招かれ、初めて北朝鮮を訪れたジェイムス・ロン監督とリン・リー監督。映画好きの金正日の庇護を受けた多くの映画人が将軍様を称え、国家思想を伝える役割を果たしたいと笑顔で語る姿に驚いた二人。「北朝鮮映画」をテーマに映画を撮ろうと、交渉すること8か月。無数のメールのやりとりの後、ようやく北朝鮮当局から撮影許可を獲得する。条件は二つ。

1.外出する際は、必ず案内員が同行する。

2.撮影したものは、その日毎に検閲に出す。


 2009年、撮影開始。取材を申し入れたピョンヤン演劇映画大学は改修中を理由に内部の撮影許可が出ず、俳優の卵である学生二人を紹介される。科学者の娘と、映画監督と女優の息子である二人は、何不自由なく育った特権階級。「将軍様に喜びを捧げる俳優になりたい」と語る。

朝鮮芸術映画撮影所。1960年代の日本、1950年代の南朝鮮(韓国)、そして1930年代の中国の町の広大なセット。「将軍様のお陰で海外ロケの必要がない」と豪快に笑うピョ・グァン監督。日本兵に武器を捨てろと命令され憤慨する場面の撮影で、エキストラの朝鮮人民軍の兵士たちに、「笑うな!」と怒鳴る。戦争を知らない若者たちなのだ。監督の心には日本植民地時代に父母が受けた苦難の思いがよぎる・・・

 

『北朝鮮強制収容所に生まれて』(3月1日りユーロスペースほか全国順次公開)と比べてみると、あまりに両極端で、同じ国のことなのかと興味深い。2年間に4度にわたって撮影した本作、真実の断面には違いない。

本作で取材した北朝鮮の人たちは、「すべては将軍様のため」と笑顔で語る。かたや、北朝鮮強制収容所の中で生まれ育った人たちは、拝む資格もないと将軍様の存在さえ知らされていない。笑顔で将軍様を讃える人たちは、収容所で生まれ育つ人たちがいることも知らされていないのだと思う。人間の運不運が、一握りの権力者に左右されるとは・・・  (咲)

 

配給:33 BLOCKS

2012 / シンガポール/朝鮮語・日英字幕 / 93

公式サイト:http://cinepara-pyongyang.com

★3月8日(土) シアター・イメージフォーラムにてロードショー! ほか全国順次公開



タグ:北朝鮮
posted by sakiko at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | シンガポール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北朝鮮強制収容所に生まれて  英題:Camp 14 – Total Control Zone

監督:マルク・ヴィーゼ 

出演:シン・ドンヒョク

 

北朝鮮の政治犯強制収容所14号管理所の中で「表彰結婚」した両親のもと、1982年に生れたシン・ドンヒョク。生まれながらの政治犯として育ち、23歳の時に収容所からの脱出に成功。その後、脱北し、2006年韓国へ。2009年に渡米したが、現在はソウル在住。

本作は、マルク・ヴィーゼ監督に心を許したシン・ドンヒョクがその苛酷な半生を語ったもの。監督は、収容所の管理側にいて脱北した人物の証言も交えて、強制収容所の実態を描き出している。

 

6歳の時から炭鉱で大人が掘った石炭を運び出す仕事をする。

一番古い記憶は畑での公開処刑。仕事を中断して皆で見に行った。

食事の量は看守の裁量で決まる。トウモロコシと白菜汁を1日3食。

ネズミも焼いて食べた。骨が柔らかいので、丸ごと食べられる。

14歳の時、母と兄が逃亡を企てているのを聞いて密告する。

褒美を貰えると期待していたら、翌日目隠しされて監獄に連行された。

逆さ吊りにされて火であぶられる。腕が曲がり、全身傷だらけ。今も跡が残る。

外から収容所に来た人から話を聞く。チキン、米、サムギョプサル・・・ 

世の中に美味しいものがあることを知る。外の世界を確認したくなる。

2005年、薪を取りに行き、外から来た彼と一緒に鉄条網を越える。

彼は感電死。彼の背中を借りて逃げることができた。

初めて外の世界を見て衝撃を受ける。

人の家に入って服や食べ物を盗む。お金を知らなかった・・・


脱北した元看守の言葉。

拷問や銃殺しても国を守るためと、何も感じなかった。

北では純粋だった。韓国では皆、心をお金に取られている。

収容所ではお金の心配はなかったが、懐かしいことはない。


20年以上前に、脱北者の手記をいくつか読んだ中に、政治犯収容所の実態を綴ったものがあって、ネズミを食べて飢えをしのいだということが特に衝撃でした。今もその状況は変わっていないこと、そして今なお20万人が政治犯収容所にいると推定されるということに、世の中にこんな地獄があっていいものかと言葉もありません。
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公開を前に来日されたシン・ドンヒョクさん。「辛いことは?」と聞かれ、「思い出したくもない経験を、皆さんに話せと言われて語らなければならないのが辛い」と、会場を和ませる余裕も見せてくれました。穏やかに語るシンさんを見て、自由を知ることができてほんとによかったと思いました。シンさんたちの地道な活動が、人権を侵害されている人たちを救う一助になればと願うばかりです。(咲)

 

配給  :パンドラ

2012年/ドイツ/HD/カラー/1:1.85106

公式サイト:http://www.u-picc.com/umarete/

★3月1日よりユーロスペースほか全国順次公開



タグ:北朝鮮
posted by sakiko at 19:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

僕がジョンと呼ばれるまで

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監督:風間直美、太田茂
プロデューサー:太田茂
構成:武田浩、ロジャー・パルバース
撮影:松本克己

アメリカ・オハイオ州にある高齢者介護施設。平均年齢80歳以上の入居者の多くが認知症である。スタッフの青年ジョンは毎日「僕の名前を知っていますか?」と尋ねる。いつも答えは「いいえ」。名札を見せて、繰り返してもらうけれど、5分も経つともう忘れている。施設では2011年5月、認知症を改善する取り組みを始めた。トライアル期間は6ヶ月。
エブリンは93歳。アルツハイマー型の認知症。日々の生活も困難で、簡単な質問にもはっきり答えられない。エブリンの娘と息子は「母であったころの母」は、お洒落で手作りが得意で、皮肉なジョークで笑わせていた。その母はもういなくなったと涙ぐむ。スタッフは一番簡単なプログラムから始めた。短い文章を音読・計算問題・1から30までの数字が書かれたコマを紙に印刷された同じ数字の上に置く、など。根気良く説明し、誉めるスタッフ・・・。

この「学習療法」は、東北大の川島隆太氏教授(DS「脳トレ」の先生)らが開発したもの。数や文字といった記号を扱う行為は、それがどんなに単純であっても脳が活発に働くのだそうだ。それを繰り返すことで記憶力の他、理解や判断、処理など他の能力も向上していくという。
これまでの認知症についての映画は、現状を受け入れて穏やかな日々を送る、というラストが多かった。脳が萎縮していく病気なので、それをできるだけ遅らせるか、介護者のストレスを少なくするほか解決策はないのだと思っていた。将来の自分かもしれないおばあちゃんたちの表情の変化、言葉のはしばしに、プログラムの成果と希望を見出してほっとした。ひかえめに寄り添うカメラワークも優しい。(白)
 

2013/日本・アメリカ合作/カラー/82分/ドキュメンタリー
配給:東風
(C)仙台放送
http://doyouknow.jp/
★2014年3月1日(土)より東京都写真美術館にてロードショー
posted by shiraishi at 13:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

家路

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監督:久保田直
脚本:青木研次
撮影:板倉陽子
美術:三ツ松けいこ
企画協力:是枝裕和、諏訪敦彦
音楽:加古隆
主題歌:Salyu「アイニユケル」
出演:松山ケンイチ(次郎)、田中裕子(登美子)、安藤サクラ(美佐)、内野聖陽(総一)、山中崇(北村)

震災後、誰も立ち入れなくなった警戒区域内。20年ぶりに次郎が帰ってきた。誰にも告げず、電気もガスもない生家でたった一人暮らし始める。兄の総一家族は仮設住宅に移っていた。妻の美佐はデリヘルで働き、継母の登美子は物忘れが目立ち始める。農業を再開することもできない総一は鬱々とした日々を過ごしていたが、次郎が戻っているという噂を耳にする。次郎は畑を耕し、稲の苗床を作っていた。

同じようにふるさとへ帰りたい人は多いことだろう。お年寄りならなおのことだ。手入れの必要な田畑は荒れ放題。目に見えない脅威より、病むかもしれない明日よりも今の時間が惜しい。次郎が家を出奔したには理由があり、父が死に、誰もいなくなったふるさとには帰ることができた。後添いの登美子と、嫁の美佐が2人でカップ酒を飲むシーンにほっこりした。女のほうがきっと男より打たれ強い。それにしても個人の頑張りだけでは復興は進まない。被災してもうすぐ3年たつ。現状はどうなっているのか、きちんと報道してほしい。(白)

配給:ビターズ・エンド
2014/日本/カラー/118分/ビスタ
http://www.bitters.co.jp/ieji/
(c)2014『家路』製作委員会
★3月1日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東京難民

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監督:佐々部清
原作:福澤徹三「東京難民」(光文社刊)
脚本:青島武
撮影:坂江正明
音楽:遠藤浩二
主題歌:高橋優「旅人」
出演:中村蒼(時枝修)、大塚千弘(北条茜)、青柳翔(順矢)、山本美月(瑠衣)、中尾明慶(小次郎)、金子ノブアキ(児玉)、井上順(鈴本)、金井勇太(軽部)、落合モトキ(俊)ほか

時枝修は、ごく普通の大学生だった。親から仕送りを受け気楽な毎日を送っていたが、ある日授業料の未払いを理由に大学を除籍されてしまう。父親が大きな借金を抱えて失踪していたのだ。家賃を滞納し、アパートからも追い出された修はネットカフェに寝泊りするその日暮らしになった。
騙されて入ったホストクラブでは請求額が払えず、代わりにそこで働くことになる。先輩ホストの順也にノウハウを仕込まれ、看護士の茜を常連客にした。裏側を見てしまった修は逃げ出すが見つかって叩きのめされる。死にかけた修を救ってくれたのはホームレスの鈴本だった。

普通の大学生が転落していくさまをこと細かく描いている。日払いのバイトやネットカフェ難民の生活、ホストクラブの裏側などドキュメンタリーを見るようだった。ホストに入れ込んで借金を背負う女性もまた転落していく。一人は実家に逃げ帰り、一人は風俗嬢になった。
修があまりにも孤立しているのが疑問だった。数日でも転がり込める友達はいないのか、相談窓口はないのか。普段から危機感なく暮らしていると、なんの解決策も浮かばず対処できないのだろう。それでも修はそのときどき知り合った人を大切にし、面倒をみてもらえるようになる。顧客にした茜にも罪悪感を持っている。人間的には落ちきってしまわないところに、救いがある。人気の中村蒼くんの人の良さそうなところ、可愛らしさを愛するファンは、映画とはいえあまり酷い目に遭ったままは辛い。それは裏切られないので安心して。(白)

日本/カラー/130分/R15+
配給:ファントム・フィルム
http://tokyo-nanmin.com/
(C)2014『東京難民』製作委員会
★2月22日(土)より有楽町スバル座ほかにて全国公開!

ミッキーさんの映画評はこちら
posted by shiraishi at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする