2017年03月19日

ムーンライト  原題:MOONLIGHT

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監督・脚本:バリー・ジェンキンス 
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
出演:トレバヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホーランド、ジャネール・モネイ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、 

マイアミの黒人コミュニティで暮らすシャロンの成長物語。

少年期: 母ポーラと暮らすシャロン。内気で、学校ではリトルと呼ばれている。ある日、いじめられているところを麻薬ディーラーのファンに助けられる。泳ぎを教わりながら「自分の道は自分で決めろ」とファンに諭される。ファンを父のように感じて慕うシャロン。学校では、同級生のケヴィンだけが心を許せるただ一人の友達だった。

青年期: 高校生になったシャロンは、相変わらずいじめられている。母ポーラは麻薬におぼれる日々。家に居場所はなく、ファンの家を訪ねるが、ファンは亡くなっていた。ファンの妻テレサが優しく接してくれる。学校で同級生に罵られ、落ち込んだシャロンが夜の浜辺に佇んでいると、ケヴィンがやってくる。月の光の下で、二人は寄り添う。翌日、学校で怒りを爆発させたシャロンは事件を起こす・・・

成人期: あの事件のあと、マイアミから姿を消したシャロン。成長し、体格もよくなったシャロンは、アトランタで麻薬ディーラーとして幅をきかせている。ある夜、突然ケヴィンから電話がかかる。ダイナーで料理人として働くケヴィンは、シャロンに似た客を見かけて事件のことを思い出し、謝りたいという。声を聞き、急に会いたくなったシャロンは高級車をケヴィンのもとへと走らせる。

月明かりのもと、お互いの気持ちを確認しあうシャロンとケヴィンの姿が愛おしい。そういうことだったの・・・と、その場面になるまで気付かなかった私。思えば、オカマとからかわれていたのでした。
ケヴィンがシャロンのために特別メニューを作るといってキッチンに消えたあと、シャロンの取る行動をお見逃しなく!
これまたケヴィンを思う気持ちが、じ〜んと伝わってくる場面です。
アカデミー賞作品賞に輝いた本作。まさに心に染みこむような映画。

いじめられても刃向かうことなく下を向いていたシャロン。ファンという男と知り合うことで、シャロンの中でなにかが変わる。運命的な出会いが、誰しもにもあることを感じさせてくれます。そうやって人は大人になっていくのだつくづく思います。(咲)


☆第89回アカデミー賞  作品賞、脚色賞、助演男優賞 計3部門受賞

シャロンに大きな影響を与えたファンを演じたマハーシャラ・アリが、アカデミー賞助演男優賞を受賞。少年期の部分のみで、出番は多くはないけれど、存在感が光ります。

提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社 
配給:ファントム・フィルム
2016/アメリカ/111分/シネマスコープ/5.1ch/R15+
公式サイト:http://moonlight-movie.jp
★2017年3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開

アカデミー賞作品賞ほか受賞で、公開が前倒しになりました。
posted by sakiko at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パッセンジャー(原題:Passengers)

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監督:モルテン・ティルドゥム(『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』)
脚本:ジョン・スパイツ
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ジェニファー・ローレンス(オーロラ・レーン)、クリス・プラット(ジム・プレストン)、マイケル・シーン(アーサー)、ローレンス・フィッシュバーン(ガス・マンキューゾ)、アンディ・ガルシア

20XX年、新たな移住地を目指して、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が地球を旅立った。目的地ははるかに遠く、到着予定は120年後。乗客は冬眠状態にあり、目的地の数ヶ月前にならないと目覚めない。アヴァロン号は自動操縦で快適な旅を続けていたが、その途中で予定外に早く目覚めてしまった男女がいた。一人はロウアーデッキ(エコノミークラス)にいたエンジニアのジム、もう一人は美貌の作家でゴールドクラス(ファーストクラス)にいたオーロラだった。普通の生活では会うはずもない二人が、宇宙という究極の空間でなんとか生きる道を探す。旅はまだ90年も残っている・・・。

宇宙に取り残されるという作品はこれまでもありました。『ゼロ・グラビティ』『オデッセイ』など。それぞれに助かるかどうかハラハラさせられましたが、今度は宇宙空間の旅の途中で早く目覚めてしまい、残りの年数は客船の中だけという悲劇的状況です。5000人もの乗客がいるのに、乗務員がこれだけ?なのには驚き。何もかも機械化されていて、ミスや故障や事故などありえないというのです。「想定外」という語句がぴったりの早い目覚めに、地球の会社にヘルプと連絡をとっても返事が来るのが何年も後、ってどんだけ遠くへ行くんでしょうか。
特別の状況下どうするのが一番いいのか思わず考えさせられます。観ているうちにあまりに杜撰では、と突っ込みどころが出てくるものの、ほとんど出ずっぱりの2人の魅力+乗員のアーサーの良い味に2時間近く見入ってしまいました。宇宙船の造形や内部の美術、宇宙、プール(観てのお楽しみ)など美しい場面がたくさんあります。(白)


2016/アメリカ/カラー/シネスコ/116分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.passenger-movie.jp/
★2017年3月24日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サクラダリセット 前篇

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監督・脚本:深川栄洋
原作:河野裕「サクラダリセット」シリーズ
撮影:清久素延
出演:野村周平(浅井ケイ)、黒島結菜(春埼美空)、平祐奈(相麻菫)、健太郎(中野智樹)、玉城ティナ(村瀬陽香)、恒松祐里(岡絵里)、岡本玲(宇川紗々音)、岩井拳士朗(坂上央介)、矢野優花(皆実未来)、奥仲麻琴(若き日の魔女)、吉沢悠 (津島信太郎)、丸山智己(加賀谷)、中島亜梨沙(索引さん)、大石吾朗(佐々野宏幸)、加賀まりこ(魔女)

咲良田(さくらだ)の住人は半数が特殊な能力を持っている。彼らの力は公的な機関である管理局が厳重に監視・制御し、街の外で使われることはない。男子高校生の浅井ケイは“記憶保持”の能力を持ち、一度あったことは忘れることなく細部まで思い出すことができる。ケイといつも行動を共にする春埼美空は“リセット”の能力を持ち、セーブされた時点・最大3日前まで巻き戻すことができる。美空を含め全ての人の記憶がなくなるが、ケイの記憶だけはなくなることがない。
2人は2年前に相馬菫によって引き合わされ、以来様々な問題を能力で解決してきた。しかしある日リセットして戻った世界では相馬菫が亡くなっており、2人の能力をもってしてもやり直しはできなかった。

人の役に立ったりそうでなかったり、いろいろな能力者がいました。なぜそんな能力者がいるのか、どう管理されるのか詳しくは映画本編をご覧下さい。全7巻の原作はケイと美空が出会い、解決していく問題がいくつも語られています。自分だったらどんな能力があれば嬉しいか、ちょっと想像すると面白いです。高校は卒業した年齢の出演者たちですが、演技力にプラスして制服姿がみんなを初々しくさせていますね。制服の力は大きい!
年々出演作が増えている平祐奈さん、目力あり声もよく通ってお姉さんの愛梨さん(ご結婚おめでとう)に負けない女優さんになりそう。黒島結菜さん演じる“ケイに出会って自分の存在意義を考える”美空は内にこもる分、表現が難しそうですが守ってやりたくなるタイプ。若い俳優さんたちの先が楽しみです。加賀まりこさんが出ているのも嬉しい。(白)


2017年/日本/カラー/ビスタ/103分
配給:ショウゲート
(C)2017 映画「サクラダリセット」製作委員会
http://sagrada-movie.jp/
★前編 2017年3月25日(土)、後篇5月13日(土)2部作連続・全国ロードショー
posted by shiraishi at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『タレンタイム〜優しい歌』 原題:Talentime

3月25日(土)よりシアター・イメージフォーラム、4月シネマート心斎橋ほか全国順次公開
公開劇場情報 http://www.moviola.jp/talentime/theaters/index.html

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c Primeworks Studios Sdn Bhd

監督・脚本:ヤスミン・アフマド 
撮影:キョン・ロウ 
音楽:ピート・テオ 
出演:パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショールほか
2009年 マレーシア
カラー |115分 | マレー語・タミル語・英語・広東語・北京語
公式サイト http://www.moviola.jp/talentime/

不寛容の時代に届けたい作品

マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドは2003年に監督デビューし、2009年に51歳で亡くなりましたが、6年の活動期間でマレーシア映画の新潮流を牽引し続け、6作の長編を残しました。この作品は6作目。8年の時を経て日本で劇場公開されます。
マレーシアは、マレー系、中国系、インド系と、主に3つの民族が住む多民族,多宗教国家ですが、ヤスミン監督の作品の底流にあるのは、民族、宗教、言語の違いを越えて生きる人々の姿です。民族、宗教の異なる恋愛や友情、近所づきあいが描かれ、民族間の争いによる悲劇もあるけど、違いを受け入れ応援する人々が必ず登場します。現実の社会では難しく、これはヤスミン監督が強い信念を持って、あるべき人々の姿を描いているともいえます。

この作品は、ある高校で開かれた音楽の才能を競うコンテスト「タレンタイム」を巡る物語。タレンタイムとは、「タレント性を発揮する時間」というような意味合いの造語だと思うのだけど、学校対抗の音楽コンクールに望むための学内オーディションを軸に、高校生の友情や恋、家族との絆など、マレーシアの若者の青春を瑞々しく描いています。
学校対抗の大会に出場が決まったマレー系の女生徒ムルーと、バイクでの送迎を担当するインド系男子学生マヘシュ。二人を巡る淡い恋の物語が進行します。二胡演奏が得意な中華系の生徒カーホウは、歌やギターが上手なマレー系の転校生ハフィズにトップの成績を奪われ敵対心を持ちます。マヘシュの叔父が近所のイスラム教徒に殺され、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母。闘病を続けるハフィズの母。民族や宗教の違いによる葛藤を抱えながら迎えるコンクール当日。彼らの恋や対立の行方は…。ムルーとマヘシュの周りの友人や家族との関係を描きながら、マレーシア社会の現実が浮かび上がってきます。民族や宗教の壁を越えるヤスミン・ワールド全開の作品です。

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c Primeworks Studios Sdn Bhd


初めてヤスミン監督の作品を観たのは2005年の東京国際映画祭で上映された『細い目』でした。それまでに観たマレーシア映画とは全然違う独特の表現、ユーモア感を持つヤスミンワールドに魅せられ、その後、映画祭やマレーシア映画の上映会などでほとんどの作品を観ました。
私が初めて行った外国はマレーシアということもあり、とても興味を持ったというのもあります。マレーシアはマレー系、中国系、インド系と主に3つの民族が暮らしていますが、住んでいる区域が民族ごとにけっこう明確に分かれていて、ヤスミン映画の中のように、他の民族同士がすれ違い交流するというにはほど遠い世界にも感じました。もっとも私がマレーシアに行ったのは1990年と26年も前なので、その後ヤスミン映画の中で描かれているような状況になっているのかもしれませんが…。
ヤスミン監督の作品には多民族国家であるマレーシアにおいて、異民族間の共存の意志がいつも描かれていますが、何かの記事に「三回結婚して、一度目はインド系、二度目は中華系の人」と語っていて、自分の実感が込められているのかなとも思います。あるいはあってほしい社会を描いてきた人だともいえます。
また、ヤスミン監督の家族はマレーシアではかなり進歩的な一家で、それが作品に反映されていると思います。たとえばお手伝いさんが家族と同等な立場で会話をしているシーンがあったり、妻や子供たち(女の子)が強くてお父さんはいつもやり込められていたりといったような場面にそれが生きていると思います。
ユーモアとヒューマンな心を持って作品を作っていたヤスミン監督。この不寛容な時代に一石を投じるヤスミンワールド。この作品をぜひ観ていただけたらと思います。
『タレンタイム〜優しい歌』では、いつもヤスミン監督の作品の中で、お手伝いさん役で出てくる貫禄あるアディバ・ヌールさんが、校長先生役で出てきて思わずニヤリ。その他にも、ヤスミン監督作品の常連俳優たちが出てきます。それを確認するために、あるいは、マレーシア社会をもっと理解するために、この作品の前に作られた5作品もぜひ観ていただけたらと思います(暁)。

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音楽を担当したピート・テオ(2015年)

ヤスミン・アフマド監督の他の作品が特集上映されます。ぜひ『タレンタイム』を観る前にごらんになってみてください。
特集上映期間:3月18日(土)3月24日(金)の1週間
シアター・イメージフォーラムにて
上映作品:『ラブン』(2003)
     『細い目』(2004)
     『グブラ』(2005)
     『ムクシン』(2006)
     『ムアラフ-改心』(2007)

参考記事

●2009.10.23 東京国際映画祭
アジアの風部門『タレンタイム』:ピート・テオ(音楽)インタビュー
http://2009.tiff-jp.net/report/daily.php?itemid=1310

●シネマジャーナルでは2007年にピート・テオさんにインタビューしています。
シネマジャーナルHP ピート・テオインタビュー記事
http://www.cinemajournal.net/special/2007/peteteo/index00.html

●ホー・ユーファン監督にもインタビューしています
http://www.cinemajournal.net/special/2009/Ho_Yuhang/

●シネマジャーナルスタッフ日記2015年4月 マレーシア映画ウィークの紹介
http://cinemajournal.seesaa.net/article/417481741.html

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『細い目』に出演したシャリファ・アマニ(左)&ン・チューセン(右)

●シネマジャーナル本誌69号ではヤスミン・アハマド監督を特集しています
http://www.cinemajournal.net/bn/69/contents.html










posted by akemi at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月15日

わたしは、ダニエル・ブレイク 原題:I, Daniel Blake

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監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ、 ヘイリー・スクワイアーズ

イギリス北東部ニューカッスル。59歳になるダニエル・ブレイクは最愛の妻を看取り、今は一人暮らし。心臓発作を起こし、医者から大工の仕事を止められ雇用支援手当てを受けている。紋切り型の継続審査で、心臓が悪いと言っても聞いて貰えず、「就労可能・手当中止」の通知を受け取る。窓口に電話するも、1時間48分も待たされ、「サッカーの試合が終る位待たされた」とつぶやく。あげく、苦情申し立てはネットからと言われる。
そんな折、遅刻して給付金を受け取れず、悲痛な声で担当者に申し立てしている若い女性ケイティを見かける。思わず加勢するダニエル。事情を聞いてみれば、ロンドンから役所が斡旋したアパートに越してきたシングルマザー。ぼろアパートの修理をしたり、食料や日用品が支給されるフードバンクに付き添ったりと、ダニエルは手助けする・・・

イギリスといえば、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒をみてくれるものと思っていたら、どうやらそうでもないらしい。「お役所仕事」に振り回されるのも、どこかの国と同じ。
苦情申し立てするのに、職業安定所で慣れないパソコンに向かい、四苦八苦してやっと入力したら、フリーズして時間切れ。あるある! こういう経験!と、同情します。
ほんとに今は何でもネットから。アナログ人間には住み難い世の中になってしまいました。
苦情くらい、ちゃんと人間が対応してほしいもの。
ダニエルは自身も窮地に立たされているのに、人を気遣う心の余裕を持っていて、見習いたい。
そして、最後にダニエルは、理不尽な役所の対応に、「人間、尊厳を失ったら終わり」と言い放って思い切った行動に出ます。声をあげなければ、何も変わらない!
これまで、社会的弱者に寄り添うように映画を作り続けてきたケン・ローチ監督。80歳を目前に、またもや社会に一石を投じてくれた一作です。(咲)


2016年/イギリス・フランス・ベルギー/1時間40分/アメリカンビスタサイズ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
公式サイト:http://danielblake.jp
★2017年3月18日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開
posted by sakiko at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする