2017年12月10日

花筐 HANAGATAMI

hanagatami.jpg

監督:大林宣彦
出演:窪塚俊介、矢作穂香、常盤貴子、満島真之介、長塚圭史、山崎紘菜、柄本時生、門脇麦

1941年春、17歳の榊山俊彦(窪塚俊介)は両親と過ごしていたアムステルダムから一人で帰国し、佐賀県唐津の叔母(常盤貴子)の元に身を寄せる。新学期、海辺の教室では、個性豊かな同級生たちが山内教授(村田雄浩)と対峙していた。たくましい美男子の鵜飼(満島真之介)、ひょうきんな阿蘇(柄本時生)、虚無僧のような吉良(長塚圭史)・・・ 隙さえあれば、教室を抜け出し、松林で煙草を吸い、裸になって海で泳ぐ日々。俊彦は、肺病を患う従妹の美那(矢作穂香)にほのかな恋心を抱きながらも、あきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)ら女友達と遊び、“不良”なる青春を謳歌していた。しかし、そんな彼らの前に、いつしか戦争の足音が近づいてくる・・・

大林宣彦監督が、1977年のデビュー作『HOUSE/ハウス』よりも前に書き上げていた幻の脚本を映画化し、『この空の花』『野のなななのか』に次ぐ戦争3部作の最終章として撮り上げた青春群像劇。原作は、昭和11年(1936年)に文芸誌に発表された檀一雄の純文学「花筐」。翌年、日中戦争が勃発。処女短編集「花筐」出版記念予告日に檀一雄は召集令状を受け取り、戦地へ赴いている。
映画では、時代を大林監督自身が経験した1941年に設定。

「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」という言葉に、戦争前夜の若者の葛藤が象徴されている、
クランクイン直前に癌で余命3ヶ月を宣言された監督の、まさに命を振り絞って作り上げた作品には、敗戦を経験した作家として、語り継がなければいけないという思いが溢れている。
ここに描かれている青年たちは、お国の為に戦うという綺麗ごとをいうわけでもない。今を楽しみ、将来を夢見るいつの時代も変わらない若者たち。「戦争はいやだ」という大林監督の率直な言葉が胸に迫る。

そして、この映画の魅力はロケ地の唐津。冒頭の松林の向こうに海が見える教室。あんな教室で学びたい! 世捨て人のような吉良が暮らす家は、海辺の屋敷。かつて唐津を訪れた時に、海辺に広い庭園に囲まれたゆったりとした日本家屋の宿がいくつか並んでいて、その一つで昼食をいただいたのを思い出した。窓から海の向こうに唐津城を見晴らせる落ち着いた和室での至福のとき。祭の時期ではなかったが、唐津くんちの記念館では、赤い鯛の形の屋台が目をひいた。また訪れたくなった。(咲)


2017年/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/169分
配給:新日本映画社
公式サイト:http://hanagatami-movie.jp/
★2017年12月16日 (土) 有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 21:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒトラーに屈しなかった国王 原題 Kongens nei

2017年12月16日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

292a07f07fb8a479_R.jpg
c 2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Vast/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures

監督:エリック・ポッペ
製作:ピーター・ガーデン
製作総指揮ヘンリク・ツェイン
出演:
イェスパー・クリステンセン:ホーコン7世
アンドレス・バース:オラフ
モ・クリスティアンセン
カール・マルコビクス:クルト・ブロイアー
カタリーナ・シュトラー:アンネリーゼ・ブロイアー
ツバ・ノボトニー:マッタ

第二次世界大戦時の1940年4月9日、ナチス・ドイツ軍がノルウェーの首都オスロに侵攻。ドイツ軍の攻撃に交戦するノルウェー軍だったが、圧倒的な軍事力によって、主要な都市は相次いで占領されていく。降伏を求めてくるドイツ軍に対しノルウェー政府はそれを拒否した。ノルウェー国王のホーコン7世は、政府閣僚とともにオスロを離れるが、ヒトラーの命を受けたドイツ公使は、ノルウェー政府に国王との謁見の場を設けるように、最後通告をつきつける。翌日、ドイツ公使と対峙した国王は、ナチスに従うか、国を離れて抵抗を続けるか、家族のため、国民のため、国の運命を左右する究極の選択を迫られるが、家族と離ればなれになっても、ナチスに抵抗することを選んだ。
ナチスドイツに抵抗を続けることは、北欧の小国ノルウェーにとって国の滅亡にも繋がりかねない。歴史に残る重大な決断を下した国王ホーコン7世の運命の3日間を描く。本国ノルウェーで3週連続1位の大ヒットを記録し、アカデミー外国語映画賞ノルウェー代表作品にも選出された。
ホーコン7世(1872-1957)は、デンマーク国王フレゼリク8世とルイーセ妃の次男。1905年にノルウェーがスウェーデンとの同君連合を解消して独立した時、国民投票によりノルウェー国王に即位。日本との縁も深く、八甲田雪中行軍遭難事件のお見舞いとして、1909年に明治天皇にスキー板を贈呈し、日本とノルウェーのスキー交流が始まったという。

ナチスドイツに関わることは映画でたくさん描かれてきたが、ノルウェーの 状況を描いた作品を観たのは初めてだった。ナチスに抵抗したということで絶賛はされたけど、そのおかげで戦争が長引いたというのは否めない。その間、国王は国外にいたというのが気になる(暁)。

配給:アット エンタテインメント 後援:ノルウェー王国大使館
c 2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Vast/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures



posted by akemi at 21:00| Comment(0) | ノルウェー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アランフエスの麗しき日々   原題:Les beaux jours d'Aranjuez

aranfes.jpg

監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
原作:ペーター・ハントケ「アランフエスの麗しき日々 夏のダイアローグ」(論創社)
出演:レダ・カテブ、ソフィー・セミン、イェンス・ハルツ、ニック・ケイヴ

古い家に置かれているジュークボックスから流れてくる昔懐かしい曲。
書斎では、男がタイプに向かっている。
庭先の町を見晴らす木陰には、男と女が座っている。
男が女に初体験のことを聞く。
相手は男じゃなかったと語る女。
子ども時代の話から、男と女の本質の違いなど、とりとめもない会話が続く中、男がアランフエスに行った思い出を語る。
タホ河が流れる小さな町。夏の宮殿があるが、自分が観たかったのは、農夫の家。
でも、それは王宮より手入れが行き届いているもう一つの宮殿にすぎなくて、壁の農夫を描いたフレスコ画から来ている名前とわかった。
板小屋を期待していたのかなとつぶやく男・・・

女性の語る内容が、小難しくて、いかにも部屋でタイプを打っている男が作り出した言葉という感じ。女性の心からの言葉じゃない作り物。彼女がなんとも堅い話をしているのに、男は初体験のことをまた尋ねたりと、なんともかみ合わない会話劇。
そして唐突に語られるアランフエスの思い出。
タイトルからスペインのアランフエスを期待していたら、見事に裏切られました。思い出話に出てくるだけ。
木立ちに囲まれた高台に建つ古い家は、遠くにパリの町が見晴らせる位置にあって、望遠鏡で眺めたときに、パリの高層ビルが連なっているのが、ぼぉ〜っと見えます。
手打ちのタイプライターに、ジュークボックスと、いつの時代?と、くらくら。
そして、唐突にピアノの弾き語りをする男。有名なミュージシャン、ニック・ケイヴ。(すみません、私は知らなかった!)
なんとも不思議な余韻の残る映画。
なにより、男を演じたレダ・カテブが渋いです。
DSCF8172 PIGAR 320.jpg
2016年の東京国際映画祭コンペティション部門で『パリ、ピガール広場』が上映された折に来日したレダ・カテブ(上記写真)にぐっと惹かれました。父親はアルジェリア出身の俳優マレク・エディーヌ。レダ・カテブ自身は1977年フランス・イヴリ=シェル=セーヌ生まれ。
ジャック・オーディアール監督作『預言者』でのジプシー青年ジョルディ役で注目を集めたそうですが、『預言者』では、タハール・ラヒムにしか目がいきませんでした。
そのほか、『愛について、ある土曜日の面会室』『不機嫌なママにメルシィ!』にも出ていたそうなのですが記憶になく・・・ 11月25日から公開されている『永遠のジャンゴ』でも、伝説のジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを素敵に演じていて、ちょっとマイブームのレダ・カテブなのです。(咲)


2016年/フランス・ドイツ・ポルトガル/97分/カラー/DCP
配給:オンリー・ハーツ
公式サイト:http://aranjues.onlyhearts.co.jp/
★2017年12月16日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開



posted by sakiko at 20:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フラットライナーズ(原題:Flatliners)

flat.jpg

監督:ニールス・アルデン・オプレブ
原案:ピーター・フィラルディ
脚本:ベン・リプリー
撮影:エリック・クレス
音楽:ジェイコブ・グロス
出演:エレン・ペイジ(コートニー)、ディエゴ・ルナ(レイ)、ニーナ・ドブレフ(マーロー)、ジェームズ・ノートン(ジェイミー)、カーシー・クレモンズ(ソフィア)、キーファー・サザーランド(ウルフソン教授)

医学生のコートニーにはぜひやってみたい実験があった。「人が死んだらどうなるのか」ということを知るために、自分が実験台となって臨死体験をするつもりだった。仲間を誘って「1分間心臓を止めた後、蘇生させる」実験をする。事故を回避して蘇ったコートニーは突如記憶力がよくなったり、ピアノが弾けるようになったりと能力が覚醒したかに見えた。尻込みしていた仲間もコートニーをみて張り切って参加する。競うように心停止の時間を延ばすことを危険だというものもいたのだが。

1990年製作の同名映画(ジョエル・シュマッカー監督)のリメイク。チラシ画像で想像つきそうですが、良いことと悪いことは背中合わせになっているもの。臨死体験に挑んだ医学生たちは、恐ろしい思いもするんですね。学生役にはエレン・ペイジのほか注目の若手俳優たちが揃って出演。
オリジナル版でジュリア・ロバーツやケヴィン・ベーコンと一緒に学生役だったキーファー・サザーランドが今回教授役です。過ぎさった時間を感じますね。医学と共に映像の技術も進んだので、オリジナルよりもよりリアルな臨死体験になっているのではと思います。観た後でもオリジナル版を見なおすと面白そうです。
今回メガホンを取ったのは『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)に抜擢され、世界中で大ヒットさせたデンマーク出身のニールス・アルデン・オプレブ監督。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.flatliners.jp/
★2017年12月22日(金)TOHOシネマズ シャンテ他ロードショー
posted by shiraishi at 19:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Mr.Long ミスター・ロン(原題:Mr. Long)

mrlon.jpg

監督・脚本:SABU
撮影:古屋幸一
音楽:松本淳一
出演:チャン・チェン(ロン)、青柳翔(賢次)、イレブン・ヤオ(リリー)、バイ・ルンイン(ジュン)、有福正志(平助)、忠雄(諏訪太朗)、久美子(大草理乙子)、町子(歌川雅子)、君枝(真下有紀)、肉屋(山崎直樹)、魚屋(瀬口寛之)、電気屋(水澤紳吾)

台湾人の殺し屋ロンは日本での仕事を請け負い、東京・六本木にやってきた。標的の台湾マフィアをクラブで狙ったが失敗し、言葉もわからないまま北関東まで逃れていく。寂れた田舎町で少年ジュンやその母と出あい、空き家におちつくことになる。新しい住民のロンに、世話好きなご近所さんたちが入れ代わり立ち代わりやってくる。人と関わらずにいたロンだったが、彼らに勧められるまま牛肉麺(ニュウロウミェン)の屋台をひくことになってしまった。手作り屋台の美味しい麺は評判となったが、ロンを追うヤクザたちにも居所を知られてしまう。

2015年、台湾の高雄国際映画祭でSABU監督とチャン・チェンが会ったことから、この映画の企画がスタートしたとか。SABU監督がチャン・チェンのために当て書きし、彼にとても気に入ってもらった脚本なので、雰囲気によくあっています。ロンは日本語が話せない設定のためセリフが少なく、無口な分クールさが際立ち、より繊細な表情が出たようです。ナイフの達人ということで、接近してのアクションをスタントなしで本人が演じています。返り血を浴びた姿がありますが、それまでに培った住民との絆もこれで終わった、という悲しみもたたえていて凄惨ながら印象的なシーンでした。
チャン・チェンが『クーリンチェ少年殺人事件』 (正式には漢字)に出演したのは15歳のとき。ジュン少年に向けるお父さんのような眼差しに、40代になったんだなぁと感慨深いです。(白)


2017年/日本・香港・台湾・ドイツ合作/カラー/シネスコ/129分
配給:HIGH BROW CINEMA
(C)2017 LIVE MAX FILM / HIGH BROW CINEMA
https://mr-long.jp/
★2017年12月16日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 19:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする